クリスマスケーキ、狙います

作者:星垣えん

●都会の狩人
 暗色の帳が下りた空――闇夜の町に蠢く者たちがいた。
「総員、準備はできているか」
「ええ、もちろん」
「いつ始まろうとも、対応する覚悟ができていますよ」
 明かりひとつない暗闇の家屋に、獣の眼をした男たち。
 窓から差しこむわずかな月光が照らすものは――鳥の顔です。
 ええ、鳥さんと愉快な仲間たちですよ。
「この時期はな……あれが出るだろう。クリスマスケーキが!」
「そうですね! 出ますね!」
「あの浮かれた感じが出ますね!」
「そう! あの浮かれたやつ!」
 信者のひとりにビシッと指を差すと、鳥は「しかし!」と続けた。
「おまえらも知っているだろう……あれは! 翌日には値引きされている!!」
「半額ぐらいになってますよね!」
「旬が過ぎるって怖えぜ!!」
 鳥が、信者が、目を爛々と輝かせる。
 そう……クリスマスケーキとは超ピンポイントの季節モノである。
 需要が高まるのはただ1日、その日を過ぎたら途端に価値が下落する。
 そしてそのときを、この鳥と信者たちは狙っていた。
「クリスマスケーキに正規の値段を払うなど愚者の行為! 安くなるとわかっているのなら安くなってから買えばいいのだ! 残り物には福があるとも言うしな!」
「フゥー! 値引き最高ォー!」
「お得感に勝る喜びはないぜぇぇ!!」
 きゃっきゃっと騒ぎ出す信者たち。無意味にハイタッチをしたり、ハグしたり、争奪戦に備えて筋トレを始めたり、とにかく昂っとる。
「さぁ、備えるぞ戦争に! たとえ何軒の店を回ることになろうとも……我々は獲る!」
『我々は獲るーー!!』
 鳥が何かを掴み取るように拳を握り、信者たちも拳を握る。
 町にハンターが、放たれようとしていた。

●どちらが狩られる側か教えて云々
「みんな、お待ちしてました!」
「忙しい時期だと思うけど、鳥を駆除するお仕事だよ」
 ヘリポートへ上がってきた一同を出迎えたのは、なぜか2人してサンタ服を着ている笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)とリリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)だった。
 なんかノリノリである。時期が時期だけに。
「売れ残りのクリスマスケーキ以外は買っちゃダメ! って言ってるビルシャナが隠れ家で虎視眈々です! 作戦開始の前にみんなで倒しちゃってください!」
「鳥はすごく弱いから、片付けるのは簡単かな」
 いつもの鳥退治の仕事らしい。
 今日は信者がいるらしいので、とりあえず説得する必要はありそうだが。
「信者は10人いるけど、売れ残りばっかり狙っちゃだめだよって言えば目を覚ましてくれると思うよ。クリスマスケーキはいつ食べるかも大事だと思うし、お店に残ってなかったら買えないもんね」
 猟犬たちは説明しつつ、リリエッタが『SOLD OUT』とスケブを掲げる。
 確かに売れ残りを狙うのは得ではあるがリスクもある。
 それをぶつけてやれば信者たちも目を覚まし、とぼとぼと解散するだろう。そうしたら後はビルシャナさんを七面鳥のようにしてやるだけである。
「怪しい人たちに町を徘徊させるわけにはいきません! クリスマスを清々しく過ごせるように、ビルシャナ退治をお願いします!」
 ぺこり、と頭を下げるねむ。
 かくして猟犬たちは、売れ残りケーキハンターたちを狩りに行くことになりました。


参加者
和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
エレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)
朱桜院・梢子(葉桜・e56552)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●美味しいのを食べたいでしょう?
「戦いは長い。今は体力を温存しておくのだ」
「そうですね」
「本番は夜が明けてからですよね」
 闇に溶けこむように静かな家で、信者たちが頭たる鳥さんの言葉に頷く。
 そんなときである。
 勢いよく扉が、開け放たれた!
「あんたたち、売れ残りのケーキを狙うなんて考え直しなさい!」
「今ならまだ間に合うわよ!」
「うおおっ!?」
「だ、誰だ!?」
 びくんと驚いた鳥と信者が、振り返る。
 開いた扉のそばにいたのは、左右に向いて背中合わせで立っている和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)とエディス・ポランスキー(銀鎖・e19178)だった。
 少し無言で見守る鳥さん。
「なんだそのニコイチ感がうるさいポージングは……」
「ノリでやってみたわ」
「結構サマになってるんじゃない?」
「そういうこと訊いてるんじゃねえんだよォ!」
 クアーッ、と鳥さんが嘴をお開きになり、信者たちも怒号を飛ばす。
 しかしゆりあはかぶりを振ると荷物を漁り、両手に持てる程度の箱を取り出した。
 ケーキボックスである。
「いい? ケーキが売れ残るのは理由があるの。そして売れ残らないケーキにも売れ残らない理由があるのよ!」
『GINZA』とか書いてある上品な箱をどこぞの印籠のように掲げるゆりあ。
「この銀座の有名店のチョコレートケーキとショートケーキ、もちろん売れ残らないわ! 最高級のチョコや小麦、厳選された素材をパティシエが最高の技術で拵えたものだから!」
「な、なにぃ!」
「聞くからになんかこう……高級!」
「ば、馬鹿! 何を揺さぶられている!」
 ゆりあの説明に信者がざわつく。鳥は慌てて彼らの前で手羽を振るが、エディスはその横で首を振った。
「ねぇ、2日連続でケーキを食べればいいんじゃない?」
「なッ!?」
「連続……だと!?」
 鳥が、信者が目を剥く。
「当日にお気に入りのケーキを買って、翌日は別のお安くなったケーキを買うのが正義だと思うのよ。それがクリスマスのあるべき姿だわ」
「しかし、その選択は出費が……」
「出費なんて問題じゃないわ!」
 迷いを見せる信者たちを、凄味ある眼差しで圧するエディス。
「ゆりあが持ってるような人気店のケーキはだいたい『完全受注生産品』! 翌日の売れ残りなんてありはしないわ! これを手に入れられないという愚行を犯すの!?」
「そ、それは確かに!」
 怒涛の勢いでまくしたてた竜人の咆哮(食い意地)に、信者たちが得心を示すように手を叩いた。
「見なさい。美味しいケーキがどれほど人を幸せにするかを」
 エディスが信者たちの肩に手を置き、顔を上げさせる。
 彼らの視界に飛びこんできたのは――。
「今日はケーキ食べてればおっけーって聞いたのパオ! やったのパオ!」
 どんぶらどんぶら揺れるソファに乗って入室してきた、エレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)の尊い姿であった。
 ちなみに浮いたソファの下では、トピアリウス(テレビウム)が頑張って歩いている。
 超人力である。
「なんという重労働……」
「幸せとは程遠いんですが……」
「そこじゃなくて、ほらエレコの顔を見て」
 信者に微笑んで誤魔化し、エレコを指差すエディス。
「ほらぱおさん。お高いケーキの味はどう?」
「とってもおいしいのパオ!」
 ゆりあに勧められるまま、エレコがもぐもぐとケーキで口周りを汚していた。銀座で買ってきたケーキを食べる12歳は至上の幸福に、眩いばかりの笑顔である。
 信者たちの視線に気づくと、エレコはその顔を向け返した。
「みんなもここ座って、一緒に食べましょパオ?」
「俺たちも……」
「しかしそれは売れ残りでは……」
「何言ってるの」
 信者の背後に回ったゆりあが、彼らの肩に腕を回す。
「そんな細かいこと気にしないで、ね? 一緒に売り切れる前にクリスマスケーキ食べよ?」
「そうそう。クリスマスはね、当日に特別なケーキを特別な友人と食べ、翌日にはまた残っているケーキを自分のご褒美用に食す。そうするものなのよ」
 ゆりあに加勢して、優しく言い聞かせるエディス。
 信者たちは2人の言葉に何も言えなくなる。彼らの心から鳥の教えが離れかけていることを見切ったエレコは、すぐ前まで(トピアリウスにソファを運んでもらって)移動した。
「こんなにおいしいものが残ったら、一生懸命作ったおみせのひとがかわいそうなのパオ」
「うっ……」
「それにみんな半額で買うようになったら、元の値段が上がるだけなのパオ」
「はっ!?」
 エレコのシビアな指摘。かっ、と目を開く信者たち。
 そう、市場とは思い通りにはならない。でないと店はやっていけねえのだ。
「あ、いただきます」
「ケーキうめえ」
 5秒もしないうちに、信者たちはソファに座ってケーキを食っていた。

●現実はツラい
 わいわいと賑わう、ゆりあたち3人と信者たち。
 それを背後に置いて、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は別の信者たちへと体を向けた。
「みんなも言ってたけど、美味しいケーキは売れ残ってないよ」
「な、何だと……!」
 少女の一声に、男たちが見るからに狼狽する。
 絶品ケーキがお安く買える、そんな幻想を抱いていた男たちの脳内に暗雲が垂れた。
 それを知ってか知らずか……リリエッタは後ろに回していた手を出して、掲げたスケッチブックの『SOLD OUT』の文字を見せつける。
「リリ、クリスマスのためにケーキ注文したけど、美味しいケーキ屋さんのケーキはその日のうちにお食べくださいって書いてあるもんね。だから、翌日にはもう売れ残りなんて売ってないよ?」
「馬鹿な……そんな馬鹿な!」
「美味しいケーキでウハウハできるはずでは……!?」
「いや安心しろおまえたち! 美味しいケーキは食える!」
 口々に絶望をこぼす信者たちを鼓舞する鳥。
「探せば! 探せば美味しいケーキは必ず見つかるんだ!」
「いいえ、その考えは甘いわ! 甘すぎるわ!!」
「ちょ、誰だァ!?」
 唐突に飛びこんできた横槍に鳥が声を荒らげ、振り返る。
 朱桜院・梢子(葉桜・e56552)が、仁王立ちしていた。
 その体からは圧倒的プレッシャーが迸っている。夫の葉介(ビハインド)すらも部屋の隅に引っ込めさせるほどの語勢で、花より団子に生きる女は続けた。
「くりすますけぇきは季節もの……争奪戦も熾烈なのよ! 今はほとんど予約制になっているのが主流……それでも人気のあるけぇきは予約開始早々から完売することもあるわ!」
「それほどに厳しい戦いに……!?」
「そうよ! でもちゃんと時期に合わせて買えば……ほら!」
 クリスマスケーキのカタログを取り出し、ぱらぱらとページをめくる梢子。
「こんなに沢山ある種類から自由に選べるのよ? 売れ残りを狙うだけじゃ選ぶ楽しみも味わえないじゃない! せっかくの祭日がそれでいいの!?」
「うっ……」
「そう言われると味気ないかも……」
「余ってたら買いたい程度ならそれでもいいわ……でも貴方達はくりすますけぇき食べたいんでしょう? なら本気出しなさいよ! 自分が食べたいけぇきを掴み取りなさい!」
 どんっ、と手近なテーブルを叩く梢子さん。
 信者たちは次第に彼女に対して頷くようになっていた。圧に押されて怖気づいてると言われれば否定できないけど、目が覚めつつあるのは事実である。
 ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)は横合いから、どこか申し訳なさそうに手を挙げた。
「あの……皆さんは、どなたとケーキを食べるんですか?」
「えっ」
「誰と……って」
 信者たちがとぼけた顔を見合わせる。
 誰と食べる――と訊かれても、彼らには返せる答えがなかった。
 困り果てる信者たちへ、ルーシィドは言葉を継いだ。
「ケーキは、美味しいです。でも、普通のお菓子と比べたらやっぱりお高いですし……だから、特別な時に食べるから、より美味しくて素敵なのだと、わたくしは思うのですけれど」
「うん。ルーの言うとおりだって、リリも思うよ」
 てくてくとルーシィドの隣に歩いてきたリリエッタが『YES』とスケブを掲げる。
「24日に一緒に食べるから、きっと美味しくて楽しいんだと思うな。すごく美味しいケーキを頼んであるから、楽しみにしてね、ルー」
「わぁ……リリちゃん、ありがとうございます!」
 ぱちぱちと手を叩き、喜ぶルーシィド。
 24日はルーシィドの誕生日でもある。だからこそリリエッタは奮発してケーキを注文したし、まして売れ残りを狙うなど論外もいいところだった。
 と、ここで何かに思い至り、ハッと口を覆うルーシィド。
「皆さんも、もしかしてお金がなくて、だから恋人さんとの数日遅れのクリスマスを楽しむため……とか?」
「……」
「……じゃないみたいですね……」
 沈黙する信者を見て、ルーシィドがちょっぴり期待の滲んでいた目を俯ける。
 うん、そーゆーロマンチックな話はね、なかったみたいっす。
「無理して売れ残りのケーキを探すより、普通のお菓子でもいいんじゃないですか?」
「は、はい……」
 ルーシィドの問いに頷いたとき、信者たちは無意識に正座スタイルになっていました。

●ひどい言われよう
 ド反省モードの信者たちが、悲しげに目を伏せる。
「売れ残りを食うなど……浅はかな考えだったのか?」
「つれぇわ……クリスマスってつれぇ……」
「セレネテアルさん、これ美味しいっすよ」
「いただきます~っ。ん~~美味しい~~っ」
「いや人ん家で普通に食ってんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
 真正面から聞こえてきた歓談に、がばっと顔を上げてツッコむ信者たち。
 その剣幕に、テーブルを囲んでティータイムに興じていたシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)とセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)はきょとんとした。
 そしてしばらくしてから、互いに顔を見合わせて。
「チョコケーキの甘さがスッキリしてるっす。紅茶でひと流しすれば、また新鮮な気持ちでケーキを味わえるっすね」
「本当ですね~っ」
「何事もなかったように再開している!!?」
 普通にティータイムの続きに戻った。2人があまりに自然にケーキを食べ、紅茶を飲むものだから信者たちもキレるどころではない。『俺たち存在してるよな?』と自分の手とか足とか見下ろしてしまった。
 シルフィリアスは麗しい所作で口元をふきふきすると、彼らに向けてケーキの乗った皿をそっと滑らせる。
「せっかくのクリスマスケーキっすから奮発して高いケーキにしたっすよ。みんなもどうっすか?」
「なに……高いケーキだと……」
「もちろん、いただくわ!!」
 身を乗り出した信者たちの横を、猛ダッシュで駆け抜ける梢子。
 一陣の風となった女は、次の瞬間にはシルフィリアスとセレネテアルと一緒になってテーブルを囲み、遠慮なくケーキをもぐもぐしていた。
「うん、美味しいわね!」
「さすがに高いケーキですよね~」
「生ものは味が落ちるのも早いっすから予約して作り立てを買ってきたっすよ」
 幸せいっぱいに笑う梢子とセレネテアル。シルフィリアスは2人と話しつつチラチラと信者らを見やっては、すすっとケーキをちらつかせた。
 ごくりと彼らの喉が鳴る。
「くっ……これ見よがしに!」
「だが予約品など買っては完全に売れ残りを捨てることに……!」
 がん、と床を叩く信者たち。
 美味さか安さか、彼らは大いに葛藤していた。
 セレネテアルはその精神的揺らぎを察するなり、フォークを置いて口をひらく。
「皆さん安いのが欲しいんですよね~? なら手段を間違えましたね~!」
「な……に……!?」
「俺たちが何を間違えたと……?」
「え~だって信者の皆さん、人類の敵であるデウスエクスと一緒にいるじゃないですか~! 普通に考えてお店が大混乱して売ってもらえないと思いますよっ」
「デウス……エクス……?」
 セレネテアルの言を受けて、ゆっくりと鳥へ目を向ける男たち。
「ん?」
 鳥も彼らへ顔を向ける。
 その顔は――見紛いようもない鳥だ。さんざ猟犬たちに諭されたおかげで、信者の目は正常に教祖の姿を認識できていた。
『こいつ人っぽいけど鳥じゃね?』
 と。
「仮にそこの鳥が催眠術なんかでお店の人を黙らせるとしても、そこまでするならそもそも無料にした方が良いですし、そんな事をしてまで値切りしたらもう詐欺や強盗と変わらないですよね~」
「確かに……」
「そこまで無法者にはなりたくないぜ」
「そんなのとつるんでいてもデメリットしかないですよ~! さあ! そんな足手まといなんか放っておいて、私達と一緒にケーキを楽しみましょうっ」
「そ、そうだな!」
「こんな鳥なんかより、目先のケーキだよな!」
 セレネテアルがこいこいと手招きするまま、テーブルを囲み、ティータイムにこぞって参戦する信者たち。家の中に響く食器音と笑い声。
 鳥はそれを聞きながら、窓から夜空を見上げた。
「言い方ってものが、あると思うんだ……」
 繊細な鳥類が大粒の涙をこぼしたことに気づく者は、いなかった。

●聖夜それぞれ
 数分後。
 屍と化した鳥の横で、セレネテアルは元信者の前で拳を掲げていた。
「私みたいなケルベロスなら、処分品を快く譲ってくれたりします! 時代はビルシャナよりケルベロス! 私についてくるのですっ」
『うおーっ!!』
 ぞろぞろ、とセレネテアルを筆頭に退室してゆく一団。
 結局売れ残りのケーキを探しに行くんだろーか、そんなことを思いながら、シルフィリアスはぐーっと体を伸ばした。
「適当にケーキ買って帰るっすかねー」
「くりすますけぇきは、いくら食べても飽きないものね!」
 カタログ片手に揚々と頷くのは梢子である。
 そのカタログには、注文済みを示す赤丸が大量に記されている。その総額を考えると傍らの葉介は頭を抱えるしかないのだが、当の梢子さんはケーキ尽くしの聖夜に燃えていた。
 一方、ゆりあとエレコ、エディスは――。
「ゆりあたちも帰りましょっか。うちで映画見ながらケーキたべましょっ」
「やったー! 女子会パオね! たくさん食べるのパオ!」
「エレコ……あんたあれだけ食べたのにまだ食べるって……怖いわよ。カロリーとか」
「カロリー……こ、こ、怖いものがあるわ……」
「きょ、今日は控えようかな……パオ……」
 しゅんと静かになるゆりあとエレコに、しみじみとエディスは頷いた。
 2日連続ケーキ――信者たちに提唱したそれを昨年に実行していた女は、その幸せと絶望を身をもって知っていたのだった。
 どこか緊張感をもって帰路につく3人。
 彼女らが過ぎ去ってゆく横で、リリエッタとルーシィドは顔を見合わせた。
「ルー、リリたちも早く帰らないとね」
「ええ、リリちゃんの買ってくれたケーキ楽しみですわ!」
 ふふふ、と笑みをこぼすルーシィド。
 並んで歩いてゆく2人は、それはそれは楽しく美味しい聖夜を過ごしたとか。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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