チャイナ服こそ至高だろ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ。チャイナ服こそ至高である、と! だって、そうだろ! 格好いい上に、エロイ! その上、なんか強くなった気がするだろ! だって、ほら! ケンポーとか使うそうじゃんマジで! 嘘だと思うんだったら、お前らも着てみろ! ほらほらほら、来た来た来たァ! アチョー!」
 ビルシャナが廃墟と化した道場に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達はチャイナ服を身に纏い、何となく強く、そしてエロかった。

●セリカからの依頼
「七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した道場。
 信者達はビルシャナによって洗脳されており、何となく強くてエロくなっているように思い込んでいるようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は強くなったと思い込んでいるため、襲い掛かってくる可能性が非常に高い。
 ただし、弱い。
 とても、弱い。
 ビルシャナもチャイナ服を冒涜しているような考えを持っているため、少し痛い目に遭わせた方がいいだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
皇・絶華(影月・e04491)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
ミミ・フリージア(たたかうひめさま・e34679)
クロミエ・リディエル(ハイテンションガール・e54376)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)

■リプレイ

●廃墟と化した道場の前
「……またエロアホ鳥ですか。まあ、今回は以前相手にした鳥共よりはおとなしい、と思ってしまう自分が怖いのですが……」
 アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)は複雑な気持ちになりながら、セクシーなイブニングドレス姿で、仲間達と共に廃墟と化した道場の前に立っていた。
 この道場は以前まで少林拳を教えていたようだが、色々な問題を抱えていたらしく、閉鎖に追い込まれてしまったようである。
 そのため、今ではビルシャナ達の拠点になっているらしく、道場の中から怪鳥音が聞こえていた。
 この時点でツッコミどころが満載ではあるものの、ビルシャナ達は拳法の達人気取りで独自の特訓を続けているようである。
「チャイナ服を着ただけで強くはならないじゃろうに……」
 ミミ・フリージア(たたかうひめさま・e34679)が、何処か遠くを見つめた。
 それだけで強くなるのであれば、誰も苦労はしない。
 だが、信者達はビルシャナによって洗脳されている影響で、チャイナ服を着る事によって強くなったと勘違いをしているようだ。
「……確かにチャイナ服は其れなりに機能的なようだから、それ自体は否定しないが……」
 そんな中、皇・絶華(影月・e04491)が黒のドレス姿で、複雑な気持ちになった。
 それでも、ビルシャナ達の考えが、正しいとは思えなかった。
 むしろ、ツッコミどころが満載。
 チャイナ服だけでなく、少林拳に関しても、間違った考え方を持っているような印象を受けた。
「それに、チャイナ服だけが最高に素晴らしい訳では無いよね。他の服にも違った良さがある訳だし……」
 クロミエ・リディエル(ハイテンションガール・e54376)も、ビルシャナの教義に異を唱えた。
 確かに、セクシーで恰好いいかも知れないが、だからと言ってチャイナ服が至高であるとは言い切れない。
 その考え自体が偏っているため、ビルシャナの考えが正しいとは思えなかった。
「しかも、今の時期だと露出が多すぎて、寒そうな気がしますね」
 タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)が、ぶるりと体を震わせた。
 その上、今にも雪が降りそうなほどの寒さが全身を包み込んでいるため、一般人であればなおさら着る事を躊躇ってしまうだろう。
「私もチャイナ服は大好きですが、そこまで熱狂的に好きと言う訳では無いので、程々が一番……という事かも知れませんね」
 そう言って七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)が仲間達を連れて、道場の中に入っていった。

●道場内
「アチョォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 道場の中ではチャイナ服を身に纏ったビルシャナが、信者達と一緒に特訓をしている最中だった。
 そのせいか、みんな瞳がギラギラしており、気持ちだけであれば、誰にも負けない感じであった。
「チャイナ服ですか、まさに中華と言う感じがしますね。……ですが、真に中華なのは人民服なのです。人民服の方が動きやすい上に、強そうでもありますよ。それに、この季節にチャイナ服って、ちょっと肌寒過ぎないでしょうか?」
 そんな中、綴がビルシャナ達に対して、自分なりの考えを述べた。
「いや、駄目だ。人民服だと、拳法ってイメージじゃないだろ。それだと俺達は強くなれない」
 ビルシャナがキリリとした表情を浮かべ、キッパリと断言をした。
 まわりにいた信者達も、同じような考えらしく、誰も異を唱えなかった。
「だが、此処は日本だ。日本なら和服の方が似合っていると思わないか? しかも、和服の方が、清楚でお淑やかな感じがして素敵だろ? それとも、まさか強くなるイメージが大事なのか?」
 クロミエが険しい表情を浮かべ、ビルシャナに対して問いかけた。
「ああ、もちろん。強くなる事……それこそ俺達にとっては大事な事だ!」
 ビルシャナが躊躇う事なく、力強くコクンと頷いた。
「……成程、お前達はチャイナ服を着ていれば武を高める事が出来ると言いたい訳だな? ならば……この服を纏った私よりも強いという事だろう。ならば……来るがいい」
 絶華がビルシャナ達を挑発するようにして、ファイティングポーズで陣取った。
「その言葉……後悔するぞ! アチョオオオオオオオオオオオ!」
 次の瞬間、ビルシャナが怪鳥音を響かせ、勢いよく飛び上がり、絶華の腹パンを喰らって崩れ落ちた。
「……えっ?」
 それを目の当たりにした信者達が、ドン引き。
 思わずビルシャナを二度見した上で、『……えっ?』と今にも消え去りそうな声で呟いた。
「皆さん、チャイナ服は確かに可愛くて強そうなイメージもありますが、それはセーラー服も負けてはいませんよ。中学や高校の女子制服として幅広く取り入れられ、生徒としての象徴にもなりますので、セーラー服は一つの学園もののフィクションの萌えジャンルにもなっています。そして、セーラー服は元々海軍の制服でもありましたし、チャイナ服以上に、強くなれる感じがしませんか?」
 その隙をつくようにして、タキオンがビルシャナに腹パン!
 ビルシャナが何か呟くよりも速く、腹パンである。
「……と言うか、強くてエロい服ならチャイナ服じゃなくてもいいでしょうが! それに拳法に拘るより銃の方が強いかもしれませんよ!?」
 すぐさま、アルケイアがゴム弾を装填したガトリングガンを構え、信者達を蜂の巣(?)にした。
「ば、馬鹿なっ!」
 それを目の当たりにしたビルシャナが、信じられない様子でクチバシをパカッと開けた。
「それより、しっかりした鎧を着るのは、どうじゃろうか。見た目がかっこいいのはもちろん、性能もしっかり防御力があって強くなったような気ではなく、強そうじゃろう? ちょっと重いかもしれぬが鎧を着て、かっこよく戦ってる姿を想像したら、着れるように努力するじゃろう。着こなせた時、そなたは強くなっておるのじゃ。まあ、わらわは鎧よりは猫の着ぐるみで全身を包むほうが良いがのぅ。好きなほうでよいのじゃぞ」
 ミミが諭すようにして、ビルシャナに語り掛けた。
「鎧を着たら、素早く動けないだろうが! さっきのはマグレだ! 俺は間違っていない!」
 ビルシャナが荒々しく息を吐きながら、虚ろな表情を浮かべて、ケルベロス達をジロリと睨みつけた。
「貴様が強さを求めているのは解っている。だが、その服のポテンシャルを生かせるのも鍛え技を学んだ先にあるのだ。お前達はチャイナ服を勘違いしている! だからこそ貴様を、そのチャイナ服を纏うに相応しい圧倒的なパワーを、その身に宿らせてやろう! ……大丈夫だ! その向上心があれば、きっと圧倒的なパワーは得られる。さぁ……、その体に宿る圧倒的なパワーに酔いしれ、そのチャイナ服を使いこなすのだ」
 そう言って絶華が心に込もるバレンタインチョコレート(キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ)を仕掛け、ビルシャナに襲い掛かっていくのであった。

●ビルシャナ
「な、な、なんだ、こりゃ! マズ! マズイぞ、これ! シャレにならねぇぞ、おい!」
 その途端、ビルシャナが身の危険を感じ、絶華のチョコを振り払うようにして、ジタバタと暴れ始めた。
「こら! 吐き出すな! ちょっぴり苦いらしいが、その程度だ!!!」
 それでも、絶華は諦める事なくビルシャナを押し倒し、強引にチョコを口の中に押し込んだ。
「い、いや、苦いってレベルじゃねえぞ、これは……。こんなのマズイ泥……と言うか、泥に美味い不味いなんて……ぎゃあああ、やめろ!」
 ビルシャナが命懸けで抵抗したものの、絶華の鬼気迫る勢いには勝てず、チョコを完食ッ!
 それは望まぬ現実であり、魂がひょろりと抜け出る程の味わいだった。
 そのためか、すべてを失ったような表情を浮かべ、ケルベロス達の前に立っていた。
「さぁ、覚悟しな。突撃だー!」
 すぐさま、クロミエがヴァルキュリアブラストで光の翼を暴走させ、全身を光の粒子に変えてビルシャナに突っ込んだ。
「ぐはっ! 胃液が……」
 ビルシャナが青ざめた表情を浮かべ、うぷっと口元を押さえた。
 だが、口の中には苦いモノが広がり、喉元が焼けるように熱くなった。
「それでは、どれほど強くなったのか、試させてもらいますね。この蹴り……見切る事が出来ますか?」
 その間に、綴が一気に間合いを詰め、ビルシャナに旋刃脚を炸裂させた。
「だ、だから、胃液が……うぷっ!」
 ビルシャナが口元を押さえつつ、涙目になってフラついた。
 ほんの少しでも気を抜けば、胃液が逆流してしまうため、頭の中で警報音が鳴っていた。
「雷の障壁よ、仲間を護る盾となって下さい」
 それと同時に、タキオンがライトニングウォールを使い、仲間達を守るようにして雷の壁を構築した。
「こ、こんなはずでは……」
 ビルシャナが頭をクラクラさせながら、恨めしそうにケルベロス達を睨みつけた。
「だから、鎧を着ておくべきだったのじゃ。鎧さえ着ておけば、こんな事にはならなかったモノを……」
 ミミが菜の花姫(テレビウム)と連携を取りつつ、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。
 それに合わせて、菜の花姫が凶器攻撃で、ビルシャナの腹を執拗に殴った。
「うくっ……!」
 そのため、ビルシャナはリバース状態。
 必死に口元を押さえているものの、既に限界、白旗状態ッ!
「……そろそろ退場の時間です」
 次の瞬間、アルケイアがガトリング連射を仕掛け、ビルシャナをハチの巣にして、完全に息の根を止めた。
「本当なら……もっと上手く……あのチョコさえ食べ……ぐはっ!」
 ビルシャナが悔しそうな表情を浮かべ、大量の血を吐き捨て、血溜まりの中に沈んでいった。
「皆さんお疲れ様でした、お怪我は無いでしょうか?」
 綴がホッとした様子で、仲間達の無事を確認した。
「ええ、何とか……。それにしても、世の中には色々な衣装がありますね」
 タキオンが綴に対して答えを返し、先程までの出来事を思い返した。
「確かに、今回は色々な服装の価値観が見られて、面白かったな」
 そう言ってクロミエが上機嫌な様子で、その場を後にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月28日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。