デンキショック! 魔のコードが破る!

作者:大丁

 並べられた長椅子には、ほこりが積もっていた。壁の掲示板に貼られた、各種の案内は色あせ、休診という赤文字だけが、ところどころ読み取れる。
 薄暗い待合室は、放棄されて数年がたっていた。
 そこへ、つる草が伸びていくような影がさす。

 ブリーフィングルームの壇上には、パイプ椅子が置かれており、その左右に、説明役の軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)と、調査を行ったジルダリア・ダイアンサス(さんじゅーよんさい・e79329)が立っていた。
 いつもの室内レインコートで、冬美は廃棄家電ダモクレスについて語る。
「備品も残ったまま放置されてるような廃病院で、かつての患者さんの忘れものだった低周波治療器がダモクレス化したのぉ。ジルダリアちゃん、お願い」
「はい」
 小柄な制服すがたのジルダリアが、私物と断ってから掲げて見せてくれたのは、手のひらサイズの電子機器だった。
 その本体から、コードが数本出ており、さらにその先に粘着パッドがついている。
「このパッドが電極になっています。電気パルスで筋肉を刺激してマッサージしたり血行をよくする機械です。こうして……」
 ジルダリアにうながされ、冬美はパイプ椅子に大股で座ると、レインコートを腹までめくった。
 そこまで実演しなくても良さそうなものだが、始めてしまうと止まらないのを知ってか、集まったケルベロスたちは黙って注視する。
 パッドが内股に貼られて、本体のスイッチが操作されると、冬美の下半身はビクンビクンと引きつる。
「どうでしょうか?」
「もうちょっと、強めてくれてもいい感じぃ。それで、ダモクレス化した家電はねぇ……はうッ!」
 そのまま、説明をはじめた。
 能力としては、爆破スイッチのエスケープマインに似ているという。ただし、効果は足止めから変更されているらしい。
 3階建ての廃病院の建物全部が、戦場だ。
 本体のスイッチ部は原形をとどめているが、低周波パッドが無数に増殖している。そのコードが屋内をうごめいているところへ、到着するかたちになる。
「コードの一本一本を切り飛ばしていけばいいけれど、気をつけてぇ。隠れたパッドがいつのまにか張り付いて、低周波振動を与えるよ。体がぶるぶるして、服なんか破れちゃうし、恐ろしいほど……」
 変更された効果は、服破りか。冬美は、言葉を絞り出した。
「気持ちいいのぉ。レッツゴぉ。ケルベロスぅ!」
 ジルダリアが、スイッチを最大にした。冬美は、椅子の上で弓なりになった。


参加者
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)
星乃宮・紫(スターパープル・e42472)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)
カフェ・アンナ(突風はそよ風に乗って・e76270)
ジルダリア・ダイアンサス(さんじゅーよんさい・e79329)

■リプレイ

●突入準備
「廃病院って、お化け出るとこじゃないですかっ……!」
 カフェ・アンナ(突風はそよ風に乗って・e76270)は長身を猫背にする。コートのなかの褌いっちょうに寒さを感じているわけではない。
 白いはずの壁は茶色に汚れ、雑草はボーボーに延び放題。手入れのなさは、カフェの着衣にも似ていたが。
 ケルベロスたちは、不揃いな植え込みに着替えを隠した。星乃宮・紫(スターパープル・e42472)は、スーパーヒロインのスターパープルの衣装に身を包む。
「お化けはともかく、デウスエクス……今は大丈夫だけど、ここに誰かが来たり、抜け出した敵が人を襲ったりしたら危険だわ……!」
 頷き、空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は、黒いフィルムスーツの動作を確認する。
「低周波治療器のダモクレス……。低周波振動って、そんなにいいものなのかな……?」
「医療器具だよな? 多分、冬美の使い方はなんとなく違う気がするんだけど」
 シェリフなロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)の言葉に気が紛れたのか、カフェは褌も緩めて。
「冬美さん……気持ち良さそうでしたね……」
「うん。あたしは使ったことないけど」
 雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)は、ピンクのフィルムスーツから、光の羽を出して具合をみている。
「肩こりなんかにいいですよね」
 などと、年長な発言をしているジルダリア・ダイアンサス(さんじゅーよんさい・e79329)は、ジャンパースカートの制服姿で、学生みたいだ。
 神宮・翼(聖翼光震・e15906)のフィルムスーツは、白。
「あたしの本能が囁く。あれは、絶対……」
「倒しましょう! 相手にとって不足はありません!」
 レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)、メイド服の忍者は、自信満々に外来患者用の出入口を指さした。

●待つもの
 ロディが、エントランスのガラス戸を蹴破り、先頭に立って待合室へ踏みこんだ。
 背に目はついてないから、もし女性陣の服がピンチになっても、視ずにすむ。
 敵の本体はひとつだし、一般人もいないから、1階から順に固まって探索する。
 長イスの下を、お団子頭にサキュバスの角を生やした翼の顔が覗くと、さっそくシュルシュルと電極パッドが伸びてくる。
「いた、いたよ! 絶対、コレ……!」
 両肩口と両脇に貼り付かれてデンキショック。
「絶対気持ちいいヤツ、絶対コレ気持ちいいヤツぅ!」
 丸くてデカイおっぱいが、パンパンになったフィルムスーツごとブルンブルン揺れる。
「はんっ! あんっ! うふんっ!」
 ひと突きで、まりも羊羹みたいにぱぁん!
 っと、スーツは弾けてしまうのだった。
 早々に治療的なものでなく、サキュバスは本能からの囁きかけで、快楽を貪っている。
「あああ……もう、もうイキそ……」
「パープルマスターズナックルゥッ!!」
 快楽を送り込んでいたコードを、スーパーヒロインの紫が吹っ飛ばす。
 そのかわり、彼女のグローブは破けて素手となり、顔を隠すスモークパープルのゴーグルこそ付いているが、レオタードからブーツまで裂けていって、翼の裸体にたどり着くころには、自身も素足であった。床が冷たい。
 裸の背中にむき出しのオッパイが、寄っかかって押しつけられた。乳首がツン。
「ありがとパープルちゃん……。でも、イキそこね……た……」
「翼さん、しっかりして。始まったばかりよ」
 確かにそうなのだが、藍奈のフィルムスーツも、レイファのメイド服も、そろって大きい胸の揺れには、まったく耐えられなかったのだ。
 レイファの散布した紙兵が、ちょこまかと動いてコードを抜いてくれるものの、疼きは次々と湧いてくる。
「藍奈さん、女の人は大丈夫ですか……?」
「え?! あ、あたしは、男女混じってる時が多いから、女の人がいても嫌じゃないよ?」
 指を互いに入れ合っていれば、ダモクレスによるグラビティ攻撃を、相殺できるのではないか。褐色の肌を両手に覆って、藍奈はふんふんと納得している。
「ひぃあああ~~~!!! レイファしゃん、らめぇ!!」
「ふぎゅう! 藍奈しゃんのゆびでぇ、何倍もイイィ!!」
 螺旋忍者の訓練を積んだ女同士、何かが回転して行き来してしまったようだ。男性が欲しい。
 そのロディは先行していた。グラビティ・チェインを載せた弾丸をリボルバーからばら撒いて、飛び掛かってくる電極パッドの群れを撃ち落としていく。他のメンバーよりは蓄積された力は強いはずだ。尻が丸出しだけど。
 それに、前衛と言っても部屋の奥ばかり向いてもいられない。銃口先端に力を寄せて、無月に貼り付いたコードを切断するためのバヨネット(銃剣)にしたときは、フィルムスーツの剥がれた細身な裸をまじかに見てしまった。
 蓄積に、先端が上を向いてもしょうがないじゃないか。唯一の男性なんだし。
「はぅ……んっ……気にしないで」
 裸身に竜の羽だけとなった無月も咎めない。隠しもせず、槍の攻撃を続ける。
 電極をすっかり外してもらうまで、喘ぎ声を抑えられなかった。
 カフェは、オウガの怪力でもって、コード数束を握り、ジルダリアの身体から引きちぎった。早くも、全員全裸になってしまったが、待合室に潜んでいたコードは始末したらしい。
 仲間が囚われていた刺激も、一旦は落ち着く。制服のなくなったジルダリアは、さらに幼く見えた。
 だが、静まり返ってしまうと、廃病院の不気味さが際立つのだ。カフェは、電極の束を長イスに叩きつけて、怒ってみせる。
「なんでこんな怖いところに出てくるんですかもぉおお……!!」

●試しの廊下
 手近な階段を上ってみると、防火扉に阻まれた。シャッターの前後に医療機器や箱類が積みあがっていて、もし通れるくらいのグラビティをぶつけたら、建物の倒壊につながりそうだ。
 2階の廊下に出る。
 両壁にも、機器類が連なっていた。ブンと音がして、映像装置がいっせいに明滅する。
 ダモクレス化したわけではない。低周波パッドから電源が供給されたらしい。
 数台あるそれは、いわゆる内視鏡。チューブの先から見えるものを映す。
 大変ややこしいが、コードがチューブを操って、ケルベロスらに押しつけてきたのだった。
 ジルダリアは、まとわりつかれて、困惑する。
「これは……けしからんところを拡大表示したりしませんよね?」
「うわあッ!」
 廊下の先でロディが叫んだことで、危惧した事態になっていると知れた。
 さまざまな角度で古ぼけたディスプレイが、さまざまなけしからんものを、提示している。
 電気攻撃をしてくるコードもあるから、ロディもいろんなものと戦わなければならなかった。
 藍奈の臀部が大写しになり、両の尻たぶに引っ付いた電極が、それを左右に開く。
「おひりっ、おひりらめぇ~~~!!!」
 またも刺激にやられ、カメラも近づいていくのだ。
 カフェはもう、四つん這いになって、逃げようとするのだけれど、潜りこまれてしまった。
「あぐう、だめです……。先週から私……」
 お腹がぎゅるぎゅるとなっている。
 パキッとヒビがはいって、紫色のゴーグルが割れた。
 待合室でスターパープルの衣装を破られ、最後の仮面が、剥がれ落ちると、星乃宮紫は元の引っ込み思案に戻ってしまう。
 藍奈もカフェも、素顔は気の弱い女の子だ。
 いまや、ケルベロスとも思えないような、悲鳴をあげていた。
「まけちゃう、あ、あたひ、ブルブルに負けちゃう~~~!!!」
「い、一週間、出てないんです……! もう、ダ……メ……」
 振動による残像で、藍奈の尻肉が、さらに大きく見えていた。
 カフェに潜り込んでいたチューブは、押し戻されて排出し、元々そこに溜められていたものが、穴を割り広げて姿を見せる。
「ごめんなさい、みなさん! 私、こんな醜態を晒してしまって、スーパーヒロインなんかじゃ、ないんです……!」
 涙にぬれる紫がアップになっている横には、赤に寄せたピンクの肉ヒダが続いていて、ジルダリアのナカだとわかった。さらに隣に映る噴水は、レイファの失禁だ。そして、それらを見ているのも、またレイファ自身なのである。
「ふぎゅう! おっぱいもおしっこも止まらにゃい! でも、忍者はこれくらい耐えてみしぇりゅう!」
 股は開いたままだが、立ち上がった。映ってはいないが、苦しんでいる仲間にもむけて、励ましの言葉をかけていく。
「こ、こんなのへっちゃらよおお!」
 一言ごとに、左右の乳房から、ぴゅっぴゅと噴乳した。
「そうよ、あたしだって正義のヒロイン志願なんだから!」
 藍奈は、お尻を揺らされたまま、光の羽をひろげる。ヴァルキュリアブラストに包まれると、電極を焼き切った。
 こんなこともあろうかと。紫は、予備のゴーグルを着眼する。スターパープルは、廊下の前後にレーザーを放ち始めた。
 その復活に、無月はわずかに、表情を変える。
「星……スター……紫も、あなたたちも、みんな……強い」
 『摩天槍楼(マテンソウロウ)』、廊下の片側の床から、槍が生え、機材を貫いていった。
 こっそり視聴していたロディが、ひっくり返ったようだが、気にしない。
「足元……注意……。……もう遅いけど」
 反対の壁の機材にはジルダリアが、アイススパイクを飛ばす。
 標的はあくまで、機器に張り付いた電極。映し出されていた自分のナカを、見えなくするためではない。
「ああああ、許してください……!」
 カフェは見守られるような恰好で、長く送りだしていく。
 許すもなにも、それは、生きてるってこと。
 翼の唄う『ブラッドスター』が、肯定する。
 盾役とはいえ、かなりのダメージを引き受けていたカフェが、持ち直した。全員も士気も上がっている。

●決着のとき
 階段をのぼるにつれ、コードの密度が増していくように思われた。
「やはり……!」
 ジルダリアは『フリージングゲイル』を巻き起こし、アイスエルフの凍結にイバラの森が削れると、元締めのありかを見い出す。
「患者さんの忘れ物ですから、ナースステーションに預かられていたんですね」
 病棟の看護師詰め所は、廊下との仕切りにカウンターが設えられていて、その上に手のひらサイズのリモコンスイッチが浮いていた。
 おびただしい量のコードが接続されている。ヤツらにされた所業はいまだ生々しく、ジルダリアはつい恥部を、指で押さえてしまう。
 あえて無月は、隠さぬようにでもしているのか、ことさらスタンス幅をとって、グレイブを構えた。レイファも、ガニ股でフェアリーブーツを踏みしめ、癒しの舞いに先立ち小水を垂れる。
 全部を出し切っても、もうひと踏ん張り。猫背から両手をついて下半身を高くしているカフェ。オウガの角で貫かんばかりに。
 翼は、胸をそらせて呼吸を整えた。乳房のプルプルとした震えは、自分のものだ。
「あなたが低周波の本体? だったら、あたしのビートでシビレさせてあげる!」
 かつて、デウスエクスに楽器として調律された身体が、眼前の敵にむかって『Vivid☆Beat☆Vibration(ビビット・ビート・バイブレーション)』を返す。
 電気的な火花が散り、不調を起こす操作器。ケルベロスたちは動き、コードをかいくぐってダメージを与える。
 パープルアッパーカットまでの連続攻撃をきめた紫が、敵本体を追って跳躍すると、藍奈もつづいた。
「パープルゥゥ……!」
「回転フルゥゥ……!」
 宙に躍るふたつのお尻。
「「ダブルキィィィック!」」
 甲高い叫びとともに、合わせた蹴りがきまる。
 スイッチの外装は割れ、コードの端子がブチブチと抜けると、ナースステーションの白い壁にあたって、低周波治療器は壊れた。
 院内にはびこっていた電極パッドも、枯れたように消失する。
 リボルバーを収めようとして、所在なく腰にあてながらロディは、感嘆の声をもらした。
「即興でも、タイミングぴったりだったぜ」
 ダブルスーパーヒロインは、微笑みあう。

●戦士にご休憩を
 廃棄家電ダモクレスの撃破によって状況が落ち着くと、カフェはむしろ震え出した。
「もう、こんなお化けの出てきそうなとこになんか居られませんっ! 私は帰りますっ!」
 すぐにレイファが追う。
「カフェさん、待って。一人では気味悪いでしょう?」
 点々とした雫の列が、階段へと戻っていった。
 廃病院が怖くとも、カフェの勇気をみんな知っている。この後もレイファとふたり、どこかで幼い命を救っているに違いない。
 自分たちも片付けに動こうとして藍奈と翼は、しかし腰くだけになってしまった。
 無月が、病室の一角を示す。竜のひと羽ばたきで、ヒールの花びらを送りこむと、薔薇の園のようなベッドが完成する。
「元気になるまで……しばらく休むといいよ」
 同感だと頷いた紫は、いまだ全裸仮面状態のスターパープルの態度で、ジルダリアとロディに後を頼む。
「下のフロアの確認は任せて。周辺も私たちで見回っておくから」
 事件が解決しても一般人への影響は残されていないか。紫と無月は念入りだ。
 ともあれ、まずは玄関前の植え込みに直行したい。凛とした態度をとっていても、早く服は着たい。
「翼! 藍奈! ジルダリアまで! そんなに詰め寄らなくてもいいから!」
 ロディは、翼に押し倒され、裸の4人はいっしょにベッドへと寝転がった。
「あたしが最初でいい?」
 うん、と答えて、藍奈は握った。
「ロディさんのピンピンだもん。あたしたちを2周はできるわよね?」
「ええ。こってり搾り取らないと。大写しで見ましたよね、私たちのを」
 ジルダリアは、強張りきった先端から漏れている、透明な汁を指ですくいとる。
 そうして二人が支えたところへ、翼のがのっかって、奥まで埋められていくのを助けた。
 まあ、ロディもこんなことになるだろうとは思っていた。観念して、下から突き上げる。
 実をいえば、低周波治療器ロボのパッドは、突入の時点で、彼の裏にもくっついていた。ここまで耐えて、発射せずにおいた自分を褒めてあげたい。
「イイ! 気持ちイイ、はあァん!」
 翼もやっとイケた。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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