セーラー服以外の女学生の制服を許さぬ者たち

作者:塩田多弾砲

「さて……と」
 ここは、商店街の一角。
 そこに、向かっていく者たちが。
「これで、ようやく玲衣お姉の学校に行けるよ!」
「でも麻緒、わたしは今年高校だからね」
 などとやり取りする二人を連れ、祖母らしき女性が、
「はいはい、それじゃ二人とも……採寸しましょうね」
 姉妹とともに、店内へ。
 やや広めのその店は、学校指定の制服を販売している販売店。
「ええと……私立ウリエル女子大付属女子高の一年の制服と、中等部一年の制服ですね。はい、沢村様の名前で伺ってます」
 広い店内には、同様の家族の姿も。
 注文していたウリ女付属高の制服は、ジャンパースカートタイプの制服。夏服と冬服とが、近くのマネキンで飾られていた。
「おばあちゃんが通ってた頃は、ウリ女付属だけでなく、女子校の制服はみんなセーラー服だったけれど。最近はブレザーや、色々なかわいい制服がたくさんあるわねえ」
 そう、店内には数々の制服が。ブレザーが一番多いが、他にもボレロやイートンジャケット、ブラウスなども飾られていた。
 セーラー服は少なめだが、色彩が改められ、今風のお洒落でかわいいデザインになったものが、マネキンにて展示されている。
『……なんだ、この制服の凋落ぶりは!』
 が、いきなり入って来た集団が、そのセーラー服を見かけ、大げさに嘆く様子を見せていた。
『ブレザー? 邪道だ! 健全なるニッポンの女子校生には、セーラー服一択! それ以外は認めぬ!』
『『『そうだ! セーラー服こそ唯一無比!』』』
「……なにこの人たち」
「……うわー、引くわー」
 思わず引いてしまった、玲衣に麻緒の沢村姉妹。だがその闖入者たちの頭目たるペリカンのような鳥人間が、それに対抗するかのように喚き散らした。
『引くだと? 貴様らのような浮ついた若き莫迦者どもが、神聖なるセーラー服を汚し、退行させるのだ! これから我らは、無理やりにでもセーラー服の良さを教え込む! 皆の者、かかれーっ!』
 と、その連中は店内にて暴れ始めた。

「以前に、『下着の色は白以外認めない』ってビルシャナがいましたよね? それと同じような連中が、また現れました」
 セリカの言う事件は、ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)たちが解決したもので、『色付き下着を認めない』という者。
 で、今回は『セーラー服以外認めない』という内容。
 平たく言えば『女子学生の制服は、セーラー服一択。ブレザーなどもってのほか、セーラー服以外の制服は許さん』という主張である。
 そして、その主張を実行するため。かの下着店『Silky Knights』の原点たる服飾店『絹騎洋品店』に、連中は訪れたのだ。
『絹騎洋品店』は、昔ながらの服飾店であり、普通に背広などのスーツの他、各種学生服・制服を取り扱っている。
 そこに、今回のビルシャナたちが襲ってきたわけだ。
「……ビルシャナの『何々を許さん』っていう理由とか根拠とかに、整合性求めたりツッコミを入れる事に無意味なのはわかるけど……いい加減にしろって言いたくなるわ。まったく……」
 セリカの言葉に、同意を禁じ得ない君たち。
「まあ、いつものように、インパクトある主張して、うまくいけば信者たちを無力化できると思うので、よろしくお願いしますね」
 ビルシャナさえ倒せば、信者も元に戻る。なので、配下が多くなれば、それだけ戦闘で不利になる事は言うまでもない。
「ビルシャナは、土鳩みたいな薄汚れた外観で、清めの光と浄罪の鐘、ビルシャナ経文を用います。引き連れている信者たちは、十名以上。皆、『セーラー服こそが至高』と言ってますが……店内の、今どきの女子が着るようなセーラー服も、ブレザー同様に嫌っているようです」
 彼らが持ち上げているのは、『地味で、飾り気も少なめの、今の基準からしたら古臭いセーラー服』だという。
 店の隅にて展示されていた、『過去に着られていた制服』の中に、80年代のセーラー服を見つけると、『これこそが理想かつ最高の制服だ!』と興奮していたらしい。
 信者たちの半分くらいは、だいたい40代男女……自身が80年代当時に学生で、自身が、あるいは身近の女子が、そういうセーラー服を着ていたとおぼしき年齢層だという。
「要は、自分たちの世代にあったものこそが至高で、それ以外はクズ……って、そういう理屈ですね。ちなみに、あとの半分の男女は、だいたい20~30代くらいで、古い制服フェチやマニアの人たちのようです。こちらも、『新しい学校制服は気に入らん。やっぱ古い制服こそが至高』みたいな、勝手に過去を美化してるような人たちです」
 そして、彼ら彼女らは、どこか『現在の学生たちの制服が気に入らない・受け入れがたい』という思考を有しており、その点をビルシャナに突かれたのだろう……と、セリカは付け加えた。
「まあ、そういうわけなので。制服にケチをつけるこのビルシャナとその信者たちを、どうにかしてください」
 盛大にため息をつくセリカに対し、君たちは大いに同情しつつ、依頼を受けるのであった。


参加者
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
弓月・永凛(サキュバスのウィッチドクター・e26019)
草薙・美珠(退魔巫女・e33570)
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)

■リプレイ

●脱がさないよ、セーラー服
「セーラー服も可愛いですけど……個人的には、ジャンパースカートが良いんですが。スタイルも目立ちませんし」
 と、ブレザー風の制服を着たガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)は、店内にて待機していた。
 しかし、本当に様々な制服があるものだと、彼女は感心していた。それに比べ、店内の隅にあるミュージアムに飾られた過去のセーラー服は、どうにも見劣りしてしまう。
「昔のセーラー服。冬服は重苦しいし、夏服も飾り気がなさすぎ、ですね」
 と、レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)が。
 彼女も制服を、それもブレザーを着ていたが……、
 レイファは、超がつくほどの豊かな胸を有しており、その大きさゆえに、布がはちきれそうになっていた。
 やがて、沢村姉妹とその祖母の三人が……、
「……私立ウリエル女子大付属女子高の一年の制服と、中等部一年の制服ですね。はい、沢村様の名前で伺ってます」
 その姿を現し、そして。
『……なんだ、この制服の凋落ぶりは!』
 ビルシャナおよびその信者らも、姿を現した。

「な、なにあれ。玲衣お姉、変な人たちが来てるよ」
「麻緒、ああいう変なのとは関わっちゃだめ! すぐ逃げるの!」
 姉妹の言葉を聞き、
「そうだよ! さあ、早くこっちへ!」
 風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)が店の奥から出てくると、彼女たちを誘導した。
「皆さんも! 慌てず、早く逃げて下さい!」
 ビルシャナの出現に驚く客たちだったが、すぐに錆次郎の指示に従い避難を。レイファとガートルード、そして、
「皆さん、こちらです!」
 草薙・美珠(退魔巫女・e33570)と、
「さあ、落ち着いて……あら、私の裸に興味が? 後で、ね……?」
 弓月・永凛(サキュバスのウィッチドクター・e26019)も、それを手伝うが、
『逃げるな! お前ら、堕落した制服を着ようとしていた者どもに古き良きセーラー服の良さを叩きこむまで逃がさぬぞ!』
 ビルシャナが喚き散らし、それに対し信者らも雄叫びをあげる。
 が、
「古き良き? ……何を言ってるんだ?」
 日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)が、立ちはだかるように現れた。
 彼とともに、
「はあっ、まったく。非論理的、ね」
 ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)、そして、
「ええ、本当に。古き良き? それ、本当なのかしらね」
 シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)も、その姿を現していた。

●反逆しないし同盟しないよ、セーラー服
『貴様ら、我らの高尚な思想を愚弄するつもりか!』
 ビルシャナがそちらに向き直る。『くわッ!』と凄むが、
「愚弄? では伺いますが、あなた方はなぜ『昔のセーラー服』を推奨するのですか?」
 シフカが問いに問いで答える。
『それは……セーラー服はニッポンの女子高生に最も着られている! そしてその制服はイコール女子高生として認知されている! ならば当然、それを推奨して然るべき! 他の煩わしき制服など、入り込む余地など無い! ならば除外して当然! 違うか?』
『『『そうだそうだ! セーラー服だけあって当然!』』』
 勝ち誇ったビルシャナに、
「なるほど、主張はわかりました。では……」
 シフカが、冷静に問いただす。
「では、セーラー服の『機能性』について、話してください」
『……な、何? 機能性? だと?』
 とたんにしどろもどろになるビルシャナ、および信者一同。
「……服の見た目も大事ですが、着用し得られる『利点』は、もっと大事ですからね。例えば……冬場の『寒さ対策』は、そして『保湿性』や『防風性』はどうなんですか?」
『さ、寒さは、下着を着ていれば済む事だ! 保湿も水分を取っていれば……』
 返答にならない返答をする信者たちへ、
「『吸水性』、『通気性』はどうですか? それらも考慮されていれば、汗をかきやすい夏の不快感が軽減されるので良いですね。そうそう……『服の素材』も大事ですね」
 と、シフカはたたみかけた。
 ガートルードも、それに便乗する。
「そうです! 昨今の制服、特にブレザーは、着る側からしたら環境に対応しやすくて、機能的なんです」
『なにっ?』
「寒い時は、カーディガンなどを羽織れますし、暑くなったらブラウスを着てますから、上着を脱げばいいですし。……セーラー服だと、周囲の目がありますから、簡単に着たり脱いだりができません。あ、それとも……『脱ぎ脱ぎ』してるとこを見たいんですか? ……えっち、ですね」
 再び、シフカ。
「まあ、それはともかく。そういった点は、昨今の制服は対応してくれて助かりますよ……で、皆さん」
 言葉に『凄味』を纏わせたシフカは、
「……改めて、セーラー服の『機能性』。教えてくださいますよね?」
 そんな彼女に対し、
『……そ、そういう対策をしたうえで、昔のままのセーラー服を作ればいい! 生地を時代に合わせてそう作ればいいのだ!』
 ビルシャナは、返答にならない返答を更に繰り返す。
『そ、そうだそうだ!』
『今風に生地を変化させれば、それで済む事だ!』
『寒さ対策と吸水と通気性を考慮した素材を使い作れば済む事! 何の問題もない!』
 信者たちのそんな非論理的な返答に対して、
「では、『セーラー服が廃れた理由』を、具体的に説明いたしましょう」
 ミスラが進み出た。
「例えば、女子高生の不良……いわゆる『スケバン』。彼女らは、セーラー服を改造した服を着ていましたね。あなた方の言う通り、セーラー服は『シンプル』。ゆえに……『改造が容易』です」
『た、確かに……』
『あんな改造したセーラー服など、我らは認めぬ!』
『セーラー服ってのは、普通だからこそ良いのよ!』
 同意する信者らに、
「ええ。シンプル過ぎる故に、改造しやすく……それは『服装と風紀の乱れ』を生じさせます。それが廃れた理由の一つ」
 それと……、
「もう一つ。先刻シフカさんが言われていたように、セーラー服は季節・気温の、変化に応じた『温度調節』が難しいのです。機能性に欠点が存在し、なおかつ女生徒たちの健康面も考慮して……あっ……げ、現在の……デザインの、制服が……んうっ! ……浸透していったわけです」
 時折、びくびくと痙攣しつつ、ミスラは言う。
「? ……まあ、それとだな」
 彼女の様子に疑問を覚えつつ、今度は蒼眞が。
「80年代のセーラー服も、それ以前の……それこそ大正や昭和初期の制服からしたら、随分と変わっているだろう? 40年も経過すれば、色々皮てくるだろうに」
『し、しかし……』
『セーラー服、とは……完成された、デザインだから……』
 徐々に反論に力が無くなって来た信者連中。それに対し、
「制服ってのは、ある程度は時代や流行を反映した、お洒落さも必要だろう? 時代に合わせ変化していくのは当然だ」
 更なる正論を叩き付ける蒼眞。
「旅客機の客室乗務員やウェイトレスやらの制服に、憧れを抱くってのはあるだろう。職業自体が重要だけど、業務中に着用の必要がある制服が、時代遅れでダサかったりすれば、魅力も半減するし、新人募集も差し支えるだろうな……」
『……だ、だが……セーラー服は、絶対……変わる事のない、魅力が……』
「当時からスケバンファッションやコギャル……今となっては死語だが、80年代に実際に来ていた当時にも、自分好みに改造してた人たちはいたんだ」
 はあっと、一息つき、
「……特定の制服を押し付けられれば、反発もあるのは世の常だろうさ」
 その止めの一言に、
『ぐ、ぐぬぬ』
『……当時、スケバン張ってたわたし、言い返せんわ……』
 信者らの半分が、陥落したのであった。

●機関銃は快感じゃないよ、セーラー服
『だ、黙れ黙れ黙れーっ! セーラー服は、女子が着るものであり……』
 更なるビルシャナ、および信者らの悪あがき。それに対し、
「ならば、セーラー服のメリットと、デメリット。それを語っても良いかしら?」と、永凛が。
「メリットは、着脱が容易なのと、見た目が可愛い事ね。デザイン的な魅力は確かに、認めるところだわ」
 けれど……と、念を押し、
「けれど、デメリットもあるわ。手を挙げたり、前かがみになると、お腹や胸が見えてしまうのよね……」
『た、確かにそうだわ』
『し、しかし! そこから見える肌がまたたまらぬ……』
『莫迦者! 今そんな事を言っている場合か!』
 狼狽える信者らに、
「……あら、だから至高とでも言いたいのかしら?」
 ジトっ……と、冷たい視線をあびせる永凛。
「そもそも、セーラー服以外の制服を見た事はあるのかしら? 選択の幅が広くなっている今どきの女子学生に対し……古臭いセーラー服以外認めない、着るなっていうのは……嫉妬でなくて?」
 かくして、残りの信者らの半分も陥落。
『う、う、うるさい! セーラー服は、昔から女子が着るものと決まってる……』
「いや、元々は水兵……セイラーの服で、男の戦闘服だったんだよ」
 錆次郎が参戦し、事実を述べる。
「ほら、検索した画像、見る? ……ムキムキマッチョな男たちが、セーラー服着てるでしょ? ……それに、セーラー服の型式や様式は、時代によって変わるもの。古式ゆかしいのがいいなら……ワンピース型のセーラー服も、忘れちゃならないよ」
『だ、だが……お、男が着ていたものでも……』
「それから、そもそも……『指定制服を着ないと、学校に行けない』って事も、忘れてないかな。制服は、学校の中でこそ栄えるもの、だしね」
 と、これまた陥落。
『し、しかし……セーラー服以外の制服など……』
 と、まだセーラー服至高の呪縛から逃れられない者に対し。
「それでしたら、新しい制服の良さをお見せしましょう!」
 と、美珠が進み出た。

(「神様が、『お店に話を通し、制服を用意しておく』との事でしたが……」)
 わくわくしながら、用意してくれた制服を改めると、
「ま、まさか……これ、ですか!?」
 更衣室から、困惑の声が。
『? 制服に着替えて、その魅力を見せつけるんじゃあないのか!?』
「は、はいっ! 今お見せします!」
(「ううっ、これも洗脳を解くためですから、仕方ありません!」)
 羞恥を抑えつつ、美珠が姿を現す。
「みなさん、こんな制服はいかがですか? ……最近は、こんな制服もあるんですね!」
 皆の前で披露するも、
「……あの制服。スカート、短すぎじゃない?」シフカが呆れ、
「……こっちの制服は。上着の丈、短すぎ。お腹が完全に見えちゃってる」と、ミスラ。
「……今度のは布地、完全に透けてるよ。ちょっと人前じゃ着られない制服だね」と、蒼眞。
「……え?」
 おかしいですね、神様が用意して下さった、特注品のはずですが。
 そう信じて疑わない美珠は、今自身が着ているそれらが、『女子高生ものAVの撮影用衣装』という事を知らないでいた。
 信者たちは、ハァハァと息荒く、セーラー服云々など頭から吹っ飛んでいる。
「私も! ……ねえ、女の子のブレザーの下が、こんなだったら、魅力的だと思わない?」
 レイファが、ブレザーの上を脱ぐ。ブラウスが巨大な胸のせいで、胸元に隙間ができていた。
 そのままくるっと回ってみると、ぎりぎり内部が見えない程度に、スカートの縁が翻った。
「どうです? このミニスカも良いものでしょう? ここから下着にも気を遣う様になり……女性は自分を磨くのです」
『そ、そうだねー』
『せ、セーラー服以外も、いいもんだわー』
 かくして、信者は全てが陥落。
『そ、そんなばかな、セーラ服は、無敵……』
 ビルシャナは、最後まで言えなかった。
 蒼眞の仕掛けた達人の一撃による一閃により、その命を斬り捨てられていたからだ。

●月も惑星もお仕置きしないよ、セーラー服
 こうして、ビルシャナは倒され、ほぼ無傷の店内もヒール。客も戻り、シフカは、
「……少し服を見て行こうかしら」
 と、店の制服を見て回りはじめた。

 ……ではあったが、一部の者たちはそれで済まなかった。

「ほれほれ、リモバイで感じてたんだろ? 孕ませてやるぜ!」
 近くの公衆便所の男子トイレ内。そこに連れ込まれたミスラは……、彼らの手に落ちていた。
 ある玩具を股に装着され、遠くからそれを操作する事で、男たちは彼女の反応を見ていたのだ。今はそれを外され、男たち自身が彼女の中に入り、かき回している。
 何度も放出し、彼女の中に無理やりそれを満たし、そして、
「あ、ああ、私……あああああっ!」
 まるで射精するかのように、白濁の液体を、
 カエルのようなガニ股のポーズを取らされ、便器へと排泄する様を見せていた。

 更に、別の場所では。
「あ、あのっ!? きゃああっ!」
 信者たちに押し倒され、マニアックかつエロな制服に次から次に着替えさせられ、そして肌を重ねている美珠の姿があった。
「……くふふ、やはり信者ども。イチコロだったのじゃ! 洗脳を解くには半脱ぎえっちじゃぞという我が言葉、美珠が信じてくれて何よりなのじゃよ!」
 そして、それをこっそり撮影している邪な神が約一名。
 その近くでは、
「ああんっ! また、縛ってええっ!」
 こないだ知り合った、女性同士のカップル。そのSな方におねだりして、お仕置きプレイに興じるレイファの姿もあった。

 が、いつもならそれに参加していそうな永凛は、
 とある者を、訪ねていた。

「……お姉さま……」
 屋敷にて、今年四月からの制服……中等部の制服を着ている少女の元へ、永凛は見舞いに赴いていた。
「麗奈ちゃん……」
 が、姉の容態は変わらず……麗奈は、永凛に抱き着いていた。
「……怖かった……怖かった! 怖かったぁぁぁ! 父様も母様も死んじゃって! 姉様も! あああああ! あーっ! あーっ!」
 泣き叫ぶ彼女。まだ12歳の少女、こうなって当然だろう。
「……お願い、です。お姉さま。どうか……」
 ひとしきり泣き終えた彼女は、
「……どうか、嘘でもいい。私を、愛して下さい。そうすれば、私……戦う『覚悟』が、できると思います……」
 そして、かぶりを振り、
「ううん……愛されなくてもいい。お姉さまを満足させるためだけの、奴隷でもいいから……私を、捨てないで……もう私には、お姉さましか……」
「…………ええ、離さないわ」
 その言葉が、我ながら空虚に聞こえていた。快楽と欲望に忠実で、それに従っていた自分が、『愛』などと言えるのか。この境遇を利用し、自分は彼女を『快楽を得るためだけの奴隷』に堕とし、楽しむのではないか。
 ……いや、『愛してみせる』。愛のない快楽など、それこそが欺瞞。奴隷になどするものか。自分はそこまで、外道の鬼畜ではない筈だ。
 永凛はしっかりと麗奈を……腕の中の小さな少女を、抱きしめ続けていた。
 麗美がそれに反応したように、僅かに動いていた。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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