ヒーリングバレンタイン2020~水族館への想い

作者:白鳥美鳥

●ヒーリングバレンタイン2020~水族館への想い
「みんなの活躍のお陰で、ミッション地域になっていた複数地域の奪還に成功したの!」
 ミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は、嬉しそうに話しかける。
「本当にありがとうなの! ……それで、この取り戻した場所の復興を兼ねてバレンタインのチョコレートを作ろうって事になったのよ! ……今は、周囲に人がいないけれど、誰もが参加出来るイベントにすれば、とっても盛り上がると思うの!」
「ミーミアがお願いしたいのは、東京にある池袋にあるサンシャインシティなの。サンシャインシティと言えば、色々な施設があるけれど……やっぱりメインは水族館だと思うの。……でも、サンシャインシティと一緒に水族館も無くなっちゃったの。サンシャインの水族館ってとっても綺麗でね、お魚さん達も元気なんだよ! 勿論、直ぐにサンシャインシティの復興も出来ないし、水族館の復活も大変だと思うの。でも、水族館がいつか再開されるように……素敵な水族館になる様に、サンシャインシティのヒールをお願いしたいの! 時間はかかるけれど、再開を望んでいる人達も一杯いると思うの。だから、みんなの力を貸して欲しいの!」
 ミーミアは、バレンタインについても説明する。
「やっぱり、水族館を再建するためには……チョコレートは水族館にいる動物さん達が良いと思うの。それに、そういうチョコレートを作れば、色んな人が水族館の事を思い出して、復興の為に元気を出してくれると思うの! だから、みんなで素敵なチョコレートを作って、沢山の人に元気を出して欲しいの! そう、チョコレートは全ての人に元気を与えるのよ! だから、宜しくお願いしますなの!」


■リプレイ

●ヒーリングバレンタイン2020~水族館への想い
 場所は東京都池袋、サンシャインシティ。ここにはかつて水族館があった。
 皆で、ヒールをし合い、チョコレートを作る。復興への願いを込めて――。

「都会の真ん中の水族館って、なんや珍しいねぇ。きっと皆のオアシスやったんやろね」
「そうだね。それは癒される場所だっただろうね」
 香坂・雪斗(スノードロップ・e04791)の言葉に、ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)は頷く。
 水族館があったという事で、そこにいる生き物をモチーフにチョコレートを作る事に決めた二人なのだけれども、題材に悩む。
「水の生き物、可愛いの沢山居るからねぇ。どの生き物をモチーフにしようか迷うなぁ……」
「水族館っていうと魚もいるけど、水辺の動物もいるね。あ、ラッコにしよっか? ぷかぷか浮かんでて可愛いね」
「おお、ラッコ! ぷかぷか浮かんでる姿はほんまに癒されるよねぇ。ふふ、可愛いの作りたいね!」
 ヴィの提案に、雪斗は瞳を輝かせる。ラッコのチョコレート。可愛いものになるに違いない。
 二人で作るのはお揃いのラッコ。それをお互いに並べれば……まるで手を繋いでいる様だ。そのラッコ達にヴィと雪斗の瞳と同じ色の青色と緑色の貝殻を持たせてあげる。
「冷たい水に流されないように手を繋いでいるなんて、ほのぼのと可愛いね」
「はぐれへんように助け合ってる姿も可愛いよなぁ……」
 はぐれないように手を繋ぐこのラッコ達に互いに互いを投影させる。こんな風にこの先も過ごせるように、ずっと仲良しでいられるように。
「これからもよろしゅうね、ヴィくん!」
「こちらこそ、これからもよろしく!」
 そう二人は微笑みあったのだった。

(「水族館など行ったことなかったというのに初がこれか」)
 ヒールをした魚の居ない水族館をぶらりとしながら、ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)はそう思う。そんな彼女の隣りには、在りし日の水族館の様子を語る相馬・竜人(エッシャーの多爾袞・e01889)。
「実物見てみたいか?」
「……ああ、実物を見たいな。一人は退屈だからな、その時は竜人も一緒にだ」
「分かった。操業再開したらまた連れてってやるよ」
 今度は一緒に本物の魚達を見る大切な約束だ。
 そして、次はチョコレート作り。
 やはり大きいのよりは食べやすいのを多数。そう決めたペルは熱帯魚などの型で取ったものや、立体的に自力で作れるもの等、色々な種類のチョコレートを作っていく。
「おーい、竜人。話がある、耳を貸せ」
 ペルに呼びかけられた竜人は彼女の方に振り向いた途端、彼女の試作品のチョコレートを食べさせられた。
「クク……美味いか? 甘いか?」
 悪戯口調で笑うペルに、竜人も微笑む。
「良く出来てるじゃん。俺からもハッピーバレンタイン」
 竜人がペルに渡したものはラッピングされた箱。その中には一口サイズのイルカのチョコが5個。飲食店で働いているので、出来自体は無難だと竜人は思っている。
 ペルは現れたイルカのチョコを早速一つ戴く。
「……うむ、喫茶で嗜んでるだけある、美味いぞ」
 目を細め、大人びた表情で微笑むペル。竜人にとって無難な出来のチョコレートだとしてもペルにとってはとても美味しいものなのだ。そんなペルの笑顔が竜人にとっては嬉しい。普段は精神的にも大人びていて不遜な所もあるペル。その彼女が年相応、子供っぽい顔を見せてくれるのだから。
 自分の目の前にいる間だけでも、このくそ生意気な妹分が子供で在れればいい、そう思う竜人だった。

「……甘くて、美味しそうな、香り……。チョコ作りは、久しぶりだけど、頑張るのーっ」
 チョコレート作りに気合十分なのはリィナ・アイリス(もふきゅばす・e28939)。
「水族館の復興を願ってというのもありますし、水族館にもなじみ深いイルカはどうでしょうか?」
「そうだね。イルカさんにしようっ」
 霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)の提案でイルカ型のチョコレートに決定した。
 持参したエプロンと三角巾を着用し、今日は魔法に頼らず自分の手で作ると気合の入っているリィナ。それに対して、和希の方はチョコを作る経験がほとんどないので、チョコレートの溶かし方等が書かれているレシピ等を見つつ、失敗しない様に気を付けて。
 リィナも和希も願う事は同じ。可愛らしく美味しい物を作れますように、そんな気持ちを一杯込めて。
「……イルカさん、完成っ!」
 可愛らしいイルカのチョコレートが無事に完成した。スマホで完成記念写真を撮りつつ、ここまで可愛らしく作れたら、食べてしまう事が勿体ない……そんな風に和希は思ってしまう。その位、素敵な出来のチョコレートだから。
「和希くんとも一緒に記念写真、撮ろう?」
「……僕とも記念撮影、ですか? ええ。構いませんよ……」
 リィナと和希もツーショットの記念撮影。和希はツーショットにどきどきしながら。
「次はシャチさんやペンギンさんにトライしよう?」
「ええ、そうしましょう」
 次も可愛らしくて美味しいチョコレートが作れる様に、そして楽しい時間が続きますように――。

 いずれ復活する水族館を思い描いて、お魚や動物たちを象ったチョコを食べながら、その日を楽しみにして貰えたらと、チョコを作るのはウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)とリュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)。
「ルルはラッコさんとジンベイさんを作ろうと思うの」
「へえ、ルルはラッコとジンベエザメか。てっきりペンギンを作るのかと思っていたよ。好きだろう、ペンギン」
「だって……ぺんぎんさんは作ったら誰にも上げたくなくなっちゃうでしょ?」
「確かに、それはそうだ」
 ペンギンが好きなリュシエンヌがそれ以外を作ると言ったので驚いたウリルだったが、上げたくなくなると笑う彼女が可愛らしく思えて、微笑んでしまう。
 早速、ラッコに挑戦し始めるリュシエンヌを楽しそうに眺めつつ、ウリルも自分の作るチョコレートを考える。
 リュシエンヌのラッコの持つホタテ貝はホワイトチョコレートで。白い方が可愛いからだ。一方のジンベイザメの方は悪戦苦闘中だ。なにせ、大きい。固まるまで時間がかかりそうだ。
「うりるさんのお手伝いします……って、うりるさんのすごい!」
 固まるまでの間、ウリルの手伝いをと思ったリュシエンヌは彼の作っているチョコレートはヒラメ。しかも、かなりリアル系。
「模様を表現したくてさ。ホワイトチョコとビターチョコで色合いを調整したんだ。ほら、どうかな? 魚の艶感を出すためにキャラメルを塗ってみるとそれらしくなる?」
 ウリルの手によって、どんどんとリアルになっていくヒラメのチョコレート。
「ヒラメさんのちょびっとぬらりんってした感じ、すごく出てる!」
「せっかく作るなら細部にもこだわりたいじゃないか」
 ウリルのヒラメにリュシエンヌは感嘆するばかりだ。そんな彼女にウリルは笑う。
「間違えてグリルに入れちゃいそう」
 そんなリュシエンヌの笑顔の答えに、二人は再び笑い合ったのだった。

 仲良し5人で一緒にチョコレート作りに励むのはマイヤ・マルヴァレフ(オラトリオのブレイズキャリバー・e18289)、キアラ・カルツァ(狭藍の逆月・e21143)、セレス・アキツキ(言霊の操り手・e22385)、花守・鈴(星鳴・e44251)、アイザック・オルティース(ルカン・e46078)。
「すいぞくかんのどーぶつさんってどんなのいたっけ? おすし屋さんのすいそーに泳いでそうなの……おすし……鈴、ウニ好きー。キアラおねーちゃ、ウニって作れる?」
 水族館の動物のチョコレートという事で、お寿司屋さんの具材を思い浮かべた鈴は好物のウニに思い当たった。
「えっ、ウニ? ……うーん、キアラ、何とかなりそう?」
 鈴のウニを作る発言にセレスも驚いてキアラを見る。そのキアラは困ったような顔をした。
「えーっと出来ない……ことも……ないかなとは思うけど……ウニはトゲトゲ過ぎて危ないから、ヒトデとかどうかな? お星さまみたいだし」
「むー。それじゃーヒトデさんにするー」
 残念そうに鈴は頷く。
 しかし、鈴のウニ発言は別の所でも響いていた。
「鈴ちゃん、ウニが好きって凄いわね。好き嫌い別れる味だから、とても偉い!」
「鈴ってウニ好きなんだ? 渋いね」
 寿司ネタとしてウニが好きという事にアイザックは褒め、マイヤはちょっと驚いている。
「マイヤおねーちゃんもいっしょにヒトデさん作る?」
「うんうん、一緒にヒトデ作ろう」
 鈴に誘われて、マイヤもヒトデ作りを始めた。色を付けたホワイトチョコをカラフルに飾る。
「あ、ヒトデはアラザンを乗せたらキラキラ綺麗だろうから、鈴ちゃん、マイヤちゃん使う?」
「わぁい! キラキラにしよ!」
「うん、ありがとう! わたしもキラキラにしたい」
 キアラから受け取ったアラザンを鈴はヒトデチョコに乗せていく。マイヤは、もっとお星様に見えるようにアラザンを使って模様を描いてみたりと飾り付けていく。
「不器用だから、あんまりこういうの得意じゃないんだけど……上手く作れるかしら」
 セレスはウエハースチョコを加工して、色付きのチョコで表面に目やヒレを描いて魚っぽく、クマノミ等を色々と作ってみる。
「ウェハースを工夫してって凄いアイデア! セレスはアイデア賞だね」
「セレスちゃんのチョコ可愛い……!」
「セレスのウエハースのお魚、可愛い! たくさん作ったら賑やかになりそう」
「セレスおねーちゃんのお魚さんかわいーね! これ、何て言うお魚さんなの?」
「そ、そうかな? ありがとう。えっとね、クマノミとかなんだけど……」
 キアラ、アイザック、マイヤ、鈴に褒められて、セレスは照れる。可愛く出来ているのか不安だったから、可愛いと言って貰えて凄く嬉しい。
 アイザックはブランデー抜きの生チョコに挑戦中だ。
「あら? 板チョコ、多過ぎたかしら? 今度は生クリームが足りない?」
 チョコレートの刻み方も生クリームの計量も中々豪快だ。右往左往しつつも、まずは生チョコを固める所まで頑張って進める。そして、出来上がった生チョコレート、バット三枚分。一枚を包丁で切って大きなイルカを作った。その大きさに、セレスが声をかける。
「鈴ちゃん、大きいと喜びそうだけど食べにくいんじゃないかしら」
「そ、そうね。次は小さ目にカットするわ。仲良し親子さんに見えるかしら?」
 提案を受けて、可愛い親子のイルカの生チョコレートが出来上がる。勿論、チョコレートが大好きな鈴には大きいイルカもとても魅力的なのは変わらない。
「アイのイルカ凄いね! 大きいし、今にも泳ぎだしそう」
「ふふ、気に入って貰えたのなら良かったわ」
 マイヤにもそう言って貰えて、アイザックは嬉しそうに微笑む。
 キアラが作るのはペンギン。お腹をホワイトチョコにして可愛らしく。
「そうだ。ホワイトチョコ余るから、貝殻作って皆でチョコペンでデコっちゃう?」
「そうね、同じのをデコレーションも楽しそう。出来たら皆で交換してもいいかも」
 キアラのホワイトチョコレートで貝殻を作り、皆で、デコレーションを施して……。
 出来上がった色々なチョコレート達。
「いつか水族館が復活したら、今日作ったのの本物見に来たいわね。もちろん、皆で」
「そうだね、水族館も皆で来ようね」
 セレスの言葉にキアラが頷き、皆で微笑みあう。次は、本物の水族館で――。

 いつかまた元の活気と生き物が戻って来るように……亡き動物達と共に当時を思い返しながら水族館をヒールし終えたミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が作るチョコレートはペンギン。それも、ただのペンギンではない。
「私は……こう、空を飛ぶペンギンのチョコレートです!」
 そう。空を飛ぶのだ。
 型に流して冷やし固めた空を飛ぶペンギンチョコレート。他の動物も気になるけれど、今は大好きなペンギンを色々な人達に贈りたいから。
「ミーミアさんも良ければお1つどうですか?」
「ミリムちゃん、ありがとうなの! ……このペンギンさん、空を飛んでるの!?」
「はい! 自信作です!」
 ミリムからチョコレートを喜んで受け取ったミーミア・リーン(笑顔のお菓子伝道師・en0094)は、空飛ぶペンギンに驚く。
「空を飛ぶペンギンさん、素敵なの! みんな、このペンギンさんみたいに元気になって欲しいし、水族館も元気よく再開されたら素敵なの」
「はい! ミーミアさんは、何を作られているのですか?」
「ミーミアはね、マンボウさんなのよ」
 一口サイズのマンボウ型チョコレート。
「マンボウさんって全然知らずに、本物を見たらすっごくびっくりするの。こんなに大きいの!? って。だから、この小さなマンボウさんが本物みたいに大きくなる様に、水族館も戻って欲しいなって思ったの」
「そうですね。また、皆さんの大好きな水族館が戻ってくると良いですね」
 ミーミアとミリムは微笑みあう。これから先の未来を願いながら。

 そして、そんな水族館のチョコのジオラマを作るのは鉄・千(空明・e03694)と影守・吾連(影護・e38006)。波の形のチョコを土台にして、二人で手分けして生き物達を作る。
 千が作りたいものは可愛いものと格好いいもの。可愛いものはペンギンとウミガメ。そして格好いいものはオニイトマキエイ、タカアシガニ……そしてタスマニアンキングクラブ!
 吾連が作りたいものはでっかくて格好いい生き物。ジンベエサメとシャチとクジラ……そしてダイオウイカ! クラーケンみたいで迫力があるからだ。
 お互いに完成したチョコレートを土台に並べていく。
「千はバリエーション豊かだね。タカアシガニはわかるけど、これは?」
 吾連は千の作って来た色々なチョコレートの中に変わったカニを見つけた。
「タスマニアンキングクラブだ! むふふー、千はちょっとまにあっくなのも作ってみましたのだ」
「タスマニアン……初めて聴く種類のカニだなぁ、千は詳しいね」
「……カニ食べたくなったけどな」
 率直な感想だ。実は、このタスマニアンキングクラブ、巨大かつとても美味しいカニなのだ。そんな気持ちを振り払いつつ、千も吾連の作ったチョコレートを覗き込む。そこにはジンベイザメにシャチやクジラ……そしてダイオウイカ。
「ふぉ、おっきな生き物ステキなのだ! これは……ダ、ダイオウイカ……! 迫力満点! 格好いいのだー!」
「うん、ダイオウイカ、格好いいよね! ……でも、千がカニを作っていて、カニが食べたくなったの、凄く分かる。俺もダイオウイカ作ってる時、すごくイカ焼き食べたかった……」
「イカ焼き……そう言われると千も食べたくなってきちゃうな……」
 イカ焼きに思いを馳せる吾連と千。お腹がとても空いてきた。
 そう、このタスマニアンキングクラブもダイオウイカも、本物を食べたくなってしまう位の力作なのだ。
 波の土台に、それぞれが生き生きする様にセットしていって……チョコレートのジオラマ水族館が見事、完成した。
「楽しそうなチョコのジオラマになったね。見た人が元気になるといいな」
「お腹すくくらい集中して作ったジオラマだ、きっと皆元気出るぞ!」
 二人の力作、チョコレートの水族館。見た人が元気になると良いと思う。
 そして、いつかきっと本物の水族館もまた、皆を元気にしてくれますように――心からそう願って。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月13日
難度:易しい
参加:16人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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