破滅遊戯

作者:四季乃

●Accident
 虚空を引っ掻いたような細い月明りは頼りなく、その輪郭を朧げに描くことしか出来ずにいる。夜半の空気は吸い込めば肺を痺れさせるほどに冷たく、吐き出された呼気がたちまち鼻先を冷やしていくようだ。屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)は夜風に揺れる髪を片手で抑えながら、静謐な夜をひとり歩いていた。
 帰路につく彼女の歩みは聊かのんびりとしたもので、ゆえにか腰まで伸びた長い髪は揺蕩うように踊っている。その、淡い花色をした髪に、矢庭に閃くものがあった。ビュッと強く吹き抜けるような、否、斬り付ける音を感知した桜花の痩身が翻る。くるりと飛翔の如くバク転をして間合いを取った彼女は、腰の物を引き抜くと鈍色の切っ先を突き付けた。得物を振り上げていた影がピタリ、と止まる。
「だぁれ?」
 愉しい予感を察したのか桜花の声音は喜色に富んでいた。
 それは、二振りの刀を持つ少年であった。闇に紛れるような黒い学ランに外套を重ね、学生帽の下から覗く双眸はひどく軽薄に細められている。唇に浮かべた笑みがゆっくりと深まっていくのを見て、桜花は皮膚がぞくぞくと粟立つのを感じていた。
「あぁ……思った通りだ。たまらなく美しい」
 うっとりと、陶酔するような響き。零れ落ちる吐息は甘く、熱っぽい。
「斬りたくなるほどの美しさだ」
 三日月の下で、二対の刀身が桜花を目掛けて煌めいた。

●Caution
「屍・桜花さんが、デウスエクスの襲撃を受けることが予知されました」
 集まったケルベロスたちにそう告げたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、繋がらない端末を仕舞うと唇をきつく噛んだ。何度やっても桜花と連絡がつかない焦りからか、聊かその口調は早い。
「桜花さんの救援に向かってください。彼女の安否が気掛かりです」

 敵の名前はキド。地球人の高校生をサルベージした死神なのだそうだ。
 二振りの日本刀を使用するためグラビティには注意してほしい。あまりトリッキーな動きをするような敵では無さそうだが、その人格は破綻しているように見受けられる。また、死神特有の攻撃方法も用いてくることだろう。
「現場は閑静な住宅街です。ちょうど古寺へと続く大きな石段に差し掛かる場所で、周囲に民間人の気配はありません」
 おそらくは敵が掛けた人払いの影響だろう。避難誘導などの手間を省くことが出来るぶん、桜花の救出に集中できそうだ。古寺側は急勾配の小さな丘になっており、反対側は見通しが良く、障害物といった物もない。
「どうやら美しいものが好きらしくて……うまくそれを利用できると流れを掴みやすいかもしれませんね」
 セリカは顎下に丸めた手を添えて、思案するように提案した。
「どうか皆さん。桜花さんのこと、よろしく頼みますね」
 さぁ、行きましょう。セリカはそう言って、ヘリオンに向かって歩き出した。


参加者
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)
リリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820)
如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)
ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)
天月・緋那衣(我道を貫く・e85547)

■リプレイ


 霏々として降り注ぐ月光を喰らい、朱い狂喜を携えた一閃が煌めいた。刹那に引き抜かれた喰霊刀の刀身から火花が散ると共に、重たい衝撃が指先から駆けあがってくるのを感じ、屍・桜花(デウスエクス斬り・e29087)は双眸を細める。その姿にうっそりと微笑みを深めた死神キド、彼は片手で鍔迫り合いに臨むだけでなく、もう片方の刀を桜花の腹に対して垂直に振り上げた。
 その時。
 月が弾けたのかと思うほど眩い光が二人の総身を包み込んだ。否、それはキドの刀を弾いたのだ。超鋼金属から成る砲弾、それも二発だ。直撃を免れなかったキドの華奢な身体が僅かに離れ、仰け反るのを見、桜花は刀を弾き返すとその流れのまま懐に刀身を奔らせる。
「ふふふふふふ!」
 喰霊刀を躍らせるたびにキドの血桜が舞う。何度も何度も斬り付けながら気迫で押しやれば、体勢を崩した死神が後退するのが分かった。砲撃形態に変形させたドラゴニックハンマーを下ろした源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)と如月・沙耶(青薔薇の誓い・e67384)の二人は、顔を見合わせると頷きあい、すぐさま走り出す。
 その様子を上方よりつぶさに捉えていた源・那岐(疾風の舞姫・e01215)は、着地と同時に霊刀・菖蒲の鯉口を切るなり己の周囲に朱の風を生み出した。それは舞うような那岐の呼気に合わせて逆巻くと、刃と成ってキドの躯体に襲い掛かってゆく。
「嗚呼……美しいものが増えた」
 己の血で頬を濡らし、頸だけで振り返り微笑む死神の視線を受けて、膚が粟立つ。それは気味の悪さからくるものというよりは、刀剣士として陥りやすい闇を膚で感じ取ったからであった。
(「綺麗なものを斬りたい、その理由は物騒で許せないものですが……」)
 那岐の心が、奮い立つ。
「その無差別な邪道の剣に桜花さんを斬らせる訳にはいきません」
「桜花さんを斬らせる訳にはいかないから断固阻止させて貰うよ」
 那岐の傍らに並び立つ瑠璃が、具現化した光の剣を正面に構えた。
「やれやれ。ワシも美しい物は好きだがな。だが……それは愛でる物であって切り裂き殺す物ではない」
 桜花を背に庇いながら突き付ける二つの切っ先から、背後に現れたコクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)と天月・緋那衣(我道を貫く・e85547)の気配に眼を眇める。
 ゆっくりと階段沿いに歩いてくる緋那衣の奥で、やる気や闘争心を燃え上がらせる炎を起こしていたリリベル・ホワイトレイン(堕落天・e66820)は、
「私はめっちゃ美しいと思うけど、後衛だから多分だいじょうぶだな!」
 だいぶ及び腰であった。しかもこの張り詰めた空気の中で声が響かぬように、戦闘のどさくさに紛れるようにして喋るあたりリリベルの性格がよく分かる。
(「美しいものを斬りまくるやつってやべーやつじゃん!」)
 さっそく桜花へと鳳凰炎のサポートをスタートさせたリリベルが頭の中で早口で喋っているのが、横顔から手に取るようだった。ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)は微苦笑を零すと、シロハとイエロがキドに立ち向かってゆく姿を見て、表情を引き締める。戦闘前は冗談なぞ交えて互いの気をほぐしていたつもりであったけれど、シロハの引っ掻きをいとも容易く跳ね返す敵の様相を目の当たりにしてしまうと、緊張が胸の内側を激しく叩く。
「大地の力よ……声に答えて」
 声が震えぬように、ブレアは大地に眠る大いなるグラビティに働きかけると、振り向きざま一絡げに斬り付けるキドの一閃を受けた前衛たちへ石鎧の盾を展開した。不可視の盾が現れたことに対し、口元に笑みを浮かべたまま訝し気な表情を見せたキドは、二振りの刀身で薙いで、突き刺し、それを破壊しようとする。その表情の、なんと恍惚としたものか。
(「キド……美しいものを斬るのが彼の生きる目的そのもの……」)
「美しい物はワシも好きだぞ? だが切り刻むというのは趣味ではないな。何より美しい物とは触れあってこそよ」
 ブレアの思考にコクマの言が重なった。
 鉄塊剣・スルードゲルミルを片手で軽々と担ぎ上げるコクマは、キドの守りを貫き破壊する回転のままに突撃。衝撃で身を傾がせたキドは己より少し背の低いコクマを睥睨すると「君は美しくないね」と笑った。
「失礼な奴だな。うん、解りあえぬ」
 すぐさま次撃に掛かるコクマの間合いから距離を取るように飛び退いたキド。だがその方向に回り込んでいた緋那衣は、得物を握りしめる五指に気迫を込める。
「壁があるなら壁を砕き、城があるなら城を砕き、敵がいるなら敵を砕き、天地すら打ち砕け」
 聞こえてきた声に、ハ、と息を呑む。キドが反射的に日本刀を掲げて防御の姿勢を取るも既に遅し。
「非想の槌よ!」
 喝と共に放たれるは非想天衝槌・旋回。緋那衣が持つ独自の戦闘法から編み出されたそれは、キドの胸部を苛烈に穿つと装甲ごと打ち砕いた。強い衝撃で、キドの息が止まる。吐き出された呼気には血が混じり、受け身も取れずに投げ出された肢体がビクンと跳ねた。けれど、何事もなかったかのようにむくりと起き上がるさまには、少々ゾっとする。落ちた刀を拾い上げキドはゆっくりと首を傾げて見せた。
「ど・れ・に・し・よ・う・か・な?」
 切っ先でケルベロスの顔を一つ一つ指しながら、くつくつ喉を揺らして笑っている。
(「身近な剣士には那岐がいますが、この敵は闇に堕ちた剣士というところですかね」)
 優れた剣士の強さは那岐を見てよく知ってる。
「この腕のまま無差別に人を斬って行ったら、無辜の命が多く失われますね」
 沙耶は掌を翳すと物質の時間を凍結する弾丸を精製、彼女はコクマが地獄の炎をスルードゲルミルに乗せて叩き込もうとしている死角に乗じ、時空凍結弾を撃ち込んだ。
「貴様は美しい物が好きと言ったな? どうだ、燃え上る炎は無限に変化し美しかろう」
 コクマの炎を腹に喰らい、下肢から凍り付く弾丸に貫かれたキドが血液で作ったような血色の魚を解き放つ。それはくねくねとケルベロスたちの間を縫うように泳ぎ、桜花を目指すと、彼女の肩に食らいつこうと牙を剥いた。
「綺麗って言われるのは悪い気しない……でも斬られるのは嫌」
 閉じていた睫毛を持ち上げる。
 無数の霊体を憑依させた喰霊刀をヒュンと振り払い、至極嬉しそうな笑みを浮かべた桜花は。
「……だから、逆に斬ってあげる…!」
 紅魚を食い止めたイエロの脇をすり抜け、夜空すら斬り捨ててしまいそうな勁烈の斬撃を叩き込む。斬り付けられた箇所からするりと内へと潜り込んでいくものに「う」と眉根を寄せたのを見上げる桜花の表情は酷く嬉しそう。
「ふふふふふっ。いい表情してる」
 己の間合いに入ってきた彼女を、これ幸いとキドは刀を後ろへと退いた。が、冴え冴えとした一閃がその手首を斬り付けていき、一振りが地に落ちる。ちらり、と視線を滑らせると、そこには菖蒲を振り上げた状態のまま正視を寄越す那岐が居て、彼女の月光斬が阻害をしたのだと伺い知る。
「その無差別な邪道の剣に桜花さんを斬らせる訳にはいきません。桜花さんには更に剣術を磨いて欲しいと思うゆえ」
「こういう敵は斬るのに特化してて、その腕は達人級、放っておけば多くの血が流れるよね」
 斬殺魔で通り魔。
 義姉の言葉に同調を示す瑠璃の断言にキドの口端が歪む。どうも、笑っているらしい。
 その表情を不気味に思いながら、リリベルはせっせと味方の回復に勤しんでいた。
「私はあんま正々堂々って感じじゃないけど、今回はガチバトルのサポートに徹するぞー。私の支援があれば楽勝だぜへへへ」
 と言うのが彼女の言で、サポートに徹するといった言葉通り、味方の負傷度合いを正確に把握しながら、その都度グラビティを使い分けてきっちり癒していく。魔導金属片を含んだ蒸気を噴出して防御力を増強するスチームバリアを盾役に与えれば、そこを補うようにブレアが気力溜めのオーラを放つことによって状態異常を掻き消していくので、二人の連携の取れたヒールのおかげで一定の水準が保たれているというもの。
 また、そんな二人の隙をフォローするように、シロハがキドに向かってリングを撃ち込み、イロハもまた応援動画の合間にも敵の死角から飛び込んで少しでもダメージを稼いでいく。
 ちいさき者たちの勇猛果敢な姿に微笑を滲ませた緋那衣は、スッと双眸を細めると死神がサーヴァントたちに気を取られている隙を狙い、人差し指を突き付けた。その仕草一つで瞬時に生まれたのは鬼神角。螺旋を描きながら突出したそれは、計らずも瑠璃が斬りこんだマインドソードとの挟撃となった。
 光剣を左脇腹に右太腿を鬼神角に貫かれ、キドの動きが一瞬、静止する。は、と漏れた呼気が沈痛に滲み、外気に触れて白くけぶる。那岐はその刹那を見逃さず、神楽舞に乗せて舞剣・ローズマリーを振り抜くとキドの総身へと花の嵐を巻き起こす。その洗練された身のこなし、美しさに死神の視線・意識が惹き付けられるのを察し、とん、と軽やかに地を蹴り上げた沙耶が、夜半を押し上げるような星のオーラを蹴りこむとキドの身体が真横に吹き飛んだ。
 咄嗟に刀を地面に突き立てて減速したキドは、落ちていた刀を拾うと両手の刃を外側に押し広げるようにして斬撃を寄越した。飛来する紅い斬撃が膚を喰らう、その前に、盾役の那岐と瑠璃の義姉弟が得物で辛くも受け止める。桜花に向かうものは必ず食い止め、他の味方に及ぼうものならばイエロが踏ん張って全身で受け止める。
「よしきた! 回復はお任せあれー!」
「皆さんは思う存分、戦ってください!」
 ブレアの石鎧の盾が傷ついたディフェンダーたちを癒すと同時に、リリベルの鳳凰炎が優しく身を抱く。互いの背を預け、仲間の回復を献身的に行う二人に力強く頷くことで感謝を伝えると、二人からもまた、大きな頷きが返ってくる。
「我が怒りが呼ぶは手にする事叶わぬ滅びの魔剣」
 その、連携の取れた様子をつまらなさそうに見ていたキドは、コクマの言葉に瞠目した。
「我が怒り! 我が慟哭! 我が怒号! その身に刻むがよい!」
 怒りに呼応するように、右腕の地獄から吹きあがらせた炎をスルードゲルミルとリンクさせ、超巨大な炎の剣を具現化したコクマが、一歩を踏み出した。
「美しきものを切り裂く事しかできぬ愚か者め。ならばこの美しき炎の踊りを切り裂いて見せよ。炎の美しさを堪能し存分に焼かれるがいい」
 そのまま一気に振り下ろす。
 地獄の炎が空から落ちてくる。キドはすかさず刃を振り上げ相殺を図るが、コクマの激しい怒りが齎す奥義を止めるに及ばず、肩口から腹部にかけて大きく斬り付けられた。
「存分に己を焼く炎の美しさを愛でるが良い」
 地獄の炎に巻かれ、喉の奥から引きつった悲鳴を漏らすキドにコクマの言葉は届いていない。その様子に同じ赤の瞳を僅かに瞠った緋那衣は、
「熱いか。では冷やしてやろう」
 片手でドラゴニックハンマーを振り抜いた。彼女が寄越したのは凍結させる超重の一撃。炎を蒼く凍らせ、時すら奪ってしまいそうな刹那の折、ここで一気に攻めるべきだと判断した瑠璃は、
「力を借りるよ! ――グリフォン、その武威を示せ!」
 己の生家で結ばれた太古の盟約により伝説の霊獣グリフォンを召喚。
 太古の月・鷲獅子。その総身から放たれる凄まじいプレッシャーが満身創痍の死神から更に力を削ぎ落す。ひりひりと膚を刺す鷲獅子の咆哮が鼓膜を、脳髄すら震わせてキドの手から刀を取りこぼさせた。
 キン、と響く鋼の音。
 それまでにこにこと笑みを絶やさなかった桜花は、シロハのリングと一緒に武器を振り被ったイエロたちに頬を打たれ膝を突いたキドの肩口に、真っ直ぐと雷刃突を突き立てる。不思議そうに小首を傾げた。
「もうおしまい?」
 瞬間。
 血濡れた鋼が下から突き上げてきた。パッと頬から赤が咲く。月下に舞った血を、綺麗な頬に走った一筋を見てキドが微笑う。だから桜花も笑って――笑って笑って、その胸を突き刺した。思い切り、何度も。その微笑みが絶えるまで。
「ふふふふふふふふふふ……あはははははははははは!」
 夜のしじまに笑い声が響く。
 誰にも届かない、狂気を孕んだ死神のトラウマにすらなりもせず。引き連れたのは元の静寂、夜半の静謐、だった。
「これであの体をサルベージされた子も報われる……」
 ぽつりと零れた桜花の呟きが、戦いの終わりを意味していた。


 吹きすさぶ風に残滓となった死神が消えてゆくのを見届けて、斬霊刀を鞘に納めた桜花は駆けつけてくれた皆に向かい、ちょこんと頭を下げた。
「……本当に、ありがとう」
 先ほどとは打って変わった様子に、誰かが口をはさむことはない。
 彼女の胸の内に渦巻く”敵を斬った喜び”は桜花だけのもの。指先まで痺れそうな余韻を露とも見せる素振りはなく、だからこそ那岐は腹の底から吐き出すような吐息を一つつくと、小さく頷いた。
 そうして、眦を和らげて微笑んだ。
「お疲れ様。帰っておやつだね」
「そうですね、帰っておやつにしましょう」
 両手を合わせて笑う那岐に、沙耶からも綻ぶような笑みが落ちる。
「おやつは姉さんのバナナケーキだよね?」
 口元を和らげた瑠璃が問うと、沙耶が「じゃあ、バナナケーキとミルクティーですね」と双眸を細くする。ふんわりと咲いたあたたかな空気に、うんうんと頷きを繰り返すコクマは、キドが散っていった方をじっと見つめている桜花に、声なき別れを告げると、そのまま静かに去っていった。
(「元より縁により巻き起こった事。ならば当人たちに任せるが道理故ワシは静かに去るとしようぞ」)

「学ランヤンデレ日本刀二刀流とか設定盛りすぎだったねー!」
 刺さる人には刺さるかも? などとすっかり元の様子を取り戻したリリベルが、むふふと笑っているのを見て、ブレアと緋那衣は目配せをすると笑いあった。別れ際、桜花の頬の傷を手当したブレアは、ふと眼裏に焼き付いた死神の笑い顔を思い出していた。
(「褒められた性質ではないのですけれど……その執念はどこか魔術の研究に生きる僕には……理解できてしまうかもしれません」)
 相反する気持ちが、想いが、どこで転じるかは分からない。
 深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いているのだから。
「そういえば、一緒に戦うのって初めてですね。お菓子とジュースを片手に、ぱぁーっとゲームで遊びましょうか……!」
「いいねいいね、さんせーい!」
 笑いあう二人の様子に、そっと笑みを零した緋那衣は、そのまま二人を見送ると夜の闇に溶けて消えていく。緊張から解放されてはしゃぐ二人の声を、どこか心地よく思いながら。

作者:四季乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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