死神シスターは虚ろに微笑む

作者:青葉桂都

●シスターは邪悪に微笑む
 その日、シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)はとある孤児院を訪れた。
 用件をすませた帰り道。太陽はもう傾いていて、空気は冷たくなっていたけれど、シヴィルの髪には陽光のごとく向日葵が元気に咲き誇っている。
 夕方の街は、なんだか奇妙なまでに、静かだった。
「今日はずいぶんと町が寂しい様子だな」
 シヴィルが呟く。
 なんだか、前にもこんなことがあった気がする。
 直後、1人の女性がすぐ先にある曲がり角から静かに姿を見せた。
 亜麻色の長い髪を持ち、修道服に身を包んだシスターは、見覚えのある女性……かつて死んだはずの女性に、よく似ているように見える。
「お前は……!? 生きていたのか?」
「……なにを言っているのか、わかりませんね」
 だが、返ってきたのは冷たい声。
「いや……そうか……」
 シヴィルは強く拳を握る。痛いほどに。
 対峙するシスターは、腕にたくさんのトゲがついたガントレットをつけていた。
 ガントレットにまとわりつく赤い炎が現れる。
 そのシスターが人ではないのだと、見た目だけでもはっきりとわかる。
「孤児院の子供たちは……今でも帰りを待っているというのに……」
「私には関係ないと言っているでしょう。そうですね……そんなに気にかけているのなら、貴女を殺したあとはその子供たちも同じ場所に送ってあげましょうか。私に似ているという誰かも、そこにいるのでしょうし」
 冷酷な笑みを浮かべ、シスターは告げる。
 彼女の正体がどうあれ、ここで負けるわけにいかないことだけは確実だ。
 両腕の炎を操り、シスターはシヴィルへと襲いかかってきた。

●シヴィルを救え
「大変です。ケルベロスがデウスエクスに襲われる事件が起きることがわかりました」
 落ち着いた声で石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はケルベロスたちに告げた。
「敵はシスター・サウスデッドという死神で、襲撃を受けるのはシヴィル・カジャスさんです」
 かつて死んだとある女性とよく似た姿をしているようだ。それが偶然なのか、なんらかの事情があるのかはわからないが。
「はっきりわかっているのは、1人で対抗可能な相手ではないということです」
 すぐに向かえば、シヴィルが殺される前にたどり着くことが可能だろう。
 もっとも、その時に立っていられるかどうかはシヴィル次第になるが……。
 それから、芹架は敵について詳しく説明を始めた。
「シスター・サウスデッドは炎をまとったトゲつきのガントレットを両手に装備しています」
 炎を撒き散らす範囲攻撃や、ガントレットのトゲを用いた近接攻撃から炎による追撃を加える技などを使用する。
 また、鋭いトゲや指先を槍のように伸ばして、敵を貫き毒で冒すことも可能だ。
「現場は市街地ですが、周囲には巻き込まれるような一般人はいません」
 もしかすると、襲撃のために人払いを行っているのかもしれない。
 なんにせよ、よほど戦場が大きく移動するような作戦をとらなければ誰かを巻き込むことはないだろう。
「シスター・サウスデッドがなんのためにシヴィルさんを襲うのかは不明ですが、黙って襲われるのを見ているわけにはいきません」
 どうかシヴィルを助けて欲しいと告げて、芹架は頭を下げた。


参加者
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)
祖川・夢兎(ふたご座だけどアリエス・e41018)
ベルガモット・モナルダ(茨の騎士・e44218)

■リプレイ

●迷える向日葵
 夕暮れの街角で、シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)はシスターの姿をしたデウスエクスと対峙していた。
 いつも明るい表情を、今日は少しだけ歪めている。
「その顔……その姿をいったいどうやって手に入れた?」
 死んだはずの彼女にうり二つの顔と、聞き覚えのある声。
「これから死ぬ貴女がそれを知ったところで意味はないでしょう?」
 知っている声で投げかけられる言葉が、シヴィルの心をえぐってくる。
「わかっているぞ。彼女を……サルベージして、死体を使っているのだろう!」
「さあ。どうでしょうね」
 太陽の黒点をモチーフにした剣こそ構えていたものの、シヴィルはすぐには動けなかった。一方で、冷たい表情をした死神は禍々しいガントレットに炎を宿す。
 しかし、敵は寸前で手を止めて後方へと跳ぶ。
 牽制に放たれた攻撃を回避したのだ。
「太陽の騎士団参上だ!」
 攻撃をしかけた仲間たちの後方から巫女服を着た青年が叫ぶ。
「団長、助けに来た!」
 力いっぱい元気な声で叫んだのは祖川・夢兎(ふたご座だけどアリエス・e41018)だ。
 辛い戦いなのだと察した青年はできるだけ大きな声で告げる。
「……邪魔者が来ましたか」
 シスターの端正な顔が不快そうに歪む。
「やれやれ……団長の知り合いの身体を乗っ取るとはな。その代償、高くつくぞ」
 牽制をしかけた後で、雑賀・真也(英雄を演じる無銘の偽者・e36613)は双剣を手にシヴィルのそばまで駆けつけた。
 駆けつけたケルベロスたちがシヴィルを守るように囲む。
「シヴィル団長さま、助けに来ました。さっさとぶち殺して帰りましょう」
 ドラゴニックハンマーを手にしたエステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)は、容赦のない声音で告げる。
「団長殿、助太刀に参りました。及ばずながら盾の一枚となりましょう」
 漆黒の大剣を手にしてベルガモット・モナルダ(茨の騎士・e44218)もシヴィルのそばへと駆けつける。
 いずれも太陽の騎士団の仲間たち。向日葵に囲まれた騎士団の皆が、団長であるシヴィルの危機を知って来てくれたのだ。
「みんな、ありがとう! 私に力を貸してくれ!」
 仲間たちの姿を見て、シヴィルの声に力が少し戻った。
 けれども剣を握る手はまだわずかに震えている……。
(「だが、私は本当に彼女と戦えるのか……!?」)
 その迷いを見抜いたかのように、仲間の1人がシヴィルに近づいてきた。
「団長、お知り合いですか?」
 ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)に問われて、シヴィルは頷いた。
「彼女は……この近くにある孤児院で働いていたシスターだ」
 仲間たちに告げることができたのは、それだけだった。
 新手の姿を見て一度距離を取った死神が、棘をシヴィルに向けて伸ばしてくる。
「聖職者の姿を借りるとは、罰当たりな奴め。神の御名を謳うつもりならば、相応の報いを覚悟するのだな。誰かに近しい姿をする……貴様らはそんな事ばかりだ」
 ベルガモットが炎の前に立ってシヴィルをかばった。
 仮に本調子でも強力な死神の攻撃は回避できなかった可能性が高い。とはいえ、動揺から動きが鈍っていたのは間違いない。
「彼女と何があったか知りませんがここは戦場です。冷静になって戦闘に集中しなさい」
 ロベリアに言われて、シヴィルは拳を握り直す。
(「この状況が夢であったならどれほど良かったことか。なぜ、こんなことになってしまったんだ。かつての仲間でもあるあなたと私は戦いたくなどない」)
 もはやこの世にはいない彼女の体を、デウスエクスが勝手に使っている……それは間違いないことだと思えた。
 真偽は確かめようもないけれど、確かめるまでもない。
 きつくつぶった目から雫がこぼれた。
「だが、私は騎士だ」
 すぐに目を開き、彼女は濡れた瞳で敵を見据える。奥歯を噛み締め、拳に力を込めて、シヴィルは剣を構えた。
「力なき人々を守るために剣を取ったひとりの騎士なのだ」
 胸に秘めた決意を言葉として吐き出す。
「ご立派なことですね。ここで死ぬ貴女がどんな決意をしていようと無駄だというのに」
 嘲る敵へと騎士団の仲間たちが剣を向ける。
「かつて同じ志をもって戦った仲間として、邪悪なるデウスエクスにあなたが操られている姿など見たくなかった!」
 反撃を予期して身構える敵へと、真正面からシヴィルは突っ込んでいく。
「私からのせめてもの手向けだ。ここであなたを止めてみせる!」
 シヴィルが前進するのに合わせて、騎士団の仲間たちも動きだした。

●シスター・サウスデッドの猛攻
 6人のケルベロスを前にしても死神は焦りの表情さえ浮かべてはいなかった。
 後方から一気に接近したエステルのハンマーが敵の可能性を奪って凍りつかせ、シヴィルの剣が弧を描く。
 だが、狙いすました2人の攻撃はかわせなかったものの、他のケルベロスの攻撃のいくらかはシスター・サウスデッドに回避された。
「容易く勝てる相手ではありませんね。ですが、だからこそ団長も、そして無辜の人々も私たちが必ず守ってみせます!」
 ロベリアは気合を入れ直し、敵の退路を塞ぎつつ剣を構える。
 もっとも、彼女が剣を振るったのは攻撃のためではない。騎士団の紋章に囲まれた獅子座を刻んだ刃が、宙に星座を描き出す。
 赤黒く輝く刀身が結界を作り出し、仲間たちを守る。
「立ち去れ死神よ、シスターの身体とお前の命だけおいて行け」
 青い炎のごとき熱を込めて、夢兎が死神に殺意を込めた視線を向ける。
 その意思に対して、シスター・サウスデッドは一瞬視線を向けただけだ。だが、その一瞬のうちに、彼は御業で作り出した鎧でベルガモットを守った。
「ケルベロスがしぶといのは知っていますよ。でも、不死身ではないでしょう?」
 サウスデッドの言葉と共に、伸びた棘がロベリアの鎧を貫く。
「不死身ではないかもしれない。だが、駆けつけてくれな皆がいる限り私は決して死にはしない!」
 シヴィルがロベリアを飛び越える。
「騎士の誇りを胸に私は戦う! そのような誇りなき拳でこれ以上彼女を汚させてたまるものか!」
 重力を操った彼女の飛び蹴りで敵の足が止まったところを、さらに真也が狙った。
「血に飢える電光石火の猟剣よ。その力をもって、敵を亡き者にせよ。喰らいつけ、血に飢える電光石火の猟剣(フルンティング)!」
 真也は異空間から弓を召喚した。
 右手に構えて、さらにその弓につがえるための武器を召喚する。
 電光と共に現れるのは漆黒の剣だ。左の手に持ったそれを矢のように一回転させるうちに、剣は矢のように細くなっていった。
 引き絞った弦が弾けて、剣が飛んでいく。サウスデッドはそれを回避しようとしたが、シヴィルの攻撃で鈍った脚では追いすがる剣から逃げ切ることはできなかった。
「俺はお前が生前、団長にとってどういう存在だったかは詳しくは知らない。だが、人類の敵になってしまったのなら、ケルベロスとして排除するまでだ」
 電光をまとった剣は死神に突き刺さり、その体内を駆け巡った。
「不死身ではなくなったのはそっちもだって、忘れてないだろうな。さっさとくたばれ」
 エステルは狙いをつけながら嫌悪をむき出しにした声を投げかける。仲間に対する時とはまるで違う言葉遣いだ。
 死神は善性のある人間の姿を取ると、彼女は聞いたことがあった。だとすれば、きっとあのシスターは善い人間だったのだろう。
 だからこそ死神に対してエステルは嫌悪しか感じない。
 一気に接近した彼女は、シスターの腕と肩をつかむ。
 透明忍術を用いた踏み込みは、後衛からの攻撃をさらに回避しにくくしていた。
「月がお前を呼んでいる……落ちていけ!!」
 敵の体勢を崩しながら足を滑らせて、エステルは敵の足を思い切り払う。
 2人の体が足払いの衝撃で浮きあがり、円に似た軌道で宙を舞う。
 そして、エステルはシスターを痛烈に地面へと叩きつけた。
 他のケルベロスたちの攻撃も、エステルに続いて起き上がろうとする敵を狙う。
 反撃しようとした敵の前にベルガモットが立ちはだかる。
 棘が彼女の体に突き刺さり、そして炎による追撃が暗銀の甲冑とその中にある体を容赦なく燃やしてくる。
「私の実力では及ばないかもしれないが、それでも力の及ぶ限り戦わせてもらう!」
 痛打を受けたベルガモットが守りを固めて攻撃に耐えて見せた。
 シスターの顔が、不快そうに歪んだ。

●死体へと還れ
 夕暮れの街並よりも赤い炎がまき散らされて、ケルベロスたちを焼く。
「恵みの雨よ、皆に癒しを」
 夢兎が薬液の雨を降らせる。それは夕焼けの光の中、赤みがかった虹を描いていた。
 回復で支えられながらケルベロスたちは戦い続けていた。回復手段のないサウスデッドは彼女の身を縛る攻撃から逃れられずにいる。
 十分に敵の動きを、そして守りは弱めた。
 ベルガモットはそう判断して、愛用の魔剣を手に前進する。
「冠無き茨の王よ、今一度、私に力を寄越せ。破滅と栄光を掴むという、その力を見せてみろ!」
 破滅と栄光を奪い合う剣の片割れ、漆黒の大剣の真の名を紡ぐ。魔剣の力を解放されて黒い靄が彼女の体を覆う。
 黒い怪物の影をまとった彼女は、シスターへと高速で接近して絶大なる威力を秘めた一撃で敵を切り裂いた。
 すでに修道服はぼろぼろで、傷は深い。死神はそれでも戦いをやめる様子はなかった。
 ケルベロスたちはさらに追撃を加えていく。
「吹き飛べ!」
 守りをしっかりと固めながら、ロベリアは身を守るべき盾に体重を乗せた。
 力と勢いを乗せただけの突撃が、強烈な威力を秘めて死神を吹き飛ばす。
 なおも攻撃するデウスエクスへと、エステルの気弾とシヴィルの剣が相次いで当たる。
 真也の夫婦双剣に雷が宿り、死神を貫いた。
 ケルベロスたちの攻撃は次々にシスター・サウスデッドの体力を削り取っていく。
「こんなはずでは……せめてお前だけでも道連れに!」
 シヴィルを貫こうと、敵は棘を伸ばそうとした。けれど、その体が雷に打たれたように跳ねて動きが止まる。
「お前はもう誰も殺せない」
 容赦のない言葉と共にエステルのハンマーが可能性を奪う。
「おいでませ、汚れ無き神獣ユニコーン!」
 好機と見て夢兎もファミリアを融合させ、ユニコーン型の合成獣に変えて放つ。
 だが、他のケルベロスたちは手を出さなかった。もうすぐ死神が倒れることが見て取れたからだ。
「後は任せる。ケジメをつけて来てくれ」
「わかった! すまん!」
 真也の言葉に応え、シヴィルはオラトリオの翼を広げて前傾姿勢を取った。
「カジャス流奥義、サン・ブラスト!」
 夕暮れの風を翼に受けて、彼女の体は突風の勢いでサウスデッドへと突っ込む。
 太陽の炎で鍛えたという大剣はまっすぐに死神の体を貫いていた。
 勢いのまま敵を塀に叩きつけると、断末魔の悲鳴が上がる。
 シヴィルが大剣を引き抜くと、敵はゆっくりと地面に倒れた。

●もっと辛い戦いと、決意
 戦いは終わった。シスター・サウスデッドはもはや動くことはない。
 けれど、シヴィルは肩を落としたままだった。
「ありがとう、ユニコーン」
 角を持った幻影合成獣を夢兎が撫でてやると、使い魔は鼻先を彼へと寄せる。
 微笑んだ彼の姿は、まるで清純な乙女のように見えた。
 ファミリアを2本のロッドに戻している横を抜けて、真也がシヴィルに近づく。
「……団長。辛いかもしれないが、これがケルベロスの仕事だ。殺す対象が人ではなく、デウスエクスである殺し屋だということを忘れないでくれ」
 ゆっくりと青年に顔を向けて、それからシヴィルは力強く頷く。
「皆、来てくれて本当に助かった。犠牲なしに勝つことができたのは、皆のおかげだ」
 仲間たちを労うと、シヴィルは視線を道の一方へ向けた。
 だいぶ先に、大きな建物が見える。
 孤児院だ。シスター・サウスデッドと遭遇する前にシヴィルが訪れていた場所。
 そして、これから改めて訪問すべき場所だ。
「子供たちにも、彼女の死を伝えなければならないな……。納得してくれると……いや、それは不可能なことだな」
 きっと、理解はしても納得はしてくれないだろう。
 責められるだろうとは思ったが、それでも行かないわけにはいかない。
「落ち着いて伝えられますか?」
 ロベリアの冷静な声に、心配な気持ちが含まれているのは皆にもわかった。
 だが、騎士らしくあろうとするならば、時に辛い決断をせねばならないことはロベリアもわかっている。
「ああ。これは、私がやらねばならないことだからな」
 凛とした雰囲気を取り戻してシヴィルが言う。
「どんな関係だかは存じ上げませんが、お辛いのはわかります。無理はなさらないでください」
 エステルの言葉にシヴィルがまた頷いた。
 孤児院へと向かって彼女は歩き出した。
「後片付けをして帰りましょうか。シヴィル団長をおひとりにしてあげたいですから」
「そうですね。できるだけ被害が出ないよう心がけたつもりでしたが、ヒールする必要がありそうです」
 エステルの言葉に頷いたロベリアが、シヴィルの後ろ姿を見守る。その後ろから、真也と夢兎が心配そうについていくのが見えた。
(「貴女が守ろうとした子供たちは、団長殿が引き受けてくれるはずだ。安らかに眠ってくれ」)
 ベルガモットは剣を立てて、葬送の礼をシスターの死体へと送っていた。
 孤児院にシヴィルが入ってからしばしして、中からは子供たちの泣き声や叫び声、その他様々な声が聞こえてきた。
 それでも、シヴィルは背筋を伸ばし、伝えるべき言葉をしっかりと伝えた。
 追いたてられるようにシヴィルが出ていく。
 真也はその場に残って、身を屈めて子供たちと目線を合わせた。
「……確かに、俺達は君達にとってかけがえのない人を手に掛けた。だが、もし君達が殺されてしまったら、団長にとっても、生前の彼女にとっても悲しいだろう」
 伝わっているかどうか、わからない。けれど、真也は彼らに語りかけた。
「俺達を恨むなとは言わない。だが、君達に危機が迫ったら、彼女の代わりに俺達が守ってみせる。それだけは忘れないでくれ」
 まだ騒いでいる子供たちにも、とりあえず落ち着きを取り戻した子供たちにも、彼は等しく語りかけた。
 夢兎が建物を出るシヴィルを追いかけてきた。そばにいることが、少しでも救いになることと、彼女に早く笑顔が戻ることを彼は祈っていた。
 しばし歩いてから、最早暗くなった道端でシヴィルが立ち止まる。
「デウスエクスとの戦いは本当に辛いことばかりだ。それでも、私はこのような悲劇を繰り返さないために戦い続けてみせる」
 独り言なのか、そばにいる夢兎に向けた言葉か。少なくとも、答えを望む言葉でないことは確かだ。
 太陽が隠れても、ほのかに光を残している方角を見つめてシヴィルは静かに拳を握った。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月31日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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