リーシャの誕生日~オリオン座を探して

作者:秋月きり

「そう言えば、そろそろですよね」
 切欠はグリゼルダ・スノウフレーク(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・en0166)の一言だった。
「……あ、そっか」
 しまったなぁ、と表情を歪めるのは、彼女の同僚にしてヘリオライダーのリーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)だ。年末年始の慌ただしさか、それとも年を重ねる毎の影響か、グリゼルダの言う『そろそろ』の時期をすっかり忘却していたのだ。
 そう。1月24日は、リーシャの誕生日なのである。
「やっぱり歳かなぁ」
 その日が来れば一つ歳を重ねる。29歳ともなれば、立派なアラサー。年齢なんぞ、忘れたくもなるのだ。きっと。
「今年は何かされるのですか?」
 グリゼルダの問いかけは和やかに。何処か悪戯っぽく、何処か興味深げに。
(「我ながら、難儀な性格よねぇ」)
 それに応えない理由も、応じない意味も無かった。

「はーい。1月24日は私の誕生日です」
 ヘリポートに響く声は何処か自棄の色を纏っていた。
 それに気付いたケルベロス達は、しかし、一斉に視線を逸らす。女性の年齢を言及するなど、百害あって一利なしだ。
「今回はゆるりとキャンプ場で一晩過ごしてみたいと思います。飯ごう炊飯などのキャンプご飯を堪能してもよし、焚き火を囲んで思い思いの時間を過ごしても良し、テントの中で寝袋に潜って、恋バナとかも良いんじゃないかな!」
 どうやら童心に帰りたい、と言う事らしい。
「場所は九州、鶴見岳にあるキャンプ場。野外の温泉も併設されているから、お風呂だけは全く以て心配なさそうね」
 キャンプ用品は持参しても良いし、レンタルでも大丈夫。ケルベロスの皆であれば例えテントや寝袋無しの野宿となっても、体調に悪影響を及ぼす事は無いが、折角だから色々と楽しんで見るのも良いだろう。
「ま、私はちゃんと防寒対策とかするけど!」
 そこはヘリオライダーたる所以だ。焚き火を楽しむ気満々とその表情が物語っていた。
「さて、冬場のキャンプだけど、そこは南国九州。雪の心配はなさそうね。夜は満天の星空を見ることが出来るわ」
 先の説明通り、キャンプご飯を堪能したり、キャンプファイヤーとしゃれ込んだりが主となりそうだが、地面に寝転がって星空を見るのだって、格別な体験となるだろう。プラネタリウム斯くやと言った星空の下で語り合えば、それは素敵な思い出となるに違いない。
「寒いのはちょっとなーって人は温泉で楽しむのも良いかも」
 火山性の酸性泉は疲労回復や関節へのアプローチの他、消化器官への効能も期待出来る様だ。男女別の温泉もあれば、カップルや夫婦の為の家族湯もあるとのことなので、安心して欲しい。
「さ、それじゃ、みんなで楽しんじゃおっか」
 新春早々星空の下で楽しむ。
 そんな年があっても良いのでは無いかと、朗らかな笑顔は語っていた。


■リプレイ

●寒空と火の山と戦乙女と
 四季折々の日本に於いて、1月と言う時季は当然ながら寒い。
 それは土地が南国九州と言えど、そして、適度な日差しがあっても、まして、今年は暖冬と至る所で囁かれていたとしても、寒い物は寒いのだ。
「晴れて良かったですね」
 二人用のテントを設営しながら零れたグリゼルダの笑みに、リーシャは嘆息を隠しきれない。
 様々な防寒具を身に纏ったヘリオライダーに対し、目の前の戦乙女は愛用の金属鎧姿なのだ。そうであるのにもかかわらず、テキパキとキャンプ場にテントを張っていく様子は、勤勉さを超えた何かな気がする。
「寒くないの?」
 健康的に日焼けした浅黒い肌を露出する服装は、見た目にも寒い。良くも平気ねぇ、と感心すらしてしまう。
 焚き火台を用意するリーシャの呟きへの返答は、再度向けられたグリゼルダの笑顔だった。
「それは、ケルベロスですから」
「……そうよねぇ」
 寒さや金属鎧の重さを感じさせない動きも、超人であるが故。常人の域を出ないリーシャにとって、それは羨ましくもあり、それでいて……。
「ま、みんなの方が大変だしね」
 沸き立つ情動は、羨ましさよりも眩しさだ。超人であるが故の苦しみも悲しみも知っているつもりだ。
 ああ、その全てを愛しいと感じるようになったのはいつからなのだろう。
「どうかしました?」
「ううん。準備が終わったら、ちょっと散歩に行こうか」
 不思議顔を浮かべるグリゼルダに、にゃははと微笑む。この感情を表に出す事も無粋だと知っている。ただ、胸の中で燃えていれば良い。そう言うものだ。
 ふと見渡せば、思い思いの場所で色取り取りのテントが設営されようとしている。
 ちょっとしたグラウンドぐらいの広さがあるキャンプ場は、花が咲いたような賑わいを見せていた。

 2020年1月24日。
 リーシャ・レヴィアタンの29回目の誕生日はそんな寒空の下で開催される。
 それは、一見、何でも無い只の日常の延長であった。だが、それこそが、彼女の望んだ束の間の平和でもあったのだ。

●寒空の下、温かな仲間と
「これが、きゃんぷ飯……腕が鳴りますえ」
 炊事棟の直火かまどを前に、気合いの入った声を上げるのは保であった。その目の前には、飯盒とダッチオーブン、そしてステンレス串が並んでいる。定番のキャンプ用調理器具達であった。
「朱砂兄からレシピと材料、預かってる。これでなんとかなりそ?」
 不安半分。期待半分。
 シャーマンズゴーストの苧環と共に向けられるダリアの視線に、ルヴィルからの返答はにふりと柔らかな笑顔のみ。大丈夫とも、難しいとも言わない。3人と1体で四苦八苦するのもまた、楽しみの一つだ。
 保は鍋を。ダリアは焼き串を。そしてルヴィルは二人の補佐を。
「あったかいな~。な~」
 苧環に語り掛ける彼は、面倒見の良い保護者そのものであった。小首を傾げる苧環もそれを感じているのだろうか。
 やがて香ばしさすら纏ったご飯の匂いと、トマトが煮立つ酸味豊かな芳香が漂ってくる。
「串も鍋も美味しそう。ご飯に乗っけて食べる?」
 はしゃぐ声に満足げな笑み、そしてそれを見守る表情と多種多様。
 寒空の下だけれど、皆で食べるご飯はとても美味しいに違いない。
 ルヴィルはワインを。ダリアと保はジュースを。
 それらが乾杯の掛け声と共に、それぞれの口へと導かれていく。
 ダッチオーブンの鍋料理も、焼き串もそれぞれが美味。まして、信頼する仲間と共に食べるご飯だ。美味しくない理由があるはずも無かった。
「皆の努力の賜物で、外で食べるご飯はすうごい美味しいなぁ」
 保から零れた絶賛は、その喜びだろう。隠し味のワインの風味も正解だったと、ルヴィルはにふふと笑みを浮かべる。
「でも、ちょっと、三人分には多いよね」
「うーん。だよなぁ」
 張り切りすぎて、少しだけ作り過ぎた。いや、大分作り過ぎた。
(「食べきらない分は持って帰るかなぁ」)
 唸るルヴィルの肩を保がちょんちょんと突く。
「……あ」
 零れた声はダリアの物。それはとても良いアイディアだと、三人とも頷き、了解の視線を交わす。
 その視線の先では、赤い髪のドラゴニアンと、金色の髪のヴァルキュリアが、仲良さげに歩いていた。

 食事の準備が終われば、後は思い思いの時間だ。語る者、ゆったりとした時間を楽しむ者、そして少し早めに食事を堪能する者もいる。
 然れど、冬の野外キャンプに火は欠かせない。所々で立ち上る焚き火の煙が、まるで皆の楽しみを誇示するよう、ゆらりと天へ昇っていく。
「焚き火といえば焼き芋かしら」
 蓮が焚き火に投入したのは、アルミホイルで包んだ小ぶりのサツマイモだ。美味しくなれと期待を込めつつ、棒で突きながら、出来映えを調整していく。
「こうしてのんびり時を過ごすのも良いですね……」
「そうだな。色々慌ただしかったものな」
 焚き火で温めたケトルからホットチョコを注ぐミリムの独白に、是と返すのは槐だった。
 マシュマロや干し芋、リンゴなどを炙り、次々と宴の肴を作り出していく。
「やぁ。リーシャ。あなたもどうかい?」
「それじゃ、遠慮無く」
 先程、ルヴィル達の鍋をワインで堪能したばかりだったが、此度はホットチョコと様々な炙り菓子だ。企画者として、はたまたお祝いされる立場としては、ありがたく頂戴する事とした。
「バームクーヘン、美味しいですね」
「サツマイモもねっとりと美味しいですね~」
 そう言う食べ方もあるのか、とグリゼルダが目を輝かせれば、こちらもお勧めと蓮がアルミホイルを引き剥がしたサツマイモを差し出す。
 健啖家であるグリゼルダであれば、食べ過ぎ、と言う事はないだろうと、リーシャは目を細め、食を交わす二人を見守っていく。
「こう言う一時、大事にしていきたいですよね」
 戦火よりも落ち着く、火と人とのひととき。電気の光が世界に満ちる前の過去、人々が心穏やかにしていた時間は、今もなお、健在の筈だ。
「おや? 月だな」
 槐の言葉に、一同は空を見上げる。まだ青さが残る空に、白い月が見えていた。
「いや。暗夜の宝石か。……いや、どちらでもいいな。生命住まぬ衛星……いや、居たな。いや、それもどうでもいいんだ」
 火が闇を払うように、月が暗い夜道を照らすように、その道を切り開く者が居る。
 その尊さを槐は知っている。だから。
「遠き天体まで宙を駆けて危険な道中を連れて行ってくれた事を、私は感謝するぞ」
「そう言えば、そう言う事もあったなぁ」
 世界一周よりも遠い場所への遠征。
 それもまた、ヘリオライダーの仕事だった。そして、それを成し得る事が出来たのは、そこまで皆が頑張ってくれたお陰だと言う事をリーシャは知っている。
「ありがとう。で、これからもみんなで頑張ろう」
 紡いだ礼に、笑顔が零れる。

 日が翳れば夜の帳と共に寒さも露わになっていく。それを凌ぐ為、焚き火は否応なしに強まって行く物だ。
 セレスティンの火もそうだった。新たな薪を投入した彼女は、強まった火でマシュマロを炙り、ホットココアへと投入する。
「リーシャさん誕生日おめでとう」
「ありがとう」
 受け取ったマグカップからはココア風味以外にも芳醇な匂いが沸き立っていた。冷え出す身体にこれはとてもありがたい。
 コツリとマグカップを当てれば、返礼は焚き火に照らされた妖艶な笑顔。
「どう? 楽しんでる?」
「ええ。そうね。ただ、焚き火は肌が乾燥するから、ちょっとご用心、かな?」
「ふふ。30代の曲がり角はご注意よ」
 先輩の教えに、リーシャはふふりと微笑を形成する。ちなみに深夜の深酒とかを控えているのは内緒だ。
「人生って分からないものね」
「ええ。本当」
 言葉が孕む重みに思わず頷いてしまう。自分にも色々あったのだ。彼女にも色々あったのだろう。それは知る事も出来ないし、知って欲しいと思ってもいないだろう。
「また、恋をしてもいいかしら、ね」
「それは、とても素敵ね」
 29も35も、まだ枯れる年齢では無いのだから。

●火の神と水の神の恩恵
 鶴見岳はいわゆる活火山である。地中深くに形成された溶岩ドームの一端を担うその山は、二柱の神を祀る神体山でもあった。
 彼の山がもたらす恩恵は言わずもがな。
 温泉であった。

 肩まで浸かった湯船が気持ち良かった。
 掬えば、お湯はさらさらと指の隙間から流れていく。火山性の、いわゆる硫黄泉に身を委ねると、その端からとろとろと疲れが溶け出していく様でもあった。
「ああ、これは……」
 折角だからと連れ込んだグリゼルダは、同じく湯船の中で目を細め、天上を見上げている。浅黒い肌はお湯を弾いている様に若々しく、10程異なる年齢差に、少しだけ羨望を覚えてしまった。
「……いや、本来ならばグリゼルダの方が年上だし」
 元不老不死のデウスエクスだった少女が歩んだ年月は、祖先が定命化した後に生まれた彼女の歩んだ年月よりも遙かに長い。長いはずだ。
(「ちょっとだけねぇ」)
 不老だったお陰で、定命化を果たしたグリゼルダは二十歳の女性にしか見えない。
「これ、駄目になっちゃいますね……」
 縁に頭を乗せ、ぷかりと浮力とお湯の温かさに身を任せる彼女は、うつらうつらと船を漕ぎながら、可愛らしく呻いていた。

 さて。大浴場で二人がお湯を楽しむ中。
 家族風呂として備えられていた一角でも姦し……否、賑やかな声が響いていた。
 カレン、ルリィ、ユーロの三姉妹である。
 身体を洗い合い、時には適度であり過度であるスキンシップを行う彼女らは、とても輝いていた。
「ふ。まだ私の方が大きいわね」
「カレン姉様の方がもっと大きいわよ」
 誇示するように胸を張って勝ち誇る次女と、ぷくりと湯船の中で膨れる三女。ユーロの悪戯に端を発した大きさ比べと言う名の揉み合いは、ようやく終結したようだった。
「ユーロ、悪戯は駄目よ。ルリィもそのくらいで、ね」
 その姉妹を長女は湯船でふわりと抱きしめる。
 お湯とは違う温かさと柔らかさに、はふぅと溜め息が零れた。
「……楽しかったね、キャンプ」
「カレーを作ったり、ベーコンを焼いたり。……カレン姉様のは辛い物ばかりだったけど」
 ユーロの言葉に、しみじみとルリィが頷く。姉が直々に味付けした大盛りカレーは、グリゼルダのトラウマを抉ったようだ。食べ切りはしたが、涙目になっているのを見逃さなかった。
「お酒飲みは辛口が好きだと思ったんだけどね」
 リーシャは辛口を固辞。甘口を肴に何か飲んでいたが、それはまぁ、企画者の利点だ。目こぼしもありだろう。
「まだまだ終わってないわ。さぁ、もっと楽しみましょう」
 お風呂が終わっても、夜はまだまだ続く。三姉妹で楽しむ時間もまだ、終わりを告げていない。

●オリオン座を探して
「芯まで温まっちゃったなぁ」
 ほかほかと身体は湯気を立てているが、これから行く場所は再度、野外だ。暖房の効いた旅館では無い為、湯冷めをしないようにしっかりと着んでいく。
(「みんなは湯冷めとかしないのかなぁ」)
 そんな話を聞いた記憶がないし、おそらくそうなのだろう。
 少し遠い目をしながら歩く彼女の視線の先に、二人の男性がいた。珈琲を交わし、星を見上げるそれは、年の離れた、しかし、仲の良い友人と言った処か。
 幻想的な雰囲気に酔いしれる暇もなく、彼女はそっと移動する。そこに声を掛ける程、野暮ではないつもりだった。

「冬の星座は分かりやすくていいね。ほら、あれがオリオンだ」
 メイザースが指を向けたのは、砂時計のくびれを思わせる三つ星のベルトの星座だった。そこから指の動きを追ってみれば、南東の空に大きな三角形が浮かび上がってくる。
 空が澄み渡り、まるで星が降ってくるようだ、とは誰の台詞だったか。
 相槌を挟むロコが、とても真摯に自身の解説に聞き入っている。それは、彼に宿った目の輝きで判る。何万何千の星を映した灰色の瞳は、それそのものが天球のようにも思えた。
「シアンは星は好きかい?」
「そうだね。遠い『星』も良いけれど」
 この『ほし』は君が居るからすきだよ。
 言葉の真意を追わぬまま、メイザースは大きな伸びを行う。ゆったりとしても、日頃の疲れもあり、キャンプ準備の疲れもある。少し休みたい気分だった。
「子守歌。今度は君が、聞かせてくれるんだろう?」
 火の番を買ってくれたロコに悪戯っぽく笑む。
「子守唄、本当に聞くの? 単語にすらならないのに」
 零れた溜め息は、しかし、拒否の色を示していない。目を閉じる友人の傍で、途切れ途切れにも竜の旋律が響き渡っていた。
「……おやすみ、メイザース。君が起きるまで、ちゃんと待ってる」
 約束を紡ぐ彼は、友人の寝顔と、無数の瞬きが見える空を眩しげに見やっていた。

「キャンプに満天の空。活動的でロマンティックですな!」
 アウトドア慣れしているのだろう。コンパクトチェアに身を委ねるイッパイアッテナは、相箱のザラキと共に空を見上げていた。
「あら? 意外とアウトドアなのよ、私」
 応えるリーシャは焚き火の前で芝生に腰を下ろしている。赤髪は火属性の証。温かい炎がとても心地よかった。
(「まぁ、目に付いた物に何でも飛びつく性格な気もするけど」)
 温泉、サイクリング、エステ、LARP。思えば今まで企画した半分以上は野外活動だ。アウトドア派と言っても過言ではない……とは流石に言えないか。うん。
「楽しめていますか?」
 夜空を見上げていたイッパイアッテナは、視線をリーシャへと向けて問う。
 相棒である相箱のザラキもまた、静かな視線を彼女へと向けていた。
 だから答える。それは夜空に咲いた花火のような満面の笑みだった。
「ええ。とっても」
 嘘偽り無い、それが彼女にとっての事実だった。

「リーシャさん。グリゼルダさん。お星様に願いを掛けるなら、どんなことを願う?」
 散策を続ける二人に投げかけられたシルの言葉はとても突飛で、だが、それこそがこの場に相応しい様にも思えた。
「願い事かぁ……」
「そうですねぇ。皆が平和な世界を築けるように、でしょうか」
 考え込むリーシャと、素直に返すグリゼルダ。そんな二者二様の様子がおかしくて、つい、クスリと笑ってしまう。
「わたしは、グリゼルダさんと同じかなぁ。ただ、世界が平和にっていうのはあるけど、でも、わたしは手に届く範囲の大切な人達が幸せであるようにって感じ、ね」
 大切な友達、家族、そして、恋人……。
 一人でも欠けたらシルの世界はシルの思う世界では無くなってしまう。だから、自身を含め、その人達にこそ幸いあれと、彼女は望むのだ。
「もちろん、それはリーシャさんもグリゼルダさんもだよ」
 微笑みで紡がれた彼女の言葉に、どうしても頬が熱くなるのを感じてしまう。
「ありがとうございます。そうなるように頑張らないといけませんね」
 社交辞令の様に返すグリゼルダの平常心が、少しだけ羨ましい。
 あ、いや。年を取って感傷的になっているのだろうか?
「へへ。ちょっとらしくない、かな? でも、こう言う星空の下だと、やっぱり、いつもと違う感じになっちゃうのかなって思うの」
「それは仕方ないわ。こんな素敵な星空の下で、みんなと過ごせるのだもの」
 楽しさも、喜びも、そして嬉しさも。
 全て共有出来る仲間がいる。それがどれ程素晴らしい事か。
「「……誕生日、おめでとうございます」」
 今日、幾度と無く聞いた言葉は、しかし、とても胸に染みる気がした。
 おめでとう。
 その祝辞は、一年間、皆が頑張り、皆と頑張ったからこそ、紡げる言葉なんだろうな、と強く思うのだった。

作者:秋月きり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月26日
難度:易しい
参加:14人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 0
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