ふわもこ羊さんコスの女の子が至高である！

■リプレイ

●廃墟と化した施設
「……羊か。羊も中々に良い食材だな」
　皇・絶華（影月・e04491）は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている施設の前に立っていた。
　施設は廃墟と化しているものの、ビルシャナ達の手によって、ふわふわ、もこもこ。
「ひょっとして……食べる訳では無いのか！？」
　そこで絶華が自分の間違いに気づき、事前に配られた資料を見返した。
「……なるほど。羊の恰好をして、ふわもこか……。いや、よく分からん。まったく理解できない……というか、したくないのだが……。まぁ、何であれ、奴らの思考は、壊れ過ぎだな。故に……その閉じ切った思考を解放させなければならないな」
　絶華がキリリとした表情を浮かべ、聖剣エクスカリバーの如く高々とチョコレートバーを掲げた。
　気のせいか、そのチョコレートバーから禍々しい手作りオーラが漂っているものの、あえてその話題に誰も触れようとしなかった。
「ふわもこは……あこも大好きですが……みずから、ふわもこする必要は、どこにでもないのです……！」
　そんな中、八点鐘・あこ（にゃージックファイター・e36004）が、自分なりの考えを述べた。
　ビルシャナ達の手によって、施設がふわもこしている事もあり、何処からどう見ても怪しさ万歳。
　それ故に、悪目立ちしていた。
　それでも、お子様達には大好評らしく、勝手に探検ごっこをして、行方不明になったりしているらしく、それが原因で近隣住民とトラブルが絶えないようだ。
「……とは言え、性別年齢問わず、みなさまふわもこが好きなのも事実ですわ。だからと言って、ふわもこだけあれば良いという訳ではありませんが……。確かに、ふわふわも素敵ですが、ふさふさとか、さらさらとか、そういうのもいいと思いますし……。女の子限定にする必要なんてありませんの！」
　霧城・ちさ（夢見るお嬢様・e18388）が衣装バッグを抱え、キッパリと断言をした。
　それに、女性信者達は洗脳されている影響で、ふわもこに執着しているなので、洗脳を解くのはそれほど難しい事ではないだろう。
「まぁ、ふわふわして、もこもこしたやつが癒し系ってのは否定できねぇけどな。つっても、自分でそんな恰好するのはゴメンだし、ましてや強要されるのもな」
　その間に、神居・雪（はぐれ狼・e22011）が足場を確認しつつ、敷地内に入っていった。
　敷地内には、ふわもことした綿のようなモノが敷き詰められており、まるで雪が積もったような状態になっていた。
「……気のせいか、室内から寝息が聞こえますね。……まさか、知り合いの羊さんみたいに『今日出来ることは明日やる』とか言って、寝てばかりなのでは……」
　若生・めぐみ（めぐみんカワイイ・e04506）がハッとした表情を浮かべ、脳裏に知り合いの羊さんを思い浮かべた。
　おそらく、室内は快眠ルーム状態。
　例え、どんなに根付きの悪い相手であっても、御陀仏レベルで安眠できる可能性が高そうだ。
「……と言うか、羊さんより、うさぎさんの方が可愛いでしょ！　絶対に、羊さんの方が可愛いなんて間違っているよっ！」
　そう言ってチェリー・ブロッサム（桜花爛漫・e17323）が、ふわふわの耳付きパーカーと、しっぽ付きショーパンでバッチリ決め、ふわもこな通路を掻き分けるようにして、施設内に足を踏み入れた。

●ふわもこ内
　施設内は、ふわもこしていた。
　あっちも、ふわもこ。こっちも、ふわもこ。
　そのため、自分がふわもこなのか、ふわもこの中にいるのか、まったく分からなくなってしまう程だった。
「お前達も、ふわもこに惹かれ、ふわもこになるため、此処に来たのか？」
　そんな中、目の前のふわもこ雪ダルマ……もとい、ビルシャナがケルベロス達に声を掛けた。
　どうやら、女性信者達は、安眠中。
　ビルシャナに寄り添い、スヤスヤと寝息を立てていた。
「……と言うか、猫の方が手触り良くないか？　そもそも、手触りや、癒しや、ぬくもりを求めるなら、猫だろう？　猫の毛は柔らかくてふかふかで、つやつやなんだぞ？」
　その言葉を否定するようにして、絶華が猫耳ゴスロリドレス姿で、ビルシャナ達の前に陣取った。
「ふざけるな！　何が猫だ！　この世で最も尊いのは、ふわもこ……。ふわもこ羊だけだ！」
　ビルシャナがイラッとした様子で、ケモノの如く吠えた。
　その声に驚いた女性信者達がビクッと体を震わせ、慌てた様子で飛び起きた。
「……は！？　うさぎさんの方が可愛いんだが！？」
　チェリーがムッとした様子で、ビルシャナの言葉を否定した。
「何がウサギだ！　そんなモノは、羊に比べれば、下の下だ！」
　ビルシャナが鬼のような表情を浮かべ、躊躇う事なくキッパリと言い放った。
「いい加減にしないか。何故、そうして一つを良いとしたら、他を唯否定するのだ。貴様らはもう少し、それぞれの多様性に目を向けるべきだ」
　絶華が呆れた様子で頭を抱え、深い溜息を漏らした。
　そう言いつつも、猫耳を全力で推しているものの、これではいつまで経っても、平行線。
　だが、誰ひとりとして妥協を許さない程、ピリピリムード。
「皆さん、落ち着くのです！　ふわもこには欠点があるのです！　ふわもこは夏場めちゃめちゃ暑いのです！　夏毛つやさらなあこでさえ暑いのだから、ふわもこなど地獄に違いないのです！」
　その間に、あこがハロゲンヒーターをONにして、室内を灼熱地獄に変えた。
「……って、馬鹿！　こんな場所でハロゲンはヤベェって！」
　その途端、ビルシャナが青ざめた表情を浮かべ、部屋の隅にあった消火器を掴み取った。
　次の瞬間、ハロゲンヒーターの熱で、ふわもこが勢い良く燃え上がり、ビルシャナだけでなく、女性信者達までパニックに陥った。
　これにはケルベロス達も慌てふためき、女性信者達が持ってきた消火器を受け取り、一緒になって火を消した。
「ち、違う意味で……涼しくなったのです」
　あこが消火器を持ったまま、乾いた笑いを響かせた。
　おそらく、似たような事で、室内が炎に包まれた事があるのだろう。
　剥き出しになった壁には、以前の火事で焦げた跡が残っていた。
　そのおかげで消火器を何本も常備していたらしく、大事にはならなかった。
「……ですが、せっかくのふわもこが焦げてしまいましたね。可愛いお洋服ならいろいろありますし、私が着せてあげますわっ」
　その流れに乗るようにして、ちさが可愛らしい洋服や、着ぐるみ等をバッグの中から取り出した。
「……って、駄目だ、駄目！　ふわもこ衣装の着替えなら、きちんとある！」
　それに気づいたビルシャナが、女性信者達に対して、ふわもこビームを放ち、焦げた跡を修復した。
「せっかく、沢山用意したのに、それは残念ですのっ」
　ちさがションボリとした様子で、ウイングキャットのエクレアを呼び寄せ、代わりに可愛らしい衣装を着せた。
　その事に気づいた女性信者達が興味津々な様子で、エクレアを目で追いかけ始めたものの、本音を口にする事が出来ないため、その心境は複雑なようだった。
　そんな事情を知ってか知らずか、エクレアが次々と衣装を着替え、単独ファッションショー状態。
　女性信者達もキラキラとした目で、エクレアを目で追いつつ、両手で口元を押さえる事で、感情の起伏を誤魔化した。
「……まっ、どうせ言葉で説得しても、あんま効果ねぇとは思っていたが、こうなったら……その羊の恰好を剥ぎ取って正気に戻してやるよ！」
　次の瞬間、雪が羊を狙うオオカミの如く勢いで、傍にいた女性信者の衣服を剥ぎ取った。
「きゃあああああああああああああ！」
　その途端、女性信者が絶叫を上げたものの、雪は全く気にする事なく、次々と女性信者達に襲い掛かった。
　そのため、女性信者達が身の危険を感じ、部屋の出入り口に殺到した。
「現実は厳しくて癒しが欲しい気持ちはわかりますけど、ずっとそのままでいるわけにもいきませんよね。……という事で、ちょっと強引ですけど、夢を終わらせてあげます」
　その行く手を阻むようにして、めぐみがバリカンをフル稼働させ、女性信者達のふわもこ衣装を剥ぎ取った。
「ふふふふふ、これで羊さんコスの子達も脚丸出しで、うさぎさんと一緒だーっ！」
　それに合わせて、チェリーが女性信者達にウサ耳をつけ、何処かの仮装大賞で登場しそうなウサギさんコスに変えていくのであった。

●ビルシャナ
「ば、馬鹿なっ！　俺の洗脳が！」
　それを目の当たりにしたビルシャナが、信じられない様子でクチバシを震わせた。
　女性信者達は完全に自我を取り戻したらしく、ゴミを見るような目でビルシャナを睨んでいた。
「信者さんには、指一本触れさせませんわ」
　すぐさま、ちさが女性信者達を守るようにして、ビルシャナの前に立ち塞がった。
「いや、俺の方がヤラれそうなくらい睨まれているんだが……。こうなった以上、仕方がねぇ！」
　ビルシャナが複雑な気持ちになりつつ、半ばヤケになりながら、ふわもこビームを放ってきた。
「な、なんだ、このヘンテコなビームは……」
　そのビームをモロに食らい、雪がふわもこになりつつ、ビルシャナにスターゲイザーを仕掛け、流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを炸裂させた。
　どうやら、ビルシャナのビームに殺傷性はなく、身に着けているモノが、ふわもこのなるだけ。
　その影響で、スターゲイザーの一撃も、ふわもことしていたため、ビルシャナがニンマリと笑っていた。
「さあ、鶏の毛刈りの時期が来ました……特別にめぐみがしてあげますね」
　その表情にイラっとしたのか、めぐみが屠殺師のオーラを漂わせ、閃光疾走（シャインダッシュ）で間合いを詰め、一心不乱にビルシャナの不毛を毟り始めた。
「ぐぎゃあああああああ、やめろおおおおおおおおおおおおお」
　その途端、ビルシャナが身の危険を感じて、可憐な乙女の如く瞳を潤ませ、ケモノの如く悲鳴を上げた。
「ちぇすと――！」
　それに合わせて、チェリーが凶太刀を仕掛け、刃から伝わる呪詛で魂を汚染し、ビルシャナを大人しくさせた。
「な、何故だ。何故……こんな事に……」
　ビルシャナが全身ズタボロになりながら、悔しそうにクチバシを震わせた。
「それは……貴様にパワーが足りないからだな！　……知っているか。チョコには覚醒作用もあるのだ。貴様の寝ぼけた思想を目覚めさせてやろう」
　次の瞬間、絶華が心に込もるバレンタインチョコレート（キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ）で作り出したチョコレートバーを、ビルシャナの口に捩じり込んだ。
「ほら、感じるだろう？　己の脳髄と身体が圧倒的なパワーで圧倒的な覚醒をしている事が……。まるで爆発するかのように意識が広がっていくのを感じ取るんだ！　だから、途中で吐き出すな。飲み込め！　ここで吐き出しては覚醒なぞ夢だ。しっかりと飲み込み圧倒的なパワーをその身に宿すのだ！」
　それと同時に、絶華がビルシャナのクチバシを閉じ、全体重をかけて固定した。
「んご、ごご、こがっ！」
　そのため、ビルシャナは白目を剥いて、激しく痙攣すると、ひょろりと魂が抜け出し、ピクリとも動かなくなった。
「なんだか少し眠くなってきたのです」
　そんな中、あこがふわもこバックを並べ、途中でコロンと眠りについた。
　ウイングキャットのベルも、ふわもこに包まれるようにしながら、同じようにスヤスヤと眠りにつくのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2020年1月20日 難度：普通 参加：6人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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