うさうさ、シンドローム!?

作者:雷紋寺音弥

●ザ・バニーガール症候群
 冬の寒さが未だ厳しい街外れの空き地。閑散とした資材置き場にて、今日も今日でビルシャナが、相変わらず下らない教義を広めていた。
「諸君も知っての通り、ウサギさんは可愛い! そして、そんなウサギさんの恰好をした、セクシーなバニーガールこそが最高の存在だ!」
 だから、この世の中に生きる女性は、全てバニーガールの恰好をするべきだ。いや、もはやバニーガールは女性だけの衣装ではない。老若男女、全ての者がセクシーなバニーガールになれば、世界は必ず平和になる。なんとも無茶苦茶な主張を繰り広げるビルシャナだったが、それを止める者は空き地に存在せず。
「そうだ! いっそのこと、学校の制服も全部バニーガールの衣装にしろ!」
「いや、それだけじゃねぇ! バニーガールの衣装以外の服なんて、絶滅させてしまえばいいんだ!」
 周りにいるビルシャナの信者達は、便乗して更に過激かつ斜め上なことを叫び始める始末。このまま放っておけば、バニーガール衣装以外を認めない彼らが、遠からずよからぬ事件を起こすのは明白だった。

●もはや病気です
「うぅ……また、酷い未来を予知してしまいました。……はい、その通りです。お約束の、ビルシャナが現れたんです……」
 もはや幾度目か知らないビルシャナ出現の余地に、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は大きな溜息を吐くと、頼むからなんとかしてくれとばかりに、ケルベロス達に懇願して来た。
「獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)さんが心配していた通り、『セクシーなバニーガールが最高!』っていうビルシャナが現れました。その……ビルシャナの主張なんですけど……男の人も女の人も、ついでに年齢も関係なく……誰もがセクシーなバニーガールになるべきだっていうもので……」
 もはや、完全に滅茶苦茶である。そもそも、男が着たらそれはもう『ガール』ではないのではないかと言いたくなるが、頭のネジが吹っ飛んだビルシャナには、性別など些細なことなのだろう。
「戦いになると、ビルシャナは……その……皆さんの着ている服を、バニーガール風にする攻撃をして来ます」
 なんとも下らない攻撃だが、しかし侮ってはいけない。ビルシャナは命中した者の恰好をバニーガールに変化させる光線を放つ他、ウサ耳を装着させて洗脳したり、その手に持ったシルクハットから謎の触手を放って攻撃して来たりする。
 また、ビルシャナの影響を受けて配下とされてしまった一般人達も、放っておくと戦いに参加して来るのは厄介だ。戦闘時、彼らはビルシャナのサーヴァントのような存在となって襲い掛かってくるが、耐久力は紙同然なので、グラビティの直撃を受ければ即死してしまう。
 彼らの大半は、セクシーなお姉さんが大好きなオッサンだが……その他にも、自らバニーガールのコスプレを嗜む変態紳士や、バニーガール風の衣装を着ることで若いイケメンを誘惑できると勘違いしている婆さんなども混ざっており、色々な意味で気が抜けない。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要です。でも……まともな説得じゃ、全然効果ないと思います……」
 説得の際、重要なのはインパクト。信者達がバニーガールの衣装を最高と讃える理由は様々だが、彼らがバニーガールに求める何かを、よりインパクトのある別のもので満たせることを理解させられれば、意外とすんなり身を引くかもしれない。
「こ、こんな人達がたくさん増えたら、ねむの学校の制服も、バニーガールさんの衣装にされてしまうんでしょうか? うぅ……そうなったら、もう恥ずかし過ぎて、学校にも通えません!」
 それだけでなく、オッサンや爺さん婆さんまでバニーガール風の衣装でうろつく街など、絶対に住みたくない! それは、ねむだけではなく、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)にとっても同じだった。
「誰も彼もバニーガールとか……もう、どこから突っ込んでいいのか分からないよ……」
 このまま放置しておけば、セクシーなお姉さんだけでなく、変態紳士や痛々しい恰好の爺さん婆さんまで量産されてしまう。そんなことになる前に、悪しきビルシャナを成敗し、街に平穏を取り戻すのだ!


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)

■リプレイ

●夢見るバニーガール?
 世界中の誰しもが、バニー服を着れば平和になる。現場に駆け付けたケルベロス達は、早くも後悔の念でいっぱいだった。
「世界中の誰もがバニーガールなら、学校の先生に、それから病院の看護師さんまで全部バニーなんだよなぁ……」
 実際に現場で屯しているのは、イケない妄想を全開にして涎を垂らすアホ信者達ばかり。しかも、それらに混ざって特に際どい連中もいるというのだから、頭が痛い。
「ふっ……やはりバニー服は眺めるだけでなく、自分で着てなんぼだな。このフィット感……素晴らしい!」
「ヒッヒッヒ……。この兎の衣装を着れば、ワシらも『イケメン』とやらにモテモテじゃ♪」
 自らバニー服を装着する変態紳士に、バニー服さえ着ればイケメンにモテると思っている痛々しい婆さんまで。これぞまさしく、カオスの見本市といった様相である。
「いくらオレが非モテでも変態にはモテたくないぞ……」
「というか、セクシーは一体どこいったのよ!」
 婆さんの恰好にフレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)はドン引きし、ふざけた主張を繰り広げるビルシャナと信者に獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)がブチ切れた。
「バニーガールの服を、自ら纏う紳士だと? ……変態ではないか」
「まぁいつものタイプだな、うん……。慣れちまった自分が嫌になるぜ」
 バニー服姿のままポージングを決める男へ冷ややかな視線を送るエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)の横で、神居・雪(はぐれ狼・e22011)もまた死んだ魚のような目をして呟いていた。その後ろでは、同じくリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)と成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)の二人が、盛大な溜息を吐いており。
「やっつけてもやっつけても、変態鳥は湧いて出てくるね……」
「うん……もう、いい加減にお腹いっぱいなんだよ……」
 倒しても倒しても、雨後の筍の如く湧いて出る変態、変態、また変態。頼むから、もうこれ以上は出て来ないでくれと思うのだが、しかし一向に減る気配はなし!
「セクシーになって、もう一度男の人にモテたい……。お婆さん達の気持ちは解りますけど……」
「女の子がセクシーになるのだって大変なのに、お婆さんや男の人が、バニー服を着ただけでセクシーになれるはずがないよね……」
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の言葉に、エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)が続ける。服を着ただけでセクシーになり、イケメンにモテまくるのであれば苦労はない。それは彼女達だけでなく、八尋・豊水(イントゥーデンジャー・e28305)にとっても同じこと。
「御洒落は我慢、なんて言葉があるけど……見ている方に我慢を強要するファッションなんて、御洒落でもなんでもないわよ……」
 頼むから、オッサンやガチムチ兄貴マン、それに爺さん婆さんなんぞがバニー服を着ないで欲しい。なんとも重たい溜息を吐きつつ、ケルベロス達はそれぞれに、頭のネジが吹っ飛んだ信者達の説得を開始した。

●バニーな勝負服
 ビルシャナの影響を受けて『バニー服最高!』になってしまった信者達を救うべく、ケルベロス達は最初に婆さんの説得に向かった。
 ここは、恥を忍んで婆さん達の気持ちをこちらに引き付けるしかない。覚悟を決め、豊水は某歌劇団顔負けの衣装とメイクに身を包み、バニー婆さん達に声を掛けた。
「やあ、お姉さん。オシャレで、その、とっても魅力的ですね」
 ここで一発、恥じらう演技。ビハインドの李々が口元だけで笑っているが、今ここで演技を止めるわけにはいかない。
「でも、そんな格好で寒くはないですか? 僕はどうにも寒がりで、見ているだけで寒くなってしまいます……」
 一緒に街を歩くなら、もっと暖かくて可愛らしい服の方がいい。良ければ、この後に着替えて散歩でもどうだ。そう言って手を差し伸べたところで、婆さん達はにわかに色めき立った。
「ちょっと、トメさん! 早速、いい男が声を掛けて来たじゃないか!」
「そうじゃのう、ウメさん。しかし……一緒に散歩するには、この恰好ではダメというのが残念じゃのう」
 婆さん二人は、豊水に声を掛けられたのはバニー服を着ていたからだと信じているため、どうにも歯切れと反応が悪い。すかさず、フレデリが豊水の着ている服を褒めちぎるも、やはり最後の最後で押しが足りないようで。
「今時、セクシーなだけのバニーガールじゃ、イケメンさんを振り向かせる事なんて出来ないのです」
 このままでは拙いと察し、真理が更なる援護射撃。ここで婆さん達を説得できなければ、彼女達はビルシャナの信者として、不幸な最期を迎えてしまうかもしれないのだ。
「男の人に守ってあげたいと思わせる清楚系……しかも何も知らない純朴系こそ、男の人の心を掴めるのですよ。……でも、それだけじゃダメなのです」
 くるりと回ってスカートの裾を舞い上がらせれば、そこから微かに見える太腿。そう、俗に言われるチラリズムというやつだ。
「何気ないセクシーが、一番男の人をその気にさせちゃうのですよ。セクシー全開なだけのお洋服なんて、むしろエッチな考えのおじさん達しか振り向かないのです!」
 二人は本当にそんな連中にモテたかったのか? 男だったら誰でもいいのか? 否、断じて違うはず。
「むぅ……確かに、言われてみればそうじゃのう。それに、『せくしー』な服は、勝負の時に着るものだと聞いたこともあるわい」
「要するに、晴れ着ということじゃろ? それなら、晴れの舞台に限って着るべきなんじゃろうな」
 ケルベロス達の懸命な説得により、婆さん二人の脳内では、いつの間にかバニー服が晴れ着の一種として認識されていた。それはそれで、どうなのかと思ってしまうのだが……まあ、ビルシャナの考えとは微妙に思考がズレたので、結果オーライである。
「あぁ、その美しく刻まれた年輪が辛抱たまらん! 余生を俺と添い遂げてくれないか!?」
 ダメ押しとばかりに、タキシード姿で助っ人に馳せ参じた青年が、跪いて気障に薔薇を差し出した。そのまま婆さん二人を抱きかかえると、式場へ向かってまっしぐら!
 もっとも、本気で結婚するつもりはないため、どこか罪悪感は持っていたようである。なお、こんな下らないことに付き合わされた仕返しとして、後にフレデリの犬グッズが、全部猫グッズに入れ替られてしまったが、それはまた別の話である。

●うさもふぱにっく!?
 婆さん二人を説得し、残る信者は後8人。その内の6名程はバニーガールにエロスを求める、ある意味ではスタンダードなビルシャナの信者達。
 敵の数を減らすという意味では、この連中を正気に戻すのが一番手っ取り早いだろう。そういうわけで、まずは雪が、オーソドックスな衣装から提案してみた。
「あー……そうだな。まぁ、バニースーツはセクシーかもしれんが、元々それ用の服だからな」
 それよりも、日常的に着る服でセクシーな物の方が良いのではないか。現に、自分の知り合いにも普段からチューブトップとホットパンツの組み合わせで過ごしている者がいるが、やたらと肌を見せているという点では、セクシーさは同じではないのかと。
 だが、そこはビルシャナの信者達。彼らにとっては、バニー服こそ至高のセクシー衣装! 故に、単に肌が見える程度の衣服では、バニーのインパクトを打ち負かすには少しばかり弱かった。
「はぁ? な~に言ってんだよ! バニー服は身体のラインがしっかり分かる上に、下着や水着みたいな無防備さがあるからいいんじゃねーか!」
 なんというか、どこまでも自らの欲望に素直な連中だった。これは普通に言葉で説得したり、一般的なコーディネイトで正気に戻させるのは難しいか。
「まったく……さっきから聞いていれば、何を言っているのかしら? カジノなど勝負の世界でプレイヤーを見守り、力を与えるならこちらでしょう!」
 こうなったら身体を張って説得するしかないと、銀子はチアガール風の衣装に着替え、自らボンボンを振るってアクロバティックなダンスを開始した。その際に、腹や太腿をチラリと見せることも忘れない。
「さあ、どうかしら? これでもまだ、バニーガールの方がいいって言うの?」
 挑発的な視線を向けつつ、銀子が尋ねる。さすがに、これは少しばかり効いたようで、何人かの信者達は銀子の周りを取り囲み、ワイワイと囃子立て始めた。
 このまま行けば、もしかすると意外と簡単に説得できるのではないだろうか。この機を逃してはならないと、エメラルドが続けて畳み掛ける。
「それでは、私はヴァルキュリアの伝統的な、この鎧について推していくとしよう」
 そう言って彼女が披露したのは銀色のビキニアーマー。そんな露出度の高い鎧で本当に大丈夫なのかという意見が一般的だが……これは、単に見た目だけの防具ではない。
「素早い挙動が求められる戦場においては、この最低限の箇所のみを守って機動性を確保した鎧は、むしろ合理的なのだ」
 勿論、男性が好むという意味合いでの肌見せも兼ねており、勇者達の士気高揚にも一役買っている。それに、この鎧であれば少し前に地球で流行った、『くっころ』と言うのも再現出来るだろうと。
「どうだ? 希望者がいれば実演するが」
「「「な、なんだってぇぇぇっ!!」」」
 つい、調子乗ってエメラルドが口にした言葉に、盛大に反応する信者達。彼らは我先にとエメラルドの元へ殺到すると、そのまま手際よく彼女を後ろ手に縛り上げ、なぜか自分達の衣服を脱ぎ始めた。
「こ、こら、何をする!? それに、どうしてお前達が脱ぐ必要があるんだ!?」
 慌てて止めようとするが、もう遅い! くっころの実演と聞いて舞い上がった信者達は、縛り上げたエメラルドに対して好き放題!
「ぐへへ……なかなかイイ身体してるじゃねぇか、姉ちゃん」
「このまま殺すなんて勿体ねぇ。さあ、俺達に奉仕してもらうぜぇ」
 殆ど全裸に等しい恰好で、エメラルドに迫る信者達。ああ、拙い。このままではエメラルドが、本当に彼らの慰み者にされてしまう!
「こらー、そこまでだよ! それ以上、エッチなことは許さないんだからね!」
「な、なんだぁ!? ……グェッ!」
 だが、あわや鎧を剥かれる寸前で、信者達を背後から理奈が釘バットで殴り倒した。
 普段の彼女からすると、考えられない程に過激な行為。しかし、今回の理奈は変態相手に容赦がない。なぜなら、事前にフレデリから釘バットを与えられ、『変態信者は命さえ残っていればいい』と言われていたので。
「な、なんという過激な連中だ!」
「やはり、バニー服を着ていない人間は、平和を愛せない危険な存在なんだ!」
 自分達の所業を棚に上げ、理奈を批判する信者達。もっとも、残るは自らバニー服を装着して楽しむコアな変態の二人組だったので、説得力など皆無である。
「セクシーな女ってのは、そう簡単になれるものじゃないんだよ。だからバニー服より、しっかりとしたコーデで固めなきゃ」
 あの変態どもには、女子力のなんたるかを教えてやろう。まずはエマが、胸元を強調するような装飾を施されたブラウスに、ギリギリな丈のハイウエストスカート姿でセクシーコーデを実演して見せる。当然、靴はハイヒールだ。
 もっとも、信者達は別に可愛い女子になりたいのではなく、バニー服そのものを着ることに快感を覚えるド変態だったので、残念ながら反応はいまひとつだった。
 そこまでバニーに拘るのなら、こちらも切り札を見せようと、ついにリリエッタがケルベロスコートを脱ぎ捨てる。コートの下から現れたのは……猫耳と猫しっぽを装着した、かなり露出の激しいメイド服!
「ウサギはかわいいけど、でも猫の方がもっと可愛いにゃん? それなら、猫さんの恰好をした猫耳メイドの方がバニーガールよりいいはずだにゃん!」
「ほぅ、猫か。それにメイド服、とな。確かに、それも魅力的な衣装だが……しかぁし! 残念ながら、フィット感が足りん! バニー服の、あのピッチリとしたボディラインを強調する際どさがない!!」
 さすがは、自らバニー服を着て楽しむことを至高とする変態紳士。最後の最後で、こいつはなかなかの強敵だ。
「いい加減にしないか、お前達! エロ衣装に可愛い動物要素を入れること自体、動物への冒涜だ!」
 残されたガチ変態紳士どもに、フレデリが怒りを炸裂させる。そんな彼の格好もまた、犬耳&しっぽ付きミニスカメイド服。動物は本来であれば癒しを与える存在であり、故にそれを萌え要素にするならば、もっと露出控え目で上品な衣装にすべきなのだと。
「ワンワン! お帰りなさいませご主人様だワン! 只今お茶をお持ちしましたワン!」
 勝ち誇った様子でドヤ顔を決めている変態紳士達を余所に、フレデリはあくまで犬耳メイドを装って紅茶を注ぐと、殆ど強引に彼らの口の中に注ぎ込んだ。
「……ぶはっ! な、なんじゃ、こりゃぁぁぁっ!」
「ウサギさんのための、ニンジン茶だワン! ウサギさんなら、ニンジンが好きなはずだワン!」
 もっとも、人参は人参でも、漢方薬に使われる高麗人参。ついでにタバスコ、青汁、イチゴ牛乳に、梅酢と鰻のタレも入れているのだと心の中で呟いていたが。
「うぅ……ふ、不覚……。ウサギさんに、こんな落とし穴があったとは……」
「こんなことなら……同じピッチリスーツでも……そっちの嬢ちゃんの言うように、ネコさんにしておくべきだったか……」
 フレデリの作った激マズ紅茶の破壊力により、轟沈する変態二人組。最後に、バニー服からキャットスーツへ憧れの対象を変えていたようなので、一応はビルシャナの支配から脱することができたのだろう……たぶん。

●ウサ堕ちバトル?
 変態どもを抑え、残すはビルシャナだけとなった。が、この手のアホな教義を広める鳥頭であっても、危険なデウスエクスであることに変わりはない。
「こんな格好にして、許さな、ん、ああっ!」
「だっ……だから、セクシーすぎなのはダメなのです、よぉ……!」
 バニー服姿にされた挙句、シルクハットから現れた触手に巻かれ、銀子や真理は早くも色々な意味で大ピンチ! 雪に至っては、自分だけでなくライドキャリバーのイペタムまでもウサ耳カチューシャを装着させられ、完全にウサギと化していた。
「きゃぅっ! そ、そんなとこ吸っちゃダメ……んっ!? ふぅぅぅっ!!」
 ちなみに、理奈は早々にバニー服姿にされた挙句、口の中まで触手を突っ込まれ、色々とイケない格好にされて早々にダウンしていた。
「ふははは! どうだ、この私の力は! 私はこの力を以て、世界中の全てをバニー色に染めてみせる!」
 勝ち誇る変態鳥頭。だが、ウサ耳はともかく、バニー服程度では屈しない者がいるのも、また事実。
「変態は倒すべし。慈悲はないよ」
「バニーガール服じゃなかったら、スカートの中が見られたかもね。ご愁傷様!」
 リリエッタとエマの強烈な蹴りが炸裂し、腹を蹴り上げられたビルシャナが悶絶して蹲った。この鳥、調子に乗っている割には、意外と防御が脆いようだ。
「敵はこちらで抑える! その間に、洗脳と触手をなんとかするんだ!」
「すまない、助かる!」
 エメラルドが槍を構えてビルシャナを牽制する後ろで、フレデリが雪に気力を分け与えて洗脳を解除した。こうなれば、もう勝ち筋は見えたも同然。雪の使うグラビティで、状況を一気に好転だ!
「くっ……! アタシの祈りが、誰かのためになるなら――」
 神へと捧げた祈りが清浄な風を呼び、銀子と真理を触手から解放する。こうなった以上、もはや情けは無用! 大口径ライフルとキャノン砲で、遠距離からビルシャナを吹っ飛ばす!
「ぐぬぬぬ……なんの、ここで諦めるわけには!」
 それでも、なおもしつこく食い下がるビルシャナだったが、ここに来て、ついに豊水の堪忍袋の緒が切れたようだ。
「もう我慢の限界っ! この際女性服なら何でもいいわ! あんたにこのストレスぶちカマすから覚悟なさい!」
 バニー服を、着せられるものなら着せてみろ。何ら躊躇うことなく突っ込んで行く豊水に向けてビルシャナが光線を放つも、衣服が変わったところで豊水は気にすることもなく、強烈な斬撃をお見舞いして行く。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃっ! や、やめてくれぇっ!」
「今さら遅いわよ! ウサギに詫びながら死になさい!!」
 最後は豊水が手にしたナイフで、ビルシャナのことを滅多斬り! かくして、全人類バニー化計画は阻止されたが、しかし衣服を変えられた者達は、恥ずかしさでいっぱいだった。
「くっ……まさか、こんな格好で帰ることになるとは……」
「仕方がない。この着ぐるみを着て、我慢しよう……」
 雪もフレデリも、なにやら物凄く疲れた表情で溜息を吐き、そのまま力無く帰路につく。その一方で、ようやく触手から解放された理奈は、自分のスタイルの貧相さに落ち込んでいた。
「でも、可愛いよ?」
「そ、そうそう! それに、まだまだこれからだよ!」
 リリエッタに続き、慌てて理奈を慰めるエマ。もっとも、今にも服からこぼれそうな胸を押さえながら言っても、あまり説得力はなかったようだ。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年2月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。