●都内某所
「俺は常々思うんだ。魔法少女コスのオトコの娘こそ至高である、と! だから、女など不要ッ! あんなモノは棒のないオスのようなモノだ! だが、男の娘は違う! 俺達の夢が詰まっている! ただし、オトコの娘は、魔法少女コスを着ている場合に限る! それ以外は単なるオスだ!」
ビルシャナが廃墟と化した劇場に男性信者達を集め、自らの教義を語っていた。
男性信者達は、みんな魔法少女のコスプレをしており、潤んだ瞳でビルシャナを見つめていた。
●セリカからの依頼
「若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナが確認されたのは、廃墟と化した劇場。
どうやらビルシャナは男性信者達を洗脳し、魔法少女のコスプレをさせているようである。
そのため、男性信者達はビルシャナの言いなりになっているようだが、実際にはノーマル。
普通であれば、ビルシャナを好きにはならないようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
男性信者達はビルシャナよりも女性の方が好きなので、洗脳を解くのはそれほど難しい事ではないだろう。
またビルシャナは魔法少女のコスプレをした男性信者にしか興味がないため、別の恰好をさせたり、服を剥ぎ取ったりすることで、興味を失わせる事が出来るようだ。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。
参加者 | |
---|---|
皇・絶華(影月・e04491) |
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506) |
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388) |
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290) |
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251) |
●廃墟と化した劇場
「魔法少女だけでも情報量が多いのに、そこにオトコの娘を入れてくるとは! ニッチ過ぎて悟りを開くのも頷ける。そのセンスに共感はできないけど、多難な人生を送られたのだろうなということは分かる。おそらく、ビルシャナは勇士……。丁重に供養しよう、ヴァルキュリアだからね」
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている劇場の前に立っていた。
劇場は既に廃墟と化しており、入り口の扉が封鎖されていたため、裏口から通路を通って舞台に向かう事になった。
通路は信者達が頻繁に掃除をしているのか、埃ひとつ落ちていなかった。
「……よく解らんな。別に誰が何を着ようとそこに意味はないだろう」
皇・絶華(影月・e04491)が黒のドレス姿で、スタスタと廊下を歩いて行った。
ビルシャナが、どうして魔法少女コスにこだわっているのか分からないが、歪んだ性癖の理由を理解したところで、ゲンナリする可能性が高いため、なるべく考えない事にした。
「随分と難儀だな。魔法少女と言っても恰好だけで、実際に魔法が使える訳でもないのだろう? しかも中身はオトコの娘……」
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)が、呆れた様子で溜息を洩らした。
色々とツッコミどころが満載ではあるが、深入りしたところで幸せにはなれない危険なジャンル。
例え真実を知ったところで、『こんな事、知りたくなかった!』と絶叫し、タイムマシーンによって、過去の自分をタコ殴りしたくなるだけである。
「これ以上、教義が広がって犠牲が出ないうちに、ビルシャナさんを止める必要がありますわね」
霧城・ちさ(夢見るお嬢様・e18388)が色々な意味で危機感を覚え、拳をギュッと握り締めた。
可愛い姿をした人は、どのような服装でも可愛いのだから、魔法少女以外の服も着るべき。
そんな考えが脳裏に過っている事もあり、ちさに迷いはなかった。
「とりあえず、信者さんは健全な男性らしいので、助けてあげましょう」
そんな中、若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が事前に配られた資料に目を通し、ニッコリ……いや、ニヤリと笑った。
その途端、ナノナノのらぶりんがビクっと体を震わせ、ただならぬ気配を感じ取って、全身に鳥肌を立たせた。
「現れましたね、悪い子達! そんな悪い子は、私達が御仕置きです!」
次の瞬間、魔法少女コスをした男性信者達が現れ、一斉にビシィッとポーズを決めた。
みんな可愛らしい女の子のような姿をしているものの、一人残らず男の娘。
スカートの向こう側には、ケモノがいる。
その事を感じさせない程、男性信者達はキュート全開。
愛らしさ100%であった。
「……と言うか、ほぼほぼ女だよな、こいつら」
それを目の当たりにした柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が、気まずい様子で汗を流すのであった。
●劇場内
「まあ、落ち着け。私達は敵じゃない」
すぐさま、槐がプリンセスモードを発動させ、魔法少女っぽい恰好になった。
「ど、同業さんですか!?」
青色の魔法少女服を着た男性信者が、ハッとした表情を浮かべ、槐の胸元をマジマジと見た。
「まあ……そんなところだ」
槐が、あえて真実は語らず、小さくコホンと咳をした。
「いや、皆さん冷静になってください。何かおかしいと思いませんか? 魔法少女というのは、『少女』であって、『棒のないオス』と断じる教祖さんの図式は、魔法=棒ということになります。つまり、その変身ステッキがなければ、魔法が解けてしまうということですね。じゃあ、本人の在り方じゃなくて仮装や、アイテムが好きってことじゃないですか。そんな人と付き合わないほうがいいですよ!」
右院が男性信者達を前にして、警告混じりに呟いた。
「何もおかしくないと思うけど……?」
黄色の魔法少女服を着た男性信者が、能天気な笑みを浮かべた。
「まあ、魔法少女のコスプレの良さはわかりますわっ。でも、そこで止まってはいけませんの! 他の服も着こなしてこそ、ですわっ」
ちさが真剣な表情を浮かべ、男性信者達に訴えた。
「そんなモノ、着る必要はない! 魔法少女コスこそ、至高ッ! それ以外はゴミだ、ゴミ!」
その途端、ビルシャナが嫌悪感をあらわにしながら、ケルベロス達の前に陣取った。
「そんな事、ありませんわ! 魔法少女も日常回で可愛い服を着て変身するから、その良さがわかると思いますのっ。……もしくは、それが無理なら男らしさも出していくといいですわっ! 今時、格闘が出来ない魔法少女は戦力外ですの」
それでも、ちさが怯む事なく、男性信者達をビシィッと指さした。
「お前達! コイツの言葉に耳を傾けるな! コイツらが言っている事は、すべて妄言! 信じたところで、幸せにはなれない!」
ビルシャナがクワッと表情を険しくさせ、男性信者達にキッパリと断言をした。
「ならば、本当に妄言なのかどうか、確かめてみる必要がありそうですわねっ。そもそも、魔法は使えるんですの? もしも使えないのであれば、敵に襲われた時に、どうするおつもりですの? 魔法以外で戦う事が出来なければ、こんな時に困りますわよ」
ちさが男性信者達を前にして、いかに鍛えた力が素晴らしいのか、その体に教え込もうとした。
「わ、わ、わ、わ、悪い子は……」
その途端、ピンク色の魔法少女コスをした男性信者が、恐怖のあまりお漏らしした。
「おいおい、マジか。とりあえず、これに着替えておけよ。その恰好じゃ……風邪を引くぞ」
清春がピンク色の魔法少女コスをした男性信者を見つめ、洋物のジャケットや、パーカー、ロックT等を手渡した。
「そ、そんな事を言って、ボクを裸にして……エッチな事をするつもりでしょ!」
ピンク色の魔法少女コスをした男性信者が、耳まで真っ赤にしながら、恐怖で身体を強張らせた。
「いや、別に、そんなつもりは……。だから、そんな顔をしなくても……」
それに気づいた清春が、ピンク色の魔法少女服を着た男性信者の顔を見て、予想外に胸をキュンとさせた。
「い、いや、待て、待て、待て! なんで、こんな気持ちに……。駄目だろ、それは……。あー、やべえな、コレ。ヤベーぞ、マジで!?」
清春が色々な意味で危機感を覚え、自分自身に言い聞かせた。
だが、清春の心はズキューンと撃ち抜かれそうな勢いで高鳴り、危機センサーがビンビンと反応していた。
「そもそも、お前達はどうして、そこまで魔法少女の恰好に拘っているのだ? 着たいものを普通に着ればいいだろうし、それを否定する必要はないだろう。女子が魔法少女をするのも当たり前だし、男子が魔法少女をするのも特におかしい事ではない。ならば、性別に拘る必要も無いだろう。まあ、私の弟等が、この格好をしたら、腹を抱えて喜んでいたところだが……」
そんな空気を察した絶華が、話の途中で妙な視線に気づき、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「お前……、これを着たいんじゃないのか?」
ビルシャナが絶華をマジマジと見つめ、ニンマリとした笑みを浮かべた。
それは、まるで獲物を狙うハンターの目。
「……というか、貴様。何故、私をそんな目で見る……!? まさか、私を……」
絶華が身の危険を感じ、全身にゾワッと鳥肌を立たせ、脱兎の如く逃げだした。
その後を追うようにして、ビルシャナが魔法少女の服を握り締め、絶華の後を追いかけた。
「同じ魔法少女同士、仲良くしましょ」
そんな中、めぐみが一番身長の低い男性信者に近寄り、ケルベロスコートを脱ぎ捨て、魔法少女の恰好になった。
それは、何処かで見た事がある魔法少女の恰好。
あけみ的なほむらが、まどマギな感じであった。
「……キミはボクらとは違う!」
その途端、一番身長の低い男性信者が、警戒した様子で仰け反った。
「なんか辛そうですから、助けてあげましょうか?」
めぐみが何やら察した様子で、ラブフェロモンを使い、一番身長の低い男性信者の耳元で囁いた。
「ボ、ボクは別に……」
一番身長の低い男性信者が、怯えた様子で愛想笑いを浮かべた。
「……溢れ出しそうなんでしょ? めぐみが受け止めてあげますよ。だから……いっぱい出してくださいね」
めぐみが含みのある笑みを浮かべ、その場にしゃがみ込むと、スカートの中に頭を突っ込み、その中にいたケモノをはむっと咥え込んだ。
「んくっ! んあああ!」
そのため、一番身長の低い男性信者が身体を強張らせ、必死に理性を保とうとしたものの、ミルクの放出を止める事が出来ず、恍惚とした表情を浮かべて崩れ落ちた。
「やっぱり、悪い子! 御仕置きです!」
それを目の当たりにした男性信者達が、魔法ステッキを構え、ケルベロス達の前に陣取った。
「やはり、破壊……破壊は、すべてを解決する……!」
次の瞬間、槐が素早い身のこなしで距離を縮め、手加減攻撃で男性信者達の意識を奪っていった。
●ビルシャナ
「お前ら、よくも……!」
その途端、ビルシャナがハッとした表情を浮かべ、ケルベロス達をジロリと睨みつけた。
「ならば、どうする……? 私達を……殺るか」
槐が警戒した様子で、ビルシャナと間合いを取った。
「その、まさかだァァァァァァァァァ!」
ビルシャナがケモノの如く吠え、ケルベロスめがけてビームを放ってきた。
「どうしようもない救いようもない鶏は即屠殺に限ります……では」
そんな中、めぐみが口元に残ったミルクをペロリと舐め、ビルシャナが放ったビームを軽々と避けた。
それに合わせて、ちさが死角に回り込み、ビルシャナに旋刃脚を放って蹴り飛ばした。
「ええい! 貴様がそんな風な思想に入ったのもパワーが足りないからだっ。我がチョコレートを食べて、その身と心に圧倒的なパワーを得るがいい!」
それに合わせて、絶華が先程の恨みを晴らすようにして、心に込もるバレンタインチョコレート(キョウキヘミチビクフカキシンエンヨリキタルモノ)を仕掛け、手作りチョコをビルシャナの口を押し込んだ。
「ぐぎゃあああああああああああああ!」
これにはビルシャナも悲鳴を上げ、口の中のチョコを吐き出そうとした。
「まだおかわりはあるぞ! さあ食べて、その身に圧倒的なパワーを宿すのだ!」
それに気づいた絶華が、ビルシャナの口に、グイグイと手作りチョコを押し込んだ。
「ぐぐぐぐぐ!」
そのため、ビルシャナは悶絶状態。
白目を剥いて、泡を吐き、あっちの世界と、コンタクトを始めていた。
「ほら、妙な教義を広めようとするから……ごらんの有様だよ!」
次の瞬間、右院がビルシャナの懐に潜り込み、得物砕きで股間の変身ステッキ(意味深)を破壊した。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
その途端、ビルシャナが股間から大量の血を流し、断末魔の叫びを上げながら、ボロボロと涙を流して息絶えた。
「ボ、ボク達は一体……って、何この恰好……!」
それと同時に男性信者達が我に返り、恥ずかしそうに座り込んだ。
「とりあえず、今回はやめとくか……」
清春が気まずい様子で、男性信者達から視線を逸らした。
何となく、禁断の扉を半開きにしたまま、中を覗き込んでいるような状態になっている事もあり、『これ以上はいけない』という心境に陥ったようである。
「それじゃ、あらためて可愛い服を選んで差し上げますわね」
ちさが男性信者を前にして、上機嫌な様子でカメラを構えた。
男性信者達は恥ずかしそうにしていたが、ここで気にしたら負けである。
「続きをしたい方は、めぐみに付いてきてください」
そう言って、めぐみが男性信者達を見つめ、含みのある笑みを浮かべた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年1月19日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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