全てを殴り倒す罪人

作者:なちゅい


 新潟県新潟市。
 米どころのこの地域も、冬となれば豪雪地帯となり、真っ白な雪で周囲は銀世界へと変わる。
 雪舞う新潟の街、昼間に突如として降り立ってきたのは、下半身のみ軽鎧とズボンを着用し、上半身は素肌をさらしたエインヘリアルだった。
「ここが地球か。なかなかいいところじゃねえか」
 短髪のその男は周囲を見回し、早速動き出す。
 周囲の人々がデウスエクスの来訪を把握する前に、そいつは片っ端から近場にいた人々へと殴り掛かり始める。
 オーラを纏わせた拳の破壊力はすさまじく、人々の体を一撃で粉砕してしまう。
「「キャアアアアアアアアアッ!!」」
 街が瞬く間に惨劇の場と化し、逃げようとする一般人をエインヘリアルは片っ端から殴りつけていく。
「ぐははは! 最高だ、最高だぜ、地球ってとこはよ!」
 そいつは手を血で濡らしながらグラビティ・チェインを回収し、白い街を赤く染め上げていくのである……。


 罪人エインヘリアルが現れる予知があったとの報告を受け、ケルベロス達がとあるビルの屋上にあるヘリポートへと集まってくる。
「ボクサー気取りの格闘エインヘリアルが現れるって聞いたゼ!」
 やってきた除・神月(猛拳・e16846)が拳を鳴らしつつやってくると、リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が大きく頷いて。
「そうだね。危険な相手だから手早く討伐してほしいんだ」
 アスガルドで重罪を起こした凶悪犯罪者。そいつは地球に降り立ってすぐ目につく者から拳を叩きつけ、粉砕していくのだとリーゼリットは言う。
 このエインヘリアルを放置すれば、多くの人々の命が奪われるだけでなく、人々に恐怖と憎悪を振り撒くことにも繋がってしまう。
「それは、地球で活動するエインヘリアルの定命化を遅らせることにも繋がるよ」
 急いで現場に向かい、この罪人エインヘリアルを討伐したい。

 罪人エインヘリアルはペキュレといい、下半身のみ軽装鎧とズボンを着用し、上半身は寒空の下でも素肌をさらした大男だ。
 身長はエインヘリアルとしては平均的で、全長3mほど。
 バトルオーラを纏い、クラッシャーとして全てのグラビティを拳から繰り出してくる。
「敵が現れるのは、新潟県新潟市内の市街地だね」
 昼間、雪舞う中、突如現れたペキュレは無差別に人々へと殴り掛かる。
 避難勧告は予知を受けて進んでおり、出現地点は分かっている為、敵が出現する数分前に到着可能だ。
「あちらは情報なしで送られてくるようだから、事前に避難されても知らずに降り立つはずだよ」
 なお、罪人エインヘリアルは使い捨ての戦力として送り込まれていることを自覚しており、撤退せずに攻撃を続けてくる。確実にこの場で倒してしまいたい。

 一通り説明したリーゼリットは、正月と新潟という土地からこんな提案をする。
「敵を倒して街の修復が終わったら、甘味処に行ってみるのはどうかな」
 甘味処では、餅を使ったスイーツが食べられる他、餅を使った軽食、あんみつ、和風パフェなどを食べることができる。
「甘味処か、たまにはいいかもしれんな」
 雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)は何が食べようかと、参加するメンバーと話す。
 ただ、それは街を守り切ることが前提だ。人々に被害が無いよう速やかにエインヘリアルを討伐したい。
「どうか、よろしく頼んだよ」
 リーゼリットは改めてケルベロス達へとこの依頼を託すのである。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)
除・神月(猛拳・e16846)
宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)
エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)
天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)
狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)

■リプレイ


 一面、雪の積もった銀世界、新潟県新潟市へとやってきたケルベロス一行。
 降下した彼らは現場周辺にて素早く、エインヘリアルの出現に備える。
 今回の事件を予見したパンダのウェアライダー、除・神月(猛拳・e16846)はヘリオンでこの地に向かってくる間に、現地周辺の警察へと連絡を入れていて。
「あとは一般人連中の避難だナ」
 早速、避難が遅れている老人を発見した神月は、背負ってこの場から離れる手助けをしていく。
「相も変わらず、無用な死と破壊を振り撒かんとするものだ」
 金髪に金の翼を持つオラトリオ、ロウガ・ジェラフィード(金色の戦天使・e04854)はいい加減、諦めてもらいたいとエインヘリアルの強襲に辟易としていた様子。
 そんな中、ダイナマイトモードを発動した彼もまた、周囲にいた人々に避難を促す。
「まもなく、脳筋エインヘリアルがやってくるよ。転ばないように気をつけて素早く避難してね!」
 銀髪のヴァルキュリア、エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)も人々へと明るく呼びかけて、この場が危険であることを伝達する。
 遠くには警官隊も駆けつけ、現場周辺への封鎖と人々の誘導を開始してくれていた。
 雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が彼らと接触し、スムーズに避難が進むよう連携を取っていたようだ。
 そんな現場の上空に開いた魔空回廊から降りてくる半裸の男。
 すでに、気合十分といった様子の罪人エインヘリアル、ペキュレだ。
 その出現を確認し、水のような青銀の髪の天瀬・水凪(仮晶氷獄・e44082)は、勿忘草色の瞳で睨みつけて。
「……奴らに容赦などいらぬ。必ず倒そうぞ」
 水凪の言葉に、半裸で裸足、マッスルレガースと大胆な水着のみで今回の戦いに臨む相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が速攻で敵に向かってダッシュする。
(「ディフェンダーとしてできるだけ多く、敵の攻撃を引き付ける」)
 そうすれば、結果的にエインヘリアルの攻撃から一般人を守ることに繋がる。
 そう考えた泰地は先制の一撃をと、近づいたエインヘリアルの顔面目掛けて蹴りを繰り出す。
「昂る星々の刃、立ち進む手脚を断つ!」
 同時に、翼で飛翔したロウガは宙で一回転しつつ、敵の頭上へと「日輪の戦靴-Sunlight Edge-」で踵落としを叩き込もうとする。
 しかしながら、2人の強襲をエインヘリアルは素早いフットワークで躱してみせて。
「へっ、簡単にはグラビティ・チェインはやれねぇってか」
 半裸のエインヘリアル、ペキュレは鼻を鳴らしてこの場のケルベロス達を見回す。
 そいつの目を引くように、おっとりした清楚系美女、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)が手を振って。
「寒さの中でもへこたれないー、頑強な方とお見受けしましたのー」
 こちらにも半裸の泰地がいるのはさておき、雪国で素肌を晒すエインヘリアルの強靭さをフラッタリーが指摘する。
「格闘型というのは分かりやすくていいが……」
 軍服着用、金の毛並みを持つ狼のウェアライダー、宮口・双牙(軍服を着た金狼・e35290)もゆっくりと敵を間合いに捉えて。
「その拳は一般人に振り上げていいものではないな。止めさせてもらう」
 水凪も思った以上に避難誘導が進んでいることもあり、戦闘に専念すべくやってくる。
 神月は逃げ遅れている人々がいる方向を背にし、流れ弾が飛ばないようにと気にかけていたようだ。
「バカは死ななきゃ治らねぇって、聞いたことあるか?」
 地獄化した声帯で声をかける狼炎・ジグ(恨み貪る者・e83604)もまた並々ならぬ敵愾心で、現れたエインヘリアルへと鋭い視線を向けて。
「そういうわけだからよ、ゴミ虫は死ねよ」
「あぁ? いい度胸してんじゃねーか」
「正面から楽しく打ち合えそうでー、大変嬉しく思いますわぁー」
 ジグの挑発に乗ってガンを飛ばすエインヘリアルへ、フラッタリーは変わらぬ口調で語り掛けながら太刀「野干吼」を抜く。
「さあさあ、参りますのよー」
 そう言い終えたフラッタリーはサークレットを展開し、金色瞳を見開いてから狂笑を浮かべて敵へと飛びかかっていくのである。


 拳を突き出して牽制してくるエインヘリアル、ペキュレ。
「遠慮なくいかせてもらうぜ、ケルベロス!」
 その音速の拳を正面から受け止めた泰地が「マッスルレガース」で虹を纏った蹴りを叩き込みつつ、敵の注意を引き付ける。
「ボクサースタイルの相手に負けるわけにはいかないのでな」
 エインヘリアルを敵視するメンバーがこの場にはいるが、泰地の興味は単純な力比べ。
 デウスエクスとタイマンを張るのは難しいと認識しながらも、泰地は殴り掛かってくる相手に対して自慢の足技を繰り出すのみだ。
 そこへ、次々にケルベロス達が攻撃を繰り出す。
 額の弾痕から迸る地獄を揺らめかしながら、攻め来るフラッタリーは歪んだ笑いを浮かべ、『野干吼』を握りしめる。
「アゝ、此処ニ吾ヶ身在リト云フニ、蒙昧ナrEバ見得ヌガ道理。デハ見得ルヤフニ。ヨリ視彫ルヤフNi。御身ニ迫ル死須ラモ」
 フラッタリーは距離を取ってその大きな刃を振るい、相手の目、耳を狙って遠当てを叩き込む。
「やろぉ……!」
 相手に煩わしさを感じさせ、フラッタリーは強く敵の気を引いていた。

 前線の2人が強くペキュレの注意を引きつければ、他メンバー達はあの手この手でそいつへとグラビティを繰り出してダメージを重ねていく。
「……頼むぞ」
 大地に潜む死者の無念を「喚起」した水凪は、彼らに依頼してペキュレの動きを束縛せんと、その足元へと絡みつく。
「なめんなよ……!」
 とはいえ、それに抵抗する敵は満足とは言えずとも強引に動いてみせる。
 足止め程度の働きに留まることを水凪は確認し、さらなる攻撃の構えを取っていた。
「……悪いが、正面から殴り合う気はない」
 拳で殴りつけてくる相手なら、双牙は直接の殴り合いは避けて立ち回る。
 すでに前線の盾役2人へと注意が向いているペキュレだが、仲間にその馬鹿力が振るわれていることに変わりない。
 万が一にも、一般人にその拳が向けられてはいけないと、双牙は畏怖と力強さを秘めた自らの手刀「手吼」を突き出し、ペキュレの気脈を断って体を硬直させる。
 動きさえ止めれば危害は小さくなると、双牙は敵の足止めに注力していく。
 ロウガもまた、敵の動きの妨害に当たるが、足止めだけでなくダメージを重ねることも考慮して。
「時を喰らう戦の竜よ、その力を示せ!」
 竜語魔法を唱えたロウガは、突き出して広げた手からドラゴンの幻影を放つ。
 天使の翼を持った黄金の竜は、炎をペキュレへと浴びせかけて焼き捨てようとする。
 こちらは、ドラゴニアンのジグ。
 チームの火力たらんと立ち回る彼は、地獄となった声帯から炎を噴き出し、全身を覆う。
「一発KOでくたばるとかするなよ? いくぞ、くずがぁ!」
 準備を整えたジグは、渾身の力でエインヘリアルをねじ伏せるべく、体術をメインに接敵していく。
 神月は一般人の避難状況を確認しつつ攻撃の機を窺っていたが、ある程度人々がこの場から離れたこと、そして、盾役がうまく相手の気を引いていたことを確認する。
 好戦的な彼女だが、一般人の配慮を忘れないところが神月らしい。
「あたしはとにかく攻撃しテ、野郎を削り取るが役目だナ」
 満を持して喧嘩に乗り出す神月は、渾身の力で両腕で握りしめたルーンアックスをペキュレに叩きつける。
 いくら強靭な肉体を持つエインヘリアルとはいえ、ルーンを纏わせた厚い刃の一撃を叩き込まれれば無傷とはいかない。
 神月もまた火力として、敵を追い込むべくさらにグラビティを行使する。
 そんな仲間達の立ち回りを目にしながら、エマは地面に這わせたケルベロスチェインを動かして魔方陣を描き、仲間達の防御を固める。
 そして、その後、メディックとして立ち回るエマが回復に使うのは、背中に背負ったタンク。
「長丁場になりそうだからね。頑張って皆を支えるよ」
 そう言いながら、彼女はタンクから繋がるノズルの付いたホースより、仲間達へと蒸気を浴びせかけていくのである。


 ケルベロス達はグラビティを繰り出し、半裸のボクサースタイルで拳を突き出してくるエインヘリアル、ペキュレを攻めたてる。
 その一挙手一投足ですら気に入らぬ水凪は、先程の喚起と合わせ、妖精靴「rossignol」から星形のオーラを発して相手へと浴びせかける。
 多少、肉体が傷ついても、戦意の衰えぬペキュレが次なる攻撃を仕掛けてくる前に、エマは背中のタンクからホースで繋がったノズルより蒸気を噴き出す。
「これはただの蒸気じゃないんだからね」
 敵が狙っているのは、グラビティ・チェインを奪取することによる体力回復。
 それを察したエマは、魔導金属片を含んだ蒸気を発して仲間の回復と合わせて防御も固めていく。
 なお、そのガジェットはワンタッチで噴射する物が変わる優れもの。
 蒸気だけでなく、火炎放射や塗料飛ばすことだってできるそうだ。
 そんな仲間目がけ、拳を叩き込んでくるペキュレ。
 気を引くフラッタリーが殴られていたが、泰地がその顔面へと今度こそ足裏で蹴りを叩き込む。
 顔面を踏んづけられたエインヘリアルの形相はすさまじい。
「おのれ、地球人の分際で……!」
 完全にこちらを下に見ているその発言に、先程殴られたフラッタリーが近づく。
 血を流して、骨を軋ませ、肌が裂ける感覚を味わう強烈なる一撃。
 だが、彼女の金色瞳は甘美な色だと潤んですらいて。
「暴虐デ吾ヲ穿テ!! 花拳繍腿デ無ク、且ハ必滅ノ拳デ在ル為ラバ!」
 腕力で野干吼を叩きつけていくフラッタリー。攻撃を食らっても、攻撃を叩き込んでも、彼女は嬉々としていた。
 自らの傷の程度と仲間が多少足止めした相手の状態をチェックする双牙。
 瞬時に状況を判断した双牙は素早く接敵し、その腹へと電光石火の蹴りを叩き込む。
 相手が筋肉という鎧を纏っていなければ、確実に仕留めたはずの一撃だが、敵はそれを堪えてみせる。
 ただ、双牙の強烈な一撃にペキュレも痺れを覚え、体が満足に動かなくなっていたようだ。
(「……あとは味方が殴り倒してくれる」)
 双牙はそう疑わず、この場のメンバーの力を信じていた。
 そこに、ロウガが今度こそはと重力を宿す蹴りで強襲する。
 ロウガの攻撃で強く足止めされ、僅かに足がもつれるペキュレ。
 そいつ目がけ、ジグが暴風を纏う回し蹴りで追撃し、神月もまた首元目がけて渾身の蹴りを叩き込む。
 ケルベロス達の攻撃はボディブローのように効いていき、ペキュレの動きを鈍らせていた。

 交戦の間に周辺の避難誘導も完了し、戦線へと加わったリュエンが盾となる泰地やフラッタリーに緊急手術で癒しに当たる。
 また、彼は電撃杖を振るって電気ショックを飛ばし、火力となるメンバーの力を高めていく。
 仲間の回復に当たっていたエマもこのタイミングは攻撃に出て。
「地球を汚すエインヘリアルは消毒だー!」
 それまで癒しの蒸気を噴き出していたノズルから、火炎を放射させて敵へと浴びせかけていく。
「地球人ごときに、負けてたまるかぁぁっ!」
 全身をボロボロにした敵は全身を包むオーラより弾丸を発してきたが、受け止めた泰地が相手の頭上から急降下蹴りを叩き込む。
 そこに、フラッタリーが手にする刃を怪しく煌めかせる。
 ――ああ、野干吼はなぜこんなにも鈍く光るのか。
 戦いの応酬を長く重ねたいという本音も見せる彼女だが、殺意は冷たく速やかに相手の命を奪おうとする。
 相手の動きが鈍ったことで、攻撃パターンを変えた水凪はが大鎌「翌檜」を投げ飛ばす。
 回転する刃は素肌を晒すペキュレの身体を切り裂いていき、鍛え上げた肉体の至る所に傷を入れてしまう。
 そこへ、全身に地獄の炎を漲らせた双牙が迫る。
「……紅蓮の炎に巻かれて爆ぜろ」
 巨躯の相手にもかかわらず、軽々と持ち上げた双牙は相手の体を回転させ始めて。
「――ヴォルカニック・ジャイロ!」
 巻き起こる炎の嵐と共に、彼は敵の体を地面へと投げ捨てていった。
 地面へと落ちた敵へとロウガは狙いを定める。
「喰らうは正しき時、善なる意志――今、黄金に至りて邪を倒す」
 漆黒の刀身の剣に発現する「献者の宝石」と「喰者の卑石」。
 ロウガは一気にゾディアックソードを振り上げて。
「――悠久なる神の刻(イノチ)、ヒトの刻(トキ)に臥せるがいい!!」
 その刃を敵の身体へと埋め込み、「喰者の卑石」を輝かせて身体の悪性を増加させていく。
「ぐ、うぐ……」
「殴るだけじゃもの足りねぇなぁ」
 呻くペキュレに、ここぞとジグは赤い腕を振り上げて。
「壊して、潰して、溶かして、焼き尽くしてから食らってやんよ!」
 目の前のエインヘリアルへとジグは躊躇も容赦もなく、強かに殴り掛かっていく。
「ズタズタに引き裂いてやるゼェ!」
 獣化した手足に重力を集中させた神月もまた、高速かつ正確な一撃をペキュレへと見舞っていった。
「が、ああっ……」
 大きく目を見開いたエインヘリアルが嗚咽を吐く。
 そして、そいつは前のめりに倒れていき、完全に動きを止めてしまったのだった。


 ケルベロス達はエインヘリアルを討伐し終えて。
 戦場となった新潟の街の修復の為、ロウガは気力を、双牙はエネルギー光球を、エマはガジェットから治療効果のある蒸気を噴出していく。
 他者向けのヒールを持たぬ水凪は残骸の後片付け。
 ジグ、泰地は戻ってくる一般人の目に触れぬようエインヘリアルの残骸を運び去る。
 その際、泰地は相手の履いていたブーツを回収していたようだ。

 一通り作業が終われば、一行は甘味処の暖簾をくぐる。
 甘味処ではあるが、おもちを食べられることと、そのネーミングもあってか、神月、エマ、ジグは力うどんを注文する。
 泰地などは、お品書きを片っ端から注文していたようだ。
 リュエンはやや渋めに葛切りを食するが、他メンバーはやはり甘味処とあって、和風のスイーツを楽しむ。
 ロウガは抹茶と黄粉をたっぷり付けた安部川餅を楽しみ、双牙は隅で黙々とぜんざいを口にする。
 水凪はメニューにはなかったが、店員の好意で裏メニューとしてあったものをいただく。
「餅に絡みつく抹茶のほのかな香りが感じられる一品であるのにな」
 十分、客に提供できるレベルなのにと、彼女は残念がっていたようだ。
「染み入るこの味はー、お正月の味ですわねぇー」
 フラッタリーはそんな仲間達の姿を眺めながら、甘酒を口にして勝利の余韻と共に気分良いする。
「喧嘩の後のメシってのも、美味くて好きなんだよナー♪」
「あけましておめでとー! うどん美味しい!」
 神月、エマは力うどんに入った餅を頬張り、ダシが濃厚なうどんを啜って、一部では流行の年明けのうどんを楽しむ。
「あー……、力うどんおかわりで! まだ食うのかって……? 当たり前だろ?」
 ジグはまだ食い足りないのか、わんこそばの如くお代わりを注文する。
 泰地も食事メニューを一通り食べ、そこからスイーツも頼んでいたようだ。
 そんな大食漢なメンバー達の姿に、ロウガも好き嫌いなくメニューを食べていたのだが、昔と比べて量が食べられなくなった我が身が少しばかり悔しさも感じてしまうのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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