ミサイル武装巨人を斃す者たち

作者:塩田多弾砲

「ねえ、知ってる? あの老朽化した団地に、変なロボット出たんだって」
「あー、知ってる知ってる。ネットのニュース記事読んだけど、打撃で周囲を破壊しまくったらしいわね」
 と、大型スーパー、その一角に設置されたフードコートにて。
 安っぽい味とクオリティだが、妙に人気があるそこの軽食……『うどん』を、買い食いしている二人の女子高生の姿があった。
「ねー優子。そっちのうどんのちくわ天、こっちのかしわ天と交換してよー……。あたしの親戚ん家の近所に、公民館あるんだけど。そこにもなんかロボット出たっぽいよ」
「ほれ桃香、ちくわ天。そっちのカリカリ梅おにぎりと、私のいなりずしとのトレードよろー……。ったく、どこのバカ連中よ。そんなロボット作ったのは」
「あー、カリカリ梅じゃなくて、普通の梅にぎりで勘弁……。さあねえ、きっとどこかの……」
 桃香の言葉がそこで止まり、優子は『どうしたの?』と尋ねようとしたが、
 彼女の視線が、外に向けられているのに気付き、自身も視線をそちらに向けると、
 向かいに建っている、かなり古い建物を崩し……『ロボット』としか言えない存在が、その姿を現していた。
 そいつは、ハリネズミのごとく……全身に装備していた。
『ミサイル』を。
 そいつは、優子と桃香の方向へ片腕を伸ばし……そのまま、腕のミサイルを一発、発射した。
 フードコートに命中したミサイルは、爆炎と衝撃波とをもって……二人と、他の客たち、従業員、それら全ての命を、
『奪い去った』。
 身長七mの巨大ロボ……ダモクレスは、
 新たな破壊と殺戮をせんと、歩き出した。

「また、巨大ロボのダモクレスが出たッス」
 ダンテが君たちに対し語るは、『ミサイルで武装したダモクレス』の存在。
 以前、老朽化した団地に出現した、『ハンマーマン』のそれに似た……昔のアニメ(というより『TVまんが』)に、敵として出てきそうなデザインの怪ロボットが、出現したというのだ。
『ハンマーマン』は、既にエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)たちにより破壊され、事なきを得ている。
 が、今回出現したダモクレスは、
「まず間違いなく、『ハンマーマン』以上に苦戦を強いられるッス!」
 ダンテは断言した。
 なぜなら、そいつには……、
『飛び道具』……すなわち『ミサイル』を、そいつは全身に装備しているというのだ。
『ハンマーマン』同様に、この機体にも名が付けられた。
「こいつ、ハリネズミみてーにミサイルで全身トゲトゲッスから、『ヘッジホッグ』って呼ぶッスが……倒すには、かなり苦労すると思われるッス!」
 ダンテの説明によると、
 そいつは、スーパーの真向かいの、古い建物から現れた。
 長らくテナントが入らなかった小さなビルだが、そこの地下から、コンクリを崩しつつ出現。人間の姿を見ると、ミサイルを撃ちつつ……道路を進み始めたという。
 そいつの『下半身』および『両足』は、戦車または装甲車のような、大型の車両になっている。
 車輪は、巨大な『球』が六つ。かなりの重量があり、なおかつ分厚い装甲に覆われているので、おそらく車輪を狙う攻撃は無効。破壊はかなり困難だろう。体型からして、転倒させる事はおそらく不可能。移動速度が遅い(だいたい、人間の徒歩くらいか)のが、不幸中の幸いか。
 そして、上半身も装甲で覆われており……両腕の甲には、それぞれ三発のミサイルを装備。両肩にも二発、背中にも二発、合計12発を、全身に搭載しているというのだ。
 見た目に違わぬ重装甲で、一分ごとに、全身のミサイルのうち、二発を発射して攻撃する。
 さらに、フルパワー攻撃時には……、
 頭部から胸部の一部を、そのまま大型ミサイルとして頭上に発射。
 頭上30m上空で分解し、内部に搭載していた無数の小型ミサイルを、自身の周囲、半径20m一帯に、シャワーや豪雨のごとく放つ……という攻撃を繰り出すというのだ。
「当然、この『ヘッドミサイルレイン』を受けたら、その一帯は大変な結果になるッスね。絨毯爆撃を受けるようなもんス」
 そして、この『ヘッジホッグ』も。七分経過すれば暗黒回廊が出現し、そこに逃げ込まれたら、もう破壊はできない。
 これが量産されたら。おそらくはスーパーの一角が壊される程度では済まないほどの、広域破壊・殺戮が発生するのは、火を見るよりも明らか。都市一つ、島一つ、一体存在したら、簡単に破壊できることだろう。
「装甲はかなり分厚いっぽいスから、長距離からの狙撃は難しそうっス。ミサイルを誘爆させるのも、ミサイル自体の装甲の厚さから、長距離からならばそれも難しそうッス」
 なんとかミサイル攻撃を潜り抜け、接近戦でミサイル、または装甲の隙間に攻撃を加える。それしか方法は無い様子。実際、『ヘッジホッグ』は、一度に二体しか敵を認識できず、別の相手が後ろから、あるいは別方向から接近する事に関しては、反応しきれないらしい。
 だが、その重装甲を破れるかは、また別の問題だが。
「で、もう一つ。考え得る方法ッスが……」
 フルパワー攻撃である『ヘッドミサイルレイン』を放った後ならば、頭部および胸部装甲版の一部も消失し、内部機構が一部剥き出しになる。そこに光線や銃弾などを打ち込むなり、爆弾などを投げ込んだりすれば、破壊は容易になるかもしれない……とのこと。
 ただし、『ヘッドミサイルレイン』の攻撃は半端なく強烈なもの。近くの建物に隠れる程度では、そのダメージを防ぎきれず、最悪行動不能になる可能性が極めて高くなる、との事だ。
「『ヘッドミサイルレイン』を避けるには、奴から20m以上離れて逃げる以外には、奴の至近距離に引っ付くしかないッス……ただし、爆炎と衝撃波をもろに浴びるッスから、無傷とはいかないッスが」
 それ以外には、進む道路に散見された『マンホール』を利用する手もあるそうだが、
「でも、普通のミサイル攻撃ならともかく、『ヘッドミサイルレイン』で地面が抉られたら、マンホール自体がゆがんだり、下水道が崩れて生き埋めになる可能性も低くはないっス。奴の位置も、当然わからんッスし……地下から不意を突くのは有効ではあっても、リスクのある戦法ッス」
 事前に、周囲を避難させる事、そして後始末に関しては、警察や消防などで協力が見込めるので心配はいらない。しかし……、
 ケルベロスたる君たちの身が、一番心配だとダンテは言う。
「……いくらケルベロスっても、ミサイル搭載した兵器に生身で向かうようなもんス。難しい戦いになるッスが、倒せるのは皆さんしかいないッス!」
 その言葉に対する君たちの答えは、一つしかない。
 そいつを斃しさえすれば、万事解決。ならば参加しないわけがない。
 すぐに君たちは、準備を整えはじめた。


参加者
皇・絶華(影月・e04491)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
除・神月(猛拳・e16846)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)
ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)
 

■リプレイ

●マタドールミサイル。猛牛を斃す、闘牛士の如く
「ようお前ラ、うどん食いに来てんのカ」
 現場にいち早く到着していた除・神月(猛拳・e16846)がまず向かったのは、スーパーのフードコート。
 そこでうどんの券売機に並ぶ二人は、当初きょとんとするものの、
「……へー、お姉さんケルベロスなんだ」
「なんかパンダっぽいよねー。中国の人? チャイナドレス似合いそー」
 すぐに打ち解け、談笑する仲に。
「……でダ。腹ペコんとこ悪いガ、この辺りは戦場になル。すぐの避難を頼むゼ?」
 かくして、女子高生二人を逃がした神月は、
「……店ん中の客と従業員モ、ほぼ避難したっぽいナ。後は……」
 外に赴き、敵が出現するのを待つのみ。
 外では、
「……見取り図によると、この道路の地下には大きめの下水道が、道に沿って伸びているとの事だが……」
 皇・絶華(影月・e04491)が、手元の地図と現場とを照らし合わせていた。
 なるほど確かに、道沿いにマンホールが。ただ……その間隔はかなり長く、戦いに利用できるかどうかまでは何とも言えない。
「だが、地形のだいたいは把握できた。あとは……実践、だな」
 鋭い銀色の眼差しが、人気の消えた街中に向けられた。
 絶華がその場を離れ、数刻後。
 地響きとともに、スーパーの真向かいに立つ、古い建物が崩れ落ち……、『ハリネズミ』が、その名を頂くダモクレスが、出現した。
『ハリネズミ』こと『ヘッジホッグ』は、フードコートに視線を向けるが、人の姿が見えない事から……すぐに移動を開始した。
「……敵、出現! こちらも作戦開始だ!」
 その視線から隠れていた、絶華は、
 神月、そして他の皆へと伝え……、
 駆け出した。

「いくよっ、シルバーブリット!」
 ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)が、相棒たるライドキャリバーに跨り突撃。
「いざ、参る! 我ら誇り高きケルベロスの嚆矢、受けるがいい!」
 ローゼス・シャンパーニュ(赤きモノマキア・e85434)……全身を鎧で固めた騎士もまた、やはり突撃。
 セントール……馬の身体の首の部分が、人の上半身となっている種族。
 逞しい馬の四本足が大地を踏みしめ駆ける姿は、まさに騎馬がごとく。その手に構えるのも、セントールランス。
『ヘッジホッグ』は、高速移動するその二体を視認すると……、
 のろのろと動き出した。
 そして、『ヘッジホッグ』の真後ろ、死角になる場所からは、
(「……戦闘、開始!」)
 先刻に、皆で合わせた時計を確認しつつ、獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が駆け出していた。
 今回参加のケルベロスは、七名。全員がアラーム付きの時計またはタイマーを携えており、全員で時間合わせをしていた。
 五分で、アラームが鳴るようにセットもしている。魔空回廊出現まで、二分を切った状態で警告音が鳴るわけだ。
 そうなる前に『ヘッジホッグ』を倒せたら、それに越したことはないが。
 しかし、
「でも……!」
 ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)と、
「そうは問屋が、卸さないだろうがな!」
 エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)。ともに駆け出した二人は、銀子と同じ危惧を抱いていた。
「『五分』で奴を倒す『努力』はするがヨォ……」
「……おそらくは、かなりの『困難』がふりかかるだろうな……!」
 神月と絶華も、同じ危惧を抱き、呟く。
 呟きつつ、ケルベロスらは……敵の周囲に散開した。

●ラクロスミサイル、激しくぶつかり合う、ラクロスの如く
『ヘッジホッグ』は、正面に向かってくる二人……ステラとローゼスへと体を向け、まずは腕の六発から、二発のミサイルを発射した。
「来たっ! けど、あたしたちなら!」
「我々なら! かわす事はそうムズかしくはない!」
 高速移動しつつ、ライドキャリバーを乗りこなして回避するステラと、
 同じく巧みに回避する、セントールのローゼス。
「いいわ! 次は私達の番よ!」
 その隙に銀子が、パルクールのようにひょいひょいと飛び跳ねつつ接近し……、『ヘッジホッグ』に取りついた。
「喰い込め!」と、チェーンソー剣でズタズタラッシュを直撃させる。装甲の隙間に、もろにヒットしたが……、
 敵のダメージは、軽微なものでしかなかったのだ。わずかな欠片と火花が散ったのみで、全く動じていない。
「ならバ! これはどうダ!」
 と、神月のルーンアックスによる、ルーンディバイドが炸裂するが、結果は同じ。
「直撃させるっ!」
 と、ロディのリボルバー銃・ファイヤーボルトの弾丸が、破鎧衝となって放たれるも……ダメージは微々たるもの。
 絶華とエメラルドも、それぞれ蹴りを……スターゲイザーとフォーチュンスターを食らわせるが、全く動じた様子は見られない。
(「……『ノミ』だ」)
 エメラルドは刹那、数ミリ秒の間。そんな想いにかられてしまった。
(「私たちは……こいつにとっては、『巨大な人間』にたかる、虫の『ノミ』でしかない……! 巨大で賢い人間の血を吸おうと噛みついて、叩き潰されるだけの『ノミ』でしか……ッ!」)
 その考えは、ロディと神月も同様だった。
(「『無謀』だ……! ダメージは通っているようだが……」)
(「その通せたダメージの量ガ……あまりにも『少なすぎ』だゼッ! こんな奴を『七分以内』で倒すってな芸当ハ……!」)
『不可能』。言葉も交わさず意思疎通もしていなかったが……ケルベロス達は、残酷にして純然たるその事実を……実感させられた。
 事実は『絶望』を産み、絶望は『無力感』を産み出す。その魔手が、ケルベロスらを苛み、戦う意志と力を奪いかけたが……、
「……けど! だからと言って『倒せない』わけじゃあないわっ!」
 シルバーブリットで突撃したステラは、ブレイブマインを投下しつつ、『ヘッジホッグ』を牽制する。
「然り! 貴様如きが、完全無欠の最強無敵であるわけがない!」
 牽制されたところに、ローゼスの突進が直撃する。
「『Giino deos(ギーノデーオス)』ッ! この剛脚の、真の威を知れ!」
 彼が構えたランスが突き刺さり……『ヘッジホッグ』の装甲に、小さいが『穴』を穿っていた。

 二分が経過し、三分が経過。
 しかし、攻撃のダメージは、『ヘッジホッグ』の重装甲に阻まれ届かない。減るのは『ヘッジホッグ』のミサイルのみで、戦いは膠着したような状態に陥っていた。
「……奴の……『弱点』は……! 何か、付け入る『隙』は……ッ!」
 エメラルドが、フェアリーレイピアを振るいつつ、残像剣や薔薇の剣戟を直撃させるも、見いだせない。
「なっ、何いイッ!……ぐはあアッ!」
 そうこうしているうち、神月と、
「不覚……だっ!」
 ロディとが、ミサイルによるダメージを食らってしまった。
 直撃ではないが、近くに着弾し、その爆風を受けてしまったのだ。それは道沿いにあった小さな店舗を一つ、完全に吹き飛ばすほどの威力。いくらケルベロスが頑丈であっても、至近距離で受けて無傷でいられるわけがない。
「……『把握』、だ。奴の動きから、『法則性』を把握し見切れ……。 然らざれば……勝機など無いッ……!」
 絶華が、鋭い銀色の眼差しを向ける。『ヘッジホッグ』の動きには、癖どころか、まったく無機質で無駄がなく……、必要最低限の動きしかしていなかった。
 四分。両腕のミサイルを撃ち尽くした『ヘッジホッグ』は……、
 そのまま、両腕を、だらりと垂らした。
(「両腕のミサイルを撃ち尽くした……次は『肩』と『背中』のどっちを……」)
 そこまで観察した絶華は、
「!! まずい! 来るぞ!」
 叫んだ。
 叫ぶと同時に、ケルベロスの皆が動き出す。
「一時撤退します!」
 ローゼスは四足を駆けてロディと神月を回収し、逃走。
「こっちも!」
 ステラもまた、シルバーブリットを走らせた。
 絶華は、先刻に確認していた『マンホール』の一つに目をやり、そちらへと駆け出す。
 が……エメラルドと銀子は、逆に向かっていった。
(「この『作戦』。事前に話してはいたが……死ぬなよ、二人とも」)
 すぐにマンホールに蹴りつけ、その蓋を開け、内部に飛び込む絶華。
 そして、数秒後。
「……っ!?」
 世界そのものが破壊されるような『轟音』と『衝撃』とが、地下下水道内に潜んでいた絶華を襲い、
 彼の意識を、奪い取っていた。

●ナイキ・エイジャックスミサイル、ギリシアの英雄の如く
『至近距離』に、エメラルドと銀子は接近し、『ヘッジホッグ』の巨体に取りついていた。
 予見で言われていた通り。『ヘッジホッグ』は頭部、および肩部の一部、装甲部分を分離させ……胴体そのものに内蔵させていた、一際巨大なミサイルを発射させていた。
 頭部を失い、そこにはぽっかりと穴が。
 エメラルドと銀子は、これ幸いと攻撃を仕掛けようとしたが、
 次の瞬間に、頭上に発射されたミサイルから……、
 死をもたらす雨が、降り注いだ。

「ここまで来れば……うおっ!」
 ローゼスは疾走し、敵の射程距離外まで出たと認識したが……、
 甘かった。
『ヘッジホッグ』が発射した巨大ミサイル、それは本体頭上に打ち上げられ、その場で外装を弾き飛ばし、内蔵されていた無数の小型ミサイルを発射していた。
 その一部が、ローゼスの至近距離にまで打ち込まれていた。着弾し、衝撃波と爆風とがローゼスを、彼に運ばれているロディと神月とを襲い、吹っ飛ばす。
 それは一発では済まず、数十、数百と続く。子供が馬のおもちゃを振り回し、地面に叩き付けるかのように。
 ローゼスは衝撃を受け、地面を転がされ、近くの建物へと叩き付けられた。
「シルバーブリット! ……うわあああっ!」
 それは、ステラも同様。バランスを崩し、路上をきりきり舞いし、彼女もまた転がされる。
「こ、これって……『爆撃』じゃない……っ!」
 目前の光景を見せつけられたステラは、その言葉が出てくるのを止められなかった。
『ヘッドミサイルレイン』。それは地獄をもたらす魔と鬼の雨であり、そいつを浴びる事は死を意味した。
 頭部を消失させた『ヘッジホッグ』だが、この爆撃の中、無事に佇んでおり……ほとんどダメージらしきものは負っていない。
 もしもダモクレスに感情があり、それを表現できたなら。まちがいなく『ヘッジホッグ』は満足そうに笑みを浮かべていた。
 銀子とエメラルドの姿はない。あるのは沈黙。
 そしてその沈黙は、道端に落ちていた銀子のアラームが破っていた。
 五分経過の警告。が、その警告に答える存在は……その場には居なかった。

『ヘッジホッグ』が、前進を再開させた、その時。
 突如として、ダモクレスは痙攣するように、小刻みに震え始めた。
 次に、各部から小爆発。下半身の動きも止まり、戸惑っているかのようにがくがくとした動きを見せる。
「……作戦通り! この頭部のミサイルを撃った後のスペースに入り込んで、内部から破壊って作戦! うまくいったわっ!」
 銀子と、
「まったくだ! 内部から破壊し尽くしてくれるッ!」
 エメラルドは、
『ヘッジホッグ』の内部から攻撃し、内部の機械を己の武器で破壊していく。
 大き目の爆発が起こり、腕の片方が吹き飛んだ。
 ばちばち……と、スパークが起こる。翼を広げて、銀子を抱えて空中に退避したエメラルドは、
『ヘッジホッグ』が内側から爆発するのを見届けていた。
 しかし、それでも完全に破壊されたわけではない。炎に巻かれながら、再び前進しようとするが、
『我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門…「窮奇」……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!!!!』
 近くのマンホールから、魔獣めいた狂戦士と化した絶華が飛び出した。
『四門「窮奇」(シモンキュウキ)』、絶華の放つ、カタールを用いた狂乱かつ神速の斬撃が、壊れかけた『ヘッジホッグ』を更に破壊していく。
「絶華、どいて! チェンジ! キャノンモード!」
 そして、戻って来たステラが、シルバーブリットを変形させ……、
「出力100%! 120%!……160……180……190……出力200%! 内部から圧壊させちゃえ! 『グラビトン・ランチャー』!」
 とどめの一撃を放ち、引導を渡していた。
 そして、完全にばらばらになったとともに。
 暗黒回廊が出現し、回収する事無く……消えていった。

●ナイキ・ハーキュリーズミサイル、斃れぬ大英雄の闘志が如く
「……ちぇっ、傷は回復させられたけど……」
「負傷もだガ、プライドも傷ついちまったゼ。奴に全然歯が立たなかったとはナ」
 ロディと神月の二人は、苦々しさを隠すことなく、『ヘッジホッグ』の残骸を見つめていた。
「だが……さすがは銀子君。ヘッドミサイルレインのスペースに自分自身が入る事で、爆発をやり過ごすのみならず、そこから攻撃するとはな。大したものだ」
 ローゼスが感心した口調で、銀子をねぎらう。
「……でも、これで前のハンマーに吹っ飛ばされたリベンジにはなったかしら」
 破壊された街中を見回しつつ、呟く銀子。
「だが……さすがにこの敵と、何度も戦いたくは無いな」
 さすがに疲れたのか、エメラルドが疲労の色を見せている。
「まったくだ。……暴走せずに済んだのは、不幸中の幸い、といったところか」
 同じく疲労した様子の、絶華。
「……そうだよね。たった一体でもこうだったんだし、もしもこれが回収され、量産され、出撃してたとしたら……」
 シルバーブリットを愛し気に撫でつつ、ステラが呟く。間違いなく、世界には破壊と死とがもたらされていただろう。
 だが……そうなる事を、なんとか防ぐことができた。それが重要であり肝要。
「……あとどのくらい、このようなダモクレスは存在している? そして、そいつらはどこに隠されている?」
 疑問を口にする絶華だが、
「……それは、分からないわね。けど……確実な事は、ひとつだけあるわ」
 銀子が、答えた。
「確実な事? それは?」
 絶華に問われ、銀子は、
「……休んで、身体を回復させておくって事。このボロボロの身体を癒し……このような敵がまた現れた時に、対処できるようにしておかないと、ね」
 ……そう、答えていた。
 そうだ。強敵を倒したならば、まずは身体を休め、英気を養わねば。
 束の間、ケルベロス達は勝利を噛みしめ、そして……身体を休めるためにと、帰路に就くのであった。

作者:塩田多弾砲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月28日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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