女剣士は負かした後に屈服させるのが至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! 女剣士は負かした後に屈服させるのが至高である、と! だから今日からお前達は、女剣士だ! そして、俺と戦って、敗北しろ! ただし、最初は抵抗しろ! 足掻いて、足掻いて、足掻きまくれ! その上で叫べ! 『クッ……、殺せ!』と!」
 ビルシャナが廃墟と化したホテルに女性信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 女性信者達の手元には聖書の皮を被った台本があり、それを熟読する事しつつ、身も心も女剣士になるべく頑張っていた。

●セリカからの依頼
「ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化したホテル。
 女性信者達は催眠状態に陥っており、ビルシャナの言葉を鵜呑みにしているようである。
 そのため、女性信者達は女剣士の恰好をしており、聖書(台本)の内容もバッチリ頭の中に入っているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 今回のビルシャナは独占欲が強いため、女性信者を奪われそうになると逆ギレするようだ。
 また女性信者達は女剣士になりきる事ばかり考えているせいで、ビルシャナでなくとも『クッ……、殺せ』となってしまうようである。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
グロゼイユ・フィーユデュエルブ(赤酸塊の騎士見習い・e27053)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)
大張・メイ(パラディオンのような何か・e63335)
ジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)

■リプレイ

●廃墟と化したホテルの前
「また妙なビルシャナが現れたようですね」
 ジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)は仲間達と共に、ビルシャナが確認されたホテルの前に立っていた。
 ビルシャナは女剣士をこよなく愛しており、屈服させる事こそ至高であると思い込んでいるようだ。
 そのためか、ホテルの上層階から『くっ、殺!』ヴォイスが響いており、何とも微妙な雰囲気が漂っていた。
「これが噂のくっ殺かぁ。なんかすげー芝居感あるよなぁ」
 柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)がホテルの上層階を見上げ、気まずい様子で汗を流した。
 上層階から聞こえてくる『くっ、殺!』ヴォイスは、何処か演技じみており、まるで発声練習をしているような感じであった。
「次から次へと……どうしようもない説法を振りかざしおって……」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)が呆れた様子で深い溜息を漏らし、廃墟と化したホテルに足を踏み入れた。
 その間も発声練習の如く『くっ、殺!』ヴォイスが響いており、一体どこからツッコんでいいのか分からなくなった。
「全く、こいつは剣士をなんだと思っているのだ……」
 グロゼイユ・フィーユデュエルブ(赤酸塊の騎士見習い・e27053)が不機嫌な表情を浮かべ、階段を上っていった。
 ビルシャナにとって、女剣士は自らの性欲を満たすモノ。
 それ故に、自分より格下に女性信者達を見ているような印象を受けた。
「……そこまでです」
 次の瞬間、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が勢いよく扉を開け、凛とした風で女性信者達に注意を引いた。
「ほんもののくっころってやつを見せてやりますよ!どこからでもカモン! ナニをされたって屈しないヨ!」
 そう言って大張・メイ(パラディオンのような何か・e63335)がシスター服姿でドヤ顔を浮かべ、ビルシャナの前に陣取った。

●ホテル内
「……どこからでもいいんだな?」
 次の瞬間、ビルシャナが一気に間合いを詰め、メイをボコって大人しくさせた。
「もちろん、どこからで……もっ!」
 その一撃を喰らったメイが、信じられない様子で崩れ落ちた。
 一瞬、何が起こったのか、分からなかったが、鳩尾に一発。
 ビルシャナが手加減なしで、強烈な一発を繰り出してきたため、息をする事さえ出来なくなった。
 その間にメイが女性信者達に縛られ、見せしめとばかりに、天井から吊るされた。
「ところで、皆様は女剣士になろうとしてるのですよね? でも、台本に書かれていることだけを鵜呑みにしてはいけません。女剣士とは何なのか、もっと考えるべきですわ」
 そんな中、ルーシィドが真剣な表情を浮かべ、女性信者達に訴えた。
「一体、何が言いたい」
 ブロンド髪の女性信者が、警戒心をあらわにした。
 他の女性信者達もピリピリムードで、剣を握り締めていた。
「剣を手にする戦いでは力の強い男性が有利。それでも剣をとるのが女剣士。……そう、台本にも合ったんですよね? 抵抗して、足掻いて足掻いて足掻きまくるべきと……。それは肉体のハンデに諦めず戦う強い意志をもつのが本物の女剣士だからです。敗北しても誇り高く死を覚悟する、その意志こそが女剣士のあるべき姿。それなのに、台本通りに屈服しろとお願いされて従うなんて、間違っているとは思いませんか?」
 それでも、ルーシィドが怯む事なく、女性信者達の前に陣取った。
「た、確かに……それは……」
 ブロンド髪の女性信者が、気まずい様子で視線を逸らした。
 他の女性信者達も『やっぱり、そうよね! そう思っていたのよ!』と言わんばかりに目を泳がせ、その動揺を隠すようにして口を噤んだ。
「まあ、これだけの女剣士を捕まえた事に関しては褒めてやるよ」
 清春が騎士のような恰好で、ドス黒いオーラを漂わせた。
「お前も、こちら側の人間か」
 ビルシャナが清春をジロリと睨み、含みのある笑みを浮かべた。
「ククク、オレに捕まっちまったら、もう終わりだな。騎士の矜持だの誇りだのくだらねぇもんひっぺがして体に教え込んでやるよ」
 清春が思いっきり悪い顔をしながら、金髪の女性信者の顎をバールでクイッとやった。「……そこまでだ!」
 次の瞬間、ビルシャナがムッとした様子で、清春の股間をムンズと鷲掴み!
「……って、オレにそっちの趣味はねぇぞ!」
 その途端、清春がビクッと震わせ、ダラダラと脂汗を流した。
「安心しろ。俺にも、そっちの趣味はない。ところでナッツクラッカーって知っているか?」
 ビルシャナが清春の股間を鷲掴みにしたまま、怪しく耳元で囁いた。
「いきなり何を……」
 清春が小動物のような表情を浮かべ、ぎこちない笑みを浮かべた。
「いや、知らないんだったらいいんだ。いい音が鳴りそうだなって思っただけだから……」
 ビルシャナが無駄にイイ笑顔を浮かべ、清春から離れていった。
「ま、まあ、仲良くしようじゃねえか」
 清春が両手を上げつつ、ビルシャナに愛想笑いを浮かべた。
 まさか股間を鷲掴みされるとは思っていなかったため、妙な汗が止まらなくなった。
 それでも、最悪の事態を避ける事が出来たため、股間共々ホッとしている様子であった。
「こ、こんな事をしても、無駄だヨ!」
 そんな中、メイが天井から吊るされたまま、ドヤ顔でビルシャナ達を挑発した。
「そんな事を言う割には、随分と興奮しているようじゃないか」
 その途端、女性信者達の中に眠っていたS心が目覚め、サディスティックな表情を浮かべて、メイの胸を乱暴に揉んだ。
「女剣士様が馬に乗りたがっているようだな。よし、乗せてやれ!」
 ビルシャナが指をパチンと鳴らし、女性信者達にアイコンタクトを送った。
 その指示に従って女性信者達が、奥の部屋から三角木馬を持ってきた。
「そんなモノに乗ったら……って、この出っ張り……凄くイイ……えっ? どうして、こんなに絶妙なトコロを……んきゅぅぅぅ、キクぅぅぅ♪ きゅんきゅんしちゃうぅぅ♪」
 メイが三角木馬に乗せられた途端、今まで感じた事のない感覚に襲われ、瞳にハートマークを浮かべて、まわりの目も気にせず甘い声を響かせた。
 まわりにいた女性信者達も、様々なSM道具でメイの身体を飾りつけ、興奮した様子で身体中を舐め回した。
「これが剣士のやる事か? まあ、騎士でない以上、国に仕え、力なき民を守るつもりはないようだが……。これでは単なるゴロツキではないか。それに屈服する姿など、何よりの恥! 単なるお遊び感覚でやるべき事ではない!」
 それを目の当たりにしたグロゼイユが、女性信者達を叱りつけた。
 その間もメイが三角木馬に跨り、股間を擦りつけていたが、グロゼイユの視界に入っていなかった。
「ならば、我々が相手だ!」
 銀髪の女性信者が、剣をギュッと握り締めた。
 他の女性信者達も剣を握り締め、今にも斬り掛かってきそうな勢いで殺気立った。
「……覚悟は出来ているという訳か。そもそも、一刀の元で切り伏せれなければ、剣士として未熟。また生き恥を晒したくない思いで、殺せ、と乞われれば介錯してやるのも剣士としての情け。故に、望み通り……殺して進ぜよう」
 ジークリットが一気に間合いを詰め、銀髪の女性信者が持っていた剣を弾き、相手の喉元に剣の切っ先を向けた。
「クッ……、殺せ!」
 銀髪の女性信者が観念した様子で、悔しそうに唇を噛み締めた。
「生憎、私はケルベロスだ。ここで、ただの人間を切り伏せるわけには行かない。なので、こうだ」
 ジークリットが突きつけた剣を納め、ゆっくりと顔を近づけ、スタイリッシュモードを発動させた。
 その上で顎クイをしながら、殺し文句を囁き、銀髪の女性信者のハートをズキュンと撃ち抜いた。
「ちょっと待て! 俺の信者に色目を使うんじゃねぇ!」
 その事に腹を立てたビルシャナが、苛立った様子でケルベロス達に迫ってきた。
「ならば、私が相手だ」
 すぐさま、ジュスティシアが剣を握り締め、ビルシャナに斬り掛かった。
「……面白い。よほど死にたいようだな!」
 ビルシャナが興奮した様子で剣を振り回し、ジュスティシアの剣を弾き飛ばした。
「ま、まさか、ここまで強いとは……。くっ、殺せ!」
 その途端、ジュスティシアが崩れ落ちるようにして座り込み、観念した様子で言葉を吐き捨てるのであった。

●ビルシャナ
「だったら、少し楽しませてもらおうか」
 ビルシャナが黒い笑みを浮かべ、ジュスティシアに迫っていった。
 次の瞬間、ジュスティシアがビルシャナの股間を蹴り上げ、ナイフをドスっと突き刺した。
「ぐぎゃああああああああああああ! 何をするぅ!」
 その途端、ビルシャナが悲鳴を響かせ、肩に突き刺さったナイフを抜いた。
「……『くっ、殺せ!』と言われて介錯してくれる紳士など、まずいません。その鳥が、典型なのは台本でわかってるでしょ? なら『くっ、殺せ!』と言われて喜んでる不埒な輩をナイフで『ぐさり!』や、拳銃で『ズドン!』と返り討ちにするべきです。得物がなければゴールデンターゲットでもいいんです。諜報と暗殺を司るシャドウエルフの私がしっかりレクチャーしますから、下衆野郎を期待させて有頂天になったところで、地獄に突き落としてしまいましょう」
 その間に、ジュスティシアが黒い笑みを浮かべ、女性信者達にナイフを配っていった。
 女性信者達は未だに状況を飲み込む事が出来ず、唖然とした表情を浮かべていたものの、ナイフを受け取った後にハッとした様子でビルシャナの顔を見た。
「な、何をしている。そいつを……殺せ! この卑怯者を殺すんだ!」
 ビルシャナが股間を押さえたまま、声を絞り出すようにして叫び声を響かせた。
「えっ? あの……」
 そのため、女性信者達がパニックに陥った様子で、ふたりの顔を交互に見た。
「卑怯者……ですか。本気でそんな事を言っているのですか? 戦場でそんな事言ってたら、殺せと言う前に矢弾で死にます。わかったらレッツ、アサシネーション!」
 ジュスティシアが女性信者達に見本を見せるようにして、容赦なくビルシャナに斬り掛かった。
「いい加減に目を覚ましてください。変質者の台本なんて今すぐ捨ててしまいましょう」
 ルーシィドが女性信者達に語り掛けながら、姫君への十二の贈り物(スパイク・バレット)を発動させ、一瞬だが限界以上の魔力を込めた魔弾を射出した。
「ふ、ふざけるなァ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが血の泡を吐きながら、恨めしそうに洗脳光線を放ってきた。
「そんな攻撃……効く訳が……」
 それを迎え撃つようにして、グロゼイユがダイナマイトモードを使い、セクシーなハイレグレオタードでポーズを決め、洗脳光線をモロに喰らった。
「ほら、見ろ。まったく問題な……」
 その途端、グロゼイユが恥ずかしそうに頬を染め、内股になって崩れ落ちた。
「クックックッ、見たか。これでお前は、俺の操り人形同然だ!」
 ビルシャナが不気味な笑みを浮かべ、グロゼイユにジリジリと迫っていった。
「……させるか!」
 それと同時に、ジークリットがスターゲイザーを放ち、ビルシャナを蹴り飛ばした。
「ぐはっ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが、ゴロゴロと部屋の隙間で転がった。
「……どうした? 私を屈服させるのではなかったのか?」
 すぐさま、グロゼイユがヴァルキュリアブラストを仕掛け、光の翼を暴走させ、全身を光の粒子に変え、120cmの胸でビルシャナの顔を包んで窒息させた。
「……見たか! 下劣な輩に私が屈するなどあるものか!」
 グロゼイユが自らの勝利を宣言するようにして、胸や尻をたゆんと揺らした。
「さて、仕事は片付いた。ルー、帰るぞ……ん?」
 ジークリットがルーシィドに声を掛け、女性信者達の視線に気づいた。
 女性信者達は、まるで憧れの人を見るような目で、ジークリットを抱え上げ、隣の部屋に姿を消した。
「いやあ、無事解決ダネ、よかった、よかった。……お? んひぃ!」
 メイも女性信者達に首輪を嵌められ、縛られたまま何処かに連れ去られた。
「……って残ったのは俺だけかよ。でも、台本自体は悪くないな。こりゃ、試してみる価値がありそうだな」
 そう言って清春が足元に落ちていた台本を拾い上げ、ビルシャナと同じ黒い笑みを浮かべるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月8日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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