●ダモクレス誕生の予知
新潟市某所。
防風林を挟んだ西側に日本海を望む住宅地の一角にその家はあった。
二階の子ども部屋には色のあせたクリスマスツリーが飾られている。
背表紙の色があせて白っぽくなった中学一年の教科書や参考書が、勉強机の本立てに几帳面に並べられている。
目立った埃も無く清掃も行き届いている部屋なのだが、人が使用している気配を感じない。
注意深く見れば、壁に掛けられているカレンダーは1984年の12月のものだ。
机の脇の畳面には2台のカセットデッキを備えたWラジカセが机の側面と平行となるように置かれていた。
今の時代では古めかしいWラジカセだけが、この部屋の中では色あせていないように見える。
新潟の12月の日没は午後4時半ごろだ。日が暮れると道に街灯が灯るが、人通りはほとんど無く、住宅地であるのにかなり寂しい印象だ。
つまり部活をしている生徒は皆、このような寂しい夜道を下校する。
窓には鍵の掛かっている、扉も閉まったまま、なのに、カーテンが風に靡くようにふわふわと揺れ出す。
チキチキチキチキ。
細長い手足の生えた、小さな光る宝石のような何か、虫のようなものが、どこからともなく表れて飛び跳ねはじめた。
チチチッ。
虫のようなものは見た目は綺麗だが、実はずっと昔に壊れてしまっているWラジカセのイジェクトボタンを押すと、半開きになった蓋の中に入り込んだ。
間もなくそれはゴシックパンク風の女性のミュージシャン如き姿——のダモクレスと変わる。
モノクローム調で統一された見た目は、ひと昔前のオーディオ機器を連想させる。
ホゲ〜!
果たして、このダモクレスが重くスローなサウンドを響かせると、窓硝子が微塵に砕けた。
そして屋根瓦がガラガラと滑り落ち始めた。
このダモクレスは、音を鳴らせば、無差別に破壊をまき散らすようだ。
誰かが、止めなければ、いけない。
●ヘリポートにて
「行方不明になった子どもの部屋に置かれたままになっていたWラジカセがダモクレスとなり、無差別破壊を開始しようとしている。至急の撃破を要請する」
ケンジ・サルヴァトーレ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0076)は、丁寧に頭を下げると、詳細について語り始めた。
ダモクレスが現れるのは、新潟市にある海に近い住宅地の端で、すぐ近くに防風林がある。
到着時間は午後5時前ごろだが、日没後であり、夜になっている。但し街灯は整備されているため、ベット照明を用意しなくとも、視界は充分に確保出来る。
「ダモクレスが発生した家は幸いなことに留守のようだ。だからこの家の敷地内で戦闘を完結させれば、周囲への被害は全く出ないと思う」
ダモクレスが発生した時点で家は壊れる。到着時点ですでに壊れているのだから、細かいことを気にせずに戦うことが出来る。但し、住宅地に位置していることは頭の隅に入れておいたほうがが良いかもしれない。
「ダモクレスは1体のみ。味方する配下はいない。見た目は人型女性。ゴシックパンク風のミュージシャンみたいな感じだね。元がWラジカセだからなのか、音に関する攻撃を仕掛けて来る」
耽美的かつ強そうに見えるダモクレスだが、最近のケルベロスの戦闘力には目を見張るものがあり、そうそう遅れをとることはないはず。
「実はこの家の子どもは35年前、当時中学一年生、下校途中に行方不明になったそうだ。Wラジカセはクリスマスプレゼントに両親が用意していたものだ」
失踪には様々な情報や憶測が飛び交ったが、年老いた両親は娘が生きて帰ってくるとずっと信じている。
「使えずとも大切なラジカセだったのだろう。だから絶対に止めて下さい」
ケンジは丁寧に頭を下げると出発の時間が来た告げた。
参加者 | |
---|---|
ハンナ・カレン(トランスポーター・e16754) |
レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278) |
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598) |
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869) |
ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443) |
ルカ・ラトラス(幼き研究者・e67715) |
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433) |
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437) |
●接敵
ホゲ〜!
重くてゆったりとした嫌な音が暗い風景の中に響き渡ると、ガス爆発でも起ったかのように目的の家の窓が砕け散った。
「ちっ、遅かったか」
事態が急速に動きはじめていると判断した、 ハンナ・カレン(トランスポーター・e16754)は舌打ちをひとつすると、敵がどこから姿を現し、どこに向かうかを見極めたいと思う。
「海側に出てきてくれればラッキーだが、敵はどう動くか?」
窓は南に面したものが一番大きく、東西のものは小さいようだと、2秒ほど遅れて着地した、レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)が告げる。
「人間なら窓から出ようとするだろうが、ダモクレスが壁を気にするか?」
細かく砕けたモルタルや硝子、木材の砕片、宙に舞い上げられた様々な破片が、到着したばかりの一行の周囲にも降ってくる。庭石や道路のアスファルトに当たってカツカツと音を立てる中、レヴィンはゴーグルを掛けて、敵の次の動きに備えて視覚に意識を集中する。
「しかし。人が住んでいる家にダモクレスが現れるなんて珍しいな。使えないとはいえ、大切にされていた物に取り憑くのもレアだな……いやな気分だ……!」
「確かに嫌な気分だ。それに北陸地方では、この手の失踪事件も多いし、事情は複雑そうだぜ」
「随分と派手に壊して、酷な事、してくれるじゃあないか」
さらなる家の損壊が、これからの戦いで避けられないと、塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)は知りつつも、最小限に留めたいと言う。
「身体が治療に耐えられなければ、治療の意味が無いだろう。病気と似ているな、慎重に考えれば難しい」
ボクスドラゴン『シロ』をいつもの位置に待機させ、翔子は家の南側へ動く、ハンナもまた使い慣れた手袋の感触を確かめながら南側へと回った。
「攻線が西、海側に向かってくれれば、具合が良いのだが」
「古い機械でございますしな。どう出てくるつもりでしょう」
ラーヴァ・バケット(地獄入り鎧・e33869)はできる限り、視野を広く取れるよう心がけつつ、半壊した二階部分に注意を払う。敵の大きさは人間とさほど変わらないはず。スケールを考えれば敷地内だけでも不自由無く戦える。
「前もって殺界を形作っておければ万全でしたが、今はしない方が賢明です。住民の皆さんの正しい行動を信じましょう」
「はい、住宅地ですし、不測の事態も考えられます。寝たきりのお年寄りを無理に動かさせるわけにも行きませんし」
死角を作らないように、テレビウム『イエロ』を家の裏に差し向けると、ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)は、スターサンクチュアリを発動する。
殺界形成は下校する学生や道を走る車両など、遠くから近づいて来る者を遠ざけるには効果的だが、既に家の中にいる者を家の外に出してしまう可能性を考えれば別の被害を出してしまうリスクがある。
「壊れている物でも、ご両親にとっては、娘さまへの大切なプレゼント、思い出の品だと思います」
同種の思い出が無いブレアは想像するしかできなかった、軽い気持ちで壊してはいけない気がした。
「確かにご両親が気の毒です。敷地内で終わらせたいですが、極力庭の方で……」
「ヒールで何とかなるだろ。そんなことよりも姿が見えたら、最初の一撃は任せて貰えるか?」
戦いの被害を局限したいと思っている、オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)の言葉に対し、ルカ・ラトラス(幼き研究者・e67715)は旺盛な戦意で応じる。スターゲイザーのもつ足止め効果を付与出来れば、以後の戦いを有利にできる算段であり、被害の軽重よりも敵の撃破を重視している。
「別に、いいじゃないの?」
そんなルカにオルティアは素っ気なく応えながら、近すぎると感じた2人の距離を広げた。
「それなら、そうさせて貰うぜ。しかし、Wラジカセか、あまり聞いたことが無いな。古いタイプの機械なのかな?」
「知りません」
「今はもう時代遅れですが、ラジオを備えたカセットテープというメディアを使用する録音・再生機器だそうです。中でもW(ダブル)ラジカセは、2台のカセットデッキを搭載した製品を指し、テープの内容をコピーできる高級品だったそうです」
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)の解説に、ルカは納得した様子で頷いた。
「わかった。ナウでヤングな機械だったんだな」
「なう、やんぐ? そちらの方がよく分からないです……」
問い返すアルケイアの声に応じようとして、ルカは南に面した二階の窓から屋根に踏み出そうとする人影に気がついた。
●戦い
「ごめん、また後で」
足を踏み込んで、夜空に跳び上がるルカ。足先から流星の如き光の筋が伸びる。
「さてと、この戦いで止まっていた時間を動かせれば良いのだが」
ルカの繰り出す蹴りの向きから敵の動きを見極めようと前方に意識を集中させながら翔子は身を覆うオウガメタルを鋼の鬼と変える。
「まずは、その素早い動きを封じてやるぜ!」
次の瞬間、屋根の上に姿を現したばかりのダモクレスに光の筋を曳いたルカの蹴りが衝突する。
「あーれええええ!!!」
悲鳴と共に盛大に屋根を壊しながらダモクレスの身体が転げ落ちる。
「間の抜けた声でございますな」
しかし空中で一回転して器用に着地するダモクレス。間髪を入れずに繰り出されたオルティアの攻撃を紙一重で避けきった。
「厳しかったでしょうか?」
黒鉄色のフリルが大きく膨れている。磁気テープを連想させる艶のあるリボンやベルトで西洋人形の如き白肌をきつく締め付けた見た目は異様な艶めかしさと退廃的な雰囲気を併せ持っている。
「壊すには惜しい気もしますが、話して分かる相手ではございますまい」
好機を逃さずにラーヴァは巨大な竜砲弾を撃ち放ち、それは、ダモクレスが言葉を返すよりも早く大爆発を起こした。砕け散った窓から爆風が吹き抜け室内はメチャメチャになり、家が傾く。
「私のライブに感動しているわけじゃあ無さそうね!」
ここはライブハウスでも無いし、ケルベロスも観客では無い。それが態勢を整える為の時間稼ぎなのは明らかだから、それに付き合うお人好しはいない。
「少なくともあんたの歌を聴きたい奴はいないんじゃねえの」
つっけんどんに返しつつ、ハンナは突き出した指先から気咬弾を放つ。
「ひっど〜い!」
魔力を孕んだ弾丸が露出した白肌部分に食らいて、耐久力を喰い取った。
「あんたも、ひどいことするんだろ?」
殺し合うのも縁、和解が無いと分かっている相手でも人語を解する相手なら話だけは聞く。たったそれだけのことかも知れないが、どんな敵と戦っているかを知るのは意味があるかも知れない。
「よーし、そのままだ。悪いな! 今月ピンチなんだよ!」
トリッキーな動きで敵の間合いに踏み込んだレヴィンは、握りしめた得物のグリップ振り上げ、槌で打つ要領で強かに殴りつける。瞬間、鉄の塊を打ち付けたような硬い衝撃に腕に激痛が走った。
「なにぃ!? くそったれ、すげえ痛いぜ!」
痛みは身に迫る危険を示す神経の信号だ。ダメージを受けていない自分が痛いと感じるぐらいなのだから、敵はもっと痛いはず。
クラッシャーからの連続痛打、既に致命傷とも言えるダメージを受けたが、ダモクレスは何とか踏みとどまった。だが反撃する余裕は無く大急ぎでヒールを発動、莫大な癒力を孕んだ鋼鉄のフリルの渦を展開して守りを固める。
「なかなかやるようですね。ですが、ケルベロスの諸君、私はそう容易くはありません」
精一杯の強がりであったが、それに気づくケルベロスは居ない。
「覚悟!」
ダモクレスが言い終えるのと前後して、充分な助走で加速した、アルケイアが全力突進してくる。
それを察知した敵が回避行動に移るよりも早く、防護のために展開されたフリルの障壁を弾き飛ばすアルケイア。直後、衝撃に備える敵の両腕に激突して停止する。
「くはっ!」
自身にダメージは無かったが凄まじい激痛にアルケイアの視界が刹那、白黒に明滅する。
「これで、どうですか?」
機を逃さずに、ブレアは前に躍り出ると、目にも止まらぬ高速斬撃を放ち、残されていた防護フリルを完全に破壊して、その加護を消し去った。
「強力な回復力は脅威です。守りに入られると苦しいですが、このまま攻め続ければ、押し切れそうですね」
ローラーダッシュの炎を足に纏ったオルティアの蹴りが、防壁を剥がれたダモクレスを容赦なく打ち据える。
燃え上がる炎、その橙色の光に家の一階部分のおよそ半分が、抉り取られたように破壊されており、二階の重みによってすぐにでも崩壊しそうな様子が照らし出される。
「いつまで持ちこたえてくれるでしょうか?」
崩れずに残ってくれれば、ヒールの修復の影響を受ける部分も少なくなるから気掛かりではあるが、味方を危険にさらしてまで、配慮すべきものではないから、難しい。
「俺の研究の産物……それがこの黒薔薇だ、食らえー!」
ルカの声に合わせて、炎を燃え上がらせるダモクレスの足元から、黒い花を咲かせる薔薇の蔦が巻き上がる。
それは少女の如き繊細なダモクレスの足元から腰に巻き付いて強かに締め上げる。
「くっ、このような辱め——ただで済むとは思うなよ!」
「そうか、悪かったな……じゃあな」
ハンナは軸足を踏み込むと、屈辱に表情を歪めるダモクレスを目がけて、鋭く美しい回し蹴りを打ち込んだ。
瞬間、足の骨が砕けるような激痛が襲い来る。
「硬すぎだろ」
傷を癒しても倒されるまでの時間が少し延びるだけと察したダモクレスは決死の攻勢に転じる。
激しい歌声と共に指先から噴き出る鋼の茨が瞬く間に地を覆い、鋼の薔薇の花を咲かせる。
「ダメージはさほどじゃないが、これは厄介だね——」
直後に翔子は、自身を含めた前衛に癒しの雨を降らせるが、重ねられた催眠の効果を全て消し去るには至らない。酒に酔った時のような脳膜の痺れと、足元のふわつくような感覚が残っている。
「壊れたラジカセにしては上出来でございますね。ですが、それが最期の仕事です。残念だよねえ」
無謀な攻撃に出た敵に引導を下そうと、ラーヴァは眼光を鋭くし、地獄の炎を燃え上がらせる。
「我が名は熱源。余所見をしてはなりませんよ」
ラーヴァの声が響くと同時、ダモクレスが作り出した、放射状に広がる鉄の薔薇園の上空が橙色に輝き始める。それは地獄の炎を纏った数え切れない程の得物、瀑布となってダモクレスを叩き潰した。
身体を打たれるじんじんとしたそして炎に焼かれる激痛。廃棄物を変質させた身体から小さな宝石の如き魂が離れようとして、瞬間、呆気なく砕け散った。
死の瞬間、身体から伝えられる苦痛を、魂が遮断することが出来たかどうかは分からない。
炎が燃え尽きた後には、それがダモクレスだったかも分からない燃え屑しかなかった。
●戦い終わって
「あと少し持てば良かったのだが、結局、壊れてしまったか」
「脆いものでございますしな。しかし被害を敷地内に局限出来たのは僥倖でございましょう」
ヒールを掛けて、だいたい元に戻ったな、胸を張るルカに、ラーヴァが抑揚の少ない口調で応じる。
「無くなっている物はありませんか? ごめんなさい。私なりに精一杯やったつもりですが……」
「とんでもありません。頭を下げないで下さい。悪いのはデウスエクスです。それにこんなに良くして頂いているのですから」
申し訳なさそうに告げるアルケイアに年老いた夫妻は、とても恐縮した様子だった。
「間取り言われた通りになっているでございますか?」
「ええ、はい、お陰様で元通りです。ヒールとはまったくたまげたものだねえ」
こと細かに確認をしてくれるラーヴァに、今年76才になると言うおばあさんが何度も頭を下げる。
「探してはみたのだが、お嬢さんのラジカセだけは、残骸も出てこなくてねえ」
「春佳(娘の名前)のラジカセだけが、どうしてこんなことになったのでしょう?」
「なう、で、やんぐ、だったからから?」
戦いの前に耳にした言葉を繰り返してみるアルケイア。
「ナウなヤングにバカウケ、流行りました。懐かしいです」
おばあさんの返しに、何となく言葉の意味が分かったような気がした。
「やれやれ、随分と冷え込む町だ」
防風林があるとは言え、日本海から吹き付けてくる風は冷たい。
ハンナはコートの襟を立てると、電気の灯った家に背を向けて、ひとりぽつんと星の見えない夜空を見上げているブレアの横に立った。
「こんな理不尽が許されていいはずがありません。わけが分かりません」
失踪した娘について手助けできることはないかと考えたブレアは人間の様々な面を知ることになった。
「そうだな、度しがたい連中のことは分からん」
冬になると、この地方の海岸には、難破した外国の木造船がよく漂着する。
誰も寄りつかない筈の時間、海岸に不審な人影が目撃されることもあり、この種の事件への関与が強く疑われている。
「35年、本当に長いな。春佳さんとの再会、アタシも願うよ」
翔子は、15年ほど前に出た家のこと、放浪のきっかけとなった事件のこと、遺体すら見つけられなかった愛娘のことを思い出した。頭の中に最後に目にした娘の姿が映像となって、少しの間、頭の中を巡った。
「——心からさ」
翔子とオルティアとアルケイア、レヴィン、4人がかりで、ダモクレスを倒した辺りの燃え屑を入念に調べ、飛び散らされた参考書や教科書も拾い集めた。
しかし事件の発端となったラジカセや、今回のダモクレスに関連する物は見つけられなかった。
「ここまで丁寧に対応いただいて、本当に感謝いたします。ありがとうございます」
修復された二階の子ども部屋に案内された、老夫妻が深々と頭を下げる。
できるだけ詳しく話を聞き、幻想化を防ぐために元の状態のイメージを想像した。その結果、知らない者が見れば全くの元通りに見えるほどに修復されていた。
「オレも味方だ。娘さんが帰って来ることを信じてる、出来ることは全力で協力させて貰おう」
おじいさん、次いでおばあさんの手を、レヴィンは両手で丁寧に握りしめると、確りと顔をみて言った。
口には出さないが、レヴィンも姿を消した父親のことが、この10年の間ずっと気掛かりだった。
(「35年か……オレもこんな風に年を取って行くのか?」)
次の夏には29才になる。
その翌年は30代に入る。大事にしているレトロゲーム機のソフトも次第に手に入りにくくなっている。
「寿命がある中での、35年……」
人間の寿命は100年が限界。
夫妻の年齢を考えれば残された時間は長くないと、オルティアは気がづいた。
「……悲しいような、苦しいような……心がズキズキ痛む気が、するです」
出来ることがあるなら、すぐにやらないと間に合わない。
作者:ほむらもやし |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2020年1月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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