ゴスロリドレスこそ、至高よ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「みんな、集まってくれてありがとう。ここにいるのは、ゴスロリドレスが好きな娘達だけ。最近は、ゴスロリメイドとか、ゴリロリスク水とか、妙な亜種を流行らせようとする輩がいるようだけど、そんな考えを持っているような人達は、間違いなく奴等に目を付けられるわ。そうなったら、大変。だって、命まで奪われてしまうもの。でも、私達は大丈夫。だって、私達は純粋にゴスロリドレスが好きなだけ。そもそも、ゴスロリドレス好きに悪い人はいないわ。つまり私達はイイ人達。でも、それ以外の人達は駄目。絶対に排除すべき。そんなのゴミ、ゴミ以下よ。だから生きる価値ナシ。だって、この世に存在していいのは、ゴスロリドレスが好きな娘達だけだから……」
 ビルシャナが廃墟と化した施設に女性信者達を集め、淡々とした様子で自らの教義を語っていた。
 この場所は、彼女達にとっての聖域。
 何者にも穢されず、何にも邪魔されず、幸せな一時を過ごせる場所だった。

●セリカからの依頼
「彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した施設。
 女性信者達はゴスロリドレスに身を包み、自分達だけの世界を作り上げているようだ。
 その場所では、男性は不要であり、ゴスロリドレスが嫌いな女性も不要のようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 女性信者達は洗脳されている影響で、考えが偏っており、ゴスロリドレス好き以外は、すべて敵であり、排除対象になっているようだ。
 それ故に、敵視してくる可能性が、非常に高いようである。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)
皇・絶華(影月・e04491)
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)

■リプレイ

●廃墟と化した施設の跡地
「……ここね」
 セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)は貴族のような黒のゴシックドレスにトーク帽を被り、若き未亡人と言う女主人の出で立ちで、赤い扇子で自分の事を扇ぎながら、ピンヒールでゆったりと歩き、仲間達と共に廃墟と化した施設の前に立った。
 施設はゴスロリドレスを纏ったような感じの造りをしており、背筋に寒気が入るほど不気味な雰囲気が漂っていた。
「私の危惧していたビルシャナが、本当に現れるとは……。これは、必ずしも私としても布教を阻止せねばなりませんわね」
 彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)が色々な意味で危機感を覚え、拳をギュッと握り締めた。
 ビルシャナはゴスロリドレスこそ至高であると訴え、女性信者達と一緒に施設で生活しているようである。
「……とは言え、エロがない分、かなりマシな鳥……? 『ゴスロリ好き以外は全員死ね!』と、ほざいてる輩ですけどね」
 アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)が、乾いた笑いを響かせた。
 それでも、欲望まっしぐらなビルシャナよりも、マシ……のはず。
 このビルシャナも違った意味で欲望まっしぐらではあるものの、おそらくマシのはず。
「まあ、気持ちは分かるわ。……私だって女の子だもの、かわいい服も着てみたいから……」
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)が紺と黒の薔薇をあしらったゴスロリドレス姿で、ビルシャナの教義に理解を示した。
 テレビウムのシュテルネも、お揃いのドレス姿で、ゴキゲンであった。
「なぁ、それはイイとして……。オレが女装する必要なんてあったのか? 女の子に着替えさせてもらったのは最高なんだけどなぁ。なんつーか、ヤベェ気がする」
 そんな中、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)がゴスロリドレス姿で、仲間達の前に現れた。
 だが、その気持ちは、複雑。
 自分でも鳥肌が立つほど、妙に似合っていた。
 それだけメイクが良かったのか、元が良かったのか分からないが、どちらにしても……自分が怖い!
「とっておきの可愛い化粧をしましたからね。これくらい綺麗に化粧が出来たら、ビルシャナや信者もびっくりする事、間違いなしです」
 七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)が、自信満々な様子で答えを返した。
 清春の化粧は綴とローレライの二人で施したものだが、全力を出して取り組んだせいか、欠点が魅力になるほど美しく仕上がった。
 そのため、自分の才能が怖い。
 そして、変わり過ぎた清春が怖いと思った。
「え、えーっと……とても似合っていると思いますわ」
 紫も反応に困って戸惑いつつ、愛想笑いを浮かべた。
 確か、脱毛はしていないはず。
 それなのに、こんなに可愛くなるのは反則……いや、犯罪である。
 それだけ二人のメイク技術が突出していたのかも知れないが、ある意味これはイリュージョン。
「とても似合っていますわよ。それでは、参りましょうか」
 エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)が複雑な気持ちになりつつ、仲間達を連れて施設の中に入っていった。
 施設の中にはビルシャナ達がおり、ゴスロリドレス姿で、ケルベロス達を見つめていた。
「まさか、お前達と戦う事になるとは……。だが、私もこの服は嫌いではない。弟に勧められた者で弟が喜んでくれたのでな」
 そう言って皇・絶華(影月・e04491)がゴスロリドレス姿で、ケルベロス達の前に立つのであった。

●施設内
「……身の程知らずめ、場所を弁えなさい。真に、ここにふさわしいのは誰?」
 セレスティンが妖艶な顔を向け、甘い乙女の血を啜るがごとき舌舐めずりで、絶華にジリジリと迫っていった。
「真に相応しい者は誰か。ならば……其れを示そうではないか。元より陰と陽、光と闇、生と死は美しい物だ。だが、死の後も残る痕跡に想いを馳せるのも生きる者の在り方よ。……白き息、赤く血の宿る顔、暖かく照らす日の光、朝露の調べ、全ては消えて生まれゆく、砕けた後も花は咲く。死者に想いを抱き心にて生きよ、醜き内に眠りし純真を見よ、背徳もまた我が在り方也」
 絶華が、まるで歌うようにしながら、セレスティンに答えを返した。
「白いため息、青い白い頬、生を拒絶した淀んだ瞳。熱烈な月光の視線、夜露の調べ、全ては生まれ消えてゆくの。風花に砕けるが良い、生者に静かなる鉄槌を、イノセントな殻を破って己の醜い内を見るがいい」
 セレスティンも退廃趣味と生と死と廃墟の美しさについて語りながら、絶華と華麗に言葉をかわした。
「……見事な立ち回りだ。多くの死線を掻い潜ったと見た。まさか、貴様の死の物語に、私を加えるというのか」
 絶華が胸をドキリとさせながら、セレスティンを睨みつけた。
「ええ、お望みであれば、乙女の物語を私の一つにしてやってもいいわよ?」
 セレスティンが含みのある笑みを浮かべ、絶華の耳元で甘く囁いた。
「二人とも……素晴らしかったわ。でも、ここは私達の聖域……。あなた達の……ものではないわ」
 その途端、ビルシャナがハッと我に返って、嫌悪感をあらわにした。
「……ですが、教義に対しては、疑問が残りますね。確かに、ゴスロリドレスは、パーティーやお祭りの場では華やかで素敵ですけど、外出時とか、運動時とかは邪魔になるだけです。それに、どんな服装にも一長一短はあります。場合に応じて、服装を使い分ける事が大事だと思いますわよ」
 そんな中、紫がビルシャナの教義に異を唱え、ゴスロリドレスの欠点を指摘した。
「そんな事……ないわ。だって、私達……踊れるもの……ほら、見て……。こんな軽やかに……」
 ビルシャナがゴスロリドレスのまま、ゆったりと舞うように飛び跳ねた。
「でも、身体のラインが浮き出る分、体型維持が大変じゃない? まあ、お洒落に我慢はつきものだというけど、コルセットもキツそうだし……」
 ローレライが出前で注文したラーメンや、チャーハンをパクつきながら、ビルシャナ達の身体をマジマジと見た。
「まったく苦じゃないわ。いくら食べても、吐けばいいし……。そのくらいゴスロリドレスを着るためであれば、まったく辛くないわ。だから、みんなゴスロリドレスを着るべき……。それを拒むのであれば……死ぬべきよ」
 ビルシャナが死んだ魚のような目で、ケルベロス達を睨みつけた。
 其れとは対照的に、女性信者達の腹が、グゥ……と音を立てて鳴り響いた。
「ならば、我々は死ぬべきという事でしょうか? 我々セントールはこの体型の上、定命化して日が浅いからおしゃれの幅がかなり限られるんです! だから可愛いゴスロリドレスも着たくたって着れないんです! そんな我々セントールにも全員死ねと!? 上半身だけならどうにかなるかもしれません。だけど馬体部分はどうにもならないんです! いくら黒やレース等で飾り立てても、ゴスロリに近いがゴスロリではない何か、になるんです! そんな私達に死ねと言うあなた達こそ死んで下さい!」
 アルケイアが逆ギレした様子で、盛大に泣き崩れた。
 実際には、二足形態になる事も出来るのだが、あえてビルシャナには伏せた。
「それは……困ったわね」
 ビルシャナが心底困った様子で、アルケイアに答えを返した。
 そのため、女性信者達が、二度見。
 あまりにも豪快な投げっぷりに、『そ、それだけ!? 他に言う事が無いの?』と言いたげな様子であった。
「……何から何まで激甘ね。その考えのまま、4-50になったら、辛いわよ? それでも、現実から目を背けて、ここに居たいと言うような幻想乙女は、薔薇の庭園で執事とティータイムを楽しめばいいじゃない。真の廃墟の住民は私のようなゴシックだけ」
 セレスティンがビルシャナを見下した様子で、キッパリと断言をした。
「そんな事はないわ。ゴスロリはいくつになっても似合うから……。大切なのは気持ちだけ」
 ビルシャナがムッとした様子で、セレスティンに反論した。
 まわりにいた女性信者達も、自信満々な様子でポージング。
 みんなゴスロリドレスを着るためであれば、如何なる努力も惜しまないのか、その瞳に迷いはなかった。
「それって結構ハードルが高いと思うけど……。それに、少しでも何かがズレると、『ごすろり?』みたいになっちゃうよ。そのアンバランスも含めたゴスロリファッションを愛せるかしら」
 エリザベスがビルシャナ達に問いかけながら、清春をチラリと見た。
「どーかしら、アタイのゴスロリコーデは!」
 清春がフェロモン全開で、ビルシャナ達の前に陣取った。
 その途端、すね毛がボーン!
 今まで内に秘めていたモノが花開くように、男性的な要素が暴発した。
「な、なにこれ……」
 それと同時に、ビルシャナが顔を引きつらせ、現実を受け入れる事が出来ずに凍り付いた。
「……あれ? 上手く誤魔化したつもりだったんだが、少し張り切り過ぎたか?」
 清春がハッとした表情を浮かべ、苦笑いを浮かべた。
「これこそがゴスロリドレスを極めた結果です。それでも、まだ至高であると言えますか……?」
 そう言って綴が諭すようにしながら、女性信者達に問いかけた。

●ビルシャナ
「ひょっとして、間違っていたのは、アタシ達じゃあ……」
 その途端、女性信者がケルベロス達を見つめ、気まずい様子で汗を流した。
 実際には、矯正下着を使って、自分の体型を誤魔化していたため、油断した拍子に、ぜい肉ボーンとなってしまう事を恐れているようだ。
 そうなれば、自分も清春と同じような目で見られてしまうと思っているのか、妙な震えが止まらなくなっているようである。
 まわりにいた女性信者達も、ビルシャナに内緒で、矯正下着を身につけていたため、みんな気まずい空気に包まれていた。
「今こそ真の優雅なティータイムだ!」
 すぐさま、絶華が心に込もるバレンタインチョコレート(キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ)を発動させ、ビルシャナの口に漆黒のオーラ漂うチョコを押し込んだ。
「何……これ……」
 それと同時に、ビルシャナが青ざめた表情を浮かべ、慌てた様子で口元を押さえた。
 だが、飲み込むのも地獄、吐き出すのも地獄。
 そんな気持ちが揺れ動いているせいか、喉の途中を行き来していた。
「それじゃ、行くぜ!」
 その間に、清春が美しく青きドナウの旋律に乗せ、スカートをめくり上がっても気にせず、女性信者達に手加減攻撃を仕掛けて、次々と意識を奪っていった。
 そのため、朦朧とする意識の中、女性信者達の瞳に焼き付いたのは、清春のパンティ……であった。
「な、何も見ていないから……」
 それを目の当たりにしたエリザベスが、その記憶を抹消する勢いで、同じように手加減攻撃で女性信者達の意識を奪っていった。
「……柄倉さんのパンツは見なかったことにするわ!」
 一方、ローレライはシュテルネと連携を取りつつ、Sinfonie(シンフォニア)を発動させ、An die Freudeが変形させて翼のように展開すると、翼状のパーツで周囲のグラビティチェインをチャージ、圧縮しつつ、高威力のエネルギーキャノンに変えてビルシャナに発射した。
「ど、どうして、こんな事をするの……」
 その一撃を喰らったビルシャナが、信じられない様子でケルベロス達を見返した。
「ごめんなさい、本当はゴスロリなんてどうでもいいんです」
 アルケイアが敵意も謝意もなく冷たい眼差しをビルシャナに送り、スターサンクチュアリを展開した。
「電光石火の蹴りを、受けて痺れてしまいなさい!」
 それに合わせて綴が旋刃脚を仕掛け、電光石火の蹴りでビルシャナの急所を貫いた。
「あなたに呪いの祝福を……」
 次の瞬間、セレスティンが呪詛食らう烏(コモン・レイヴン)を仕掛け、3つの弾を打ち込んだ空間を冥界に繋ぎ、空間の裂け目から無数のワタリガラスを召喚した。
「な、何それ……。痛い……痛い……やめて……啄まないで……」
 そして、ビルシャナは無数のワタリガラスに身体のあちこちを啄まれ、肉の塊と化して息絶えた。
「何とか倒す事が出来ましたわね」
 紫がホッとした様子で、仲間達の視線を送った。
 その途端、清春と目が合い、彼のパンチラ姿が脳裏を過った。
 おそらく、今夜……夢に出る。
 そう思えてしまう程、脳内にクッキリと焼き付いていた。
「少し興に乗りすぎてしまったかしら。でも、楽しかったわ」
 そんな空気を察したセレスティンが、清春のパンチラを脳内から抹消した。
「……楽しいものだな。こういうものも、お茶は居るか、お姉様?」
 そう言って絶華がセレスティンを誘い、二人で施設を出ていった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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