鳥さんが作ったかまくらを壊しに行こう!

作者:星垣えん

●ロマンっちゃあロマン
 一面にひろがる、白雪。
 訪れた大雪のおかげで、北海道某所の平地はすっかり銀世界になっていた。積もった雪はうず高く、その上を歩けば腰まで悠々と飲みこんでしまうほどである。
 そしてそんな雪の世界の中心に、大きなドームが建っていた。
 ぽっかり開いた半円状の口から中を覗いてみると、そこには――。
「かまくらサイッキョ」
 ビルシャナさんが布団に寝っ転がっていた。
 熱を放つ簡易暖炉の前に陣取り、静かに読書なぞしている鳥さん。
 ぱっと見、虚しすぎる絵面である。
 けれど鳥さんはぼっちinかまくらではなかった。
 彼の周りには、同じく布団に潜りこんだ何人もの信者がいたからである。雪室に10枚ぐらい布団が敷かれているさまは修学旅行の一幕に見えなくもない。
「かまくらってイイですよねー」
「なんかこう、入ってるだけで心が浮き立つというか……」
「自然素材でエコですしね。金もかからないし確かに家として最強ですね」
「でしょ?」
 スマホとか弄りながら話す信者たちへ、ドヤ顔を見せつける鳥さん。
「ひとつ暖房器具でも置いとけば意外と快適だし、じゅうぶん住める! これ以上なく冬を満喫できるし、しかも思い立ったときに気軽に引っ越しできる! これもうかまくらに住まない理由はないでしょ!」
「いやほんとほんと」
「普通に家ですよ。家」
「そう! かまくらはもはや家のレベル! それを世間に教えてやるために、まず俺たちでかまくら生活を始めよう!」
『おぉぉーー!!』
 鳥さんの号令に、力強い返事で応じる信者たち。
 どうやらこれから、過酷なかまくら生活をスタートさせる気みたいっすね!

●打ち壊しですよ
「かまくらで過ごすって……風呂とかどうするんだよ……」
「そこはまぁ、ほら、男連中っすから……」
「男でも風呂は入るだろ……」
 かまくら生活隊の発足を猟犬たちに告げるなり、栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)と黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はヘリポートからの景色を眺めつつひそひそと話し出した。
 今日はひどく寒い日だった。
 理弥もダンテも防寒具の襟をぎゅっと限界まで締めている。もうもうと白い息を吐く2人を眺めながら、猟犬たちは『信者たちは……死んだな』とか思った。
「いや、確かにこのまま夜を越せば死ぬかもしれないっす。けど彼らの目を覚ますことができれば、当たり前っすけど凍死とかはしないはずっすよ! だからいちおう助けてやってほしいっす!」
「まあ放っとくのは寝覚めが悪いもんな……」
 ダンテの言葉に、頷かずとも拒否もしない理弥。
 それから理弥は改めて信者たちについて説明してくれた。
 数は10人。『かまくらで過ごしたい』とか起きながらに寝言をほざく鳥さんのトーク術により、まんまとかまくらに寝床を敷く状態になっている。
「やっぱり信者の目は覚まさせてやらないと、だよな……」
「それはぜひお願いしたいっす……でもそう難しくもない話っすよ。たぶんかまくらを破壊したら正気に戻ると思うっすから。住居がなくなれば彼らも退去するしかないし、冷たい外気にさらされれば頭も冷えるっすからね」
「え、それでいいのか? というか壊していいのか?」
「いいっすよ。一戸建てぐらいの大きさがあるんで、手間はかかりそうっすけどね」
 意外そうに尋ねた理弥に、しかと頷くダンテ。
 実力行使であぶり出す――なんとシンプルな仕事、と猟犬たちは半ば感動した。
「信者たちがいなくなれば、あとはどうとでもなるっす。ビルシャナを倒して時間が余ってたら、皆さんで雪遊びでもしてきたらどうっすか?」
 そう言って、ダンテはヘリオンへと歩いてゆく。
 かくして、猟犬たちはかまくらをぶっ壊したり雪遊びをするために、はるばる北海道へと出発するのだった。


参加者
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
シデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)
犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ

●待ち時間って大変
 白雪の世界にそびえ立つ雪の家。
 それを見上げながら、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)はもこふわのマフラーを引き上げた。
「雪祭りの彫刻なら兎も角、家タイプのかまくら……情熱が羨まし、いえ何と言う労力の無駄遣いですかね」
「よくもまあ素人がこんなに大きなかまくらを作ることができたものです」
 ざくざく、と雪音を立てながら隣に立つカロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)。
「かまくらって元々は水神を祀るために作られたものが起源だそうですが……その水神様とやらがこれを見たら悲しみのあまり泣いてしまうかもしれませんねえ……」
「でも、鳥さんのほうが泣くことになりそうです?」
 やれやれ、と小さく首を振ったカロンに、マロンがすぐ横を指差す。
 その先には――入念に全身ストレッチする犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)と、クッソ重そうなガトリングガンを雪の上に下ろすリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)の姿があった。
「久々に好き放題できそうなお仕事じゃない。腕が鳴るわね」
「かまくらブレイク隊、出撃だよ」
 しゅしゅっ、と拳で風を切る志保。そんな主人の意気に呼応してか飛び回るソラマル(ウイングキャット)の下で、リリエッタは使い慣れない銃火器を黙々と点検している。
「……確かにビルシャナのほうが泣きを見ることになりそうです」
「ですー」
 同時に頷くカロンとマロン。
「あとは栗山さんと伊礼さんの用が終わるのを待つのみですか」
 2人の後ろに歩いてきたシデル・ユーイング(セクハラ撲滅・e31157)が、巨大かまくらを見て眼鏡をクイッ。ところでこの人、雪景色の中でビジネススーツだしヒール履いてるんですけど?
「いつ、話は終わるのでしょうかね……」
「わかりません」
「盛り上がってるのですー」
 かまくらの入り口から内部を覗くカロン、シデル、マロン。
 3人が見つめる雪ハウスの中では――。
「へー、そうやって作るんだー! すごいや……しっかりメモしておこっと!」
「しっかり勉強しておくんだぞ! そしてきみもかまくらに住むんだ!」
 メモ帳をひらいた栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)が、圧倒的小学生ムーヴで鳥さんから製法を聞き出していた。
 雪のない県で育った彼にとって、かまくらはめっちゃ憧れだったんや。
 そしてそんな彼と一緒に並んで、伊礼・慧子(花無き臺・e41144)もまた真剣な表情だった。
「家がないって、辛いですよね。私も一時期そうして過ごしていました。……なので、かまくらの作り方を聞けたのはとても心強いです!」
「ふふふ! でしょでしょ!」
 慧子のリアクションに気をよくする鳥。こうしていい感じに感謝してくれるもんだから鳥さんは調子に乗って喋りまくってくれた。
「ねぇねぇ、かまくらを大きくするにはどうしたらいいの?」
「ふっ、それはだな……」
「……まだ10分ぐらいはかかりそうですね」
「ゆっくり待ちますか」
「雪玉でも転がしとくのですー」
 あーこれ長いやつやで、と言わんばかりにかまくらを離れるシデルとカロン、マロン。
 ざくざく雪を踏んで歩いてゆく3人。
 その足元を、1頭の子ウサギがぴょこぴょこと横断した。
「むぃ~☆」
 楽しげに雪の上を駆け、その体に白雪を纏わせる子ウサギ。
 ……理弥たちの話が長すぎて、動物変身した七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)が時を忘れて遊んでるじゃねえかァァ!

●壊せや壊せ
「おじさん、ありがとー!」
「どういたしまして。あとお兄さんな」
 ツッコんでくる鳥さんの前で、ぱたりとメモ帳を閉じる理弥。
 ――が、心温まるシーンはここまでだった!
「だがしかし、かまくらに住むってのは防犯、防災的観点からもお勧めしないぜ!」
「ふぁっ!?」
「こ、こいつ変なスイッチを……」
「ポチッ!」
 目にも止まらぬ速さで掌を返した理弥が、信者が止める間もなく爆破スイッチを押下。色とりどりの爆発が巻き起こり、驚いた鳥さんは盛大に転げた。
「ば、ばか! かまくらに何かあったらどうする!」
「ああ。かまくらって安全じゃないから、何かがあるんだよな……」
「雪でできてるわけですし、やっぱり不安ですよね……ほらこうしたら溶けてしまいそうじゃないですか?」
「やめろォォ!!?」
 鳥さんの抗議に頷きつつ両手の爆破スイッチをぽちぽちする理弥。巻き起こる爆炎の中で慧子も容赦なくドラゴニックミラージュをぶっ放すし、鳥さんも信者も頭を抱えるしかありません。
「むぃ~☆」
 外で遊んでいた瑪璃瑠も爆音を聞いてぴくりと反応。人の姿になるや否や瑪璃瑠は両手に業火を灯しながらかまくらに突撃した。
「みんなでかまくら爆砕戦なんだよ! 特攻なんだよ!」
「全力で臨まないといけませんよね、ええ」
 散らされた瑪璃瑠の炎をその身に纏い、クイッと眼鏡を整えるシデル。
「セクハラ撲滅!!」
 分厚い雪の壁に全力でローキックを打ちこんだァ!
 元上司のセクハラを思い出しながらの1発にかまくらは揺れた。
 これ崩れんじゃね、ってぐらい盛大に揺れた。
「これは拳が呻りますね、ええ」
「やめてぇ! かまくらが崩れるぅぅ!」
「ていうか唸ってるの脚ぃぃ!!」
 スライディング土下座でシデルへ群がる鳥たち。しかし彼らがどれだけ脛を赤くしようともシデルのローキックは止まらない。かまくらさんが何をしたって言うんだ。
「くっ、こうなったら力ずくで止め……」
「誰! こんな場所にかまくらを作ったのは!!」
「あぁぁーっ!?」
 シデルに飛びかかろうと脚に力を溜めた鳥さんの背後で、盛大に砕け散る雪壁。ぱらぱらと雪片を舞わせて外から突入してきたのは――志保である。
「ここに住む許可取ってるのかしら?」
「え、いえ……」
「あーなら立ち退いてもらわないとね」
「すいません壊さないでぇぇーー!!」
 ムエタイ選手ばりの前蹴りで壁をぶち抜く志保。縋りつく鳥さんを払いのけてボコボコと穴を開けてゆく彼女の姿は、もう立派な地上げ屋さんだ。

 一方。
 猟犬たちの怒号と鳥たちの嗚咽が渦巻くかまくら内に対して、外は平和だった。
「ここの壁は薄いですね。あまり壊しても意味がなさそうです……崩すならこっちの厚い部分のほうがいいでしょうか」
 持参した赤外線センサーをかざして、かまくらの周りを周回するのはカロンだ。
 どこを攻撃すれば効率的なのか、という構造測定である。辺りを走っていたフォーマルハウト(ミミック)が転んで中身をぶちまけているのにも気づかず、カロンは粛々と強度を測っていた。
「……とりあえずこの程度でいいですかね」
「お疲れ様だよ」
 センサーを仕舞うカロンに、リリエッタが焚火を火かき棒で弄りながら労う。
 かまくら横で燃えるそれはリリエッタが持ちこんだ薪で熾したものである。身を切るような寒さでその火の温かさは完全にオアシス。カロンもつい近寄ってしまう。
「温まりますね……」
「お芋も焼いてるよ。どうせだから焼き芋も食べたいよね」
「それはとてもいいと思います」
 焚火を囲んでまったりするリリエッタとカロン。のんびりした時間を過ごしながら、2人はかまくら内から響く鳥と信者たちの悲鳴を聞くのだった。

「ほら見てください。新武器すごいんですよ、なぜか拳に属性が乗っていく……!」
「嬉々として火をちらつかせるんじゃないよ!」
「おい! さっさと出ないなら、この住処蹴り壊すわよ!」
「さ、寒いぃ……!」
 慧子がエレメンタルボルトによる炎を拳に宿し、志保がヒットすれば首が飛ぶレベルの回し蹴りをぶちかます。
 2人が開けた穴から吹きこむ寒風に、信者たちはぶるっと震えた。
「こんなんじゃ生きられへん……!」
「かまくら、確かに暖房器具を置けば暖かくなりますが、あくまでも娯楽用であることは変わらないのです」
 死体みてーに横たわる信者たちに、とことこと歩み寄るマロン。
「流石にお風呂の様に芯から温まる事は出来ませんし、雪や氷で出来ている以上は最終的に溶けるです」
「馬鹿な……」
「永遠には続かんというのか……!」
「『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り』とは有名な古典の一節ですが、全ての物は最終的に滅ぶ物です。それが早いか遅いかの違いだけなのです!」
『!!?』
 どどーん、と言いきったマロン。
 その言葉の無情は、冬の風に震える彼らにはあまりにも冷たかった……。

●崩落!
 壁が半分以上も消失したかまくらは、もはやただのハリボテだった。
「さくさくと崩せますね。こんな家に住むなんて私だったら御免こうむります」
「同感ですね。風も凌げないようでは家とは呼べません」
 小脇に置いた燃焼装置で温まったかまくらの壁を、シャベルでさくっとすくいとるカロン。下準備を終えてから怪力無双でスムーズに取り壊しを進める彼の言葉に頷きながら、シデルは地面を蹴りつけて着火。
「おや、融けていきますね。もう節分も越え、春が近づくばかりですか」
「そう……ですね……」
 グラインドファイアで温まるシデルにか細い声を返すのは、布団。
 すっかり外気を防げなくなったかまくらで過ごすべく、信者たちも鳥も布団に引きこもっていた。暖炉の近くならば辛うじて生きることはできる。
 もちろん快適ではない。
 こうしてわずかな暖にすがろうとしている今だって、頭上からはパラパラと雪の塊やら氷片やらが落ちてきているんですよね。
「兎は元気なんだよ! ガンガン壊しちゃうんだよ!」
 天井越しに聞こえるのは、屋根の上で元気に跳ね回る瑪璃瑠の声だ。
『兎とエアシューズの最強コンボなんだよ!』
 だとか言って外壁を軽やかに駆け登った瑪璃瑠は、野外でのかまくら潰しをフリーダムに楽しんでいました。具体的には獣撃拳でボコボコ殴り、グラインドファイアで全力で炙ったりしていました。
 で、ですね。
 そんなんしてたらもちろん雪の天板はひとたまりもないわけで――。
「あーっ!?」
「雪が落ちてくるーー!?」
 崩れた。どさどさと落ちてくる雪。鳥たちは布団を捨てて慌てて落下地点から離れたので大丈夫だったが、おかげで布団は無事死亡した模様。
 さらに、彼らに安息のときはない。
「いっっけー!!」
「のわぁぁーー!?」
 落ち着く暇もなく、四方の壁がぶち抜かれる。
 それぞれひらいた穴から見えるのは――日本刀を構えたマロンと、ガトリングガンを持ってちょっとふらつくリリエッタ、そしてなんか心苦しそうにしてる理弥だった。
「かまくらのお片づけなのです」
「むぅ、ちょっと重くて扱いづらいね」
(「こんだけ立派なの崩すのすげー忍びないけど……すまん!」)
 三者三様、しかし着実にかまくらを破壊する3人。マロンが狙いすました一撃で壁を穿てば、リリエッタのばらまく弾が雪に何百という孔を開け、理弥の蹴ったやかんは砲弾よろしく大穴をぶちぬく。
「に、逃げろぉぉ!?」
「中にいたら死ぬ! すぐ外に出るんだぁぁ!」
 わらわら、と燻り出された蜂のように外に退避する信者たち。
 命からがら逃げ延びた彼らが惜しむように振り返る中、内部に残っていた志保がガントレットから振動波を放射する。
 数秒もすれば、かまくらは崩れる氷山のように崩壊した。
「はい、解体完了。さっさと出ていってね」
 立ち昇る雪煙の中で、一仕事終えたと手を払う志保。
 信者たちは、肩を落とし、歩き出した。
「……帰ろう」
「かまくら住まいなんて、しょせん無理だったんや……」
「気を付けてお帰りください。これであったかいお風呂にでも入ってくださいね」
 とぼとぼ去ってゆく男たちの行列にスーパー銭湯の利用券を手渡しつつ、お見送りする慧子。その券で彼らの冷えた心身は温まることだろう。

 その後、鳥はすぐ死んだ。

●匠たち
 違法建造物も消えた、まっさらな雪の地面。
 その上にしゃがみこんだ瑪璃瑠とマロン、リリエッタはぺちぺちと雪を固めていた。
「おっきな雪うさぎを作るんだよ!」
「雪だるま、雪灯籠は鉄板なのですー」
「雪を触ってると手が冷えちゃうね。焼き芋で温めようかな。2人も焼き芋食べる?」
「食べるんだよ!」
「食べるのです!」
 リリエッタが差し出してくれたアルミホイルを見て、諸手をあげる瑪璃瑠とマロン。がさがさとひらけばほくほくの芋が現れて、触れる手も食べる口もほっこりと温まる。
 鳥を葬ったあとの、自由時間。
 それを使って猟犬たちは絶賛雪遊び中であった。
「ここに笠を乗せて……完成ですね」
 雪で作った小さな地蔵たちの頭に、藁編みの笠を乗せて手を合わせるのは慧子だ。そして彼女の前には丘のように小高くなった雪がある。
 ヒールしてみたけど家の姿には戻らなかった、鳥さんのかまくらだ。
「せめてもの供養ということで」
「巨大かまくら……惜しいものをなくしたよな」
「栗山さん。壁の厚さはこのぐらいでいいですか」
「あ、ああ! 大丈夫だぜ!」
 慧子の横で名残惜しそうな顔をしていた理弥が、雪を積んで固めているシデルの声に振り向いてメモ帳に目を落とす。
 と、そこへカロンと志保もやってくる。
「とりあえず雪を集めてきました。大きいのを作るなら量がいりますからね」
「私はお水汲んできました。より強く固めるなら、必要じゃないですか?」
「ありがとうな! よーしでっかいのを作るぜ!」
 運んできた巨大な雪玉を置くカロンと、バケツを下ろす志保に礼を言い、張りきって両手で雪をすくう理弥。
 鳥さんのかまくら製法を基にした理弥くんの挑戦が、始まった。

 で、数十分後。
「雪の空間の中、暖炉にあたっての読書も乙なもんだな……」
 雪の椅子に座り、簡易暖炉の前で読書に耽る理弥。
 かまくらは無事に完成していた。鳥さんが作ったほど巨大ではないが、それでも仲間たちが入ってゆったりできる分の広さはある。さすが猟犬の手腕というべきか。
 暖炉のそばでくつろいでたシデルは、ぐーっと体を伸ばした。
「頑張った甲斐がありましたね」
「かまくらの中で食べる焼き芋、何となく美味しい気がします」
「ええ、本当に……」
「甘くて美味しい……はい、ソラマルもお食べ」
 リリエッタに貰った焼き芋をもぐもぐと食べるカロンと慧子。志保が差し出した芋をぺろりと食べたソラマルも嬉しそうに雪室を飛び回る。
 そんな和やかなかまくらの脇には、小さなかまくらが2つ。
「雪うさぎさんのかまくらだよ! 口が入り口なんだよ!」
「意外と中は寒くならないんだね」
 雪うさぎ型と雪ナノナノ型のかまくらに収まった瑪璃瑠とリリエッタが、顔だけ出して言葉を交わす。力作の中で食べる焼き芋は当然ながら美味しかった。
 3つのかまくらが立ち、彩りの雪像が並ぶ。
 その風景を携帯のカメラに収めて、マロンはパシャリと撮影した。
「やはり冬は雪の中ですね」
 冬の理想の過ごし方、と題してSNSにアップして。
 マロンは小走りでかまくらに滑りこむのだった。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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