可愛い子には鞭打ちせよ

作者:星垣えん

●超☆変☆態
 底冷えするような冷たい風が、容赦なく吹き付けてくる。
 息は白く、自然と首を引っこめてしまうような冬の寒さは、今日も盛況だった。
 大人であればそんな日は家にこもるに限る。
 しかし公園には、遊びまわる子供たちの姿があった。
「おいボール強く蹴りすぎー!」
「おもいっきり泥に突っこんだぞー」
「誰が拾ってくんだよー……」
 サッカーボールを追って蹴りあい、元気に運動に勤しむ子供たち。冬だというのに膝小僧まで出している者がいる様子は、見る人が見れば涎を垂らすことだろう。
 というか、実際に数百m遠くに、涎を垂らしている者がいた。
「……良き」
「良きですね……」
「こどもまじらぶりー」
 双眼鏡で子供らを見守り、ジュルリする者たち。
 もちろんその集団の頭は鳥さんだった。
「やっぱり子供は社会の宝だわ」
「ひゃくぱー同意します」
「家に持って帰りたいですもん」
「持ち帰って舐めまわしたいですもん」
 子供らを熱視線を注ぐ鳥さんに、信者たちがそろって頷く。台詞が強者である。
 だがその中でも、やはり最強たるは鳥さんだった。
「愛でるのもいいわ。でもね、私はお仕置きしたい!」
 鳥さんの手羽が振るわれ、しなる鞭がパァンと地面を打つ!
 その音に興奮を覚えた鳥さんは、遠くで遊び続ける子供たちを見つめ、ハァハァする!
「可愛いものほど泣かしてみたいって、あるよね!」
「そうですね!」
「ごめんなさいって言わせたいですね!」
 鳥さんに続き、竹刀とか教鞭とか折檻アイテム(?)を取り出す信者たち。

 疑いようもない、事案だった。

●さあ、逮捕だ
 ヘリポートに聞こえるのは、悲しげな音色。
「もう寒くなったのに……」
「暑くても寒くても変態はいる、それが世界の真理だ」
 ギターを弾いてシング(テレビウム)とセッションしていたナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)の肩に、ぽむっと手を置くザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)。
 奴らに季節は関係ない。
 その残酷な現実を知る王子は、心を静めるようにかぶりを振って、猟犬たちに振り返った。
 で、持ってた鞭を両手でピィンと張った。
「子供にお仕置きしたいとか言ってるビルシャナが、信者を集めて動き出そうとしている。連中が近場の公園を襲う前に、おまえたちの手で止めてきてくれ」
 それは事案だ、と気を引き締める猟犬たち。
 人っぽい鳥に急に声をかけられ、お仕置きされるとかトラウマ物だからね。
 子供たちの健全な未来のために早めに駆除しないとね。
 ナナリアはギターを弾き鳴らす手を止めて顔を上げた。
「信者もいるのかな?」
「いるぞ。10人ほどな」
「10人も……」
 遠い目を寒空に向けるナナリア。
 どうしちまったんだこの国は……と猟犬たちも虚しさを抱きます。
「まあ信者たちはビルシャナほどのレベルには達してはいない。見知らぬ子供にお仕置きすることによる社会的ダメージを伝えてやれば目を覚ますだろう。だいたい子供にも嫌われてしまうだろうしな」
 信者たちとて、子供に嫌われるのはつらいはずだ。
 お仕置きすることでどれだけ子供たちの心が離れてゆくかを説けば奴らも改心するだろう。
 超変態から変態に落ち着くだろう。
 ……根本的解決になってるんだろーか、とは思うが言葉は飲みこむ一同だった。
「さて、では行くぞ。寒いから防寒はしっかりとな」
 ヘリオンへと歩いてゆく王子。
 かくして、猟犬たちは事案を防ぎに向かうことになりました。


参加者
ナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)

■リプレイ

●渇いた心
 わいわいと、球遊びに熱中する子供たちの声が響く。
 鳥と信者たちが押しかけてくるだろう公園で、ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)はブランコに座っていた。
「思いきり事案なのだけど……」
 何気なく子供たちを見ていたローレライがぽつりとこぼすと、彼女の膝の上でシュテルネ(テレビウム)も頷く。
 荒い息遣いで涎を垂らす大人たちが、子供たちを鞭打ちしようとしている。
 もう絵面からあまりにあんまりである。
 ひどすぎるので、ローレライの隣でブランコをこいでいたナナリア・クレセント(フルムーンシンガー・e37925)もため息である。
「正直いてほしくなかったわ……」
「ナナリアさん、肩を落とさないで! あなたのおかげで子供たちが変な人たちに襲われずに済むのよ!」
「そーそー。ナナリアちゃんのグッジョブだって」
 どうしてこんなことの調査を……と全力で後悔しているナナリアちゃんを、ローレライは肩を掴んで励まし、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が調子よく同調する。
 さらに足元でタンバリンをしゃんしゃん鳴らして慰めてくるシング(テレビウム)が目に入ると、ナナリアはようやく気分を持ち直した。
「そうね……子供たちが泣く前でよかった」
「子供のトラウマになる前にお仕置きしてあげなくちゃ、ね!」
「本当にねー」
 張りきるローレライに気のない声を返す清春。
 ぶっちゃけ子供とかどうでもいいと思っている。しかし彼は女の子に良い顔をするためならば、心にもないことを一瞬の躊躇もなく言える男であった。
 ブランコからほど近く、ジャングルジムの頂にちょこんと座るルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)は遠く空を見上げる。
「最近、多くないだろうか。事案」
 どことなく元気のない顔だった。
 日々発生する事案に、そろそろ疲れてしまったのかもしれない。
 いい加減、鳥さんに腹パンとか顔パンする生活に心が萎れてしまったのかもしれない。
「ルイーゼ、頑張ろう」
「ルイーゼさん、きっとあと少しの辛抱よ」
「鳥をボコにして発散する機会だと思えばいいじゃん?」
「みんな……うん、ありがとうな」
 下から聞こえた仲間たちの気遣いの声に、ルイーゼはふっと微笑んだ。
 ――が、少し心が和んだ瞬間である。
「うおおお! 叩かせなさい子供たちぃー!」
「涙を! 涙を見せるのよー!」
「白飯3杯はいけるぜー!」
 事案でしかない台詞が、地が揺れるほどの足音と一緒に近づいてきた。

●キッズとポリス
「さぁ! 子供たちはどこ!」
「いい子だからお兄さんたちの前に出てきなさい!」
 一団で公園に雪崩れ込んでくるなり、11人の変態は獲物を求めて辺りを見渡した。
 お仕置きし甲斐のある子供がいないかと血眼で探し……そして変態たちの視線は一所に集約する。
「あの子よ!」
「奇遇ですね、俺もそう思ってました!」
 ひとりでぶらぶらと歩いている少女を指差し、一目散に駆けだす鳥たち。
 お仕置きして泣かせてやる――欲望をこめた手が、少女を捕まえようと伸びた。
 しかし、その手は空を切る。
「なっ!?」
「何する気? 触ったら警察呼ぶわよ」
 無防備に見えた少女――ナナリアの背から隠していた翼が飛び出し、群がった鳥や信者たちから華麗に身をかわした。他の子供たちが標的にならないよう囮として動いていたのだが、見事に成功したかたちである。
「ぶわっ!?」
 寸前で避けられた鳥たちは、勢いあまって顔から転げた。
「くっ……なんという身のこなし!」
「子供の運動能力低下とか言っていたのは嘘だったのか……!」
「どうせあんたたちだって普段から運動してないでしょ。捕まるわけないわ」
「口が悪い!」
 悠然と空中から見下ろすナナリアにグツる信者たち。
「絶対に泣かせてやりたいぜぇ……!」
「尻をひっぱたいて『ごめんなさい』と言わせてやるぅ!」
「やれるものならやってみなさいよ。言っとくけど最近の子ども達は防犯意識も高いから、あんた達なんかすぐ警察よ!」
 あっかんべー、と舌を出して挑発するナナリア。そうまでされて黙ってられない信者たちは猛然と少女へ駆けだし、公園中を舞台にした追いかけっこが開始される。
 一方、鳥さんは別の少女に興味を引かれていた。
「あの子……結構いいわね!」
「えーどれですか……あーいいですねぇ」
 当たり前のように涎を垂らす変態たちがターゲッティングしたのは――遊具のそばにひとり暇そうに立っている少女だ。
 間違いない。あれは声をかけられるのを待っている。
 とか勝手な妄想を脳内で繰りひろげて楽しんだ鳥と信者たちは、にっこりと優しい大人の顔で少女に近づいた。
「お嬢さん、こんにち――」
「近寄らないでください!」
「えぇぇぇぇぇぇ!!?」
 ピィィィィィィーーーーーー!!!!!
 けたたましくブザー音が鳴り響いた。頭の痛くなりそうな大音量が一帯を駆け巡り、鳥たちは思わず耳を押さえる。耳を押さえつつ弁解する。
「い、いや何も取って食おうってわけじゃ……」
「このひとたち! 不審者です!!」
「あーやめてやめてぇぇーー!!?」
「来ちゃうから! 公権力という魔物が来ちゃうからー!」
 指差しつつ腹から響く大音声で叫ぶ少女――ルイーゼに、ぶんぶんと手を振る変態たち。
 防犯ブザーを鳴らして叫ぶ少女を大人たちが囲んでいる。
 それを見れば社会がどう判断するかぐらいは、半端ねえ阿呆でも理解できました。
「ほ、ほら何もしないから。ね?」
「ぼくたち悪い大人じゃないよ?」
 精一杯の笑顔で、信者たちは取り繕った。
 ルイーゼはそんな彼らにいったん目を向けて――。
「おまわりさーーん!!」
「やーめーてー!!」
「ポリスやめてー! この状況で呼ばないでー!」
 無駄だった。むしろ強まったぐらいのルイーゼの叫びをどうにか止めようと、信者たちはルイーゼを囲んで土下座祭りを始める。
 しかし!
「そこ! 何してるの! 子供が嫌がってるじゃない!」
「あぁぁーーポリスきたぁーー!!」
 どこからともなく、ピピピーと笛を鳴らしながら女性警官もとい女性警官の衣装を着てみたローレライが走ってきてしまいました。
 ルイーゼに向いていた全土下座が、即座にローレライポリスに方向転換。
「まだ何もしてません! 本当ですマジです!」
「無実! のっとぎるてぃ!」
「まだってことはこれからやるってことじゃない……ギルティ!」
「しまったァァーー!?」
 ビシッとローレライに指差された信者たちが、頭を抱えて崩れる。
 そこから、ローレライは聴取を始めた。怒られた男子小学生のように正座した信者たちは洗いざらいを白状した。
 子供たちが可愛すぎるのでお仕置きしたくなった――。
 すべてを書き留めたローレライは書類(小道具)を仕舞うと、逮捕者たちの顔を見渡す。
「そこにまっすぐの愛はあるのかしら、しつけとお仕置きは違うのよ!」
「は、はい……」
「そもそも矛盾してない? 宝だったらお仕置きなんかしちゃいけないわ!」
「仰るとおりで……」
 ローレライが語気を強めるたび、ハンマーで叩かれたみたいに小さくなる変態たち。
「反省しなさいよ」
「不審者です! 不審者です!」
「申し訳ございません……」
 両サイドからちくちくと放たれるナナリアとルイーゼの口撃を受けて、信者たちはますます小さくなった。鳥に至ってはアルマジロのように丸まっている。
 それでも説教は続いた。
 ――遠く女性たちの怒声を聞きながら、公園の外周にキープアウトテープを張りまわしていた清春が、作業を終えて顔を上げる。
「ま、こんぐらいでいいかね」
 騒ぎを聞きつけて、一般人やマジモンの警察が来ても困りますしね。

●熱したり冷めたり
 無垢な子供の皮を脱ぎ捨てて、ルイーゼは正座で並ぶ信者たちの前にしゃがんでいた。
「傷害罪であれば15年以下の懲役または50万円以下の罰金。
 暴行罪だけでも2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留」
「……それはいったい何のこと?」
「子供たちをお仕置きした場合、おまえたちが被る刑罰だ」
「バ、バカな!!?」
 あまりの衝撃に思わず腰が浮く信者たち。一気に血の気が引いてゆく。
 彼ら彼女らの肩に、ルイーゼはそっと手を置いた。
「傷害が認められる場合はだいたい暴行罪もおまけでくっつくそうだ。つまり最高17年を牢の中で過ごし、罰金で済んだとしても80万円もの大金を失うことになるな……」
「重い!!」
「想像よりすげえ罪が重いよォ!!」
 震える体から汗を流し、信者たちが刑法という無慈悲な怪物に慄く。
「それでも、子供たちをお仕置きするというのか?」
「いやさすがに……」
「17年の豚箱はちょっと……」
 諭すようなルイーゼの声に、小さくかぶりを振る信者たち。
 さんざっぱら猟犬たちから叱られたことで、だいぶ最初の気勢は削がれていた。
 が、欲望自体はどうにも収まらない。
 ルイーゼに注がれる熱視線は、当初と変わらないままである。
「……くっ、お仕置きしたいよぉ!」
「そんな目で見るな。わたしを叩いたらパンチするぞ」
 そわそわしだす信者たちへ、しゅっとオウガパンチを素振りするルイーゼ。だが下手こいたら死んじゃう打撃を見せられても変態たちは依然として興奮している。
 するとそこへ。
「わかってねぇなあ。見てくれだけの可愛さで満足する……浅はかすぎんぜ」
 ルイーゼと信者の間に、するっと清春が割りこんだ。
 これ見よがしに肩を竦めた清春は、信者たちをじろりと睨む。
「大人になってく過程にこそ尊さがあるんだろーが。それに飴とムチがあるからこそメリハリもつくわけじゃん? いやよくは知らねーけど」
「はぁ……」
「飴とムチですか……」
 清春の言葉を繰り返す信者たち。その顔はずいぶんと冷静になってきていた。
 涎も垂らしてなければ呼吸も荒くない。
 もう一押しすれば『子供にお仕置きしたい病』から脱却するのではないだろうか。
 ――そう、仲間たちが思ったときだった。
「誰かが言ってたぜ……ショタとは背伸びの生き物なのだ。『将来、ねーちゃんの彼氏になってやるよ』なんて言われた日には本気で信じて待っちゃいますね」
「ん?」
「お、おい……?」
 何やら急に語りの方向を変える清春。不穏な空気を感じ取った信者たちは訝しげな目を清春に向けたが、清春は何かに魅入られたように虚空を見つめていた。
「そして中学から高校を経て『最近話しかけてくれないなぁ』とか思ってるうち偶然の再会とかしちゃったりして急に塩からデレに。『もうオレ、子供じゃねーから』とか言いつつグッと体を引き寄せられた日にはもう死にますヨ? 光源氏知ってる? 読んでイケメン育てよっさ!!」
「どうしたァァーー!!?」
「おまえ……大丈夫か! なんか大丈夫かおまえ!?」
 キャラが変わったみてーに熱弁する清春さんに、信者らの心配が集まる。
 突然、大の男がショタを論じているのだ。無理もねえ。
「ショタは大人になってからが本番でしょ! 子供のままじゃ違法よ、合法になるまで育てようやー。『子供扱いすんなっ』みたいなイキり最高じゃないですかー。いや、過去のトラウマから心を閉ざした美少年もいいけどね!? 鳥さん一緒に楽しもうよーー」
「ぎゃー! やめて掴まないでー!?」
「戻ってこい! 戻ってくるんだ!」
「それ見られたら危ないよ!? 子供を取り囲む大人たちと同じぐらい危険だよ!?」
 ついには鳥さんをガシッと掴みさえした清春を、信者たちが慌てて制止する。
 群がる信者たちに腕やら腰やらしがみつかれる清春の姿を、ローレライたちはただ静かに見守っていた。
「清春さん、逆に説得されてる……」
「珍しい構図もあるのね……」
「しかし、そのおかげか信者たちも正気に戻ってる気がするな」
 呆れるローレライとナナリアの横で、小さく呟くルイーゼ。
 そう、彼女の言うとおり何人かの信者たちは正気に戻っていた。
 怒っていた人が自分より怒ってる人を見て冷静になる――そんなノリで、自分よりひどい清春を見たことで何か我に返ることができたのだ。
 しかしそれも、何人か、である。
 残りの信者たちは依然として、子供を折檻したくてそわそわしていた。
 で。
「……もう我慢できん!」
「私たちはぶつわ! 子供をビシバシと叩いて泣かせて――」
「せいっ!」
「「ぎゃああーー!?」」
 立ち上がろうとした信者たちを、ナナリアがぶっ叩いた。
 がっつり顔に、グーでぶっこんだ。
「なして……」
「こんな言葉があるわ。撃ってもいいのは撃たれる覚悟があるだけ。そういうことでしょ?」
 頬を押さえてシクシクと泣く変態へ、握りこんだ拳を向けるナナリア。
 ローレライも彼女の言葉に頷き、おもむろに鞭を取り出した。
「当然よね、悪いことした人にはお仕置きが必要なんだから! 鞭打ち? それとも往復ビンタがいいかしら?」
 ふふっ、微笑さえ浮かべて、鞭を振るローレライ。その足元ではシュテルネで狂気をぶん回しており、一緒になってシングもタンバリンで素振りをしている。
 圧倒的バイオレンスの空気。
 信者たちは、すっくと立ちあがった。
「ごめんなさい。帰ります」
「私たちが……間違ってたわ!」
 撃たれる覚悟がない人たちは、ささーっと走って公園を出ていきました。

●果たして無事なのか
「ま、待って……落ち着いて……」
「きさまには容赦せぬ」
「アーッ!?」
 ふるふると両手を振って命乞いする鳥に、ルイーゼの清らかな歌声が降りそそぐ。信者たちを震えさせた腹式発声が生む旋律に胸をかきむしられ、鳥さんはその場に倒れこんだ。
 強い不安を抱かせるルイーゼのグラビティ――それによって、ビルシャナは懲役17年という重刑に押しつぶされたのだ。
「17年も子供たちに触れられないなんて……死んだほうがまし……ね……」
「それはあっぱれと言うか何というか……」
 がくり、と首を折る鳥さん。潔い変態としての散りざまに、ルイーゼは敬意を表すべきかどうかと悩み、とりあえずその辺の枯葉をお供えする。
 かくして公園に平和が舞い戻った。
 だが、万事解決ではない。
「ひどい1日だったわ……」
 ベンチに座りこみ、どっと疲れた表情をするナナリア。
 うん、少女の心は無事ではなかったんや。
 涎を垂らす大人を見て精神的ダメージを受けない子供なんてそうはいなかったんや。
 ローレライはナナリアの隣に寄り添うと、少女の小さな肩を抱き寄せてあげた。
「大変だったね……」
「ええ……」
 しみじみ、苦労を分かち合う2人。
 そんなシーンの少し後ろでは、清春が頭を押さえて気にもたれかかっていた。
「なんか頭が重いんだけど……俺、どうしたんかな……」
 よろよろとふらつく清春は、つい10分ぐらい前の記憶がすっぽりと欠けている。
 しかし、それは幸運だったろう。
 声を大にしてショタ論を語っていたと知れば、どうなるかわからんものね……。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月6日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。