冥闇の灯

作者:崎田航輝

 星明かりを深い夜陰が隠してしまうような夜。
 いつもより風が冷たい温度を孕み、いつもより世界が暗く見える。それでも見回す眺めは自然の色と匂いを抱く明媚な景色だった──けれど。
(「……何かが、いる」)
 ひとけのない冥闇で、ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)は立ち止まって予感にも似た感覚を抱いていた。
 胸騒ぎ、というものは滅多に覚えるものではない。冷静に怜悧に、ビーツーは常から相棒の箱竜、ボクスと共に数多の脅威を乗り越えてきた。
 だから正体不明の何かがどこかにいると感じ、それに皮膚が粟立つという感触は、平素味わうものではなくて。鋭い眼光に、僅かにだけビーツーは感情を顕にしていた。
 そしてその予感は、すぐに形となって現れる。
 ボクスが不意に苦しむような身じろぎで違和感を訴え、彼方を見やった。
 ビーツーも同時に視線を同じ方向へやると──夜の中に、暗色の揺らめきを漂わす影が出現している。
 地を咬む巨大な爪、鋭い牙、風に靡く短い体毛。
 ゆっくりと歩んで来るそれは始め、虎のような獣にも見えた。
 けれど濃密なまでの気配と、躰を覆う斑の模様がそれを否定する。
 ──病魔。
「……!」
 ビーツーはその姿を見つめ、はっとして微かに目を見開く。
 その瞬間、虎の如き病魔は飛びかかり──ビーツーとボクスへ殺意の牙を剥いた。

「ビーツー・タイトさんが、デウスエクスに襲撃されることが判りました」
 夜半のヘリポート。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロスへ説明を始めていた。
「予知された未来はまだ訪れてはいません。それでも一刻の猶予もないのが事実です」
 ビーツーは既に現場にいる状態。
 こちらからの連絡は繋がらず、敵出現を防ぐ事もできないため、一対一で戦闘が始まるところまでは覆しようがないだろう。
「それでも、今からビーツーさんの元へ向かい加勢することは可能です」
 時間の遅れは多少出てしまうけれど、充分にその命を救うことはできる。だから皆さんの力を貸してください、と言った。
 現場は自然の景色が広がる野原。
 都会から遠くはないが、辺りは無人状態。一般人の流入に関しては心配する必要はないだろう。
「皆さんはヘリオンで現場に到着後、戦闘に入ることに注力して下さい」
 夜間ではあるが、周辺は静寂。ビーツーを発見することは難しくないはずだ。
「敵は病魔のようです」
 その正体や目的に不明な点はあるが──放置しておけばビーツーの命が危険であることだけは確かだろう。
 故にこそ確実な救出が必要だ。
「ビーツーさんを助け出し、敵を倒すために。さあ、急ぎましょう」


参加者
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)
ニケ・セン(六花ノ空・e02547)
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
輝島・華(夢見花・e11960)
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)

■リプレイ

●冥夜
 鉛のような暗闇の中では、風までもが何処か重い。
 膚に纏わり付く空気には濃密な死の気配までもが感じられるから──輝島・華(夢見花・e11960)は一刻も疾くと戦場へ駆けていた。
「この辺りのはずですけれど……」
 未だその姿も見えないが、苦境に在ることだけは判る。だからこそ早く駆けつけて支えになってあげたいと、心は急いていた。
「そうだね。……あ、見えたよ」
 と、銀糸の髪を揺らして頷きながら、ニケ・セン(六花ノ空・e02547)は気づいたように灯りを前へ掲げる。
 宵色の瞳を向ける、そのずっと先──遠方に灯る明かりが見えていた。
 それは違いなく、そこに探す仲間がいる証左。
 程なく対峙する二つの影が見えてくれば、皆は頷き合う。その希望を繋ごうと、華は奔る脚に一層の力を込めた。
「今向かいます。どうか無事でいて下さい……!」

 未だ僅かに浅い呼吸をしている相棒の箱竜から、ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)は視線を戻した。
「──つまりは貴殿が、俺達の目標であったということか」
 眼前の病魔、ゲシェクティガルを見据えながら呟く。
 気配がした時点からよもやとは思っていた。
 こうして目にして、それは確信に変わっている。
 その心に応えるようにボクスも一つ鳴き声を返すから──ビーツーは戦闘態勢。素早く光源を点灯させ、ボクスを守るよう前に立った。
 そのまま、飛びかかってきた病魔の爪撃を受け止めて、至近でその相貌を見つめる。
「自力で具現化したか、誰かに引きずり出されたか……どちらにせよ、これ以上ボクスを傷つけさせるわけにはいかない」
 直後に杖に輝かせる光は、曲がらぬ意志の顕れだ。
 救うべきものを救う。助けるべきものを助ける。
 今までそれを共にやってきたからこそ。
「俺が倒れるまで、お相手願おうか……!」
 強烈な閃光を発散させて病魔を後退させると、その輝きで自身の傷も吹き飛ばす。直後にボクスも白橙の治癒光を注いでくれていた。
 だが病魔は獣の如く吼え、一層の戦意を顕にする。
 竜虎相搏つ──天敵の竜を蝕み殺そうとするように。烈しい激憤までもを交えながら、病の気をばら撒いてきた。
 瞬間、齎されるのは強烈な倦怠感。ビーツーは一瞬朦朧として、膝をつく。
「……」
 心は揺らがない。だが生半可な相手ではないことを、身を以て知らされる思いだった。
 仮にこの状態が続けば、勝利はきっと遠のく、と。
 だが、ビーツーはこれでいいとも思っている。
 自分が如何に苦しもうとも、救援が来るまで耐えられればよかったのだから。
「──ビーツーさん! ボクスちゃん」
 そうして病魔が次撃を狙おうとしたその時──明朗な声が響き渡る。
 夜闇を裂くように、翼で宙を滑り降りて。光を纏った拳をぐるぐると回して勢いをつける火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)。
「この拳でどかーんと、お助けなんだよ!」
 髪と花を風に踊らせて、叩き込む一撃は『ぐるぐるぱんち』。単純にして苛烈な一撃が病魔を大きく下がらせた。
 虎は唸りを零しながら、再度踏み寄ろうとする。
 が、そこへ華のライドキャリバー、ブルームが加速。花咲く箒が翔けるよう、美しい躰を奔らせてスピン攻撃を見舞っていた。
「ビーツー兄様、ボクスさん、大丈夫ですか……!?」
「……ああ。来てくれたのだな」
 ビーツーが応えて見回すと、その言葉に頷いて舞い降りるのはフィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)。
「勿論だ。今すぐに、治療を行うぞ」
 優美な白銀の翼を羽ばたかせて傍に着地すると、肺に息を溜め込んで。直後、響かせるのは『戦狼咆哮』。
 空気を震わせて魂までもに強く伝わるそれは、自身と対象を戦神の使いに見立てて共鳴させる声。猛々しい力で傷を消し飛ばし勇猛な力を与えていく。
 そこへ美しい歌声を調和させるのは白雪色の少女。
『──』
 髪を留める美しいバレッタを指先で触れながら、宵風に旋律を乗せるルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)。邪の気に抗するだけの力を与えるよう、清廉で芯の強い声音で加護を齎していく。
「これで護りも、ひとまず不安はないはずだ」
「傷も残ってはいないようだな」
 元より後れなんぞ取ってはいないと思っていたがね、と。ビーツーへ淡々とした声音を向けるのは櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)。
「久しぶりかね。息災だったか、なんて戦場で聞くのも笑えるが……問題はなさそうだ」
「皆のお陰だ。済まない」
 ビーツーが頷いて視線を巡らせれば、いいや、と首を振ってみせるのは渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)。ぐっと拳を握ると快闊に言った。
「ビーツーさんとボクスは大切な友人だ。こんな時こそ、いつも世話になってる礼を返さなきゃな」
 故にこそ病魔に渡すわけにはいかない、と瞳を敵へ向ける。
 瘴気を漂わすその虎は、集まった番犬達を見回していた。
 そこにあるのはより深い敵意。
 だが、千梨は怯む様子もなく変わらぬ表情で杖に霊気を湛える。
「しかし、突然の襲撃とは穏やかでないなあ。まあ、病気なんてのは常に理不尽なモノかも知れないが」
 だとすれば此方が遠慮する道理もない、と。
 淡い輝きを棚引かせ地を蹴ると、挨拶代わりの一撃。癒えぬ痛みを己で味わうのも一興だろう、と治癒力を削ぐ殴打を見舞った。
 その間に、数汰は魔法矢を撃って華へ破魔の力を与える。その輝きを以て、華は夜空へ跳躍。体を翻して鮮やかな蹴り落としを叩き込んだ。
 病魔は微かによろめきながらも、前線を突っ切ってボクスを狙う。が、そこへ立ち塞がるのがニケのミミック。
 和紙で作られた和柄の桐箱にも似た躰から、美しい簪をばら撒いて。灯りに煌めく色彩に、虎が一瞬惑ったその隙に──ニケ自身がひらりと跳んでいた。
「させないよ」
 声音は緩やかに、瞳は冷静沈着に。鋭い夜風を吹かすよう、鮮烈な蹴撃を加えていく。

●病魔
 地を滑って下がった虎は、それでも喉を低く鳴らし反撃の機会を窺っていた。
 数汰はその姿を見つめ軽く息をつく。
「それにしても、ケルベロスを闇討ちとはアグレッシブな病魔も居たものだ。時期が時期だけに……病魔全体が活性化しているのか?」
「……わたしは病魔を相手取るのはあまり経験がないが」
 と、ルイーゼも呟きその虎を見据えた。
「不思議な敵だ。毒々しさのようなものを、感じる」
「確かに見れば見るほど、不気味な病魔だ」
 フィストも銀の瞳を細めて、声を零している。
「あれが、ドラゴニアの……ドラゴンの本星の病魔なのか」
「──少なくとも。ボクスは、あれに長く苦しめられてきた」
 だからこそ、と。ビーツーは真っ直ぐに対峙して退かない。
 故にフィストも頷き、ボクスへ視線をやった。
「お前のサポートはしっかりこなそう。……お前とビーツーと共に死神にサルベージされたウェアライダーと戦ったあの時とは違う事を、しっかりと証明したいしな」
 ボクスがそれに返事の鳴き声を聞かせると、千梨もちらりとビーツーへ目線を送り、微かに笑った。
「俺は事情は知らんし、助太刀なんて柄でもないが。まあ……猫の手よりはマシそうな奴が来たと思って、適当に使ってやってくれ」
「……感謝する」
 ビーツーが応え敵へ向き直れば、華も心は同じく。
「これだけ頼もしい方々がいるのですもの、きっと大丈夫です。きちんと倒して──この因果を断ち切りましょう!」
「もちろんだよ! ビーツーさんと、なによりボクスちゃんのため!」
 ひなみくが飴型の槍をぎゅっと握って気合を入れると、数汰は頷きながら、長大なライフルをくるりと構えていた。
「ああ。油断せず全力で、な」
 水平に向けた銃身は、既に病魔を捉えている。刹那、闇にも瘴気にも惑わされず、白色に燿く光の奔流で急所を穿っていた。
 氷片を散らせながらも、病魔は横に逸れて反撃を狙う。が、華が既に杖へ眩い雷光を凝集していた。
「そこまでです」
 瞬間、突き出した杖先から雷華が弾け飛ぶ。夜闇を煌々と照らす程の瞬きが、無数の火花を咲かせて虎の躰を灼いていった。
 迸る音色の中で、ルイーゼは短く静かな旋律を口遊む。
 その声音に星明かりが誘われて降りてくると──ルイーゼはそれを蹴り出すことで光の衝撃を重ねていた。
 病魔も再度病の気を放出してくる。が、それが前衛を深く蝕む前に、千梨は淡く温かな煌きを漂わせていた。
「すぐに、濯うさ」
 広がる柔らかな光は、仄かに暖かく仄かに優しい。身をいだくように触れた温度が、不調にも負けぬだけの力を仲間へ宿していく。
「後は、任せる」
「判った」
 フィストは素早く剣を掲げ、そこへ加護を降ろしていた。星空が顕れたと空目する程の光粒が舞うと、病の気が消え失せて傷も癒えていく。
 仲間が万全と見れば、ひなみくは一層心を奮わせて敵へ翔んでいた。
「病魔で闇討ちでジャマーとか性格悪いのオンパレードなんだよ! 許せないんだよ!」
 だから正々堂々ぶっ倒す、と。
 襲撃も戦いで受けた傷も、何もかもを返してみせるように──真正面から加速すると一閃。稲妻を伴った強烈な刺突で虎の腹を貫いた。
「今だよ!」
「ああ」
 と、頷くフィストが横を向けば──側から翼猫のテラが飛翔。リングを飛ばして衝撃を畳み掛ける。
 瘴気を飛び散らせながら吹き飛ぶ病魔へ、ニケも連撃。夜に線を描くよう、光り輝く射撃で膚を破っていく。
 倒れ込む虎は、這い上がるように爪を地に刺していた。次に響くのは、高らかな咆哮。
『──Baxter……!』
 それは激憤か、或いは苦悶の顕れか。
 ビーツーは僅かにだけ目を開いて、それを呼びかけだと直感していた。傍らのこの箱竜の本当の名を、あの敵は呼んでいるのだと。
 ニケはそんなビーツーの様子に、おやと気づいて。それからゆるりと声を向ける。
「大丈夫かい」
「……ああ、何でもない」
 ビーツーはそうとだけ言うと、相棒に短く視線を送った。
「“ボクス”、行くぞ」
 飛び立つボクスは、敵の吼え声を中断させるよう、灼熱を纏った体当たりを放つ。そこへビーツーも濃密な雷で一撃、炸裂する衝撃を喰らわせていた。

●清風
 獣を象った病魔にも、綻びが見えていた。
 瘴気は風に溶け、躰の傷は深まり、斑は不安定に明滅して。その存在自体が弱まりつつあることを如実に顕している。
 それでも虎は蹂躙することを諦めぬように自己再生を試みた、が。
「無駄だからねっ!」
 その一瞬後にはひなみくが接近。一歩引く病魔へ羽ばたき迫り、裂帛の拳で加護を粉砕してみせた。
 同時、千梨は御業で紡いだ半透明の糸を手繰る。
 ふと見ると、ビーツーの傍らでボクスは凛然としていた。
(「言葉を繰れぬ身でも、伝わる想いはあるものだ」)
 人の意志と心の美しさを、密かに尊んで止まぬ千梨は──それと変わらぬ志をその箱竜にもまた感じる。
 だから小さな竜が、大きな決意を背負うなら。
「その背を支える光栄に与ろう」
 刹那、巡らす糸の舞いは『絡繰レ無』。虎の周囲に巡るそれは、音色と耀きを踊らせて美しく、けれど鋭く巨体を絡め取った。
 その間隙に、フィストは咆哮を劈かせてボクスの力を押し上げている。
 それが戦いの終わりへのカウントダウン。
「皆も、今の内だ」
「よし」
 ルイーゼは青硝子の万年筆を手に取ると、銀河を色にするようにグラフィティを描き、ボクスに一層の戦闘力を与えた。
 ならばとニケも、行使するのは『朱奪』。
「さぁさぁお立ち会いってね」
 汝、朱き者、その力を示せ、と。古代語の詠唱唄を響かせれば朱き鎖の影がボクスの影へと伸びて力を注ぎ込む。
 心置きなく決着がつけられますように、と。
 そのニケの思いに同じく、華も魂を鼓舞する雷光をボクスへ与えていた。
「どうか因縁を断ち切れますよう……」
 病魔はその間も、足掻くように身じろぐ。が、そこへ数汰が銃口を向けていた。
「思い通りには、ならないさ」
 ──狂え、時の歯車。
 引き金を引いた瞬間、放たれるのは圧縮したグラビティの塊。『時流変転』──病魔の内部で弾けるそれは、体内時間を加速させて負傷を深めさせてゆく。
 満身創痍の虎は、それでも最後まで病を広げようと靄を発散させていた。故にビーツーは皆へと呼びかける。
「……俺らから、離れろッ!」
 瞬間、ボクスと共に飛翔し、燃え盛る炎を吐き散らしていた。『赤銅の熱壁』──業炎の嵐が一帯を包み込み、病の欠片を残さず灰にしていく。
 悲鳴にも似た吼え声が響く。それを見下ろしながら、ビーツーは隣へ声をかけた。
「──ボクス、最後はお前の手で」
 長年の因縁を今ここで、断ち切ってくれ、と。
 その言葉に応えたボクスは、真っ直ぐ滑空。高熱を帯びた火山色のブレスを放ち──病魔の躰を焼き尽くして消滅させた。

 闇を灯りだけが温かく照らす、静かな夜が帰ってきていた。
 晴れた煙の中には、病魔の跡形もない。頬を撫でるのは穏やかな夜風ばかりだった。
 フィストは皆へ振り返る。
「……終わったな」
「みたいだねー」
 ニケは変わらず物柔らかな声で武器を収めていた。
 華も頷きながら、ビーツーとボクスの傍へ歩み寄っていく。
「身体の調子は如何ですか?」
「問題ない。……ボクスもな」
 ビーツーが瞳を向ければ、ボクスも応えるようにぱたりと羽ばたいていた。
 ルイーゼはほっとしたように息をつく。
「そうか。よかった」
「うん、本当に。今はお家でお留守番してるけど……わたしにも大切なサーヴァントがいるから、他人事だと思えなかったんだぁ」
 ひなみくは言って、ボクスをこわごわと撫でる。
「……ボクスちゃん、大丈夫? もうだるくない? 苦しくない?」
 ボクスはそれに健常な鳴き声を聞かせた。
 千梨はなるほどと声を零す。
「やはり、サーヴァントの意志、というのも強いモノだな」
 そして己は唯の通りすがりとばかり、ひらりと踵を返していった。
「皆、改めて感謝したい。ありがとう」
 ビーツーは、そんな背中にも声を届けるように皆へ飾らぬ心を述べる。
 数汰は頷いてから、歩み出す。
「無事に終われたのが、何よりだな。さあ、帰ろうぜ」
「うむ」
 病魔を具現化した第三者がいないとも限らない、と。ビーツーもひとまずは帰還をするべきと後に続いた。
 そして静寂の中、肩に乗ったボクスを見る。言葉は口にせず、接触テレパスで。
 ──どのような形であれ、撃破は成った。
 あとはボクスの好きにすると佳い、と。
 するとボクスはその言葉に、ビーツーの肩をぐっと掴んで応える。
 ビーツーはその姿を暫し見つめてから──瞳を少し和らげて前に向き直った。
 気づけば、明るい星が出ている。仄かに眩くなった空の下、ビーツーとボクスは清らかな風の中を歩いていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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