死の光線を放つ鋼鉄巨人

作者:塩田多弾砲

「ここ、いつまで『この状態』なんだろう」
 大学生の海野原浩一は、商店街にあるその『建物』の前を通るたび、疑問を感じてしまう。
 そこは、5~6階建ての雑居ビル。一階はハンバーガーなどファストフード店で、二階も飲食店か何かだったはず。
 しかし、彼が中学に入学した年に、一階の店は閉店。取り壊し改装中の注意書きが張られてすぐ、二階も閉店。
 以後、ずっと改装中で、現在に至る。
 今日もまた、大学の講義を終えて帰路についていたが。やはり今日も『改装中』。ポストを見ると、三階以降も『閉店』『移転』などで、どうやらビルは空っぽになっている様子。
「ここのバーガー、嫌いじゃなかったんだけどなあ」
 そう呟きつつ、離れようとしたその時。
 細い『光線』が、ビルから放たれた。
 それはビルを切断し、浩一も貫き、周囲の電信柱や建物なども切断し、破壊していく。
 浩一は、自分の身体が軽くなった気がした。それも当然で、放たれた光線の直撃を受け、自分の片腕が切断されていたからだ。
 それに気づいたが、続き、胴体が横薙ぎに『光線』に切断され、倒れる。
 そして、ビル内部にいた『それ』……身長7mの巨大ロボット、もしくはダモクレスは、
 まるで復活した海王ポセイドンのように、ガレキを跳ね飛ばしつつ這い出てくると、歩き出した。
 歩く先には、街の中心部、人が多くいる商店街や住宅街があった。
 何事かと、飛び出してきた野良猫が恐れをなし、逃げ出したが。
 ダモクレスはレーザーを放って猫を殺害。本格的に進撃し始めた。

「以前に回転鋸で、切断するダモクレスが出現したと思いますが……今度もまた、切断する武器を持つダモクレスが出現しました」
 セリカが言う事件は、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)たちにより解決済み。
 そして、今度のダモクレスが持つ『切断する武器』。それは……『レーザー光線』。
 放置されていた雑居ビル。それをレーザーで切り裂き、破壊する事で出現してきたそいつは……、周囲にあるもの全てを同様に破壊し、殺戮し、殲滅する事を目的として製造されたに違いない。
 そいつはずんぐりした、砲弾を思わせる体型。歩行スピードは、おそらく普通か低速だろう。身体は装甲で覆われており、手足は太く力強そうだ。
 両腕、ないしはその指はレーザーの砲身になっている。照射するレーザーはかなり強力かつ、射程距離も目視計測は不可能。遠くに見えたビルにすら命中し、建物ごと切断してしまうほど。
「いうなれば、歩く『レーザー光線の砲台』。こんなのを放置していたらどうなるか。それは火を見るより明らかです」
 ゆえに、倒さねばならない。こいつもまた、7分=420秒が経過したら、出現する魔空回廊に回収され撤退、撃破不可能になる。七分以内に、この身長7mの鉄の怪物を破壊せねばならない。
「ですが。このレーザーが厄介です。どうやらこのダモクレス……『レーザーフィンガー』と呼称しますが、どうやら近くに存在する、動く存在……とくに人間を目視したら、それをまず攻撃するようです。遠方の方への攻撃は、自主的には行わない様子なんですね」
 予見で最初に襲われた犠牲者は、偶然その場に居合わせただけのようだが。出現してからは、自身の視界に入る『動くもの』を敵とみなし、レーザーを照射するようだとの事。予見でも、通りがかった猫を狙撃したため、その感度はかなり高度だろう。
「ただし、このレーザーは皆さんであれば、防具、およびグラビティを用いる事で、かろうじての防御は可能です。ただし、あくまでも『かろうじて』、死なない程度という意味なので、直撃を二度三度と受け続ければ、致死量の大ダメージになりますのでご注意を」
 それと、もう一つ。
「このレーザー、頑丈な『鏡』を用いれば、反射させる事は可能と思われます。ただし、街中にある普通の鏡やガラス程度では、一瞬反射させる程度で、すぐに熔解してしまうのでご注意を。もしも戦略に組み込みたいとお考えなら、それなりに頑丈で大きな反射鏡を用意できなければ、役に立たないでしょうね」
 それから、もう一つ。
「このダモクレス。『感度』は高くとも、『同時攻撃は出来ず』、さらに『反応速度』は鈍いようです」
 彼女が言うには、
「『レーザーフィンガー』は、常に『一度に一つの目標のみしか狙撃できない』」
 そして、
「攻撃目標が複数で離れている場合、反応速度が鈍いために攻撃に時間がかかる」
 例えば左右に別々の敵を感知した場合、左を狙撃した後に右に攻撃する。しかしその際には、反応速度と動作の鈍さ故、照射して右へ攻撃する時に4秒ほどの時間がかかるというのだ。
「なので、接近するためには、『だるまさんが転んだ』的に、複数で死角から接近していくしかないと思います。長距離で狙撃・砲撃しても、装甲のために効果は薄いでしょうから。接近して強力な直接攻撃を放ち、なんとか破壊する必要があるかと」
 接近するまでが大変であり、接近しての攻撃も、必ず効果があるとは限らない。
 フルパワー攻撃は、腕を胸の前で交差させ、指全てを広げ、上半身を回転させながら全方向へとレーザーを放つ、というもの。『デスフィンガー』とセリカは呼称した。もしも接近した状態でこの攻撃を放たれたら、まず間違いなく致死量のダメージを受けてしまうだろう……とセリカは警告した。
 ただし、『デスフィンガー』の直後は、指のレーザーおよび全身に熱が籠り、約10秒の間行動不能になる。この隙に接近し、攻撃する事は十分可能だろう……と付け加える。
「難しいとは思いますが……不可能ではありません。そして皆さんならば、不可能を可能にしてきたのもまた事実。どうか、このダモクレスの破壊に、手を貸してはいただけませんか?」


参加者
アルニ・カント(砂銀・e00596)
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)
 

■リプレイ

●レーザーとは『誘導放出による光増幅放射』の略称
「……先方が、『借すだけ』と言っていたからには」
 マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)と、
「『返却』しなければなりませんね」
 如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)。彼女たちの目前には、梱包された、半径3mの丸い板状のものが二つ、置かれていた。
 そこにあるのは、巨大な『鏡』。
 改装中の天文台から借りて来たもので、あくまでも『借り物』。この案件が終わった後には返却せねばならない。
 近くには、現場とおぼしきビル。じきに戦場となる街中の一角で、二人は、
「沙耶さん。警察の方には話を通しておきました。もうじき周囲の避難は完了します」
 源・那岐(疾風の舞姫・e01215)と、
「あと僕たちがすべきは、『消火栓の仕込み』と……『海野原さんの救助』かな」
 燈家・陽葉(光響射て・e02459)に、声をかけられた。
「……いや、そのうち『後の方』は、彼女が既に見つけているようです」
 アルニ・カント(砂銀・e00596)が指摘した通り、ウサギのウェアライダーが既に、通行人の前に立ちはだかっていた。
「ちょっと、そこのキミ! ここらへんは警察が封鎖してるから、つっ立ってないでとっとと立ち去りなさい! ほら、グズグズしてないで、とっとと消える!」
 ウサギの彼女は、居丈高に言葉を投げつける。
 投げつけられた方……海野原浩一は、
「え? な、何を……っていうか、誰?」
 いきなり言われて、驚き戸惑っていた。
「ボク? ボクはチェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)! そうやってアホみたいにぼさっとつっ立たれると、邪魔で迷惑なの! だから早いとこどっか行って消えて! ほら、邪魔邪魔!」
 海野原の顔立ちは、正直あまり良くはない。というか、チェリーの好みからはかなり外れている。
 彼女のそんな言葉に、いささか『ムッ』とした様子の彼は、
「……いきなりアホ呼ばわりかよ、君は何様だ」
 そう言い返した。
「ボクらはケルベロス。これからここに危険な奴が現れて、キミたちを襲い殺そうとするの。そいつをやっつけるためにキミは邪魔だから、消えて欲しいわけ。ほら、なにか間違ってる? 無いよね? こんな事も理解できないアホなの?」
 ムッとした相手に、そう言い返すチェリー。
(「まったく、これがかっこいいイケメンならよかったのに……」)
 そう、ルックスがイケメンのハンサムさんだったら、何を言われても構わない、むしろご褒美。そしてこんな口論からも、『俺に言い返すとは、おもしれー女』みたいに思われて、二人は後に恋仲に……、
 などと妄想してたら、
「……はいはい、わかったよ。それにしたってアホ呼ばわりはないだろ……」
 嫌そうな表情で、彼は来た道を引き返していった。
「……ブロッサムさん、ちょっと言いすぎです」
 ライドキャリバーとともに駆けつけた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の言葉にも、
「? 何か問題あったかな?」
 と、どこ吹く風。
「はあ……。ま、いいです。プライド・ワンで運ぶ必要なくなりましたですし、あとは……」
 道路を水浸しにして、水蒸気を発生させる用意を。
 既に調べて、近くにいくつか消火栓がある事は確認済。
「じゃあ、始めるね」と、陽葉や那岐が、栓をひねり……放水し始めた。
 周囲が水浸しになりつつある。マルレーネも、真理の恋人もまた、栓を回し放水。
 やがて、周辺は足首にまで浸かるほどに、水が噴き出し、流れ始めていた。
 後は熱する事で、『水蒸気』で周辺をいっぱいにする。それで敵が使うレーザーの威力が、多少なりとも半減してくれればいいのだが。
 ビルを挟撃するように、片方にはディフェンダーの真理とプライド・ワン、クラッシャー・マルレーネとスナイパー・チェリーで構成された『A班』が待機。プライド・ワンは、ヘッドライトを青色から黄色に変化させていた。
 その反対側には、ディフェンダーの那岐、クラッシャー・陽葉とスナイパー・アルニ、そしてメディック・沙耶の『B班』。
 数分か、あるいは数十分か。
 プライド・ワンのヘッドライトが、黄色から赤に変化。
 それとともに、ビルの内側から光が放たれ、ビルを切り刻み、敵が……、
『レーザーフィンガー』が、その姿を現した。

●かつては『殺人光線』『怪力線』として各国で開発
 まずは、敵側からして右……A班へと体を向けた、『レーザーフィンガー』は、
 真理に注目し、両手指先を彼女に向け、光線を放った。
「これでも……食らえです!」
 かろうじてそれをかわした真理は、フォートレスキャノンからナパームミサイルを発射。……焼夷弾の熱により、周辺に水蒸気が満ち始めた。
 彼女のもたらした火炎は、水蒸気を、『霧』を発生させ、周囲を白いモヤモヤで包み込む。
 やや視界不良となったものの、レーザー光線の威力を減退させられるだろう。
 そして、その真後ろでは、B班の那岐が、
「風よ、力を貸して……さあ、共に舞いましょう!!」
『風の舞姫の御神楽(セイクリッド・シルフィード・ダンス)』により、周囲に聖なる風の護りを付与させていた。
 AとB、両班それぞれのディフェンダーである真理と那岐とが対処している間、残りのメンバー……クラッシャーとスナイパーである彼らは、死角に隠れながら、接近していく。
「貴方の運命を、お守りします!」
 沙耶の『運命の導き「女帝」(フェイト・ガイダンス・エンプレス)』が、防御力を高めていく。
「……はーっ!」
 那岐の熾炎業炎砲が、ダモクレスの背中に命中。ダモクレスは更なる水蒸気が発生したところで、四秒かけて後方へと振り返り、目標の補足を試みていた。
 が、水蒸気が邪魔をして補足が出来ない。炎が更なる白い水煙……霧を発生させ、『レーザーフィンガー』の視界を奪っていく。
 そして、その隙をつき。A班のマルレーネとチェリーが、B班の陽葉とアルニが、少しづつ接近。
 A班の真理が狙われたら、那岐が攻撃。B班の那岐が狙われたら、真理が攻撃。
 それを繰り返していたら、皆は『コツ』を掴んでいた。
『レーザーフィンガー』は、目前の敵を補足した後に、背中から攻撃を受けると……、それに反応して振り返るのに、四秒かかる。そして、一度に一体しか補足できず、攻撃も出来ない。
 既に、AB両班とも、攻撃可能な距離にまで接近できている。
『レーザーフィンガー』が、改めて真理へと攻撃の矛先を向けた、その時。
「はーっ!」
 炎を纏った、陽葉のスターゲイザーの一撃。それがダモクレスにダメージを与え、更なる水蒸気を湧き上がらせた。
「目標補足。空間固定。魔術起動」
 続き、放つはアルニ。
「……起源を騙り。神聖を盗み」
 それは、偽装魔法。紅蓮の流星が、彼方より生じ、
「……破壊を以て。原罪を断つ! 『狂え醜悪(メギド・カタストロフ)』!」
 それらは天空より降り注ぎ……ダモクレスへと直撃した。流星は更なる炎と化し、ダモクレスを包み、炎熱によるダメージと水蒸気とを発生させていく。
 後方から受けた、その攻撃に反応し、『レーザーフィンガー』が『左側』へと体を向けたが。
 もらったとばかりに、チェリーが、
「全部優しく包み込んであげるから……安心してねっ!」
 己の身体から『血液』を放出。煮えたぎるそれは、雨となりてダモクレスに降り注ぎ、その身体を蝕んでいく。
『腐食拳聖の炎血自傷(フショクケンセイノブラッドレイン)』が、血煙のように、赤黒い『霧』をその場に沸かせた。
 装甲の表面は爆ぜただけで済んだが、内部機構からか。潤滑油が燃える臭いがたちこめ、水蒸気と異なる白い煙と化し漂い出る。
「プライド・ワン、行って!」
 続き、デッドヒートドライブの直撃が、『レーザーフィンガー』にぶち当たる。
 即座に、真理のフォートレスキャノンが狙い撃ち、追撃。
(「マリー、お願い」)
 真理は、恋人へと視線を向け、
 マルレーネは、
(「任せて、真理」)
 言葉はなくとも、視線で返答。
 バスターライフルを取り出し……攻撃を放つ。
「外しませんっ!」
 ゼログラビトン、敵を弱体化するエネルギー光弾が放たれ、ダモクレスに命中。
 痙攣した『レーザーフィンガー』は、よろめき、困惑するように周囲を見回した。
(「……勝てる!」)
 ケルベロス達、全員の脳裏に、その確信が湧きあがった。
 レーザーの威力は確かにスゴイが、今はそれが弱体化した状況下。加えて……敵は、攻撃目標の補足能力が乏しく、反応速度も鈍い。装甲は厚いが、内部機構にダメージは与えられている。
 前後から、死角となる場所より交互に攻撃していけば、七分以内に破壊はできるだろう。
 時間は、まだ三分程度。このままいけば、勝てる。
 接近したケルベロス達だったが、次の瞬間。
 高揚した戦いの気勢が、戦慄のそれに変わるのを実感した。
『レーザーフィンガー』が、腕を交差させたのだ。

●旧日本軍もレーザーを完成させたが、鼠一匹殺すのに三十分以上かかった
『レーザーフィンガー』は、両腕を交差させ、両の手の指全てを広げた。
 指は十本。通常は収束させて射撃していたが、広げると……攻撃範囲が扇状に広がる。
 そして、その状態で上半身を回転させると……扇が、半球(ドーム)となる。
 それがもたらすものは、死(デス)のみならぬ、破滅(ドゥーム)。破滅をもたらす死の指……『デスフィンガー』が、今まさに放たれた。
 しかし、破滅をもたらす存在は、ダモクレスだけではない。
 ケルベロス、地獄の番犬。冥府の門番たる猛犬の名を持つ彼らも、ダモクレスという存在に破滅と死をもたらす存在。
 そして、敵への備えは既に整えている。
「みんなっ!」
「この中へ!」
 チェリーと沙耶が、借り受けたあの『巨大な鏡』。
 二人は『怪力無双』を用い、それを大盾のごとく掲げると……、
 後ろへと、残る五名とライドキャリバー一機を迎え入れた。
 直径3mの鏡二枚、それを古代のファランクス陣形のごとく防御形態で、レーザーを迎え撃つ。
(「効果は……あるかな……っ!?」)
 陽葉が、鏡を支える沙耶のすぐ後ろで……手に汗を握る。
 刹那……『デスフィンガー』の閃光が浴びせかけられた。
 水蒸気が、空気中に濃密に漂っているせいで、レーザーの威力は確かに減退していたものの……無力化には至っていない。
 が、無力化には至らずとも、弱体化には成功。襲い掛かったレーザーの光は、『鏡』に反射し……、ケルベロスらの身体に届かせる事なく、虚空へと跳ね返った。
『レーザーフィンガー』は、上半身を回転させつつ、何度も鏡へと光線を放つが、その全てが無効化。
 そして……一分間が過ぎ、その動きが止まった。
 十秒間のクールダウン。それは、ケルベロスたちにとってのチャンス。
「……狙い、断つ!」
 飛び出した陽葉が放つは、超速の斬撃。空気はおろか、周囲の水蒸気すら、『斬られた事に気づかぬ』ほどの、必殺の一撃。
『破・残風止水』、その餌食になったのは、『レーザーフィンガー』の右腕。
 十秒が経過し、再起動したダモクレスは、
 残った左手をかざし、その指先からレーザーを放とうとした。
 が、
 指先からは死の光線が放たれず、むしろ……まとわりつく桃色の霧により、熔解し、爆ぜ、弾け、火花を散らしていた。
「『焼霧嵐舞陣(アシッドストーム・ピンク)』。……霧に焼かれて、踊れ」
 マルレーネが放った、桃色の残虐なる霧。それが、死の指を無力化したのだ。
 もはや、敵の攻撃する手段は無くなった。
「では、とどめと行きましょう」
 アルニは進み出ると、その手をかざし……、
「……炎熱の竜。破壊をもって。顕現と為せ!」
『ドラゴニックミラージュ』、火炎の竜を顕現し、ダモクレスへと解き放つ。
 完全に火炎に包まれたダモクレスは、そのまま金属の身体を赤熱させ、周囲の水蒸気を蒸発させ……、
 崩れ落ち、その動きを止めた。
 地面を濡らした水が、赤熱した『レーザーフィンガー』の身体に触れ、バチバチと爆ぜる音を生じさせていたが、次第にそれも止まり……、
 ケルベロス達は、戦いに勝った事を知った。

●今は、平和目的にも利用されている
「はあ、思ったよりも、うまくいったね、真理」
「そうねマリー、お疲れ様です。アルニさんも、お疲れです」
 事後。あとすべき事は、現場の後処理のみ。
「ああ……二人とも怪我がなくてよかった。……おっと、プライド・ワン。キミもね」
 アルニに言われ、ライドキャリバーは青色のヘッドライトを、喜ぶかのように点灯させた。
「んーっ……最初はレーザーにちょっと不安だったけど、うまくやっつけられてよかったねっ」
 と、陽葉は伸びしつつ安堵。
「ええ。那岐もお疲れ様。役に立てたかしら?」
 と、沙耶が未来の義姉へ声をかけると、
「もちろんです。とても……心強かったです」
 那岐もまた、未来の義妹に微笑んだ。
 周囲の被害は、フルパワー攻撃時のあおりで結構多めではあったが、死者はもちろん、負傷者も出ずに済んだ。
 めでたしめでたし……となりそうなところに、
「きゃーっ! イケメンが二人もっ!」
 この道を通りたいのか、顔立ちの整った二人の青年が近づいてくるのを、チェリーは見逃さなかった。
「……あの、すいません」
「……ちょっと、聞いていいか?」
 一人は大学生くらいで、もう一人は年下のよう。二人とも、チェリーの好みにどストライク。
「なに? なにかなっ? ボクで良ければ力になるよっ? うんっ、とっても素敵! なんだって聞いて! なんだって答えちゃう!」
「じゃ伺いますが。僕の親友をアホ呼ばわりしたの、あなたでしょうか?」
「……え?」
「尊敬する俺の兄貴を、クソ邪魔でクソ迷惑だから消えろつったのは、あんたか?」
「……えっと……」
 チェリーの目前で、二人の後ろから現れたのは、先刻に追い返した海野原。
「おい、二人とも。やめろって……ああいう事を言われはしたけど、一応君は命の恩人だから、お礼を言いたいと思って」
 と、先刻に辛辣に追い返した本人が、ぺこりと頭を下げる。
「ただ、老婆心ながら言わせてもらうけど。顔の良し悪しだけで態度を変えるのは、ちょっと良くないと思うよ。人の価値は、顔の良さだけじゃないんだから」
 それじゃ……と、イケメン二人とともに去って行く海野原浩一。
「……ええと……と、とりあえず、消火栓、閉めしま、ましょう?」
 その事実を努めて認識したくない様子で、チェリーはぎこちなく、後処理をし始めた。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月11日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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