服焼失!!  恐怖のジャイアントディスク始動

作者:大丁

 吹き抜けのエスカレーターを上ってスグ。新譜とポスターが掲げられ、スタッフ手書きのポップも添えられたCDジャケットが、平積みで並んでいる。
 『購入特典まだアリます』とのこと。
 手に取った青年も、たまたま気に止まっただけであって、ケースを裏返し、知らない曲名のリストに目を通す。
 次にやることといったら、コーナー脇にあった試聴機のスキップボタンを数回押してからヘッドホンを片耳へ、ぞんざいにあてるだけだった。
(「おー、けっこうイケんじゃん……」)
 プレーヤーの透明カバーの中で、回転を続ける音楽ディスク。
 軽くリズムをとる靴先。
 フィーンと機械音が、徐々に大きくなっていき……。
「ん、あれ?」
 青年が試聴機の不調を疑って、商品を掴んだままの手を再生ボタンへと伸ばすと、その袖口が燃え始めた。
「うっわ、どうなってるん……?!」
 肩、上半身と、服だけが焼けていくのに、熱くはないし、火傷もしていない。
「は、裸になっちまう、誰か!」
 振りかえると、見えた。
 吹き抜けホールに浮く、人の背丈の何倍もの直径をもった、巨大なCDを。
 光る面をこちらに向けて回転している。異音の正体はコイツだ。
 いや、そんなことはどうでもいい。逃げなければ。
 光円盤の裏には、7mもの身長をもつ、骸骨のようなロボットがいた。というより、CDのある側が背中なのだ。
 踏みだした靴も焼失してしまい、青年は身一つでショップの床を転げ回る。

 ばたばたと、レインコートがひるがえっていた。
 ローターの巻き起こす風にあおられながら、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は予知の内容を語る。
「ショッピングモールの吹き抜けホールで、ダモクレスが復活するってことねぇ。ヘリオンですぐ出発よお」
 ヘリポートに集合し、依頼に参加するケルベロスたちは、始動したダモクレスが回収されるのを阻止しなければならない。
 グラビティ・チェインの枯渇を人間の殺戮によって補給しようとするし、出現後7分で魔空回廊が開いて撤退してしまう、といった敵の重要事項を確認する。
「場所とタイミングが確実だったから、現場のショッピングモールには休業してもらってる。責任者にも離れて待機してもらってるの。みんなの到着と、ダモクレスの出現は同時になるはずよぉ。CDショップのそばにいるけど、能力との関係は不明。CDに憑りついたダモクレスではないから勘違いしないでねぇ」
 予知では、敵がなにもしないうちに一般人に被害がでていたが、実際のグラビティは、『彗星爆突衝(すいせいばくとつしょう)』。光輪拳士が背負う、阿頼耶識の技と同質のものらしい。
「背中の巨大CDが光って回ると、そばにいる誰かに体当たりして服が焼けちゃう。1度だけ、フルパワー攻撃でダモクレス自身も傷つきながら、効果範囲を広げてくるの」
 通常は近距離の単体破壊攻撃、フルパワーでは遠距離の列破壊攻撃とのこと。どちらも服破りがある。

「レッツゴー! ケルベロス……おや?」
 タラップを踏みかけて、冬美はもうひとつ話した。
「CDのCってコンパクトだから、巨大CDじゃ、ヘンかぁ。……ジャイアントディスク?」


参加者
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
除・神月(猛拳・e16846)
高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)
アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)
火之神・陽大(流離の復讐者・e67551)

■リプレイ

●戦闘配置
 高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)は高校の制服姿だ。
「ショッピングモールに現れる敵……!」
「7m……そんなに大きいのに、服だけ燃やすとか」
 黒いフィルムスーツで、空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は、星天鎗アガサをかざして身長を想像した。
「器用な巨大ダモクレスもいるものだね……」
 1 階に三人残して、ケルベロスたちはエスカレーターを登る。吹き抜けホールの周囲だけ、電源を入れてもらい、店舗も営業中と同じ状態にしてある。予知からの乖離防止だ。
 アーシャ・シン(オウガの自称名軍師・e58486)は首を傾げる。
「おっきなCDねぇ……。確かに矛盾よね。全然コンパクトじゃないし」
 応えて、日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)は。
「……CDならぬ、GDってところか……?」
「戦闘中にノリノリのBGMでも流してくれると……あ、イイコト思いついたわ!」
 店の試聴機をつなぎ直して、スピーカーから曲を出す。7分間を計れるだろう。
 その提案を、仲間に伝えたものの。
「俺はレコードの方が好きだな」
 アーシャと蒼眞(そうま)は、そのままCDショップ前に陣取り、4人が吹き抜けのガラス柵にそって左右に展開した。
 1階に残った火之神・陽大(流離の復讐者・e67551)は、上半身に直接、上着を着ている。
「裸になる依頼ねぇ。さっさと片付けねぇと大騒ぎになりそうだな」
 うなづいて、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は、鎖を両腕に巻き付ける。黒スーツの袖口をみて思うのは、脱げるのを楽しむ余裕はないということ。
「きっちり終わらせて、その分の時間をつくるとしましょうか。……戦闘準備完了」
 何のぶん、かと陽大(ようだい)が聞き返す前に、ましろの叫びが聞こえた。
「現れましたね、ダモクレス!」
 変身バンク省略の時間短縮する。
「氷をまとった一撃で凍りついてくださいっ!」
 魔法少女といっても、ガラス柵を乗り越えて格闘するくらいは普通な、ご時世。光輪を背負ったロボの左肩を殴りつけると頭を飛び越え、向かいのガラス柵に足を掛ける。
 入れ替わりに、除・神月(猛拳・e16846)は旋刃脚。
「CD野郎、覚悟は出来たカ?」
 蹴ったあと、無月(なづき)の隣に着地した。
 蒼眞は、白いポンチョを吹き抜けの上へ投げた。
「『太陽機蹴落顕現(ヘリオンダイブリライト)』で足止めするぜ!」
 幻影の案内人が纏い、蒼眞も裾から入って一着を二人で着てしまう。さらにポンチョを奪って、落下。
 機内には、裸の案内人が残されるという、再現。
 ロボの頭頂部に打撃を加えてふらつかせると、エスカレーターの上りに乗り、もとのCD売り場に戻ってくる。
 ダモクレスが右に傾いたので、攻撃が効いていると思いきや、背中のディスクが回転した。そのまま、ガラス柵にぶつかってくる。機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は、改造チェーンソー剣をかざして防いだが、衣服は燃え上がった。
「まだまだ、これからなのですよ!」
 フィルムスーツの下着だけが残る。

●フルパワー
 ジャイアントディスクダモクレスには、吹き抜けホールは狭く、檻の中で暴れているようなものだ。
 彗星爆突衝といっても、柱のような脚が接触しただけで、陽大のジーンズはボロくずになってしまう。
「そんくらいの覚悟は完了してるぜ」
 地獄化している両足が剝き出しになると、そのあいだにあるモノも、まろび出た。真理の下着姿には反応せず、ふにゃふにゃと左右に揺れる。
「お返しのキックだ!」
 達人の一撃は、もちろん足で。
 シフカたちが、1階を走り回り、2階からは手すりごしに取り囲んでの攻撃が加えられている。ロボ足の間を抜けるあいだに黒スーツを焼かれてしまったが、シフカは無言のまま、鎖に巻かれた腕を、敵の胴体にかざした。
 螺旋氷縛波が、縛神白鎖『ぐlei伏ニル』の渦にそって放たれる。
 凍りついた装甲は、仲間の攻撃をうけるたびに、ひび割れていく。
 CDショップにいるアーシャは、まだ1曲目がかかっているのに、フィーンという機械音が急にやかましくなったと感じた。
 3分経過で、これは。
「氷でフルボッコ戦略が効いてるぞ。デカ物のやつ、決着を急いでる。前衛にフルパワーが来るぜ。気をつけろ!」
 戦闘になると軍師の口調は荒っぽい。
 蒼眞は視た。ダモクレスは、ひび割れた左肩で、二階フロアにめり込む。光に触れれば、神月(しぇんゆぇ)は剥かれるだろう。
「大きいのに本当、器用だね……」
 ドラゴニアンの翼も広げて、黒いフィルムスーツが割り込んできた。無月が引き受けようというのだ。
 焼けてちぢれていく、繊維。神月が礼を言う口の動き。
 無月は、そのどちらにも平気だと応えたように、見えた。
 やがて細身な体つきと、生の肌があらわにされるのだ。
 蒼眞はさらに視た。敵がホールの縁にそって左から右へと半周し、ましろと真理に向かったのを。
 魔法少女服が燃えだしたのを、下着姿の真理が、抱きしめる。
 ましろの炎は、インナーフィルムスーツに移ることで、少しの焦げ目だけとなった。
 ロボは回廊の床を潰しながらCDショップがわに近づいてくる。それでも、蒼眞の気がかりは、真理の下着だ。
 あんな少ない布地では、すぐに燃え尽きる。
「わあ、言わんこっちゃない。紐が焼け落ちて……。くそう、ロボが邪魔だよ!」
 おっぱいをチラと確認したところで、衝突に見舞われる。
 最後には、エスカレーターが倒壊した。蒼眞は後ろに退いたものの、全裸となった。

●動作不能
 シフカは日本刀、廃命白刃『Bluと願グ』を抜き放った。今までは、ロボの足元で動いていたが、ボディ各所にできた裂傷をつなぐように、高く跳躍してから絶空斬で振り下ろす。
 みぞれが散った。
 そのさなかを突っ切り、陽大はさらに両足をひらいて上昇する。硬くはなっていないが、寒さに縮んでいるわけでもない。
 上下にぷるんぷるんさせながら、頭部に宙返り蹴りをかます。
「蒼眞ァ! 手ごたえあった。もうひと押ししてくれ!」
 1階に降りながら、巨大CDごしに怒鳴る。
 数段だけ残ったエスカレーターのステップから、青い髪が跳んできた。こっちは半立ちになっている。
「ありがたく頂くぜ!」
 蒼眞の踏みつけで、ロボの頭はふたつに割れた。しかし、二本の男がフロアに着地しても、GDがまだ動作している。
 ましろに、なおも単独で体当たりする首なしの機械。魔法服も、ついに燃え落ちた。
「それでも、氷魔法ですっ!」
 杖はまだ握っていた。先端からフロストレーザー。
 ロボの右腕が凍りついたタイミングで、真理のライドキャリバー、プライド・ワンが、右足にもキャリバースピンをきめた。
 再び右へと傾いてくる巨体に、真理は、全裸に改造チェーンソー剣を構えて対峙する。
「高千穂さん、下がっていてくださいです」
 崩れかけた2階から、サーヴァントのそばに着地するまで、剣は装甲を切り裂いた。
 対岸で、無月はつぶやく。
「……凍てつけ」
 彼女も飛び降りざまに、星天鎗アザヤに氷の霊力を集中させ、すでにひび割れていた左肩に突き刺す。
 『烈凍槍(レットウソウ)』は、肩口内部にまで突き立った。
 機械部品は動きを止め、上腕ついで下腕へと分解していく。
 無月は、鉄棒のように槍の柄でくるっと回転すると、穂先を引き抜き、1階へと降下する。
 長髪がふわりと浮いて、翼とその下の、小振りなオシリがのぞいている。実はちょっと後ろに蒼眞が位置していた。
 無月に続いて、神月も跳んでいた。左肩口へと、『獣爪拳(ジュウソウケン)』を突き立てる。
「ズタズタに引き裂いてやるゼェ!」
 首のあった場所を通過して。アーシャの見ている前で、左から右。ましろが杖を構えているとなりまで渡る。
 ギギギ、と物の引っかかるような音がして、円盤の回転速度が不規則になった。パソコンやゲーム機を使っている者なら不安になる、あの音だ。
「お時間には早えが、仕留めるぜ!」
 アーシャは、エスカレーターが崩れかけてるふちに立って、フォーチュンスターを蹴りとばした。
 星のオーラが、ジャイアントディスクを割る。ロボは、1階に首を突っ込むようにして、動きを止めた。

●みんなで
 ダモクレスの部品が散乱するフロア、陽大がふと見ると、シフカの裸がある。
「ふふ、どうかしましたか?」
 笑みがこぼれている。ようやく、視られる喜びを露わにできてのこと。
 男のモノが、むくむくと反り立つ。
 エスカレーターの残骸を避けながら、硬くなったそれが進み出ると、2階のへりでは、アーシャが蹴りポーズのまま、ぐらぐらとバランスを取り損ねていた。
「落ちます~」
 途中、割れたガラスにドレスを引っかけながら、陽大の、たっているところに腰を下ろすと、パンツも裂けて一本槍に刺さったのだった。
「はうッ。コンパクトじゃないし!」
 せっかく、ダモクレスの攻撃を受けずにすんだのに、いまや襟と袖と靴くらいしか、身につけていない。
「アーシャが、俺のを鎮めてくれるのかい?」
 陽大は、そのままの姿勢から、両手で彼女の膝うらを支えてやった。
「これは、大惨事ですね」
 シフカはなおも微笑んでいたが、無月と真理は、やれやれと顔を見合わせる。
 そこへ、プライド・ワンが、ライトを警告の黄色にかえて寄ってきたので、蒼眞が三人の裸を見ているのに気がついた。
 無月は、恥ずかしがる余裕なんてなさそうだと思っていたので、戦闘から解放されて、羞恥がぶり返したようだ。真理も同様だったが、サーヴァントと共に無月の身体を隠すようにし、いまだ仲間をかばった。
 半立ちくらいだった蒼眞のも、今頃になってフル状態している。
「見てるですか? あと、記憶もしてるです?」
「見てないし、覚えてもいないよー」
 ジャイアントディスクを指し示し。
「男なら、レコードプレーヤーだろう。突起を溝の奥に当てて声を出させる……なんてな」
 シフカが吹き出した。前に進み出ると、その突起とやらを握った。
「下手な口説きですね。でも、いいですよ。奥にください」
「誰もいないショッピングモールというのも楽しいかもしれない。普段なら人目があるような場所でもやりたい放題だしな」
 しごく手に熱がこもった。シフカの琴線に触れたのだろう。ついこのあいだも、おっぱいを揉み揉まれした仲である。
 階上では、服も無事だった神月がヒールに取りかかりつつ、ホールの仲間の様子をみていた。
 なにせ、撃破重視でメディックも置かない布陣だった。回復や修復に時間がかかって当然だし、みんなにはまず、ご休憩してもらいたい。
「ましろの姿が見えねーけド、先に帰ったのかナー。正体を隠してるシ」
 その女子高生は、着るものを探して、薄暗い建物内を歩いていた。各店は、つい立や覆いで閉じられていて、もちろん買い物などできない。
「お金だけ置いていくつもりでしたが……あれ、人がいます?」
 数人の男女が、冷蔵庫と洗濯機、大型テレビを運んでいた。
 年齢もばらばらな感じで、私服っぽい。店員制服や作業着の者はいなかった。
 全員が、ましろをにらんでいる。
 察するに、臨時休業を狙っての窃盗団と、出くわしてしまったのだ。
 彼 、彼女らの視線は、ましろの裸に移り、盗品を床におくと近づいてくるのだった。
 陽大の打ち付ける力は相当なもので、立ったまま弓なりに背を反り、ブツの首まで抜いたところから根元までが往復される。
「おっきい! おっきいぃ!」
 全部を飲み込んでいるアーシャも、たいしたものである。時間制限もお預けもなしで、楽しみに専念している。
 プライド・ワンに跨って、エンジンの振動を受けながら、真理の指が、そこをまさぐっていた。
「あん……。ふうん」
 無月が、小さく喘いでいる。
 マジな感じで腰を前後動している蒼眞。両手は、ふくらみを背後から抱え、上体を密着させていた。
「ふっ、はっ、シフカ……、お客さんが通る想像、してるだろ?」
 わざわざ2階に移動し、ガラス柵に手をついてしている。シフカの歓喜の表情は、ガラスにしっかり映っていた。
 店内の行為であるなら、ましろは寝転がされての寄ってたかってだ。数回目の出入りで、もう達してしまった。
 アーシャの抱えられての声は高くなり、無月は静かに。
 そして、真理をイカせた相手は、サーヴァントであろうか。
 吹き抜けに響くシフカの嬌声。同時に、蒼眞のが脈打ち、出して。
「ウッ……フウウッ!」
 陽大は、太く長い時間をかけて、果てた。
 冷蔵庫などが通路に置きっぱのところで、ましろが、男物のワイシャツを羽織って立っている。
「おーイ。まだ、店んなかにいたのカ。これ着てろヨ」
 神月が見つけて、着替えを手渡した。
 それは、シフカが用意していたもので、合流したケルベロスらは皆、サイズもぴったりに着ている。
 心なしか、7人の距離も近い。ましろも、加わった。
「ちょっと、別件がありまして。ショッピングモールの責任者には、事件解決の連絡すんでます」
 そうだったんだ、ありがとう、と口々に礼を言い、一緒に遊びにいくことにする。
 買い物とはいかなかったけれど。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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