ビルシャナが土下座して全裸に剥こうとしてくる件

作者:星垣えん

●屋上には変態が集まる
 とある雑居ビルの屋上。
 そこでは狂気の訓練が行われていた。
「脱いでください」
『脱いでください』
 膝を畳み、額を地にこすりつける鳥さん。その所作を向かい合うかたちで見ていた男たちも同じように深々と礼をする。
 土下座、である。
 DOGEZA、である。
「ヌードこそ人間本来の姿! 自然の姿! 一番の芸術なんです!
 だから……脱いでください!!」
『脱いでください!!』
 顔を上げ、なんか熱弁してから再び土下座をする鳥さん。追随する信者たち。
 その奇行はそれから何度も繰り返された。
 誰もが納得して言うことを聞いてしまうような完璧な土下座を習得する――鳥さんの鶴の一声で始まった訓練は深夜まで続いた。
「ふぅ、こんなもんでいいやろ」
 ようやく立ち上がる鳥さん。
「これで誰に頼みこんでも脱いでもらうことができるはずだ。さあ、夜が明けたら町に繰り出して脱がしていこう!! 主に女の人を!!」
「ええ! 脱がしていきましょう!」
「FOOOO! テンション上がってきたぁぁーー!!」
 渋谷らへんに集結して狂乱する人々のように、なんか盛り上がる男たち。
 鳥さんは彼らを見て明日の成功を確信した。
 皆、普通に全裸のスッポンポンだったが、成功すると確信していた。

 脱げって言うからにはね、自分も脱ぐのが道理ってやつだもんね。

●おいまた逮捕案件じゃねえか
「帰りたいですね」
「そこを何とかお願いするっす。ちょっとだけ我慢して下さいっす!」
 ヘリポートを去ろうとしているアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)を、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)が腕を掴んで引き留めていた。
 45度前傾しているアンヴァルの姿はどこか芸術的にも見える。
 とかどうでもいいこと考えてたら、ダンテがこちらに気づいた。
「お、お疲れ様っす! 実は全裸を愛するビルシャナが信者を全裸に剥き、さらには街ゆく人々まで剥こうと土下座の練習をしているっす! 皆さんにはそれを止めてきてもらいたいっすよ!」
 どえらい状況やないか。
 由々しき事態に猟犬たちが説明を求めると、ダンテは事細かに説明した。
 都内のビルの屋上で鳥たちが飽くなき反復練習を続けていること。
 徐々に土下座のキレは増してきていること。
 今日はかなり寒いから全裸信者たちが風をひきそうだということ。
「いや全部どうでもいいことじゃないですか」
「すいません。そうっすね」
 アンヴァル(45度)のツッコミに正気に戻るダンテ。
 あまりのことに思考能力を喪失していたのだろう。そう信じたい。
「信者は何人いるんですか」
「10人っす」
「なんで10人もいるんですか」
「そう言われても……」
 アンヴァルに問い詰められ、ダンテがどんどん小さくなる。
 そのうち「なんで脱いでるんですか」と全裸の責まで問われるのではないか、そう直感したダンテは挽回を期して猟犬たちに策を授けた。
「信者たちは脱いでるっすけど、それは周りが全員脱いでるから平気でいられるだけっす!
 皆さんが服を着た状態で彼らの前に立ち、冷たい軽蔑の眼差しを向ければ、きっと彼らも我に返って服を着るはずっす!!」
 すー、すー、と空に響くほどの大声で言いきったダンテ。
 なるほどつまり……行けばいいだけだな。
 別に対策とか練らないでも、ただ行くだけで大丈夫だなコレ。
 猟犬たちはそう確信して、任せろと言わんばかりに親指を立てました。
「じゃあすぐに出発っすよ! ヘリオンに乗って下さいっす!」
「年末に全裸祭りしてたなんて、黒歴史にも程がありますからね」
 れっつごー、と一同をヘリオンに引き連れてゆくダンテ&アンヴァル。
 かくして、猟犬たちは全裸土下座軍団と対決することになったのだった。


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)
豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●全裸の園
 目指すは雑居ビル。猟犬たちは夜道を歩いていた。
 しかし、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)とルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)の表情は暗い。てか重い。
「大変な事案なのです……」
「最近、事案の鳥が多くないだろうか……なんだか先日も同じことを考えたような」
 並んで歩き、肩を落とす2人。
 全裸土下座マンが11人もいる――そう聞いただけで真理とルイーゼはどうしようもない疲労感みたいなのを感じるのだった。
「考えても仕方ありませんわ。頑張りましょう!」
 2人の前を歩いていたルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が振り返り、両の拳を可愛らしく握る。
 珍しくキリッとしているのはルイーゼが『せんぱい』と人を呼ぶせいである。
 先輩らしく責任感とか覚えちゃうルーシィドだったのである。
 雑居ビルに着くと、屋上からほんのり男たちの挽歌が聞こえてきた。彼らの阿保らしい叫びを聞きながらアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)が階段に歩を進める。
「この時期にZENRAとは気合いが入ったHENTAIですね」
「年末だってノニ、ヘンなタイがまだこんなに……お仕事しなきゃナ……」
 ハァ、とクソデカため息をつくアリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)。
 連日のレジャー依頼のせいで『ヘリオン搭乗=おいしいもの食べる』と刷り込まれていた食いしん坊は、ちっとも腹の満たせない仕事にテンションだだ下がりだった。
 だが来たからにはやらねばならぬ。
 猟犬たちは最上階まで上りきると、屋上への扉を開いた。
 そして彼女たちが見たものは――。
「脱いでください」
『脱いでください』
「脱いでくださぁい!」
『脱いでくださぁい!』
 ええ、全裸で反復土下座している男たちの惨状です。
 座っているおかげで秘所こそ見えないが、肌色100%です。
 豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)は、ひゅう、と口を鳴らす。
「やれやれ、ビルシャナさんは年の瀬も通常営業……と思ったらこいつはいつもより凄いね」
「風邪をひかないといいのですけど……」
 普通に心配そうに男たちを見るロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)。
 すると視線を感じたか、全裸メンは揃って猟犬へ振り向いた。
「お、女だ!」
「外に繰り出すまでもなく女が!」
「隊長! 女です!」
「やったな!」
 フゥー! と秒で最高潮に達する男たち。そして鳥。
 彼らが全裸で狂喜乱舞するさまに、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は湧き上がる疼きをぐっと理性で抑えつける。
「私……なんでこの依頼参加したんですかね?」
 こっちが聞きてぇぜ!

●目覚め
「名前を尋ねるにはまず自分から、みたいなノリで裸にならなくても良いと思うのです……ていうか風邪引いちゃうのですよ」
 正座して整列している男たちへ、真理は至って静かに話しかけた。
 だが信者たちは寒風も意に介さず、真理へ土下座を繰り出す。
「脱いでください!」
「一生のお願いです!」
 怒涛の土下座ラッシュ。真理が止めても男たちは頭を上げない。
 いくらかの攻防ののち……真理は黒の革ジャケットに手をかけた。
「……そこまで、言うなら」
「ひゃっほーー!!」
 ジャケットとスカートを脱ぎ、白いフィルムスーツ(競泳水着風)の姿を晒す真理。所々が破けた感じに布面積が小さくなっているさまに、男たちはガッツポーズする。
 その成功体験が、彼らを調子づかせてしまったのかもしれない。
「さぁ! きみもお願いします!」
「ひとつ脱いでみてください!」
「ン?」
 横で冷めた目をしていたアリャリァリャの前に、土下座ポーズで滑りこんでくる男たち。
 アリャリァリャは、スッと目を細めた。
「ソレで? ドゲザ? ……ソレが?」
「ダメだ! 目が冷たい!」
「キンキンに冷えてやがる……!!」
「ウチの足の裏より頭が高いじゃネーカ。もっと下がるダロ」
「あぁーーっ!?」
 信者の後頭部を踏み踏みするアリャリァリャ。
「スッポンポンの四つん這いで生活してルキサマラケダモノはいつもやってルダロ? 鼻で穴掘レバ?」
「は、はいぃ!」
「掘らせていただきますぅ!」
 唸るチェーンソー剣に戦慄する信者たちが、せっせと顔面でのコンクリ磨きを始める。
 アリャリァリャはとぼとぼと離れていき、持参したホットチョコで一服した。そうでもしないと正直、心がつらかったのだ。食えない仕事はつらい。
 一方で、シフカはアリャリァリャと入れ替わりに信者たちへ声をかける。
「いいですか、そこの全裸の皆さん」
「は、はい」
「恥部どころか下心まで丸出しの人の言うことなんて、普通の女性は聞きたくありません。そして常識的に考えてください」
 淡々と語りつつ、信者の周りを歩き回るシフカ。
「会ったこともない男性から『脱いでください』と言われたとしましょう。まず皆さんという不審者から全力で逃げようとしますよ? 少なくとも私は逃げます。そして通報します」
「そんな!」
「まだ何もしてないのに!」
 青ざめた信者たちが、さも当然のように抗議する。
 シフカは静かに首を振った。
「ヌードは確かに芸術ですが、皆さんのそれはただの犯罪です。そして最後に一つ……」
 信者らの前で歩くのを止めたシフカが、見下ろす。
 冷たい、冷たい眼光だった。
「とっとと婦女子の前からそのちっさい汚物を消してくれない? 気持ち悪いのよ、変態共」
「ひ、ひどい!」
「そそそんな目を向けなくても!」
 思わず股間を手で覆う男たち。
 ――が。
「悔しい……けど心地いい……!」
 一部の信者が興奮していた。
 信者の観察に徹していた真理は、すかさず彼らに近づき、耳元へ口を寄せる。
「……本当は自分の心を偽ってるんじゃないのです?」
「はうっ!?」
 耳をくすぐる声音にビクンッと震える信者。
 しかし真理は構わず、囁きつづける。
「自然の芸術でもなく、女の子の裸を見たいわけでもなく」
「くうっ!?」
「自分より小さい女の子に、みっともなく裸で土下座するのが好きな、情けないマゾな変態さん……なんじゃないですか」
「はあああっ!!」
 ビクンビクン、と気持ちよくなる男たち。
 そこへ心を落ち着かせたアリャリァリャが戻ってきた。
 火のついた蝋燭を持って戻ってきた。
「ウチ早く帰っテあったかいラーメン食べたい。ホラ、とっととヒトに進化すルがイイ」
「アァァーーッ!」
 ぼたぼた、と溶けた蝋を無防備な全裸にかけてあげるアリャリァリャ。その文明のぬくもりに男たちが身悶えして歓喜したのは言うまでもない。
 ルーシィドはしゃがみこみ、彼らと目線を合わせた。
「あなた方は、どうして土下座を?」
「えっ……」
 問いかけに真顔になる男たち。
「どうしてこんな真冬に、全裸で土下座をしているのでしょうか? ただ女のひとの裸を見たいだけなら、他に手段はあると思うんです。それなのに……」
「そ、それは……」
「でも今、皆さんが蝋燭を垂らされて喜んでいるのを見て、確信できました」
 にこり、と微笑むルーシィド。
「土下座することが目的になんですよね。その姿を見られて、興奮したいんですよね?」
「ハッ!?」
「それなら、言うべき言葉は『見てくれてありがとうございます』……ですよね?」
「た、確かに……!」
「俺たちは見られることをこそ……!」
 なんか勝手に得心しはじめる男たち。
 土下座スタイルから仁王立ちスタイルへと変わった彼らは、清々しい顔だった。
「ありがとう。きみたちのおかげで目が覚めたよ」
「本当の自分に気づけたんだ」
 ざっ、ざっ、と屋上のドアへ向かう男たち。
 剥き出しの尻で歩いてく彼らを見送ったルーシィドは、くるりと仲間へ振り返る。
「改心してくれました!」
「本当に改心と言えるんでしょうか……」
「考えても仕方ないのだろう。ルーシィドせんぱいの言うようにな……」
 純粋な笑顔を向けてくるルーシィドを見て、ロージーとルイーゼは何かを言いかけて、やめるのだった。

●してもしなくても
「くっ、半分もの仲間が……」
「だがまだだ。諦めるわけにはいかない!」
 屋上に残った信者たちを鳥が鼓舞する。
 戦力は減った。だがまだ戦える。そう説いて。
 しかし、その最中である。
「まぶしッ!?」
 カッ、と眩いほどの光が屋上に灯った。
 犯人はアンヴァル。頭にベルトで巻いたハンズフリーライトで、煌々と全裸メンの姿を照らしていた。
 主に股間を。
「やめろやめろ! 股間を照らすな!」
「えっ。見せたいんじゃないんですか?」
「違うわ!」
「そうですか。やめませんけどね!」
 高らかに言い放ったアンヴァルが、用意したパイプ椅子にどかっと座る。
「あなた達だって、人の胸ばっか舐めるように見てるじゃないですか。今回はいい逆襲の機会なんで、ゆっくり見ていってね! ってことでOK?」
「よくねぇよ!?」
「女の胸は見るけどライトで照らしたりしねぇよ!?」
「まあまあ。落ち着いて」
 椅子で脚組んでるアンヴァルに食ってかかりそうな男たちを、宥める姶玖亜。
「さあ、右から3番目のキミは一番左。一番左のキミは……右から2番目かな」
「んん?」
「何これ? 何の並び?」
 促されるまま並べさせられた信者たちが、互いを見交わす。
 股間を見交わす。
 理解する。
「大きさ順で並べるんじゃねえええ!!」
 ナニとは言わないが猛抗議する男たち。
 けれど姶玖亜は取り合わず、ハハハと笑うばかり。
「どうせキミたちだって、レディの胸囲とかで脳内で……こうやってるんだろう? これでおあいこって奴さ。いや、キミたちのは普段は見えないから今回はこちらが有利かな」
「有利不利の話じゃねえですよ!?」
「まじまじ見ないで!?」
「おいおい、隠しちゃダメじゃないか。自然が最高なんだろう?」
「やめろ! 皆が嫌がってるだろう!」(びるしゃな)
「そういえば、ビルシャナさんは羽毛モフモフだけど……息子さんに自信がないのかい?」
「キャアーーッ!?」
 股間を隠す男たちの手を掴み、比較する姶玖亜。鳥が止めに入るとその鳥の羽毛をチョキチョキと鋏で切り始め、乙女の声をあげさせる始末だった。
 だが姶玖亜が鳥にかかりきりになったので信者たちは一安心。
「よかった……教祖には悪いけど囮になってもらってるうちに……」
「おいどこへ行く。動くな描けないだろう」
「ふぁっ!?」
 逃げようとした信者たちを、がしっと引き留めたのはルイーゼだ。
 左手には大きなスケッチブック。右手は何やら鉛筆汚れで黒くなっている。
 で、信者たちが固まると鉛筆をシャシャッと滑らせはじめる。
「なにデッサンしてんだよォォォーーー!!?」
「許可してないよ!? 何の許可もしてないよ!?」
「ヌードモデルが芸術だなんだとのたまうのなら、きさまらが芸術になる覚悟もあるはずだろう。よもや断るとは言わないよな」
「うっ……」
「ではポーズを取れ。動くなよ」
 かきかき、と真剣な顔で信者たちを見つめ、鉛筆を走らせるルイーゼ。
「うむ、モデルの質には目をつぶるとして……裸体のデッサンは本格的な教室にでもいかなければできないからな。貴重だ」
「なんちゅー言いようだよ……」
「よしできたぞ。さあ見てみろ」
 描き上げたデッサンを披露するルイーゼ。
 そこにはかっちり写実的な画ができあがっていた。
 股間もありのままだった。
「だからやめろってぇぇーーー!!」
「何がだ。良く描けているだろう」
 平然と言ってのけるルイーゼ。ちなみに他意はない。
 晒された信者の裸身と股間が、寒風で震える。屈辱感に燃える彼らは――。
「こうなったら俺たちも見てやる!」
 パイプ椅子で高みの見物していたアンヴァルに襲いかかった。なぜアンヴァルかというと脚組んで座ってたため、なんか見えそうだったからである。
 もちろん、アンヴァルは顔面を踏んだ。
「へぶっ!?」
「見せませんよ」
「お願いします見せてください」
 得意の土下座をする信者たち。もちろんアンヴァルは顔面を踏んだ。
「そんな!」
「だって、私になにもメリットが無いじゃないですか。見せるに見合う対価がないんです」
「た、対価だと……」
「土下座じゃあ画材も買えないんですから。芸術にはお金も掛かるんです」
「馬鹿な……!」
 がっくり、と消沈する男たち。
 そこへ――。
「アンヴァルさんの言うとおり、土下座には価値がありません!」
「し、下着姿がまぶしい!?」
「ひゃっはー! 肌色だーっ!」
 前触れもなく下着姿になったロージーが現れた。屋上の片隅に衣服を畳んで置いてきた女の、ばいんと揺れる巨乳に男たちが高まり、絶叫しまくる。
 しかし、彼らは気づいた。
「どうして脱いでるんだ……」
「俺たち、まだ土下座してないのに……」
「脱ぎたかったので脱ぎました」
「なにぃ!?」
「そんな女が世の中に!?」
 にっこりと笑って爆弾発言するロージーに、ビビる信者たち。
 彼らの動揺を見て取ったロージーは言葉を畳みかけた。
「わかりましたね? 脱ぐかどうかは土下座に左右されないんです。アンヴァルさんは土下座されても脱ぎませんし、私は土下座されなくても脱ぎます」
「何ということだ……」
「土下座にはクソほどの価値もなかった……!」
 地面に手をついて項垂れる男たちであった。

●沁みる
「綺麗に皮が剥げたナ!」
「うむ。これで世界がちょっと健全になった」
 つるっつるに下拵えされた状態で死んでいる鳥さんを、アリャリァリャとルイーゼがただ静かに見下ろしている。
 信者が去ってからの作業は、一瞬だった。
「うぅ、寒い寒い。体が冷えてしまいました」
「骨身にこたえる1日だったのです……」
 鳥さんが消えるや否や、ロージーはすぐに脱いでいた服を着直し、真理もスカートとジャケットを身に着けて、形状操作で破いていたスーツも元に戻す。
 一方。
「やはり全裸が一番ですね」
 シフカは脱いでいた。
 鳥を倒した瞬間、最速で服を脱ぎ去っていた。
 露出狂たるシフカさんにしてみれば、服を着ている時間は拷問でした。
「この解放感……」
(「シフカ様、気持ちよさそう……はっ、いけませんわ!!」)
 両腕をひろげて風を感じるシフカを見ていたルーシィドが、ぶんぶんと頭を振る。
 何を隠そう、彼女もそういう性癖の持ち主であった。しかしシフカと違って常識も持ち合わせているので、ここはぐっと我慢の子。
「さぁ、きみたちも毛布でも」
「あ、ありがとうございます……」
 姶玖亜は元信者たちに毛布を配って回っている。
 男たちは首まで毛布を引き上げ、ぬくぬくを味わった。
「暖かい……」
「人間の思いやりって暖かいなぁ」
「お金で買えないものも、世の中にはあるんですよ。うん、いいこと言った私」
 感じ入る男たちを見つつ、アンヴァルは椅子に座りながらひとり納得する。
 いや親切にしてるの全部、姶玖亜さんなんですけどね。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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