大阪市街戦~血まみれの正義と道徳

作者:雷紋寺音弥

●無邪気な虐殺者
 東の新宿が眠らぬ街として知られるように、西の大阪もまた、歓楽街は眠らぬ街として有名だ。街の象徴とも呼べる大阪城をデウスエクス達の拠点にされてもなお、それは未だ変わらない。
 だが、表向きは平穏無事に見える街であっても、敵の拠点が近ければ、それだけ危険であることに違いはない。その日、夜の大阪には人々の笑い声ではなく、怒号と悲鳴が響き渡っていた。
「あれ~、もう死んじゃったの~? やっぱり、人間って壊れ易くてダメだよね」
 惨劇の中心にいるのは、バールのような凶器を持った一人の少女。その頭部から生えた角から一見してサキュバスかウェアライダーのようにも思われるが、しかし彼女の胸元には、ドリームイーターの証であるモザイクが存在し。
「グラビティ・チェインを集めるのもいいけど、やっぱり私は、男の人より女の子を殺して回る方が楽しいんだよね♪ あ、でも、あまり遊んでると、また怒られちゃうかな?」
 人々の返り血を浴びて楽しそうに笑う少女の顔からは、およそ罪の意識というものが感じられなかった。主に、女性を優先して狙いつつ、少女は夜の街を血に染めて行く。やがて、その周囲に動く者が自分以外の誰もいなくなると、彼女は次なる獲物を求め、夜の街に消えて行った。

●欠落した倫理
「招集に応じてくれ、感謝する。大阪市の歓楽街で、ドリームイーターの少女が大量殺戮を行うという事件が、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)の調査によって判明した」
 場所は攻性植物のゲートがある大阪城周辺の歓楽街。彼女が送り込まれた目的は、市街地の襲撃によってグラビティ・チェインを回収しつつ、人々を恐怖に陥れることで街から退去させ、無人となった地域を制圧することだと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に事件の概要を説明した。
「そういうわけで、大至急、現場に赴いて彼女を撃破して欲しい。人の多い場所と時間帯だが、事前の避難誘導は、先にこちらから通達できるのが幸いだな。バックアップは俺や現地の警察に任せて、お前達はデウスエクスの撃破を優先してくれ」
 周囲に人がいなければ、それだけ戦いに集中できる。もっとも、敵は色々な意味で厄介な性格をしたドリームイーターであり、油断すると酷い目に遭わされるかもしれないので、要注意だ。
「敵のドリームイーターだが、デウスエクス達の間では、『血まみれ』マコちゃんの名で呼ばれているらしいな。その名の通り、血を浴びる事で快感を覚え、特に同性を惨たらしく殺す事に絶頂すら感じる異常者のようだ」
 その性質故に、彼女は時に同胞にさえ襲い掛かる危険分子とされ、捨て駒に近い形で送り込まれたと思われる。そんな彼女の欠落しているのは『倫理観』。正義や道徳といった感情を理解できず、愛情や友情も歪んだ形でしか抱くことができず、殺戮行為にも何ら心を痛めることはない。
「嫌な言い方になるが、デウスエクスの連中からすれば、地球に住む定命の者は『餌』なんだろう。だが……このドリームイーターは、腹が減っていなくても人を殺す危険なやつだ。それこそ、善悪の区別がつかない子どもが、虫を踏み潰して無邪気に遊ぶようにな」
 こんな危険な存在を、これ以上野放しにしておくわけにはいかない。戦いになると、彼女はサキュバスの使用するグラビティに似た技に加え、手にしたバールも武器に、自分の負傷さえ厭わず襲い掛かってくるだろう。
「正義や道徳を知らない、無自覚な悪……考えようによっては、最悪の敵だな。大事な感情が欠落している以上、説得は勿論、こちらから何かを教えて諭すような行為も無駄だろうな」
 大阪市民のためにも、この敵は必ずここで討つ必要がある。そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
カーラ・バハル(ガジェッティア・e52477)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ

●血塗れの正義
 街の象徴たる大阪城が敵の手に落ちてから、幾度となく危機を迎えて来た大阪の街。大規模な戦闘は起こらずとも、デウスエクス達の勢力圏と接触している地域では、昼夜を問わず何らかの事件が起きていることが多い。
「大阪も、苦労が絶えないっていうか、なんていうかなぁ……」
 そろそろ、本格的に大阪を解放することを考えないといけないかもしれないと、水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)が溜息を吐いた。
「それにしても……『血まみれ』マコちゃんなんて、物騒な二つ名ですね……」
 まるで、罪人エインヘリアルみたいだと思いつつ、ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は敵の襲撃に備えて空を仰いだ。
 デウスエクスも一枚岩でないことは既に知っているが、それでも同族にまで襲い掛かるというのは尋常ではない。
 果たして、敵はいったいどこから来るのか。人々の避難が終わった街。その真ん中で、油断せず周囲の様子を窺っていると、なにやら遠くから一人の少女が近づいて来るのが目にとまった。
「う~ん、なんで人間がいないんだろう? ……あ! あんなところに、まだ人が残ってた!」
 無邪気な笑みを浮かべながら、こちらへ近づいて来る一人の少女。一見して逃げ遅れた市民に見えなくもないが、しかし彼女の手にはバールのような凶器が握られ、おまけに真冬だというのにレオタード姿だ。
 間違いない。あれが報告にあったドリームイーター、『血まみれ』マコちゃんだろう。その外見からは想像できないが、彼女は倫理観の欠落したデウスエクス。故に、種族の存続や本来の使命よりも、己の欲望を満たすためだけの殺戮を繰り返す危険な存在だ。
「見た目や名前は可愛らしくても、やっている事は残虐そのものだしね……」
「殺戮を楽しんでいるなんて許せない。リリ達が来たからには、好き勝手はさせないよ」
 少女を殺すことに快感を覚えるという敵の性質を突き、影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)とリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が、敢えてマコちゃんの前に姿を晒した。それを見たマコちゃんは、とたんに歓喜の笑みを浮かべると、手にしたバールを振り回しながら、二人の方へと向かって来た。
「わぁ、女の子だ! ねぇ、あなた達……ちょっと、私に殺されちゃってよ。あ、答えは聞いてないけどね~♪」
 のっけから無茶苦茶なことを、サラッと笑顔で言って来るのは恐ろしい。倫理観が欠落していると聞いていたが、これは想像以上のサイコパスだ。
「随分楽しそうじゃねーか、クソッタレ! 城占拠して街ぶっ壊して、怖がって逃げてる人を襲って……」
 人を殺すことに対し何ら罪悪感を抱いていないマコちゃんに、カーラ・バハル(ガジェッティア・e52477)は思わず叫んだ。だが、倫理観の欠如しているマコちゃんは、目の前の少年が何故怒っているのか、その理由さえも解らなかった。
「あれ~、おかしいな~? ケルベロスだって、たくさんデウスエクスを殺してるでしょ? 正義の味方が誰かを殺していいんだったら、私も誰かを殺して行けば、正義の味方になれるんじゃないの?」
 そこまでに至る過程や理屈を全て素っ飛ばし、マコちゃんは不思議そうに首を傾げて尋ねた。戦い、そして時に殺すことは、あくまで手段であって目的ではないのだが……しかし、今の彼女には、何を言っても無駄だろう。
「ハッ……! こっちも罪の意識を感じないで済むッてのはァ、いいかもなァ……。感謝する気は、ちっともねえけどよ!」
 これ以上の問答は無駄と悟り、カーラは苦々しく吐き捨てた。こういう手合いが一番腹立たしい。どれだけ痛めつけて倒したところで、きっとこのデウスエクスは、最後まで他者の痛みも苦しみも理解せず、さりとて恨み節のひとつも吐かずに、狂った思考のまま死んで行くのだろうから。
「覚悟がないのに、躊躇いもない……。遊びの延長でやっているような敵、か……」
「面倒な相手ですね。こちらの常識で考えては、足元を掬われるかもしれません」
 慎重に敵の出方を窺いながら、互いに言葉を交わす相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)とフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)の二人。その一方で、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は敢えて自ら正面に立つと、敵の狙いを自分に向けるべく、堂々と宣言した。
「誰かを苦しめたり傷付けたりするなんて、絶対にさせないのですよ」
 正義とは何か。悪とは何か。理解できないというのであれば、せめて他者の命を無駄に奪うことなく消えて行け。
 夜の街に現れたドリームイーター。淫魔の姿を模した、狂った少女の笑い声が周囲に響き、手にした凶器の先端が、月の明かりを受けて鈍く輝いた。

●狂った遊び
 戦闘狂。その名を聞いて、人はどのような存在を思い浮かべるだろうか。
 戦うことの先に何かを求め、ひたすら強敵を求め続ける修羅か。あるいは、戦いの中に高揚感に身を置くことでしか、自らの衝動を抑えることのできない存在か。
 狂っているという点では、マコちゃんも同じなのだろう。だが、彼女が修羅と決定的に違うのは、その心の内に倫理観が欠片も存在していないことだった。
「俺も、青髭にモザイク化されてたら、こんな事、やらかしてたんだろうな。そういう意味じゃ、こいつも被害者、なんだろうが……」
 敵のバールと自分の刀を斬り結びながら、鬼人はふと考えた。
 倫理観をモザイク化されたことで狂ったのであれば、彼女もまた不幸な存在だ。どれだけ人を殺したところで、そのモザイクが晴れぬ限り、彼女の求める正義への答えは見つからない。そして……仮にモザイクが晴れた時、彼女は己の今までの所業を知って、果たしてどう思うのだろうか。
「アハハ! お兄ちゃん、強いね。でも、私、男の人と遊ぶのって、あんまり好きじゃないんだよね♪」
 続く鬼人の斬撃を、マコちゃんはひらりと身を翻して笑いながら避けた。斬られる痛みを恐れてのことではなく、鬼人より先に戦いたい相手がいたが故、離れようとしただけだ。
「逃がすかよ! 女を嬲るのが趣味だぁ? ふざけやがって……!」
 あくまで女性を優先して狙おうとするマコちゃんに、カーラは怒りを露わにして手榴弾を放り投げた。それは瞬く間に凄まじい炎となってマコちゃんの全身を覆い尽くしてしまうが……その身を焼かれているにも関わらず、マコちゃんは相変わらず狂った笑いを浮かべることを止めなかった。
「わぁ、すっごい花火だね! だったら、私はこれでお返しだよ♪」
 マコちゃんが、まるで魔法少女のステッキの如くバールを振り上げると、その先端から無数のモザイクが噴出し、巨大な波となって襲い掛かって来る。否、これは単なるモザイクなどではない。この感触、この匂い……色彩こそ狂っているが、間違いなく血だ!
「な、なにこれ!? 視界が……」
「気を付けてください! このモザイクの色調……特殊な催眠パターンになっています!」
 赤、青、黄色。それらが規則性を持って点滅していることに気付いた真理が、同じくモザイクに巻き込まれたリナに向かって叫んだ。まったく、性質の悪い冗談だ。単に女性を嬲り殺すだけでは飽き足らず、同士討ちをさせることで楽しもうというのか。
「待ってろ! 今、その厄介なモザイクを払ってやるからな!」
 爆ぜり狂うモザイクの海へ、泰地が紙兵を投入して行く。それらはマコちゃんの放ったモザイクを吸収し、自ら盾になることで、狂った色調の世界から仲間達を救出して行く。
「街の人をやらせはしませんよ。私達は、踏み潰されるような蟻ではありませんからね!」
 お返しとばかりに、ミリムが手にした斧でマコちゃんに斬り掛かる。その一撃は、強固な鎧さえも容易に砕くもの。まともに受ければ無事では済まないのは明白だったが……そんな一撃を食らってもなお、マコちゃんは楽しそうに笑うことを止めようとはせず。
「うふふ……お姉ちゃんも、私と殺し合いたいの? いいよ、いいよ……なんか、考えただけでゾクゾクして来ちゃった♪」
「というか、なんでそんな顔して毎度こっち向くんですか! この変質者は!」
 身体を斬り裂かれながらも、火照った顔で性的なリビドーを感じているマコちゃんに、さすがのミリムもドン引きである。
「倫理観の欠如……それだけでなく、嗜虐趣味もあるようですね」
「要するに、変態さんってことだね。だったら、リリも容赦しないよ」
 ハンマーを構えるフローネに、リリエッタが苦笑しながら続けた。
 こういう変態討伐は、色々な意味で慣れている。とにかく、まずは足を止めてやろうと、互いに獲物を敵へと構え。
「散開して攻撃しましょう。十字砲火を……!」
「これで動きを止めるよ! ライトニング・バレット!」
 それぞれ左右に散って、竜砲弾と雷撃弾で敵を撃つ。衝撃と閃光が周囲に広がり、思わずマコちゃんが足を止めたところで、すかさずリナが斬り掛かった。
「欠落したものを埋めてはあげられないけど、埋める必要もなくしてあげるね」
 雷の如き軌跡で刃を振るえば、それはマコちゃんの身体に、更に癒えぬ傷を増やして行く。それだけでなく、全身に残る炎や電撃の効果を幾度となく傷口に刻み込み、加速度的に増加させて行き。
「そんなに血を見るのが好きなら、自分の血を見て満足するがいいですよ」
 ライドキャリバーのプライド・ワンに騎乗したまま、真理が擦れ違い様にチェーンソーの刃を振るう。それはマコちゃんの腹を大きく抉り、彼女の着ていたレオタードが音を立てて破れたが……その身を斬られ、肉と骨を断たれても、しかしマコちゃんは、むしろ楽しそうに笑っていた。
「うぅ……久しぶりに、強い人……。でも……だからこそ、壊した時が楽しみになっちゃう!」
 強敵と戦えることに喜んでいるのではない。強い女を屈服させ、好き放題に破壊することを想像して、それだけ興奮しているのだ。
 己の内に眠る歪んだ性癖。それを何ら隠すこともせず、マコちゃんは再び返り血を浴びたバールを手にすると、ケルベロス達へと向かって行った。

●正義の概念
 戦いにおいて、攻撃は最大の防御であるが、全てそうだとは限らない。
 痛みを感じない存在。死を恐れることのない存在。そういった手合いには、この理屈は通用しないことも多い。攻撃されても何ら怯まず、ともすれば喜んで突っ込んで来るような者が相手では、中途半端な攻撃は、むしろ相手を煽るだけだ。
「なるほど……なかなか、やってくれます……ね……」
 グラビティの激しい応酬の果てに、真理は既にその身の大半を損傷していた。レプリカントであるが故に、その身体は一般の地球人のそれとは異なるものの、それでも損傷が増えれば無感覚な部位が増えるのは致命的だ。
「あ、お姉ちゃん、ロボットさんだったんだ。だったら、首だけになってもお喋りできたりするのかな? ちょっと、試していい?」
 恐ろしいことを、サラッと言ってのけるマコちゃん。自分もボロボロなことは、あまり気にしていない様子。さすがに、首をもがれてはレプリカントとて命はないはずだが、そんなことは彼女の知ったことではないらしい。
「させるかよ! 女の子は殴りたくなかったが、好き放題虐殺するデウスエクスはノーカンだ!」
 見兼ねたカーラがマコちゃんの身体を鞭で引き寄せ蹴り飛ばすも、その一撃に吹き飛ばされてもなお、マコちゃんは真理を狙うことを止めようとはせず。
「こいつ、翼を!? もしや、元になった女はサキュバスか!?」
「でも、サキュバスの翼は飛べないはずじゃ……いえ、デウスエクスだから、そんなこと関係ないんでしょうけど……」
 このままでは抜かれる。鬼人とミリムが続け様に斬り掛かるも、マコちゃんは隠していた翼を広げて華麗に宙を舞いながら攻撃を捌き、更に真理へと近づいて行く。
「……させないよ」
「ただ硬く。ただ重く。父のように。――金剛石の一撃、喰らいなさい!」
 丸腰で突っ込んで来るマコちゃんへ、リリエッタとフローネがカウンターの拳を叩き込んだ。さすがに、今度は勢いを殺すこともできず、マコちゃんは盛大に吹っ飛んでビルの壁に衝突した。
「誰一人として、あなたの思い通りにはならないよ!」
 体勢を立て直す暇を与えず、リナが星型のオーラをマコちゃんへと蹴り込んで行く。星の先端がレオタードを引き裂き、深々と突き刺さって傷を与え。
「高速演算により、弱点をサーチ……これで、終わりにしてあげますよ」
 最後は、真理が一気に距離を詰めて、マコちゃんのモザイクを貫くべく手刀を繰り出す。が、マコちゃんも黙ってやられるはずもなく、バールの一撃で迎え撃つ。
「……っ!?」
 苦し紛れに振るわれたバールによって、真理の腕が無残にも折られた。火花が散り、部品が飛び、装甲が抉れて内部部品が露出する。だが、片方の腕を折られたとしても、まだもう片方の腕がある。
「治療するぜ! こいつを受け取りな!」
 泰地の放った癒しの波動。それを背中に受けたことで、真理の身体に力が戻った。腕の損傷はそのままだったが、最後に一発を放つくらいなら、これで十分。
「……ぁ……あぐぅ……」
 右腕の代わりに左腕で繰り出した真理の手刀が、マコちゃんのモザイクを貫いた。その一撃が止めとなり、マコちゃんは夜の闇へ溶けるようにして消えて行く。
「やれやれ、ようやく終わったか」
 ロザリオに手を当て、安堵のため息を吐く鬼人。戦闘力とは別の面で、今回の相手は強敵だった。
「『倫理観』の欠落したドリームイーター……。欠落がなければこんなことしなかったのかな……?」
「論理観なんて人間しか持ち得ぬもの、欠落を埋められなくて当然です……」
 リリエッタの問いに、ミリムが静かに答える。そもそも、人間基準の倫理観など、デウスエクスに備わっているはずもない。故に、マコちゃんはどう足掻いても、モザイクを晴らすことはできなかったのかもしれない。
「正義の味方を殺せば、倫理観が手に入ると思っていたのかな?」
「だとすれば、余計にナンセンスですね。正義そのものになんて、誰もなることはできないのですよ」
 首を傾げるリナに、真理が続ける。
 正義とは、一人の人間が『自分は正しくあろう』と決意するときに生まれる概念。それが不当に挫かれようとしたとき、助けてくれるのが正義の味方だ。
 故に、正義の味方は正義そのものとイコールではない。正しくあろうとする者の支援者にすぎない。
 地球を守るケルベロス達も、それは何ら変わらない。一人一人の人間に、「まず自分が正しくあれ」と呼びかける。そのような手段で正義や倫理に触れていれば、あるいはマコちゃんのモザイクも、より別の形で晴らせたのではあるまいかと。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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