慧斗の誕生日~ゆめのこらぼれーしょん

作者:つじ

 ケルベロスウォーのような大戦争は言うまでもなく、大運動会にミッション解放、日々の依頼など、ケルベロス達の活動は大なり小なり人々に知られている。地球のため、人々のために戦う彼等には、自然と尊敬や感謝の目が向けられるもの。
 それゆえに、ケルベロス達は言うなれば人々のヒーローであり、アイドルであり、何か要するに超絶有名人でもある。

 そうなれば、もちろん、こういう企画も立ち上がる。
「皆さん、ケルベロスコラボカフェが開催されるそうですよ!!」
 本日誕生日を迎える白鳥沢・慧斗(暁のヘリオライダー・en0250)が、そう言ってケルベロス達にカラフルなチラシを見せつける。場所は、この近所のショッピングモールの特設会場、そこをまるまる使って大規模なコラボカフェが催される、という内容だ。
 テーマは我等ケルベロス達、であるのだが。紹介されているメニューの量が尋常でないほど多い。
「まあ……ケルベロスの皆さんは何かもう千差万別ですからね。でもこれだけあれば、あなたをモデルにしたメニューも出ていると思うんですよ!」
 是非そういうのを、本人の前で堪能したりしてみたいので付き合って欲しい。そう言って、彼は会場の方へと一同を誘った。
 
●ケルベロスコラボカフェ!
 件のヘリオライダーが述べたように、会場はショッピングモールのイベント用特設スペースである。メニューは様々なので、買い物の合間に立ち寄るのもよし、がっつり食事に行くのもよしだ。
 あなたをモデルにしたコラボメニューを楽しむこともできるし、知り合いがテーマのものを楽しむのも良いだろう。
 それと会場で食事を注文した人には、一品につき一つ、誰かひとりのケルベロスをモチーフとしたコースターがもらえるとか何とか。

 こうして人々に認められ、モデルとして取り上げられるのも、日々の戦いの成果だろう。
 たまにはそれを、じっくりと味わってみては。


■リプレイ

●番犬コラボ
 ケルベロスコラボカフェ。シルの訪れた会場には、鎖で縁取られたそんな看板が飾られていた。壁際にはちょっとした主な戦いの歴史や代表的なケルベロスのパネルが置かれ、スタッフらしき人達はケルベロスコートっぽい制服で揃えている。
「……意外と頑張ってる?」
 どんなものがあるのか楽しみだ、と胸を浮き立たせてテーブルに着いたシルは、何気なく開いたメニューに載ったそれを見つけ、思わず固まった。
「……『シルの六芒星プレート』?」
 これってわたしのことでは? 咄嗟にメニューで周りから顔を隠してしまったが、まさか。とにかく、説明を読み進めてみよう。
 六芒星の頂点に、それぞれの属性の色のアイスがトッピングされて、ソースでそれらを結んで六芒星を描いている。そして真ん中にはワッフルが置かれていた。
「よく調べたなぁ~」
 思わず感嘆の声が漏れた。どう見てもこれは、彼女のグラビティである『六芒精霊収束砲』をイメージしている。ここまで調べられる熱意に感心しながらもシルは道行くスタッフに注文を取ってもらえるよう声を掛けた。
「あの、ええと……」
 そこで、つい言い淀んでしまう。
 「シルの六芒星プレートください」、と。自分で言わないと駄目なの? それってものすごく、恥ずかしいような――。

●バースデー
「誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございますイッパイアッテナさん!」
 今年も、と頭に付けて、慧斗はイッパイアッテナに頭を下げる。
「今年はコラボカフェなのですね……」
 にこにこと笑う声の大きな少年の向かいに座り、イッパイアッテナはメニュー表を捲り始めた。並んだ料理には見覚えのある名前があり、それぞれの顔が頭に浮かぶものも複数。これを眺めているだけでも楽しい時間を過ごせることだろう。
「私のメニューもあるのでしょうか……」
「ふっふっふ……僕が先に見つけましたよ!」
 慧斗の指差したのは、『イッパイアッテナ・ルドルフのジンジャーチャイ』……そんな、名前がやたらと長い一品。
「なるほど……ああ、その下にあるのはザラキのメニューですね」
 言いつつ、テーブルの脇に控えた相箱のザラキに目を向ける。『ザラキのパカッと開くバラエティボックス』がそれだ。
「慧斗さんのもあるでしょうか?」
「ええ、じゃあ僕のも頼んでみましょう!」
 そんなこんなで注文を済ませれば、ジンジャーチャイに、スコーンや琥珀糖の詰まった甘い宝箱、そしてヘリオンの形を模したチキンライスが運ばれてきた。
「なるほど……それではいただきましょうか」
「はい! ……ジンジャーチャイって初めて飲みましたけど、身体があったまって良いですねー」
 慧斗は温かいお茶に口を付けて、イッパイアッテナはザラキと分け合いながら、それぞれの味を楽しんで行く。
 色鮮やかなメニューを前に、誕生日のパーティは和やかに過ぎていった。


「慧斗はん、お誕生日おめでとうさんです。よかったら、ご一緒させてくださいな」
「ありがとうございます! 是非!」
 よろしくおねがいします、と言う少年の横に腰かけて、保は分厚いメニューを手に――。
「八千草て言いますえ。ボクのメニューもありますやろか」
 手に取らずに、早速スタッフに声をかけた。「ありますよ」、と答えが返れば。
「そしたら、それをひとつ」
「み、見ないで頼むんですか?」
 大丈夫? と慧斗が目を丸くするが、当の本人は気にした様子もなく。
「たぶん、お花ののった綿菓子みたいなんと違います……?」
 自覚と期待の混じった予測に対し、実際に届いたのは何かふわふわした抹茶のパフェだった。
「……うん、そんな感じ」
 これはこれで納得だと頷いた保は、「こらぼかふぇて、面白いねぇ」とふんわり微笑む。
 面白かったので、早速。
「こちらの方のメニュー、他にもありますやろか」
「へ?」
 指差された慧斗が素っ頓狂な声を上げるのも構わず、「ありますよ」、と答えが返れば。
「そしたら、それをひとつ」
「ええ!?」
「こういうのも、楽しいもんですえ」
 さあてそれでは、どんなのが来ますやろか。
「……慧斗はんといえばめがほん。そやけど、白鳥さんっぽいから……くれーむ・だんじゅ、て似合いそう」
「白鳥……そんな風に言われたのは初めてですねぇ」
 ニワトリに例えられがちな少年は、しかし実際何が来るのか気が気でない。
「ベリーとマンゴー、二色のそーすでお花描いたり、飾ってたり……慧斗はん、心配事でも?」
「ええ、僕が食べきれるものだったら良いなって……!」
 そわそわする慧斗の言葉に、保は何だそんな事かと微笑んで見せた。
「なぁに、僕がだいたい美味しゅう頂くよ」
 きっとそれから届いたものは、ふんわりと甘くて、平和な味がしたことだろう。

●コラボレーション?
「ちーっす、久しぶり! なゆきちだよー! 誕生日おめでとー!」
「ありがとうございます!」
「はいはい、それじゃこれプレゼント!」
 ぺたん、とハンドスピーカーにサインステッカーが貼り付けられた。

 挨拶も済ませたことだし、とコラボカフェ会場を見渡した玲衣亜は、見知った顔を見つけてその向かいに腰かけた。
「キララじゃーん元気?」
「ああ、なゆきち君かい。君こそ元気に……うん?」
 顔を上げたキララが、少し目を丸くするのが分かる。
「ははあ、見違えたね」
「そう? キララも大人になったねー」
 本当は全然変わってないように見えたけど、ワインでも転がしてそうだねとからかって、玲衣亜は分厚いメニューを開いた。
「アタシのメニューはどんなかなー? やっぱ無駄に高いのかな?」
「いやあ、良心的な価格だったと思うけどね……」
 君、どんなとこで働いてるんだい? などと聞きながら、キララがぱたんとページを開いてみせる。既に見つけてあるらしい。
「ちっちゃいハニートースト?」
「そのようだよ、ガジェット風の」
 ふうん、と鼻を鳴らして、商品写真をしげしげと眺める。蝶の意匠やハリネズミ型の小物など細部も気になるが、その前に。
「何で縦に三段積んであんだろーね?」
「さあ……」
「無駄に高いってこと?」
「さあ……」
 歯切れが悪い、というか笑いを堪えた様子の相手を見遣って、玲衣亜はキララが食べていたそれに言及する。
「あー、それがキララの?」
「え……そう、だよ」
「丼じゃん」
 ブラックウィザー丼。説明を聞く限りのり弁を丼にしただけの、やっつけにも程があるメニューだが。
「あ、ぽいねー、ぽい。闇の力感じるねキララ様!」
「やめてくれるかい、死にたくなる……」
「まー元気だしなよ。あ、そーだ、アタシのとコラボしたらマシになんない?」
「ならないんじゃないかな!」
「あはは、怒んないでよー」
 そう笑う。注文が届いて、食べ終わって。まだまだ話すことは尽きないようで。

●君のメニュー
 分厚いメニューを開けば、そこにはケルベロス達の名前と、一人ひとりをイメージしたメニューが並んでいる。
「わぁ、すっごい種類の多さ」
 恭志郎の言うように、カバー範囲は広い。知っている名前だって、もちろんいくつもあるけれど。
「恭サンのがありマス……俺はこれにしマス」
「え、俺?」
 目の前に居る仲間の名前を見つけると、やはり嬉しいもの。エトヴァは早速それを選択した。戸惑う恭志郎はしかし即座に。
「あ、ジェミさん発見! 俺、これにしますね」
 同様の事を、もう一人の連れに回すことに成功する。
「ええ……じゃあ、僕はこれ!」
 そうなれば、ジェミが選ぶのはもちろんエトヴァを示すメニューだ。互いを選んで一回り、これで平等といったところか。注文を済ませた時点で、三人は自然と笑い合った。

 さて、それでは最初に来た一品は。
「ああ、俺が頼んだものデスネ」
 エトヴァの選んだメニュー、それは『筐・恭志郎のほっこり雪うさぎ饅頭』。
 白い器の上に乗っているのは、真っ白な雪兎のお饅頭だ。米粉を使ったもちもちの生地に、赤茶の琥珀糖で作られたつぶらな瞳がきらきらと輝いて見える。
「わぁ、兎さん、可愛い!」
「可愛イ……つれて帰りたくなりますネ」
 食べるのが勿体ない、というジェミの言葉に、エトヴァが頷いた。
「なるほど……故郷を思い出すね」
 恭志郎もそう目を細める。どうやら外れてはいないらしいが。
「でも……」
「ええ、食べないのも勿体ないデスカラ」
 複雑な所だ、としみじみ言って、エトヴァは思い切ってその雪兎饅頭を口にした。
「ンン……もっちり、美味しイ。中は餡子がたっぷり……優しい甘さなのデス」
 きっと、丁寧に作られているのだろう。葉っぱの耳は薄荷のゼリーだ、という新情報にジェミは感心したように息を吐いた。
「米粉ってあたりも何となく恭さんテイストだよね」
「そう? だとしたら考案者はよく見てるなぁ」
 そう言って、恭志郎ははにかみ笑いを浮かべた。

 そんな恭志郎に届いたのは、次なるメニュー、『ジェミ・ニア&みけ太郎の仲良しホットサンド』である。
 “喫茶店員のジェミさんをイメージしたホットサンド。仲良しみけ太郎さんもご機嫌!”、などとメニューには書いてあったが。
「えっみけ太郎? 僕の飼い猫まで把握してるの?」
 責任者は猫好きなの? とジェミが思わず笑ってしまう。
 星柄のお皿の上に、星型チーズを乗せたベーコンエッグホットサンドが乗っているのだが、その表面には猫の足跡の焼き印が入れられ、さらには小さな猫の顔型ホットサンドまで添える徹底ぶり。
「ジェミとみけ太郎サンも仲良しデス」
「すごい熱意を感じるよね」
 エトヴァとジェミが言葉を交わす間に、恭志郎は早速それに齧りついた。カリカリの歯応え、香ばしい味の匂いが口の中に広がる。
「美味しい……中身はにぼしとクルミの甘煮かな? みけ太郎さんにぼし好きですもんね!」
「煮干し味なのデス? ……面白イ」
 確かに、珍しい味わいだったことだろう。

 そうして最後の一品は、ジェミの頼んだ『エトヴァ・ヒンメルブラウエ、イメージドリンク~空の欠片』だった。
「わあ……洒落てる」
「エトヴァさん本人の姿みたいだね」
 二人の第一声に、エトヴァは思わず明後日の方向に顔を向けてしまう。
 グラスに泡立つしゅわしゅわの炭酸水は透明なブルー。その中には青、水色、藍色、透明……スクウェアカットの寒天とエティブルフラワーが浮かんで、きらきらと輝きを放っている。太陽の下では爽やかに、夜の照明の下では静かに、それぞれの顔を見せてくれることだろう。
「この青い色はバタフライピーっていうお花。アントシアニンいっぱいで体にも良いんだって」
 添えられた説明を読みながら、ジェミはグラスに口を付ける。ほんのりと、蜂蜜の甘みが広がるのが分かる。
 さらにここに、レモンを加えれば、ブルーのそれはピンク色へ変化する。
「どう? まるで朝焼けの空みたい」
 ジェミはグラスを掲げると、薄桃に染まりつつあるブルーの液体と、エトヴァの髪とを並べるように、見比べるようにして。
「ふふ、綺麗だね」
「……なんだか、照れましテ、嬉しいですネ」
 瞼を閉じてはにかむエトヴァの様子に、ジェミと恭志郎もまた、小さく微笑んだ。

●フルコース!
 四人で囲んだテーブルの上に、分厚いメニューが広げられる。これでも厳選されているのだろうが、そのページ数はもはや尋常ではない。
「これだけあると、メニューだけでも割と楽しめるな」
「ケルベロスは皆キャラが濃いですものね」
 あんなケルベロスやこんなケルベロス、すぐに顔が思い浮かぶようなメニューを目で追いながら、サイガとアイヴォリーのページを捲る音がする。色々と連想されるものに手を止めながらのそれは、途切れ途切れでペースは遅い。
「どうでしょう、皆自分のメニューは見つけられましたかな?」
 ハガルの問いに、苦笑を交えて二人は首を横に振る。楽しいと言えば楽しいが、食事前に空腹を抱えながらやるには向いていない遊びだ。
「ティアンは見つけたぞ」
 ただ一人、いつの間にやらページを捲り切っていたティアンは、あれとこれとそれを、と早速注文を始める。
「は、早いですね」
「さすがでございますな」
「あ、じゃあ俺はこれも」
 そうすると、ほどなくして四人分の注文がテーブルに並んだ。
 「おお」とか「ほほう、なるほど」とか感嘆の声が上がる。その様子は四者四様、幸いと言うべきか、傾向もはっきり分かれていた。
 よし、それでは、と早速皆が手を伸ばす。ただ一人フォークを手にしたティアンは、そこで他のメンバーが手にしているのはカメラであると気が付いた。
「……」
 お、と一度目を開いて、彼女は無言でデジカメに持ち替える。
「ティアン……?」
「何だ、腹減ってたのか?」
「……せっかくですし写真におさめてしまいましょう!」
 反応はそれぞれ。食い意地ではなく文化の差である。SNSとかそういう。
 気を取り直して、テーブルの方へ視線を戻せば。
「それにしても、どの皿も個性的で魅力的……わたくしメニューは、間違いなくこれですね!」
 アイヴォリーはその中でも甘い香りを漂わせる、デザートの皿を指差した。褐色の肌に似合いのショコラムースの中には、甘酸っぱい苺か収められ、その白翼を模したふわふわのクリームが、お皿に二つ添えられている。
「確かに、見た目からしてピンと来る素晴らしい出来……。
 となると、拙者のはこれでしょうな、グリーン忍者サラダ!」
 一方で、ハガルが指差したのは、新鮮な野菜が盛り付けられたその皿だ。
「ニンジャサラダ」
「どの辺が?」
 復唱するティアンと首を傾げるサイガ。緑で忍者なら大体ハガルで良いだろうという認識は、どうやら共通ではあるらしいが。
「ご覧いただけますかこのチーズ! 忍者の持つ兵糧丸を表しているのですよ!」
「普通のモッツァレラチーズに見えます……」
 若干疑問を残しつつも、ノコッタメニューは残り二つ。その内から、ティアンはグラスの方を手に取った。
「ティアンのはこれだろう」
 磨かれたグラスには、エメラルドブルーのドリンクが注がれている。
「きれいですな、南国の海のようです!」
「ティアンのが海、ねえ」
「……ああ」
 摘まんだグラスを軽く揺らせば、碧のそれは打ち寄せる波を、故郷の海を思わせる。だからこれだ。そういうことにしよう。
 さて、三つ決まれば残りは一つ、だけれども。
「じゃあこの、煮込みハンバーグ、サイガのじゃないか?」
「そうなりますね……」
 うん? という目でアイヴォリーがそれを見下ろす。トマトソースの煮込みハンバーグ、ファミレスとかにありそうな、おこさまが喜んで選びそうな、アレに見える。
「これはサイガ殿のどのあたりのこう……要素を……?」
 どう見立てるか問われているような気持ちで、ハガルもまた首を傾げた。難易度が高い。
「……ハッ、実はハンバーグが大好物とか!?」
「そうそ。好物なのさ」
 正解、というように答えてはいるが、実際のところサイガはシンパシーを感じたものを直感で注文したので内容をよく読んでいない。
 いい加減食べようぜ、という彼の言葉に、一同はそれぞれ食器を手に持つ。
「本当にそれ、コラボメニューなのですか?」
「そっちこそ、随分とお上品な顔ぶれになっちまったじゃねぇか。肉食わなくて良いのかよ、ヴォリー」
「はっ、確かに、先にお肉を食べねば!」
 クロガネバーグにフォークが伸びて、なかなかやりますね、とアイヴォリーが唸る。ハガルサラダから野菜も摂取すれば、完璧なフルコースだ。
「皆のと合わせて肉! 菜! 甘味! そしてドリンク! バランスのいいメニューになりましたな!」
 ハガルの言うように、ばらばらではあるが揃えば丁度良い、そんな様子が、何だか嬉しい――と考えながらも、口をもぐもぐさせるのに忙しいティアンは無言でそれに頷いた。
「まあ実際良い組み合わせだよな、このサラダもヴォリーケーキの甘さ中和にぴったしだ」
 サラダに箸が伸びる回数の多いサイガを、ハガルは少し意外そうに見ながら――サイガの摘まんだそれを発見する。
「ハッ、この葉っぱ、手裏剣型にカットされています! スゴイ!!」
「ああ、ラッキーなんちゃら的な?」
 なるほどそんな遊び心が。
「ティアンのそれは……ああ、サラダに乗ってたチーズ?」
 アイヴォリーの問いに、口に物の収まったティアンがこくこくと頷く。兵糧丸もといチーズをハンバーグのトマトソースと共に。コラボ同士のコラボだって展開して良いはずだ。
 賑やかな食感、気を許した相手との食事ともなれば自然と箸は進むもの。アイヴォリーは微笑を浮かべた。
「ムースもわんこそばのようにいくらでも食べられそうですが!」
 ハガルのそれにもう一つ頷く。当然、デザートは別腹なので。

 結局おかわりまでしながら、テーブルのお皿が空になったところで、ティアンは満足気に息を吐いた。
「ごちそうさま」
「中々、分かってるメニューだったな」
 サイガの方も、今回の企画はお眼鏡にかなったようで。
「ティアン、綺麗に撮れました?」
 エメラルドブルーのドリンクを優雅に嗜みながら、アイヴォリーはティアンの手元のカメラを覗き込む。
 液晶に映ったのは、四つ並んだフルコースと、空になったお皿と。
「では早速、SNSにアップしましょう」
「ティアンはそういうのやってないな」
「ほほう、でしたら拙者が――」
 いつものようにわいわいと、楽しいときは過ぎていった。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月22日
難度:易しい
参加:11人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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