荒ぶる電動ハブラシ!

作者:ゆうきつかさ

●埼玉県某所
 とある倉庫に放置されていたのは、大量の電動歯ブラシであった。
 その電動歯ブラシは社運を掛けて売り出されたものの、まったく売れず、返品の山が出来た曰くつきのシロモノ。
 それが原因で会社が潰れてしまい、処分費用の問題から倉庫の片隅に放置されていた。
 そこに蜘蛛のような姿をした小型ダモクレスが現れ、カサカサと不気味な音を響かせながら、電動歯ブラシの山に入っていった。
 それと同時に電動歯ブラシの山が機械的なヒールによって作り変えられ、家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「デンデン、ド、ド、ド!」
 次の瞬間、ダモクレスが奇妙な鳴き声を響かせ、倉庫のシャッターを破壊し、辺りにいた一般人達を襲って、グラビティ・チェインを奪うのだった。

●セリカからの依頼
「モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が危惧していた通り、埼玉県某所の倉庫で、ダモクレスの発生が確認されました。幸いにも、まだ被害は出ていませんが、このまま放っておけば、多くの人々が虐殺され、グラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。そうなってしまう前に、何としてもダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ダモクレスが現れたのは、埼玉県某所のとある倉庫。
 その場所の周辺で沢山の人々が生活をしているため、このままダモクレスを放っておけば、取り返しのつかない事態に発展してしまう事は間違いだろう。
「このダモクレスはハリネズミの如く無数の電動ハブラシを生やした巨大なクモのような姿をしており、一般人をゴシゴシと磨きながら、その命を奪っているようです」
 セリカがケルベロス達に対して、ダモクレスに関する資料を配っていく。
 ダモクレスは汚れたものほどキレイにしたがる性質があるため、大量のゴミを集めたり、辺りを汚したりする事で注意を引く事が出来るかも知れないようである。
「とにかく、罪もない人々を虐殺するデウスエクスは、許せません。何か被害が出てしまう前にダモクレスを倒してください」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)
霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)

■リプレイ

●埼玉県某所
「……ったく、ダモクレスっつうのは、どんな所にも忍び込みやがる。あんま放置すんなって行政指導でも入れねぇとキリがねぇな、こりゃ」
 鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)は仲間達と共に、ダネクレスが確認された倉庫に向かっていた。
 ダモクレスは倉庫の中に山積みされていた電動ハブラシを取り込んで巨大化したらしく、外に出るべく壁に何度も体当たりをしているようだった。
 そのため、何の事情も知らない一般人達がパニックり陥っており、倉庫から遠ざかるようにして逃げている最中だった。
「……ダモクレス、不法投棄だけじゃなく不良在庫まで手を付けだしたんだ」
 峰谷・恵(暴力的発育淫魔少女・e04366)が呆れた様子で、ダモクレスが確認された倉庫のある方角に視線を送った。
 おそらく、ダモクレスからすれば、屋外に投棄されるのも、屋内に投棄されるのも、大した違いではないのだろう。
「……とは言エ、原稿徹夜のテンションで見ていると、うっかりポチってしまいそうになりマス。確か、ダモクレスになった電動ハブラシも、深夜番組の通販もの観た気がしまスシ……」
 モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)が以前テレビで観た通販番組を思い出し、複雑な気持ちになった。
 そう言えば、テレビでも『絶対の自信作! これ一本で、すべて解決!』と言った感じで、電動ハブラシを売り込んでいたような気がする。
 だが、その気持ちに反して電動ハブラシは売れず、不良在庫として会社を傾く原因を作り出してしまったのだろう。
「その情報に間違いがないのであれば、隅々まで綺麗に磨ける事が売りだったようですね。まあ、普通の歯ブラシを使っている私には縁がありませんが……。それに、お口に合わないほど巨大化してしまい、本来の目的を忘れてしまった以上、倒すしかありませんね」
 源・那岐(疾風の舞姫・e01215)がタダならぬ殺気を感じ取り、警戒した様子で身構えた。
「ハブ、ハブ、バフラシィィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ダモクレスが倉庫の壁を突き破り、ケモノの如く咆哮を上げた。
「既に、原形を留めていないようだな。よくこんなダモクレスを予測したものだな、モヱ」
 ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)が双眼鏡を覗き込みながら、殺界形成を発動させた。
 ダモクレスは巨大な電動ハブラシにクモのような脚が生えたような姿をしており、沢山の電動ハブラシが体毛の如く生えていた。
「あれでは、満足に歯も磨けまセンネ」
 モヱも同じように双眼鏡を覗き込み、残念そうに溜息を洩らした。
 それに気づいたダモクレスはアスファルトの地面をガリガリと削りながら、ケルベロス達に迫ってきた。
「……もはや歯に限定せぬようだな」
 嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)が清掃員の恰好でゴミを集めつつ、ダモクレスの進路を狭めていった。
 その誘いに乗ってダモクレスがゴミを飲み込む勢いで、地面をガリガリと削るようにして迫ってきた。
「リア充相手であれば歯の汚れと一緒に丸ごと掃除して貰っても構わなかったのですが……! 相手がダモクレスである以上、仕方がありませんね。このままデストロイです」
 霖道・裁一(残機数無限で警備する羽サバト・e04479)がキリリとした表情を浮かべ、ダモクレスに向かっていった。
 ダモクレスにとって、何が汚れたモノで、何が綺麗なモノなのか分からない。
 だが、こちらに向かっている事を考えると、ダモクレスにとってケルベロスは汚れたモノであり、排除すべき敵なのだろう。
「圧倒的なパワーを……見せてあげる!」
 それを迎え撃つようにして、エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)が間合いを詰めていった。
「それでは状況を開始しよう。速やかに標的を破壊する。皆全力を尽くしてくれ」
 そう言ってハルが仲間達に声を掛けつつ、ダモクレスに攻撃を仕掛けていった。

●ダモクレス
「確かに……別物ですね、これは……」
 那岐がダモクレスの奇怪な姿を目の当たりにして、軽快した様子で間合いを取った。
 ダモクレスの身体から生えている電動ハブラシは、歯を磨くのには適しておらず、出来る事と言えば地面を削る事しか出来ないため、違和感しかなかった。
「……やはり、ゴミの反応しているのか」
 槐がダモクレスの興味を引くようにして、次々とゴミを撒いていった。
 それに導かれるようにして、ダモクレスが地面をガリガリと削りながら、ケルベロス達に迫ってきた。
「ひょっとして、ボク達もゴミ扱い……!?」
 その事にショックを受けつつ、恵がクイックドロウを仕掛け、目にも止まらぬ速さで弾丸を放って、ダモクレスの攻撃を避けた。
「虫歯(病魔)に対抗するなら良い素材で御座いますのに……こうなっては仕方ありマセン」
 モヱが残念そうにしながら、ミミックの収納ケースと連携を取って、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
 それに合わせて、収納ケースがエクトプラズムを汚れ状に垂れ流し、周囲で拾ったゴミを箱の中に入れ、ダモクレスの注意を引いた。
「被害が出ちゃう前に……早めに解決しないとね」
 その間に、エリザベスが一気に間合いを詰め、ダモクレスに溜め斬りを放って、超高速の斬撃で上部装甲を剥ぎ取った。
「まずは、その動きを断つ」
 ハルがエリザベスと息を合わせ、ダモクレスにスターゲイザーを放って、剥き出しになったパーツを蹴り飛ばした。
 そのせいで、ダモクレスの動きがぎこちなくなっており、ボディのあちこちから真っ黒に煙が上がっていた。
「道弘、一気に攻めますよ!」
 その隙をつくようにして、裁一が道弘に声を掛けつつ、ダモクレスの死角に回り込んだ。
「ま、ちゃっちゃと在庫処分といくかねぇ」
 その気持ちに応えるようにして、道弘が裁一を援護するため、ヒールドローンを展開した。
 上空に飛び立ったヒールドローンは、裁一のまわりを飛び回り、身を守る盾となった。
「デン、デン、デ、デ、デ、デ!」
 それと同時に、ダモクレスが電動ハブラシ状のアームをフル回転させ、ケルベロス達に攻撃を仕掛けていった。
 それは歯磨きと言うよりも、歯削りと言う言葉が相応しいほど、乱暴で破壊力を秘めた攻撃であった。
「そんな事をしたら、蒐の表面に疵がつくじゃないか。洗車代が浮くかと思ったが、後で塗装し直しだな」
 その攻撃を防ぐようにして、槐のライドキャリバー(蒐)がダモクレスの行く手を阻み、キャリバースピンで足止めした。
 それが原因で蒐のボディには無数の傷がつき、まるで戦いの勲章の如く鈍い光を放っていた。
「それじゃ、俺の足も磨いて貰いましょう。その体で! 拭くのです!」
 裁一がダモクレスの死角にまわり、スターゲイザーで炸裂させた。
「……その歪みを開く」
 続いてハルがシャドウリッパーを仕掛け、影の如き視認困難な斬撃を繰り出し、ダモクレスのパーツを次々と掻き斬った。
 そのたび、奇妙な形をしてパーツが辺りに散らばり、ギチギチと耳障りな音を響かせた。
「さて、披露するのは、我が戦舞が一つ……逃がしませんよ!!」
 それに合わせて、那岐が風の戦乙女の戦舞・朱(セイクリッド・シルフィード・ダンス・カーディナル)を発動させ、無数の朱色の風の刃で、ダモクレスを攻撃した。
「デン、デン、ド、ド、ド!」
 次の瞬間、ダモクレスがハブラシミサイルを放ち、大量の電動ハブラシを雨の如く降らせてきた。
「これでは綺麗にしたいのか、汚したいのか、分かりまセンネ」
 モヱが電動ハブラシミサイルの爆撃を避けつつ、ダモクレスに迫ってスパイラルアームを炸裂させた。
 その間に、電動ブラシが次々と地面に突き刺さり、穴を掘り進めながら、次々と爆発していった。
「自分で掃除するために、汚しているのかな? 何だか、よく分からない事になっているけど、倒してしまえば問題ないよね……!」
 それと同時に、恵がファミリアシュートを仕掛け、杖を小動物の姿に戻した上で、魔力を籠めてダモクレスに射出した。
 しかし、ダモクレスは怯む事なく、真っ黒な煙を上げながら、ケルベロス達に突っ込んできた。
「まあ、このまま暴れまわられても厄介だ。この毒で大人しくしてもらおうか」
 そう言って裁一が嫉妬暗殺術(カップルシスベシ)を仕掛け、ダモクレスに毒を投与した。
「デ、デ、デン、ブラ、ブ、ブ、ブ……」
 その途端、ダモクレスが地面を揺らすほど震え、全く身動きが取れなくなった。
 それでも、身体を動かそうとしていたが、そのたび大量のオイルが漏れ、鼻につく異臭が辺りに広がった。
「……では、仕上げと行こう。これで……さよならだ」
 ハルが境界解放・蒼空断絶(ブレードライズ・デストラクタ)を発動させ、光を束ねた斬撃を放って、ダモクレスを真っ二つに切り裂いた。
「デ・デ・デ・デ・デ・デ・デンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
 その一撃を喰らったダモクレスが断末魔を上げ、大爆発を起こして、バラバラに散らばった。
「みんな、お疲れ様ー! ……やっぱり、みんな強いね……!」
 エリザベスがホッとした様子で、仲間達に対して声を掛けた。
 ダモクレスとの戦いで、まわりのモノがだいぶ壊れてしまったが、一般人達に被害が及ぶ事が無かった事が幸いであった。
「……とは言え、さすがに被害が出てしまったようだが……。こんな事にならないように、勤め先の倉庫もセキュリティ強化しねぇとなぁ」
 道弘が複雑な気持ちになりつつドローンを飛ばし、被害箇所をヒールで修復していった。
 ダモクレスの被害は深刻であったものの、ケルベロス達が注意を引いた事によって、被害が分散する事はなかった。
(「さて……、今夜の夜ご飯は何にしようかね」)
 そんな事を考えながら、那岐がダモクレスだったモノに視線を落とした。
 食事の後は、きちんと歯磨き。
 それだけは絶対に忘れないようにしようと思うのだった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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