●都内某所
職員の虐待が問題視され、閉鎖に追い込まれた老人ホームがある。
そこに放置されていたのは、沢山の介護用ベッドであった。
本来であれば、処分されるはずのソレは、再び利用される事が無いまま埃を被っていた。
そんな中、蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、介護用ベッドの中に入り込んだ。
それと同時に、介護用ベッドが機械的なヒールによって作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「カイ、カイ、カイゴォォォォォォォォォォォォ!」
次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、老人ホームの壁を突き破ると、その場にいた一般人達に襲い掛かっていくのであった。
●セリカからの依頼
「八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)が危惧していた通り、都内某所にある老人ホームの跡地で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ダモクレスが現れたのは、都内某所にある老人ホームの跡地。
この老人ホームで働く職員が、入所していた老人を虐待していた事が問題視され、閉鎖に追い込まれてしまったようである。
「このダモクレスは無数のアームで相手を捕らえ、ベッドに寝かせてグラビティ・チェインを奪っているようです」
セリカがケルベロス達に対して、ダモクレスに関する資料を配っていく。
どうやら、ダモクレスは老人をターゲットらしているらしく、その場に老人がいなければ、弱っている人を狙って、攻撃を仕掛けてくるようだ。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004) |
不動峰・くくる(零の極地・e58420) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736) |
ジャスティン・アスピア(射手・e85776) |
●都内某所
「ベッド関連ならスヤスヤできる依頼になるかもしれないと思ったのに……。調査していたら闇深い事案に行き当たってしまったのです……! これは放っておく事が出来ないのです……!」
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)は複雑な気持ちになりながら、仲間達と共にダモクレスが確認された老人ホームにやってきた。
この老人ホームは職員が入所者を日常的に虐待していたらしく、その事が問題視されて、閉鎖に追い込まれてしまったようだ。
しかも、関係者達によって隠ぺい工作なども行われ、最後まで真相がわからぬまま、事件が幕を閉じたようである。
「私も、この地で言うアラカンというやつだ。そのうちガタが来たら、こういう施設のお世話になる時が来るのかねぇ。願わくば、スタッフに恵まれたところに入りたいものだよ。終活、というんだっけ? ちょっと違う気もするが……」
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)が、老人ホームの前に立った。
いまのところ、何の異常もないものの、それでも禍々しい気配がビシビシと身体に伝わってきた。
それ故に、何やら近寄り難い雰囲気が漂っており、本能的に身の危険を感じた一般人達が、老人ホームを避けるようにして、みんな遠回りをしているようだった。
「まさか、老人に安らかな余生を過ごしてもらう為に作られたのに、その目的を踏みにじられた上、殺戮機械にされるとはな……。生き物ではなく機械だが、ここで終わらせてやるのが幸せかも知れない」
そんな中、ジャスティン・アスピア(射手・e85776)が、自分自身に気合を入れた。
ある意味、今回の敵は、亡霊のようなモノ。
自らの恨みを晴らすため、暴走してしまっているようなモノなので、確実に機能を停止させるべきだろう。
そうしなければ、本来の目的を忘れてしまう程の狂気に囚われ、人々の命を奪い続けてしまう可能性が高かった。
「確かに……、虐待があって閉鎖された老人ホームで遺棄されていたのは無念かもしれぬでござるが、放っておくわけにもいかぬでござる。ここは拙者の『轟天』と『震天』を持って打ち砕かせてもらうでござる!」
不動峰・くくる(零の極地・e58420)が、覚悟を決めた様子で老人ホームを睨みつけた。
「カイ・カイ・カイ・ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!」
次の瞬間、ダモクレスと化した介護用ベッドが、老人ホームの壁を突き破り、ケルベロス達の前に現れた。
介護用ベッドはダモクレスと化した事で原形を留めておらず、まるで機械で出来たケモノのようでもあり、クモのようでもあった。
「……なるほどなぁ。こういうベッドは電動で姿勢や高さを変えられる機構があるからダモクレス化という事か。不法投棄以外の家電も、こういう来られ方をしては、なかなか対策は難しいね」
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)が感心した様子で、ダモクレスに視線を送った。
見方によっては、最新技術を有した介護用ベッドに見えなくもないため、使い方次第でいくらでも化けそうな可能性を秘めていた。
だからと言って、このまま利用すると、確実にグラビティ・チェインが奪われてしまうため、破壊する以外の選択肢が存在していないというのが現実であった。
「虐待された奴の怨念か、した奴の執念か。……まっ、どっちにしろ、ぶっ潰すのが仕事だかんな。精々、気持ちよくしてくれよ?」
すぐさま、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、ダモクレスの前に陣取った。
「カイ・カイ・カイ・ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
それと同時に、ダモクレスが次々と介護アームを伸ばし、ケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
●ダモクレス
「……どうやら俺達を狙っているようですね」
その事に気づいた右院がスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させ、ダモクレスの機動力を奪い取った。
「カイ・カイ・カイ・ゴォォォォォォォォォォォォ!」
それでも、ダモクレスは介護アームを蠢かせ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺っていた。
おそらく、介護アームでケルベロス達を捕まえて、むりやりベッドに寝かせようとしているのだろう。
ベッドのまわりで、小さな介護アームが待機しており、獲物が来るのを待ってワシャワシャしている感じであった。
「だからと言って、そう簡単に捕まるつもりはないが……」
ジャスティンが素早い身のこなしで、介護アームを避けつつ、フロストレーザーを放って、ダモクレスの熱を奪った。
「カイ・カイ・カイゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
その事に腹を立てたダモクレスが、アスファルトの地面を削りつつ、介護ビームを放ってケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
介護ビームは一見すると安心安全ホンワカビームに見えたものの、壁を抉り、貫通する程の破壊力があった。
「こ、これは、とても危険なのです!」
その破壊力を理解したあこが、身の危険を感じて、その場に素早くしゃがみ込んだ。
間一髪で介護ビームを避ける事が出来たものの、万が一直撃するような事があれば、決して無傷では済まないレベル。
「カイ・カイ・カイゴォォォォォォォォォォォ!」
ダモクレスも血に飢えたケモノの如く勢いで、再び方向を変えて、介護ビームを放ってきた。
「一応、弱っている人を狙うって話だけど、この場合は私かねぇ。メンバーの中では老人相当だし……ほら、来た」
その気配を感じ取ったディミックが、介護ビームをギリギリのところで避けた。
「長引くと思い出して夜寝られなくなりそうなので……さっさと破壊します!」
右院がゾッと寒気を感じながら、レゾナンスグリードでブラックスライムを捕食モードに変形させ、ダモクレスの介護アームを丸飲みした。
しかし、ダモクレスは別の部分から介護アームを出現させ、再びケルベロス達に攻撃を仕掛けてきた。
この様子では、必要に応じて本体の中から、介護アームを出現させているのだろう。
介護アームがケルベロス達に狙いを定め、威嚇するようにしてガチガチと音を鳴らした。
「我が『轟天』『震天』の力、とくと見るが良い! でござる」
その間に、くくるが赤いマフラーを揺らしながら、ガジェットの巨大手甲『轟天』と『震天』を展開した。
「カ・カ・カイゴ・ゴ・ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
次の瞬間、ダモクレスがミサイルポッドから、一斉に介護ミサイルを飛ばしてきた。
「マ、マジか!」
その事に気づいた清春が全身に鳥肌を立たせながら、介護ミサイルから逃げていった。
だが、介護ミサイルは清春を嘲笑うようにして、次々と爆発して土煙を上げた。
「……無事か?」
すぐさま、ジャスティンがクイックドロウを仕掛け、目にも止まらぬ速さで弾丸を放ち、介護ミサイルを撃ち抜いた。
「ああ、何とかな! ……たくっ! よくも、やってくれたな、オンボロが! さっきの分も纏めて返してやるから、覚悟しておけよ! いまさら謝ったところで手遅れだからな……!」
清春が邪悪な笑みを浮かべながら、達人の一撃を仕掛けて、ダモクレスの介護アームを破壊した。
「ここで負ける訳にはいかないのです! 絶対に倒すのです……!」
すぐさま、あこがブレイブマインを発動させ、背後にカラフルな爆発を発生させ、爆風を背にした仲間達の士気を高めた。
「カイ・カイ・カイゴオオオオオオオオオオオオオオオ!」
それと同時に、ダモクレスはケモノの如く唸り声を響かせ、再び介護ミサイルを放ってきた。
「……相手も必死なようだねぇ」
ディミックが介護ミサイルから逃げるようにして、物陰に隠れて身を守った。
「ヤケになって、手当たり次第という訳か」
その間にジャスティンが死角に回り込み、ダモクレスにチェーンソー斬りを炸裂させた。
「カ・カ・カイ・ゴォォォォォォォォォォォォォォ!」
その一撃を喰らったダモクレスがバチバチと火花を散らしながらバランスを崩し、見当違いの方向に介護ミサイルが飛ばしていった。
「……そろそろ大人しくしやがれ!」
清春がイラついた様子でアイスエイジインパクトを仕掛け、生命の『進化可能性』を奪い、ダモクレスを凍結させた。
それに合わせて、ビハインドのきゃり子がポルターガイストを発動させ、ダモクレスを足止めした。
「にゃんこパンチを食らうのです!!」
次の瞬間、あこが獣撃拳を叩き込み、ダモクレスのコア部分を破壊し、完全に機能を停止された。
その途端、ダモクレスだったモノが崩れ落ち、大量のパーツが辺りに散らばった。
「これで一安心……ってところかねぇ」
ディミックがホッとした様子で、ダモクレスだったモノに視線を落とした。
ダモクレスだったモノは、ベッド部分だけを残して、ガラクタ同然になっていた。
そのため、万が一ダモクレスが動いたとしても、攻撃する事は不可能な状態になっていた。
「ここで眠る人達も、これで安らかに……」
その間にジャスティンが辺りをヒールし終え、過去の虐待で亡くなった犠牲者と、ダモクレスの冥福を祈った。
「今のところ曰くつきの物件って事と、権利の問題で難しいかもしれないけど……。誰かの憩いの場として機能する日が再び来ればいいですね」
右院が祈るような表情を浮かべ、老人ホームを見上げた。
いまのところ、閉鎖されているものの、いつの日か、きっと……。
そんな未来に思いを馳せつつ、右院が老人ホームを眺めていた。
「仕事上がりの一服は身に染みるでござる」
そう言って、くくるが何処からかキセルを取り出し、一服して煙をふかせた。
「ちょっとぐらい残ってるベッドですやすやしてみたいのですが……。これは、早めに家に帰った方が良さそうなのです……!」
そんな中、あこがダモクレスだったモノに別れを告げ、大急ぎで家に帰るのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年2月23日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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