ビキニ豆まきで、今年も眼福!?

作者:雷紋寺音弥

●鬼のビキニは、いいビキニ?
 節分。それは旧暦の正月にも当たる伝統行事であり、季節の節目に厄除けを祈願して行われるもの。だが、そんな伝統などお構いなしに、今日も今日でビルシャナが、空き地でおかしな教義を広めており。
「諸君も知っての通り、節分の主役は鬼だ! やられ役とはいえ、鬼がいなければ豆まきも味気ないものになる。だが……今の時代、筋骨隆々とした男の鬼など流行らない!」
 仮に、そんな鬼が幼稚園や小学校の豆まきイベントに現れた場合、子ども達にトラウマを植え付けてしまうかもしれない。そんな問題を解決するためにも、節分の鬼はビキニ姿の鬼に限ると、ビルシャナは声高に宣言した。
「恐ろしい形相の鬼ではなく、ビキニのセクシーお姉さんな鬼なら、イベントも盛り上がること間違いなし! いや……いっそのこと、鬼と呼べる存在は、全てビキニスタイルなお姉さんにするべきなのだ!」
「そうだ! 幼稚園の豆まき大会も、保育士の御姉さん達が、全員ビキニでやればいいんだ! 福は福でも、眼福を呼ぶ……おまけに、ポロリでもあれば最高だぜ!」
 相も変わらず無茶苦茶な主張をするビルシャナに、何の躊躇いもなく賛同する信者達。一年の健康と平穏を願うための行事ということは、既に彼らの頭の中から、完全に抜け落ちて久しかった。

●今日も元気に鳥は外?
「うぅ……節分の季節が近づいてきたら、今度はそれに便乗したビルシャナが……」
 頼むから、年中行事に斜め上な解釈を加えて、変な改変をしないで欲しい。というか、そんな未来を予知させられる、こっちの身にもなってくれ。そう言いたげに、目に涙を浮かべながら、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は自らの垣間見た予知について、ケルベロス達に語り出した。
「如月・高明(明鏡止水・e38664)さんが心配していた通り、『節分の鬼は、ビキニ姿の鬼に限る!』っていうビルシャナが現れました。それも……できれば、ビキニの鬼は、全員セクシーなお姉さんでないといけないっていうもので……」
 ある意味では、なんとも分かりやすいビルシャナだ。しかし、放っておけば信者を引き連れ、日本全国でお姉さんをビキニ化させるために動き出さないとも限らないので、やってられない。
「戦いになると、ビルシャナは電気を流せる金棒とか、物凄く臭いイワシの頭とかを武器に攻撃したり……後は、何故かお豆じゃなくて、納豆を投げて来たりします」
 おまけに、信者達もビルシャナのサーヴァントのような状態になって、襲い掛かってくるので性質が悪い。彼らは数こそ10名程と多いものの、その戦闘力はケルベロスの敵として考えた場合、最弱レベル! そのため、一発でもグラビティの直撃を食らえば、まず間違いなく即死してしまう。
「信者にされた人達の目を覚ますには、先に説得しておかないと駄目ですね。でも……普通に説得したんじゃ、通用しないと思います」
 説得の際に重要なポイントとなるのは、内容以上にインパクト。信者達はセクシーなビキニ鬼のお姉さんに憧れているようなので、ビキニスタイル以上にセクシーな鬼を提案するか、あるいはビキニ鬼でも恐いということを教えてやれば、考えを改めるかもしれない。
「節分は、一年の始めに悪い気を追い払うための行事なんです! えっちな行事にするなんて、いけません!」
「うん、そうだよね。それに、豆じゃなくて納豆を投げて来るとか……もう、それって節分ですらないと思うんだよ……」
 毎度の如く変態的な教義を広めるビルシャナに、ねむは怒り心頭だ。そして、同じく毎度の如く討伐に向かわされる成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)もまた、大きな溜息を吐いていた。
 季節の節目に行われる神聖な行事を、邪な欲望で穢そうとするビルシャナ、許すまじ。どうやら今年の節分は、鬼退治だけでなく鳥退治もせねばならなそうだ。


参加者
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)
如月・高明(明鏡止水・e38664)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
アムリタ・ラジェンドラ(ちいさな巨神・e53227)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)
ジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)
アルベルト・ディートリヒ(レプリカントの刀剣士・e65950)

■リプレイ

●変態は外?
 節分の鬼は、ビキニのお姉さん以外認めない。相変わらず、ふざけた主張を繰り広げるビルシャナに、ケルベロス達は開いた口が塞がらなかった。
「まさか、私の危惧していたビルシャナが本当に現れるとは……。このままでは、節分のイメージが崩れてしまいますので、阻止せねば」
 どこか責任を感じている様子で、如月・高明(明鏡止水・e38664)が意を決しつつ顔を上げる。もっとも、彼のおかげでビルシャナの下らない野望を察知することができたので、むしろ彼は褒められてしかるべきだろう。
「節分にもやっぱり変態鳥が沸いてでたね。変態鳥は地球から叩き出すよ」
「うん、そうだね。よし、頑張ろう!」
 リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)の言葉に、力強く頷く成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。いつも変態に酷い目に遭わされているだけに、今日こそは一矢報いてやりたいようだ。
「うへへ……鬼は全部、セクシービキニかぁ……」
「セクシービキニな鬼にだったら、俺、虐められても構わねぇや……」
 危ない妄想全開に、信者達はしまりのない表情で涎を垂らしている。毎度のことながら、いったい何をどうすれば、こんな変態思想に取り付かれてしまうのだろうか。
「なんかこのおじさんたち怖い……。とりあえず、えっちなのはいけないと思います!」
 ドン引きしつつも勇気を振り絞って突っ込むアムリタ・ラジェンドラ(ちいさな巨神・e53227)だったが、ビキニ鬼のことで頭がいっぱいな信者達は聞いちゃいなかった。
「フハハハ! やはり、節分の鬼はビキニこそ至高! それ以外の鬼などカスだ! 鬼といえば、ビキニお姉さんで決まりなのだぁっ!!」
「「「オォォォォッ!!」」」
 声高に叫ぶビルシャナに合わせ、信者達の間に得体の知れない熱気が蔓延して行く。今回も今回で、彼らを説得するのは、色々と骨が折れそうだ。

●出現、鬼軍曹!?
 ビキニ姿のセクシーな鬼。確かに、一見して惹かれるものはあるかもしれない。
 だが、それでも少し待って欲しい。本当に、そんなもので鬼への恐怖がなくなるのか。仮になくなったとしても、もっと大事な何かを失うことになりはしないかと、高明はビルシャナの信者達に問い掛けた。
「よく考えてみて下さい、今は2月であり晩冬はかなり寒いですよ。ビキニ姿だと寒くて風邪をひいてしまうのではないでしょうか?」
 もし、ビキニ姿になったことで幼稚園の先生が風邪をひいたら、ちびっ子達はどう思うだろう。きっと、悲しむに違いない。鬼に恐怖を覚えてトラウマになることよりも、そちらの方が問題ではないかと尋ねたのだが。
「うるせー! だったら、子ども達を鬼でビビらせて、言うこと聞かせようってのはアリなのか?」
「そんなの、大人の怠慢だろーが! ってか、もし寒くて風邪ひくってんなら、俺達で温めてあげるから問題ないぜ!」
 もし、ビキニ鬼のお姉さんが寒がっているようなら、自ら肌を密着させて、人肌で温めてやろうと答える始末。どう考えても、邪なことを期待しているようにしか思えないが……やはり、この手の信者には、正攻法での説得は無理か。
「いいかげんにして下さい! 何が、節分の鬼はビキニのセクシー鬼でないとダメ、ですか……ふざけないで下さい!!」
 あまりに酷過ぎる信者達の妄言に、開始早々にしてリュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)がブチ切れた。
 そもそも、ビキニの鬼娘なんて、現実はおろか童話の世界にも出てこない。出て来るとすれば、それは漫画かアニメの世界だけだ。
「ビルシャナが『ビキニの鬼がいい』と言っているなら、漫画やアニメで『ビキニの鬼型の宇宙人』が出てくる話がありますよ。確か語尾は……」
 だが、そこまでリュセフィーが言いかけた時、すかさずジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)が割って入った。コスプレ趣味のある彼女の恰好は、紛うことなき虎柄ビキニだ。
「……リュセフィーよ、その鬼娘の口調、語尾は『だおに』、だ。間違えるな、だおに」
 本物と見紛うような金棒を片手に、ビキニ鬼娘に扮したジークリットが念を押す。コスプレをする以上、そのキャラクターをリスペクトし、口調まで真似するのは当然と言わんばかりだが……むしろ、どこかズレた雰囲気を纏っており、パチモン臭さも漂っているのは、何故だろうか。
「なんだ、お前は? 鬼の宇宙人? そりゃ、鬼じゃなくて、鬼っぽい何かじゃねーか!」
「それに、俺はその手のコスプレをコミケで見たことあるけどなぁ、間違っても金棒なんて持ってなかったぞ!」
 案の定、ビルシャナの信者達からはブーイングの嵐。だが、それでもジークリットは何ら気にせず、金棒を大地に叩きつけて不敵な笑みを浮かべ。
「ん? 漫画の彼女は、金棒なんて持っていなかった、だおに? これは……ケルベロス流精神注入金棒だおに! これで性根の腐った貴様らを叩き直すだおに! 逆らえばこうだおに!」
 そう言うが早いか、近くにあった電柱に金棒を叩きつけ、圧し折ってみせる。一時的に近所の家が停電になったようだが、後でヒールを施しておけば問題あるまい。
「げっ!? な、なんで馬鹿力だ!」
「……ってか、それもう、宇宙人の女の子じゃねーだろ! 完全にキャラ崩壊してんじゃねーか! いったい、誰なんだよ、お前は!!」
 キャラをリスペクトしろと言った傍から、設定ガン無視の盛大なるキャラ崩壊。あまりに無茶苦茶な話の流れに、ますますブーイングが強まって行く。
 もっとも、ジークリット自身、それら全てを見越しての行動だ。要は、ビキニ鬼娘が恐ろしい存在であると、信者達の脳内に刻み込めれば良いのだから。
「私か、だおに? 私は鬼は鬼でも『鬼軍曹』だおに」
 最初の設定は、どこへやら。セクシー鬼娘は完全になかったことになり、今や目の前にいるのは泣く子も黙る……否、余計に泣き出す鬼軍曹! はっきり言って、これは怖い! それこそ、東北の伝統行事に現れるナマハゲが、ゆるキャラに見えるレベルの恐ろしさ!
「まずはサー……いや、マアムと言うことを躾けよう。分かったか? 分かったら答えよ! だおに!」
「「ひぃっ!! イェス、マアム! 我々は、あなた様には逆らいません!」」
 先程、電柱を圧し折ったのを見ていたためか、信者達は一斉に恐怖の色に染まり、身を震わせながら頭を下げた。さすがに、これだけでビキニ鬼娘への憧れを打破することはできなかったが、それでも出だしとしては上々だ。

●地獄の鬼ごっこ
 ジークリットによる恐怖の指導で、信者達の脳裏には、恐ろしい鬼娘もいるという事実が刻み込まれた。この好機を逃してはならないと、ケルベロス達は更に信者達へと畳み掛ける。
「なあ、あんたら……ビキニならわざわざ鬼に拘らなくてもいいんじゃねえのか?」
 お前達は、鬼の本当のヤバさが分かっていない。ビキニのお姉ちゃんが見たいのであれば、常夏の島に旅行にでもいって、ビーチでナンパでもした方が賢明だと柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)が告げ。
「鬼って言やあ、怪力の代名詞だ。女だろうが……鬼なら、こんくらいできるだろうぜ」
 そう言うが早いか、空き地に転がっていた土管を軽々と持ち上げて放り投げると、拳の一撃で木っ端微塵に粉砕した。
 お前達、よく考えろ。こんな雌ゴリラも真っ青な連中にビキニなんぞ着せようとしたら、よくて返り討ち。悪けりゃ首と胴体が泣き別れだ。
「う、嘘だ……そんなの……」
「そりゃ、あんたが男だからだろ! 綺麗なお姉さんの鬼や、可愛い女の子の鬼だっているはずだ!」
 震えながらも反論する信者達が、しかし動揺は隠し切れない模様。そんな中、虎縞ビキニの鬼ルックで颯爽と現れたアムリタが、廃車を空き地に放り投げた。
「そーれっ、どーん!」
「おわっ! あ、危ねぇっ!!」
 地響きを立て、地面に突き刺さったボロボロの廃車。だが、それでもアムリタは止まらない。続け様に廃車へ鬼パンチ、鬼キック! どうせ後で潰す車なのだから、このくらい乱暴しても問題ないと言わんばかり。
「あはは! こんなに丸くなっちゃった♪」
 無邪気に笑いながら廃車を鉄球へ変えて行く様は、はっきり言って物凄く怖い。圧縮され、金属の球と化した廃車を片手で持ち上げると、アムリタは徐に振り返ってニヤリと笑い。
「ねぇ、おじさんたち……一緒にドッジボール、しよ?」
 勿論、ボールはこの金属球だ。もしくは、そちらの誰かを丸めた上で、ボールにするのも楽しそうだ。そんなことを平然と言ってのけるアムリタに、さすがの信者達もドン引きだった。
「い、いや……その……ドッジボールやるなら、普通のボールを使った方がいいんじゃないかなぁ……」
 このままでは殺られる。間違いなく殺される。身の危険を察し、瞬く間に蒼褪めて行く信者達だったが、真の恐怖はこれからだ。
「はぁ……はぁ……。み、水……」
 突然、満身創痍のボロ雑巾の如き恰好をした、アルベルト・ディートリヒ(レプリカントの刀剣士・e65950)が現れた。その顔には大きなガーゼが貼られ、身体のあちこちには血痕の染み付いた包帯が巻かれ、おまけに松葉杖までついている。
「じ、実は……先日、あのお姉さんに冗談でビキニ鬼を奨めてみたら……本気にした挙げ句、ビキニを着た上でボコボコに鉄拳制裁してくれたぞ……」
 お陰で御覧の有様だ。そう言ってアルベルトが指差す先には、角付きビキニ姿でゴツい銃器を複数抱えた、凄まじく危険な恰好をしたジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)の姿があった。
「しょ、正直に言うが……急所を200発くらい撃たれて……俺はもう、男としては役に立たん……ごふっ!!」
 そのまま血糊を吐いて、盛大に倒れるアルベルト。あまりのことに、何が起きているのか分からない信者達を他所に、彼は更に畳み掛け。
「ビキニを着た悪鬼共に惑わされるな! 畳の上で楽に死にたきゃ今すぐやめとけ! 俺のようになりたくなければ……ごふっ」
 それだけ言って、そのまま倒れ、動かなくなった。あまりの凄まじさに、さすがの信者達も完全に言葉を失っていたが、そんなことはお構いなしに、ジュスティシアは信者達に向けて銃を構え。
「鬼だけが寒くて痛いのは割に合いません。それじゃ、節分が来ても鬼役になる人がいませんよ」
 そういうわけで、ビキニ鬼は好きなだけ反撃ができる『エクストリーム節分』を提案させてもらう。心配しなくても、これは本物の機関銃ではなく、あくまでゴム弾やプラスチック弾を発射するモデルガンだから安心しろと言い放ち。
「と、いうわけで、ゲーム開始です。さあ、早く逃げないと撃たれてしまいますよ?」
 偶然を装って信者達の股間をゴム弾で射抜き、悶絶する者達の口の中に、特製の豆料理を押し込んで行く。鬼娘の作った手料理を食べられるのだから、さぞかし幸せだろうと言わんばかりに。
「ほらほら、栄養たっぷりのお豆をどうぞ。さあ、遠慮せずに♪」
「むごっ! むぐぅっ!? おばばばばっ!!!」
 ワサビにくさや、梅肉とニガヨモギ、そして生クリームに糠味噌を混ぜて豆粒状に練り合わせた物体を、ジュスティシアは情け容赦なく信者達の口に流し込んだ。いくら鬼娘の手料理でも、こんな代物を食べさせられたら最後、衝撃的な味と匂いのダブルパンチで失神すること請け合いである。
「……むぅ、ビキニ鬼って怖いね」
 先程から暴虐の限りを尽くすビキニ鬼達を横目に、リリエッタが呟きながら、コートを脱ぎ捨てて下に着ていた服を披露した。
「ほら、これなら赤鬼や青鬼さんの姿により近くなるよ。ビキニ姿より暖かいし、ちょっとの間なら、この恰好でも大丈夫だね」
 そう言って彼女が見せたのは、赤い全身タイツの上に、腰蓑一枚だけという鬼ルック。全身、ぴっちり張り付いてるせいで身体のラインが明確になり、ビキニとは違ったエロスを醸し出している。
「そ、そうか! 本当に至高なのは、ビキニ鬼じゃない……昔ながらの、健康的な赤鬼ルックだったんだ!」
 リリエッタの姿を見て何かに目覚めたのか、一部の信者達はビキニ鬼信仰を諦め、日本古来の鬼ルックをした女の子を崇める方向へ向かって行った。
 だが、それでもビルシャナの信者になってしまうだけあって、中には極端な連中も存在する。案の定、嫌な予感が的中し、信者達の何人かは卑猥な笑みを浮かべたまま、両手をわきわきさせてリリエッタへと突撃して来た。
「うへへ……なかなか刺激的な格好だねぇ、お嬢ちゃん」
「でも、どうせならタイツなんかじゃなくて、素肌に腰蓑の方が本物っぽくないかなぁ?」
 どうせ鬼娘をやるなら、もっとワイルドになった方がいい。だから、そのタイツはこちらで脱がした上で、胸元にあるお豆も食べてやる。そんな下品なことを言いながらリリエッタに迫る変態どもだったが……しかし、次の瞬間、強烈な打撃と電気ショックが信者達を襲い、彼らを問答無用で失神昏倒させてしまった。
「はぁ……はぁ……だ、大丈夫? 変なことされなかった?」
 片手にスタンガン、片手に釘バットを持った理奈が、リリエッタに尋ねた。スタンガンは、ここに来る前にジュスティシアから受け取ったもの。釘バットは以前の依頼で、別のケルベロスから貰ったものだ。
「リリは平気だよ。変態さんは、生きていればそれでオッケーだから、ちょっと激しい説得も仕方ないよね」
 命さえあれば、後はどうとでもなると言い放つリリエッタ。あまりに非情な気もするが……しかし、今までに遭遇して来た数々の変態どものことを思い出すと、彼らに情けなどかけるだけ無駄のように思われた。

●ザ・エクストリーム豆まき!
 全ての信者達を恐怖で支配し、あるいは失神昏倒させて、後はビルシャナを残すのみ。だが、当然のことながら敵はデウスエクスであるが故に、信者達ほど簡単に成敗できる相手でもない。
 電撃を発生させる金棒を武器に、ビルシャナは時に強粘性の納豆を散布したり、凄まじい臭気の鰯の頭を使って攻撃して来たりする。致命傷になるような攻撃こそないものの、これは精神的に、色々とげんなりさせられるものがある。
「フハハハ! どうだ、貴様達! ビキニ鬼を否定した報い、その身で受けるがいい!!」
 盛大に納豆をブチ撒けて、勝ち誇ったような笑みを浮かべる鳥頭。しかし、歴戦の勇士であるケルベロス達は、この程度では怯まない。
「くだらん技だ。そんな豆程度で、俺達を止められると思ったか?」
 全身から銀色の粒子を発し、アルベルトは瞬く間に納豆の菌糸を取り除く。もはや、遊びの時間は終わった。ここから先は、本気モードで速やかに鳥頭を始末するのみだ。
「よ~し……今日は、ボクだって頑張るぞ!」
 いつも変態に酷い目に遭わされている鬱憤を晴らすかの如く、理奈がビルシャナの脳天に星型のオーラを叩き込み。
「先程から、女性を馬鹿にし、食べ物を無駄にするような行い……許せませんね」
 リュセフィーの放った電撃の竜がビルシャナの脳天を直撃したところで、他の者達も一斉攻撃! こんなビルシャナ、欠片も残さず、この世から徹底的に消してやる!
「この飛び蹴りを、見切れますか?」
「貴様のようなやつには、私の脚による修正が必要そうだな」
 まずは、高明とジークリットが散開し、左右からビルシャナを挟むようにして蹴り飛ばす。哀れ、両サイドから蹴られたことで、ビルシャナの頭部は見るも無残に潰れてしまったが、その程度では終わらない。
「こいつには、鬼の本当の怖さってやつを、思い知らせてやらにゃならんようだな」
「鬼の怖さ? よ~し、それなら任せて♪」
 指の関節を鳴らしながら迫る鬼太郎と共に、嬉々とした表情のアムリタがビルシャナに迫る! 助けてくれと言っても、もう遅い! 正真正銘、本物の鬼の……オウガの一撃の威力を思い知るがいい!
「はぅぁっ! も、もんぜ……ひでぶぅぅっ!!」
 アムリタの蹴りが腹に炸裂したところで、鬼太郎の拳が顔面にめり込み、ビルシャナはそのまま空き地の土管をブチ砕きながら吹っ飛んで行った。さすがに、これは敵わないと察して逃げようとするも、そこはサーヴァント達がやらせない。得意の体当たりや噛み付き、ひっかきで動きを止めたところへ、信者達を卒倒させたゲテモノ豆料理を片手にジュスティシアが迫る!
「さあ、懺悔の時間ですよ。豆と鬼に詫びながら死になさい」
「なっ……ま、待て!? もがっ! んがががががっ!!」
 豆は豆でも、下の口から食わせるのは金属の豆だ。哀れ、口の中にゲテモノ豆を突っ込まれ、尻の穴には銃口を突き刺され、そのまま腹の中に鉛弾をブチ撒けられる鳥頭。さすがに、グラビティで内臓を直接破壊されては一溜りもなく、ビルシャナは盛大な爆発と共に、欠片も残さず吹き飛んだ。
「ふぅ……終わりましたね。しかし、怒りに任せて愛銃を鳥の尻で汚してしまうとは……まだまだ、私も未熟です」
 愛銃の銃口を拭きながら、ジュスティシアが軽く溜息一つ。次に同じような敵が現れた時には、もう少し倒し方を考えた方が良さそうだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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