エッチな本など燃やしてしまえ!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「この世で最も悪しきモノ……それはエッチな本だ! こんなモノは、この世から無くなってしまえばいい! だから燃やす! すべて燃やす! 何故なら、それこそ正しい行いであるからだッ!」
 ビルシャナが山奥にあるキャンプ場に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達はエッチな本を炎の中に放り込みながら、そのまわりで何やら呪文を唱えていた。

●セリカからの依頼
「トート・アメン(神王・e44510)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、山奥にあるキャンプ場。
 ここで信者達と一緒に大量のエッチな本を燃やしており、まるで怪しげな儀式を行っているような感じになっているようだ。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達は洗脳に陥っているため、ビルシャナに言われるがまま、エッチな本を炎に中に放り込んでいるが、それは彼らにとって宝物。
 自らのコレクションを言われるがまま、炎の中に放り込んでいるため、その中にレア物がある事を思い出せば、考えを改めるかも知れない。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
アルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガジェッティア・e32409)
ノノ・サーメティア(オラトリオの巫術士・e67737)
レフィーナ・ロックウィル(押して駄目なら破壊しちゃえ・e84701)
 

■リプレイ

●山奥
「アレな本とはいえ、宝物を燃やさせるなんて、今回の鳥もアレな感じだねぇ……てか、何を本に対して怒ってるんだか?」
 アルーシャ・ファリクルス(ドワーフのガジェッティア・e32409)は仲間達と共に、山奥のキャンプ場に向かっていた。
 ビルシャナ達はエッチな本に対して嫌悪感を抱いており、すべて燃やすべきであると訴えているようだ。
 そのため、キャンプ場のある方角から真っ黒な煙が上がっており、何やら呪文めいた声が聞こえていた。
「ふわりはエッチな本より、エッチな事の方が好きだけどー……信者さん達の思い出の本とかあるかもだし、捨てるのは絶対もったいないのー!」
 盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が、自分なりの考えを述べた。
 実際にビルシャナが燃やしているのは、貴重なコレクションばかり。
 オークションに出せば、高額で取引されるものばかりである。
「そもそも、なんで本に……?」
 リフィルディード・ラクシュエル(刀乱剛呀・e25284)が、不思議そうに首を傾げた。
 エッチな事全般であれば、何となく意図を理解する事が出来るものの、本だけに限定するのであれば話は別。
 どうして、本だけに限定しているのか、全く理解する事が出来なかったため、頭の上に沢山のハテナマークが浮かんでいた。
「……と言うか、男の人的にえっちの本って燃やしちゃ駄目なものだよねー」
 そんな中、ノノ・サーメティア(オラトリオの巫術士・e67737)が、事前に配られた資料に目を通した。
 ビルシャナが燃やしているのは、信者達の宝物と言うべきエッチな本。
 今では入手が困難なモノもあるため、普通であれば危険を承知で火の中に飛び込むレベルの貴重なモノ。
 だが、ビルシャナによって洗脳されている影響で、何の躊躇うもなく炎の中に放り込んでいた。
 それは信者達にとって、自らの命を削るような行為であったが、洗脳されているせいで、まったく気にしていないようだった。
「もはや、いつものことだね! ……としか言えないじゃん。鳥の考え、理解する必要はないし」
 レフィーナ・ロックウィル(押して駄目なら破壊しちゃえ・e84701)が、何やら悟った様子で軽く流した。
 おそらく、ビルシャナの考えを理解したところで、何も得する事はない。
 それどころか、デメリットばかりなので、考えるだけ無駄である。
「……そうだね、頭痛しか起きないし……」
 ノノが納得した様子で、考える事を止めた。
 そのおかげもあって、気分がスッキリ。
 頭の中でモヤモヤしていたものが、一瞬にして吹き飛んだ。
「確かに、鳥の考えてる事を理解しようとしても、頭痛のタネになるだけだね。だから、考えるだけ無駄だね、無駄」
 アルーシャも同じように考える事を止め、立ち昇る煙を目印にして、山の中を進んでいった。
「いつものように無駄か。まあ、どうでもいいか」
 そう言ってリフィルディードが茂みを掻き分け、キャンプファイヤーを囲むビルシャナ達の前に陣取るのであった。

●キャンプ場
「なんだ、お前らは! まさか、エロスの使者か! お前達の聖書を燃やしたことに腹を立て、此処に来たという事か!」
 その途端、ビルシャナがクワッと表情を険しくさせ、信者達の不安を煽るようにしながら、警戒心をあらわにした。
「そうなの、大正解なの♪」
 ふわりが能天気な笑みを浮かべ、まったく躊躇う事なく答えを返した。
 その姿に、信者達が一斉に、生唾ゴックン!
 ふわりの全身から漂うフェロモンで、頭をクラクラさせながら、イケない妄想を膨らませ、股間を元気にしながら、表面上は物凄く嫌そうにした。
「それにしても、以外と本が多いですね……」
 そんな中、リフィルディードが山積みにされたエッチな本を、マジマジと見上げた。
 ほんの一瞬だけ、ふわりにツッコミをいれるべきか迷ったものの、その事を忘れてしまうほど、山積みにされたエッチな本の存在感が際立っていた。
「へー、ほー、これすごいわー……」
 レフィーナもエッチな本の中身を見ながら、恥ずかしそうに頬を染め、違う意味で圧倒された。
 どうやら、それは発禁本であったらしく、マニアであれば喉から手が出るほど価値のあるモノだった。
「こら、何を見ている! これは禁書だ! 燃やすべきモノだ!」
 すぐさま、ビルシャナがレフィーナからエッチな本を奪い取り、イラついた様子で炎の中に放り込んだ。
「でも、これ、本当に燃やしちゃっていいの? だって、燃やしちゃったら、これを手に入れた時の想いも消えちゃうんだよ?」
 リフィルディードが信じられない様子で、まわりにいた信者達に問いかけた。
「当たり前だ! こんなモノがあるから、俺は煩悩を捨てる事が出来なかったんだから!」
 ボサボサ頭の男性信者が、躊躇う事なく答えを返した。
 他の信者達も同じ考えなのか、何かに取り憑かれた様子で『そうだ、そうだ』と連呼した。
「てか、燃やすぐらいなら、売るなり誰かにあげるなりすればいいじゃない。なんなら、これ買い取るよ?」
 レフィーナが他のエッチな本を手に取り、信者達に交渉を持ち掛けた。
「一体、何を考えているの! これは悪魔の本! こんなモノがあったせいで、孝彦ちゃんは……孝彦ちゃんは……!」
 教育ママ風の女性信者が、何かを思い出した様子でボロ泣きした。
 この様子では、エッチな本が原因で、家族が崩壊するような危機に陥ってしまったのだろう。
 まわりにいた信者達も、その雰囲気に飲み込まれ、一緒になって泣いていた。
「……と言うか、本当に燃やしちゃっていいの? これって大切なコレクションなんだよね? だって、ほら……ストレスで頭頂部にダメージが……」
 それでも、アルーシャが信じられない様子で、男性信者達の頭頂部を見上げた。
 おそらく、男性信者達の苦しみと悲しみが頭頂部に伝わり、抜け毛を促進しているのだろう。
 男性信者達の頭頂部が、河童の如く危険な事になっていた。
「い、いや、これは……いらないもの……だ……」
 眼鏡を掛けた男性信者が、激しい頭痛に襲われ、苦しそうに頭を抱えた。
 それだけ精神的に負担が掛かっているようだが、洗脳されているせいで、本心を口にする事が出来ないようだ。
「でも、手に入れるに、苦労した物があるんじゃないの? その証拠に、ほら……殺気から髪の毛が抜けているし……。これって宝物なんだよね? それを燃やしたりしたら、傷つくのは自分でしょ?」
 そんな空気を察したノノが、真剣な表情を浮かべて信者達に訴えた。
「やっぱり、燃やしたりしたら駄目なの。エッチな本って、男の人がエッチな事を知る最初の本だな、ってふわり思ってるの! だから、思い出も沢山あるはずなの! その思い出を燃やしちゃ駄目なの!」
 すぐさま、ふわりがバケツで水を汲み、勢いよく焚き火にぶっ掛けた。
 しかし、焚き火は消えず、沢山のエッチな本が灰となって、空に舞い上がった。
「ハハハハハッ! 燃えろ、燃えろ、燃えてしまえ!」
 それに気を良くしたビルシャナが、エッチな本を次々と炎の中に投げ入れた。
「……」
 一方、信者達はみんな険しい表情を浮かべ、エッチな本を炎の中に投げ入れる事を躊躇っているようだった。
「みんな、本当にこれでいいの? だったら、どうして悲しそうな顔をしているの? 本当は燃やしたくないんだよね?」
 その事に気づいたアルーシャが、再び信者達に問いかけた。
「それは……その……」
 だが、信者達は何も答える事が出来ず、激しく目を泳がせた。
「みんな、ごめんなさいなの。エッチな本を拾う事が出来なかったから、ふわりの身体で同じ事をしてあげるの」
 そんな中、ふわりが申し訳なさそうにしながら服を脱ぎ、エッチな本でよくあるポーズを取り始めた。
 それと同時に、男性信者達が両目をカッと見開き、腰を引くようにして前屈みになった。
「お、お前ら、騙されるな! これは罠だ!」
 その事に危機感を覚えたビルシャナが、烈火の如く怒り狂い、信者達を叱りつけた。
「お言葉ですが、ビルシャナ様……。この子はエッチな本じゃありません。それに、エッチな事をしたら駄目って訳でもないですよね?」
 ネズミのような外見をした男性信者が、ゲスな笑いを浮かべ、ふわりの肩を抱き寄せた。
 他の信者達も、その考えに賛同したのか、次々とふわりのまわりに集まった。
「でも、ふわりは、とってもエッチなの」
 ふわりが身体をモジモジさせながら、上目遣いで信者達を見返した。
 それだけで信者達の中で眠っていたケダモノが咆哮を上げ、鎌首をもたげてヨダレを垂らしているような状態になった。
「い、いや……やっぱり、エッチなのは……良くないだろ」
 ビルシャナが気まずい様子で、激しく目を泳がせた。
 しかし、それ以上の言葉が浮かばなかったのか、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたまま、何も言えなくなっていた。
 そのため、信者達は勝手に許可を貰ったのだと思い込み、女性信者達がふわりの身体を舐め回し、男性信者達が代わる代わる反り立ったモノを突き立て、自らの欲望を発散し始めるのであった。

●ビルシャナ
「いや、駄目だ! やっぱり、駄目だ! こんなのイイ訳がない! 絶対に……駄目だ!」
 その途端、ビルシャナが苛立った様子で、八つ当たり気味にビームを放ってきた。
「だからと言って、いきなり攻撃を仕掛ける事はないよね!」
 それに気づいたリフィルディードが、男性信者達に飛び掛かって、ビルシャナが放ったビームを避け、イラついた様子で青筋を浮かべた。
「……というか、貴方には関係ないことだよね?」
 レフィーナもムッとした様子で間合いを詰め、オウガナックルをビルシャナに叩き込んだ。
「……てなわけで、大人しくしてねー」
 それに合わせて、アルーシャが破鎧衝でビルシャナの腹を殴り、吐き出そうとしていた言葉を飲み込ませた。
「それじゃ、さっさと逝ってもらおうね」
 その間に、レフィーナが間合いを取りつつ、攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
「……ん? ちょうどそこに、火があるね。よっし、灰にさせよう!」
 次の瞬間、ノノが氷結華(ヒョウケッカ)を仕掛け、武器に氷の力を宿すと、ビルシャナの足元に叩き付けて、氷で出来た華を咲かせて行動を縛った。
「関係がない……だと!? そんな訳がないだろうがああああ!」
 それでも、ビルシャナは血反吐を撒き散らしながら、再びビームを放とうとした。
「他人の宝物に横から口出しするようなビルシャナはさっさと逝けぇ!」
 すぐさま、リフィルディードがクイックドロウを仕掛け、ビルシャナの眉間を撃ち抜こうとした。
「やっぱり、ゴミは燃やすに限るね!」
 それに合わせて、リフィルディードがクイックドロウを仕掛け、ビルシャナの脳天を撃ち抜いた。
 その一撃を喰らったビルシャナがバランスを崩し、炎の中に倒れ込んで、香ばしいフライドチキンのニオイを漂わせた。
「せめて、あと数日早ければ……って、お腹壊すか……」
 アルーシャが複雑な気持ちになりつつ、燃え盛る炎を眺めた。
「お、俺達の本があああああああああああ」
 その途端、信者達が涙目になりながら、炎の中からエッチな本を回収しようとした。
 だが、燃え盛る炎の勢いが強過ぎるせいで、一冊も回収する事が出来ぬまま、崩れ落ちるようにして座り込んだ。
「まあ、こうなるよね」
 リフィルディードが同情した様子で、深い溜息を漏らした。
「だったら、ふわりと、さっきの続きをするの―! 今度は邪魔が入る事もないから、いいっぱいイイ事するのー♪」
 そんな空気を察したふわりが信者達を引き連れ、テントの中に入っていった。
 そして、今年の終わりを告げるようにして、何処からか除夜の鐘が響き渡るのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月31日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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