身も心も凍り付いた罪人、再び

作者:なちゅい


 深夜、北海道、旭川駅周辺。
 闇夜の中、ふわりと宙を泳ぎ回る3体の怪魚。
 それらは青白く光りながら空中を動いていくと軌跡が魔法陣となり、中央の地面から何かが現れる。
「………………」
 それは、氷を思わせる鎧を纏ったエインヘリアルだった。
 アスガルドの罪人だったこの男は、地球へと使い捨ての戦力として送り込まれ、ケルベロスに撃破されている。
 死神はそいつを……オーギュと呼ばれたエインヘリアルをサルベージしたのだ。
「あ……うああ……」
 だが、オーギュは生前とは異なり、知性すらも感じさせぬ戦闘的な姿をしており、時折呻く。
 ゆらりゆらりと宙を浮かぶ死神に連れられ、エインヘリアルは虚ろな表情を浮かべて歩きだすのである。


 ヘリポートでは、怪魚型死神によるエインヘリアルのサルベージ事件について、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が説明を始めている。
「現場は北海道旭川市だね。以前、ボクが依頼した罪人エインヘリアルが討伐された場所だよ」
 夜中に現れるこの怪魚型死神は、下級の存在で知性を持たない。
 ただ、それらはケルベロスが撃破した罪人エインヘリアルを変異強化した上で、サルベージする力を持っている。
 怪魚達は罪人エインヘリアルに周辺住民の虐殺を行わせ、グラビティ・チェインを補給させてからデスバレスへと持ち帰ろうとしている。
「市民を守る為にも死神を撃破して、サルベージされた罪人エインヘリアルに今度こそ引導を渡して欲しいんだ」

 現れる罪人エインヘリアルの名はオーギュ。全身、氷のような鎧を纏っており、2つの氷結輪を使って攻撃を行う。
「現場は皆が到着した地点で、周囲の避難は進んでいるよ」
 ただ、広範囲の避難を行ってしまうと、グラビティ・チェインを獲得できなくなるからか、死神がサルベージする場所や対象を変更する恐れがある。
 事件を阻止できなくなってしまう可能性がある為、戦闘区域外の避難は行われていない。
「ただ、皆が敗北するとかなりの被害が出てしまうよ」
 敗北は許されないということを念頭に置いて、戦いに当たりたい。
 なお、敵が劣勢になった場合、怪魚型死神はサルベージされた罪人エインヘリアルを撤退させようと動く。
 撤退を行うターンは、怪魚型死神もサルベージされた罪人エインヘリアルも行動ができない。
「この機を活かして、一方的に攻撃を仕掛けることもできるよ」
 怪魚型死神は下級である為か知能が低く、自分達が劣勢かどうかの判断がうまくできないらしい。
 これを利用して、ケルベロスが演技をすることで、相手に戦況の優劣を惑わせる事ができる。
 ケルベロスが劣勢に陥った場合に相手の隙を作ることもできるし、敵を敢えて撤退に転じさせて総攻撃を仕掛けることもできる。
 チームの作戦にもよるだろうが、この性質を上手く利用して罪人エインヘリアルを撃破してしまいたい。

 また、エインヘリアルに絞ってサルベージしているこの事件に関連して、霧島・絶奈(暗き獣・e04612)がエインヘリアルと死神との間に、なんらかの密約がある可能性を危惧していた。
「死神の戦力増強を許すわけにはいかないわね」
 ユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)もこの1件のサポートに回る様子だ。
 なお、無事に事件が解決すれば、屋台を営む近隣住民が旭川ラーメンを振舞ってくれるので、頑張って対処に当たりたい。
「それでは、よろしく頼んだよ」
 改めて、リーゼリットはケルベロス達へとそう願い、説明を締めくくったのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)
浜本・英世(ドクター風・e34862)
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)
エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)
伊礼・慧子(花無き臺・e41144)
グラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)
ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)

■リプレイ


 夜中、冬の北海道を訪れたケルベロス一行。
 メンバー達は冬の寒さ以上に、色々気になることがあったようで。
「どうしよう……ちょっと場違いだったかもしれない……」
 勤勉な黒髪の少女、伊礼・慧子(花無き臺・e41144)は個性のなさが悩み。まして、同伴しているメンバーの強さもあって、少しばかり臆してしまっていた。
 そんな彼女を尻目に、現場へと急ぐメンバー達は。
「また死神はこそこそこそこそと……」
 黒い太陽と悪魔の名を併せ持つアルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の白烏・e39784)は、暗躍する死神の一報に顔をしかめてしまう。
 そんな実弟の姿に、薄氷色の髪に黄金色の瞳のラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)は穏やかな微笑みを浮かべる。
「……密約がまだ生きているのですか」
 絶えず笑みを浮かべる霧島・絶奈(暗き獣・e04612)が状況について語る。
 怪魚型死神は、一度受けた命令を律義に守っているだけなのか、それとも、密約自体がまだ生きており、一連の謀略は終わっていないのか……。
「……願わくば、前者で有って欲しいものです」
「生前の姿を存じませんが、いずれにせよ味方が密約を結んでいるなど何とも惨い話です」
 それを聞いていた慧子は、せめてこのエインヘリアルを安らかに眠らせて上げられればと考えるのだが……。
「わたしたちが倒せば倒すほど、死神のサルベージ対象が増えちゃうってことは……」
 そこで、アンティーク趣味な服装の銀髪少女、エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)は小さく唸って。
「いつか、サルベージで再建された白百合騎士団と激突する日が来るのかな……?」
 そうならないことを、メンバー達は願うばかりである。
「まぁ、何をしてきたところで阻止してやるがな」
「とまれ、今は目の前の脅威を退けましょう」
 アルシエルの言葉に皆頷いたところで、前方に敵集団が見えてきたこともあり、絶奈が仲間達へとその討伐を促すのである。


 旭川駅周辺で、浮かぶ3体の怪魚に連れられていたのは、氷のような鎧を纏うエインヘリアル、オーギュだ。
「うああ……」
 淡い緑色の髪と瞳を持つグラニテ・ジョグラール(多彩鮮やかに・e79264)は生前のこの敵の討伐に参加している。
「なんだか、なー……」
 それだけに、無理やり戦わさせられてる姿に、彼女は敵ながら思うことがあったようだ。
 エマが射撃で狙いやすいポジションを取る中、銀髪眼鏡の浜本・英世(ドクター風・e34862)は不遜な態度で相手を見据えて。
「オーギュくんに個人的な因縁はないが、戦士としては随分と落ちぶれた姿に見えるね」
 しかしながら、虚ろな瞳のエインヘリアルが氷結輪を手にすると、メンバー達は強化された力を肌で感じて。
「……強化されても、氷の扱いはやっぱり負けないからなー!」
 すぐに眠らせてやると、グラニテが気合を入れる。
「お久しぶりですのにー、積もる話も無く恐縮ですがー」
 同じく、前回の討伐劇に参加したおしとやかな態度の黒髪女性、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)は頭部のサークレットを展開させて。
「此度も切り伏せさせていただきますのー」
 金色の瞳を開眼させ、彼女は向かい来る敵へと狂笑を浮かべるのである。


 確実に倒さねばならないのは、サルベージされたエインヘリアル、オーギュ。
 そいつは高速回転させる氷結輪から発生させた冷気の嵐を、前線のケルベロス達へと浴びせかけてくる。
「思ったより、ずっと痛いぞー!?」
 嵐を浴びたグラニテはやや大仰な仕草で叫ぶ。
 死神は自分達が劣勢になると、オーギュをすぐさま撤退させようと動くらしい。
 この為、ケルベロス達は出来る限り敵を引き留めようと、自分達が劣勢を装いながらの交戦に臨んでいた。
「これはちょっと、あんまり耐えられないかもだー……!」
 グラニテは引き続き演技をしつつ、『ブラッドスター』の歌詞を旋律に乗せて紡ぎ、凍った自分達の体を即座に解凍しようとしていく。
 比較的、敵が万全なこともあり、アルシエルは冥府深層の冷気を帯びた手刀を繰り出し、まずは邪魔な死神の排除をと叩き斬っていく。
「あまりダメージが通ってねぇな」
 手応えは十分あったのだが、アルシエルもまた顔を引きつらせたような演技をして劣勢を装う。
 続き、ラグエルは飛び出して、地面にケルベロスチェインを這わせ、魔方陣を描く。
「兄――」
 呼びかけようとして止めた弟、アルシエルをラグエルは可愛いなぁと感じながらもつい口に出してしまうが、剣戟音で聞こえなかったのは幸いだったかもしれない。
 堪えるメンバー達の後ろから、ジャマーとなるフラッタリーが獣染みた動きでオーギュを狙う。
 しかしながら、ゆらりと壁となって立ち塞がってきた怪魚型死神3体をフラッタリーは空中ジャンプで飛び越えて。
「掲ゲ摩セウ、煌々ト。種子ヨリ紡ギ出シtAル絢爛ニテ、全テgA解カレ綻ビマスヨウ」
 フラッタリーはそれらを空中ジャンプで飛び越え、白い繊手の中に地獄の炎の火種を握りしめ、更に力を封入し注ぎ込む。
「紗ァ、貴方ヘ業火ノ花束ヲ!!」
 溜めた封炎を宿す野干吼を、フラッタリーは直接オーギュへと叩き込み、その体を燃え上がらせていく。
(「ともかく、不利な感じを出せればいいのかな」)
 演技が得意でないと自覚する英世は戸惑いながらも、バスターライフルを構える。
(「及ばずながら、やってみよう」)
 そう考え、英世は凍結光線を発射していく。
 英世の狙いは、死神の手駒とされかねないオーギュだったが、生憎と死神が盾となって遮られてしまう。
「やれやれ、これでは肝心の相手になかなか手が出せないね」
 ここは死神に阻まれたこともあり、英世は本音交じりに攻めあぐねている感を演出できていたようだ。
 エマもまた、オーギュを狙って竜鎚から砲弾を叩き込もうとしたが、こちらも死神に遮られてしまって。
「エインヘリアルまで弾が届かないよー!」
 普段、楽観的なエマだが、ここは苛立ち気味なボヤキを口にしていた。
 続けて絶奈がオーギュへと轟砲を叩き込み、ダメージを与えることはできた。
 さらに、彼女のテレビウムが凶器で殴り掛かって追撃してくれる。
 決して罪人エリンへリアル自体は弱い相手ではないものの。
 これまでの戦闘経験から、このペースを維持していれば、倒せはするだろうと慧子は感じる。
 ただ、それは逃げられることなく戦い続けれられればの話。
 彼女は余裕があると勘づかれぬよう、まずは前線メンバーの為にオウガ粒子を飛ばして強化に当たっていく。
 その慧子やグラニテの希望もあり、ユリア・フランチェスカ(慈愛の癒し手・en0009)が回復役となり、まずは雷の壁を前方へと張り巡らしてエンチャントに当たっていた。
 序盤は順調な立ち上がりといったところ。
 ケルベロス一行は苦境を演出しながらも、敵を攻め続けるのである。


 怪魚型死神に邪魔されながらも、ケルベロスはその後ろから氷の魔法が込められた氷結輪を飛ばしてくる罪人エインヘリアル、オーギュの討伐を続ける。
 オーギュが本当に弱り、一気に攻め落とせる状況となるまでは、一行は不利を演出しながらも立ち回ることとなる。
「いたたー、倒せ……て、ないなー……」
 死神に食いつかれてグラニテは無表情な大げさに痛がり、時折仲間を見ながら訴える。
「まだまだ敵が残ってる……退いた方が良くないかー……?」
 そうは言いながらも、グラニテは『属性』の力を宿した「ネジ」の力で仲間の護りを強化することも忘れない。
「これは守りを破る前に、此方が危うい、かな……?」
 グラニテの言葉を受け、英世もまた死神に噛みつかれて悲壮感を醸し出す。
 攻撃となれば、英世もかなり死神が鬱陶しそうな態度で。
「離れてもらえないかな?」
 追い払うように英世はエネルギー光弾を発し、死神を牽制しつつもオーギュを攻め立てていく。
 先程の攻撃で相手に炎を付与できていたフラッタリー。
 狂ったような所作を続ける彼女は自らを地獄の炎で覆い、後は相手を睨めつけながらもオウガ粒子を振りまく。
 しかしながら、彼女は虎視眈々と相手の隙を窺う。
 前線のラグエルはオーギュの氷結輪を受け続け、自身を中心に気力を撃ち出して癒しに当たる。
 これが自分ならいいのだが、ことアルシエルに当たろうものならラグエルもブチ切れそうになってしまうが、そこはグッと堪えて交戦を続けていたようだ。
 そんな兄ラグエルの心を知ってか知らずか、アルシエルは時折浴びせかかる「魔法の霜」に焦っているようにみせかけながら応戦して、アイスエルフにも似た力を行使し、氷の斬撃を浴びせかける。
 怪魚を倒して追い込んでしまわぬよう、アルシエルは敵の状態を見て単体攻撃に切り替えていた。
「強敵です……今治します!」
 こんなところで自分の卑屈な部分が役に立つなんて。
 驚く慧子は前衛メンバーにオウガ粒子、中、後衛に魔法の木の葉で強化に当たる。
 この場には、慧子に誘われ、サポート要員として参加したディミックの姿もある。
 彼はできるだけ死神に存在を感知されぬよう、メインで立ち回るメンバーの回復と強化の補佐へと陰から動く。
 また、ユリアも凍らされたメンバーの状態回復を行っている。
 これだけ回復が手厚い状況もあり、ケルベロス達の実状としては全くもって危険なメンバーはいない。
 細長い筒状の発射器を生成していたエマは、死神をすり抜けてオーギュへと弾丸を炸裂させる。
 着弾と同時に弾丸は爆発し、濃い煙を巻き起こす。
「やったか!?」
 しかしながら、煙が晴れた後、さほど堪えた様子もなく、虚ろな視線をこちらに向ける敵の姿があって。
「う、ああっ……」
 オーギュはなおも、両手に握る氷結輪をこちらへと飛ばしてこようとしてくる。
「ちょっと、あいつ頑丈すぎ!」
「……拙いですね」
 焦る素振りも見せるエマに合わせ、絶奈は仲間と共に自然に見えるように苦戦を演じながらも、ファミリアーを飛ばしてオーギュを狙う。
 ただ、ここでも身を盾にした死神が邪魔をしたのだが、そいつがついに体力が付き、爆ぜ飛ぶようにその場から消え去ってしまう。
 そろそろ、戦いも佳境に入ると判断するメンバー達。
 残る死神がオーギュを撤退させるべく、魔空回廊を呼び寄せたこともあり、一行は演技を止めて全力でエインヘリアルの逃走阻止に動く。


 魔空回廊を呼び寄せた怪魚型死神達がエインヘリアルを招くと、オーギュも氷結輪を下げ、ゆらりとそちらへと歩いていく。
 その機を狙っていたフラッタリーは口元を吊り上げ、燃え上がる野干吼をオーギュへと叩き込んでいった。
「総攻撃に切り替えだー!」
 撤退に転じた相手を確実に叩くべく、グラニテは月白絵具で懐かしき極寒の地をアレンジして再現し、オーギュに凍てつく寒さを実感させる。
「逃がさないよ」
 狩人の魂を呼び起こしたラグエルは己の魂を削って作った氷の弓から矢を射放ち、オーギュの体を穿つ。
 畳みかけるケルベロス達。
「とりあえず、開いてみようか――」
 英世は多数の刃物を敵の周囲に展開して一気にその体を解体する勢いで切り刻み、傷を大きく抉っていく。
 絶奈のテレビウムが画面から光を放ってオーギュの気を引き、主の絶奈が追撃をかけて。
「……今、此処に顕れ出でよ、生命の根源にして我が原点の至宝」
 垣間見せる狂的な笑顔こそが彼女の本質。
「かつて、何処かの世界で在り得た可能性。『銀の雨の物語』が紡ぐ生命賛歌の力よ」
 演出もあって、なかなか戦いに専念できなかった絶奈だが、このひと時は本気で攻撃できる。
 この地の人々を救う為、絶奈は召喚した『生命の根源』を思わせる『槍』をオーギュへと打ち込み、その体を穿つ。
「お、おおっ……」
 よろけるエインヘリアルだが、まだ体力を残す。
 ユリアが時空凍結弾を発射し、ディミックが阿頼耶識から光を放ってその動きを止めようとする。
「撤退は、させません」
 さらに、古代語を詠唱していた慧子が石化光線を発射すると、オーギュが体を硬直させる。
 そこへ、エマがドラゴニックハンマーを携え、突撃してくる。
「変異強化も進化の一種というなら、その進化可能性もろともこの一撃で打ち砕いてあげるんだから!」
 彼女は大きくハンマーを振り被り、超重の一撃をオーギュへと叩き込む。
「これでも食らえ、なんだよ!」
「ぐ、おおっ……」
 苦しむエインヘリアルだが、持ち前のタフさと本能で堪え、踏みとどまってしまうが、アルシエルがさらに妖精剣「Spiritus Glaciei」を突き出して。
「もう演技はいらねぇ。逃がすかよ」
 幻の薔薇を舞わせ、アルシエル敵の体を切り刻む。
「おぉ、ぐおぉぉ……」
 薔薇の花びらと共に、オーギュの仮初の命もまた消え去り、その体は溶けるように地面へと崩れ落ちていった。

 後は、残る怪魚型死神討伐。
 再び、フラッタリーが死神目がけて振るう野干吼より爆発を撃ち込み、絶奈が放った燃え盛る火の玉による爆発で、残り2体の死神もそれぞれ爆ぜ飛んでしまったのだった。


 無事、デウスエクスを全て撃破して。
 メンバー達は手早く戦場跡となった旭川駅近辺を修繕作業を弾得る。
 慧子が魔法の木の葉を纏わせ、他者向けヒールを持たないエマはサポートに当たっていく。
 同じく、手作業での片づけを行うアルシエルに、道路の破壊箇所に気力を撃ちだしていたラグエルが近づいて。
「この後、皆でラーメンを食べに行くけれど、どうだい?」
「ええっ、……いいけど」
 ラグエルの誘いに嫌そうな表情をするアルシエルではあったが、それでもすぐに了承はしていたようだった。

 その作業の間に、町の人達戻ってきていたようで、駅前には屋台を引っ提げたおじさんがケルベロス達へとラーメンを振舞ってくれる。
 メンバー達は手早く旭川ラーメンを作ってくれたおじさんから皿を受け取って。
「おいしそうだー……!  ありがとー!」
 礼を告げるグラニテ。その傍では、普段の雰囲気に戻ったフラッタリーがこれでもかと胡椒と一味唐辛子を山盛りにして混ぜ込んでおり、ユリアが苦笑してしまっていた。
「……さて、美味しいラーメンを頂きましょう」
 絶奈は早速、仲間と共に頂くことにして縮れ面をすすっていく。
 ただ、アイスエルフのグラニテは熱そうだと感じて、氷の吐息でふーふーして麺を覚まして食していた。
「冬の北海道がすごく寒いだけに、旭川ラーメンの温かさが際立つね」
 エマも本場の味を噛み締め、じっくりと堪能する。同伴していた英世も、その味にほうと唸っていたようだった。
 中華麺が好物とのことで、慧子も旭川ラーメンは楽しみにしていて。
「スープの香りとコクが深いです。これがWスープなのですね……そして麺によく絡む……っ」
 彼女はサポート参加のディミックと共に、魚介と豚骨に鶏ガラなどを合わせたWスープの紹介など、ご当地グルメの紹介を行う。
 定命化して間もないグランドロンのディミックは地球のグルメを興味深そうに見つめ、口にしていく。
 そんな知人の姿に慧子はほっこりしながらも、濃厚なスープに絡めた麺を美味しそうに食し、存分に旭川ラーメンの味を楽しんでいたのである。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。