MAKIWARI☆LIFE

作者:星垣えん

●E
 パコン、パカン、乾いた音が鳴り響く。
 すっかり木々も禿げきった冬山。
 中腹に休憩所として設えられていたログハウスの前に、数名の男たちの姿があった。
「腕だけで振るな! 全身を使って斧を振り下ろすんだ!」
「わかりましたぁぁ!!」
 指示を出すリーダーもとい変な鳥さんに、斧を持った男たちが一斉に返事をする。冬だというのに彼らは汗だくだ。暑さのあまり防寒着を脱ぎ、Tシャツ1枚になっている。
 ひとしきりタオルで汗を拭うと、男たちは目の前の切り株に向き直った。
 作業台となったそこに縦置きされているのは、薪である。
「どっせぇぇぇい!!」
 斧を振り下ろす信者たち。ある者は綺麗に薪を割り、ある者は斧がそれて半端に割ってしまい、ある者は薪すら外して切り株にずごんと刃を突っこませてしまう。
 うん、紛うことなき薪割りですね。
 薪割りしてますわ、この連中。
「いいか! 薪割りは鍛錬にもってこいだ! 重い斧を振り上げるのがなんかこう……肩とか背中に効いて、筋肉がつく! おまけに暖を取る薪もゲットできるし……何よりパカンパカン割るのが気持ちE!!」
「イエス! 気持ちE!」
 なんか気持ち悪い掛け声を発する鳥さんと男たち。
 薪割りは気持ちE。
 そのたったひとつの教えの下に、鳥さんは10人も信者を冬山に集めてしまったようです。

●Eじゃなくてね
「今度は冬の山で薪割り生活……です?」
「薪割り生活したいみたいっす」
 段ボールを被ってヘリポートの風を凌いでいるマロン・ビネガー(六花流転・e17169)が、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)からの予知報告に首を傾げる。
 冬の山に入り、ひたすら薪を割りつづける。
 必要最小限の食事を摂り、休憩を取り、ただただ斧を振り下ろす。
 そんな時間を鳥と信者たちは過ごしているという。
「ストイックなのですー」
「いやーまぁストイックと言えばそうっすけどね……」
 どう言っていいやら、と言葉尻を濁すダンテ。
「で、とりあえず皆さんにはこの薪割りビルシャナを処してきてほしいっすよ。放っておいて薪割りブームが訪れたら大変っすからね」
 ダンテの頼みに猟犬たちは頷いて諾意を示した。
 処せばいいんすね、的な軽いノリで。
「信者たちは薪をパカパカ割る感覚にハマってるみたいっすから、別の感覚にハマらせてやれば正気に戻ってくれると思うっす。例えばプチプチとかそんなんっすね。薪割りって結構疲れるっすから、疲れないやつだとベストっすかねー」
「もう汗水流して働く時代じゃないのですー」
 ダンテの隣ですくっと立ち上がる段ボール。さっきからずっと顔が見えない。段ボールを被って生活できる時代も来ないぞと言ってあげたい猟犬たちだったが、うろうろする段ボールに話しかけるのもアレなのでとりあえず放っておいた。
「さ、それじゃ山に出発っすよ。にしても今日は寒いっすねー……」
 ヘリオンへ皆を連れていきながら、風の冷たさにぶるっと震えるダンテ。
 かくして、猟犬たちは薪が乱れ舞う冬山へと向かうことになるのだった。


参加者
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
エレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)
秦野・清嗣(白金之翼・e41590)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)
ローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)
ケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)

■リプレイ

●斧よりいい武器がある
「薪割りはねぇ、もともとは生活の一部よ? 薪で火を焚いてた頃には当たり前ね?」
『いや急に誰ですか!?』
 信者たちの盛大なユニゾンツッコミ。
 何にツッコんだかとゆーと、ログハウスに現れるなり場に馴染んで薪割りしとる秦野・清嗣(白金之翼・e41590)である。
 しれっと信者らの隣に作業台を置いてパカンパカンと割ってらっしゃる清嗣さんである。
「要はいかに無駄な力使わないか、なんだよね。体の芯がぶれなきゃ軽々よ?」
「だからどこのどなたかって――」
「ほらこれ持てる?」
「あっぶねっ!?」
 清嗣が斧を放り投げると、信者が慌てて回避。
 重い斧が『ズンッ!』とシャレにならない音で土にめり込んだ。
「あ~君ら……全然だめだね。こんなんじゃ薪を割る前に体壊すって」
「いや刃物投げるんじゃねえよ!」
「危うく逝ってるよ! 受け取ったら手首とか逝ってる重量だよコレ!」
 猛火のごとき抗議が、清嗣に殺到する。
 やれ殺す気か、やれバトル漫画でのみ許されるめり込み方だとか、嵐のようなツッコミ。
「……」
 清嗣は頭に乗っけた響銅(ボクスドラゴン)とともに、目を瞑ってしーんと黙るという老獪な手口ですべてを受け流した。
「こいつ目の前で無視を決め込んでやがる……」
「なんてメンタルだ……」
「まあまあ。そう怒らずに。落ち着いて落ち着いて」
 彫像のようにストップしてる清嗣に半ば感心する信者たちへ、歩み寄ったのは小柳・玲央(剣扇・e26293)。
 彼女は信者らの背後に回ると、その手で彼らの腰や肩を弄った。
「うええっ!?」
「腰とか肩とか大丈夫? 急に動かして無茶していない?」
 タッチに狼狽える男たちの顔を、玲央は心配そうに見上げる。ほぼ演技だがその上目遣いをくらって信者たちは清嗣への抗議も忘れて黙り込んだ。
「事前にしっかり体を解さないと……後がつらいよ? うまく薪が割れれば確かにすっきりするけれど、それだけ身体に負担をかけてるからね?」
「は、はぁ……」
「玲央様の仰るとおりですわ」
 優しく男らを諭す玲央を援護するように顔を出すのは、彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)だ。
「薪割りは大変な仕事です。清嗣様のように鍛えているのでしたら問題ありませんが、筋力のない状態では怪我に繋がるかもしれません」
「そうだよ。こんなふうに鍛えてればいいけどね」
「そ、そう言われるとなあ……」
 こんこんと説明する紫の前には、もう信者たちが横一列に正座している。まったくもっての正論に膝を畳むしかなかったのだ。ちなみに紫の背後にいるタンクトップ姿の清嗣は見ないようにした。
 ひとつ咳ばらいをして、話を続ける紫。
「もちろん斧で薪割りするのも豪快で素敵だと思います。けど、斧だと薪を一定の大きさにするのも難しいですよね?」
「そうですね……」
「そこで私がお勧めするのは、ずばりチェーンソーです!」
「ええええええ!?」
 どぅるるん、とチェーンソー剣を唸らせた紫さんに全信者が目ん玉をひん剥いた。
 唐突に男臭い電動工具である。無理もないよ。
「チェーンソーならそれほど力も要らないですし、綺麗に薪が切れて気持ちいいですよ」
「それはそうでしょうけど!」
「話の方向とかズレてない!?」
「何を言ってますの……?」
「純粋な目をしてる!」
「だめだ! 常識人かと思ったけどそうでもない枠だよこの人!」
 わーわーと喚きたてる男たちの前で、きっちり45度首を傾ける紫さん。
 チェーンソーも乙女の嗜みですわ――とか言ってブインブインと木を切りまくるふんわり女子を想像して、男たちは得も言われぬ顔をしましたよ。
「だいたいね、薪割りとか中途半端なんですよ!」
「なっ、中途半端!?」
 がばっと顔を上げた信者たちが見たものは、馬の下半身で仁王立ちするケイト・クゥエル(セントールの鎧装騎兵・e85480)だった。
 大好きなドラゴニックハンマーを天に掲げた少女は――。
「薪を割る快感なんて、ハンマーで粉砕するエクスタシーには敵わんのですよふひひひ……はっ!?」
 涎を垂らさんばかりに陶然としていた。
 もちろん男たちはドン引きした。2mは後退した。
「もはや変態のオーラやないか……」
「可哀想に……」
「い、いやいやでもでも、割るなんて刃物なのか鈍器なのか……どっちつかずじゃないですか! 割るならいっそ粉砕しないと! 原型を留めないくらいに!」
「少しは留めろァァ!!」
 取り繕うケイトに、渾身のツッコミを繰り出す信者。
 原型は留めてほしい。そう思うのは何も間違ったことではありません。
「せめて木片にしなさいよ! 焚火とかに使えないでしょうが!」
「え。でも粉砕することで爽快感が味わえますし、灰燼と化した木なら薪よりも火の着きがいいですよ」
「よすぎるでしょうが! 木屑だったらすぐ燃え尽きるでしょうが!」
「ならどんどん粉砕して火にくべればいいじゃないですか! また爽快感を味わえてまさに永久機関の完成でしょうが!!」
「永久に薪を割りつづける人生の間違いでしょうがァァァ!!!!」
 超ヒートアップしてしまう信者とケイト。
 そこはかとなく北国を思わせる台詞の応酬は1分ほど続いたが、やがて両者とも疲れると、ぜぇぜぇとした息遣いが寒々しい空間に響いた。
 で、落ち着いたのだろう。
「でもハンマーはともかくチェーンソーは確かに楽だな……」
「あぁ。そんな疲れなさそうだし……」
 文明的な機器に引かれだす信者たち。ツッコミ疲れしたからかもしれん。
 が、もちろん鳥さんは黙ってはいない。
「何を言うんだ。チェーンソーのどこがいい! 斧で薪を割る感覚を味わいたくないのか!」
 憤慨し、ずんずんと足音荒く近づく鳥。
 けれど彼が信者に説得する前に、玲央がすすっと途上に立ち塞がった。
 大きな斧を、引きずって。
「この斧はどう持てばいいのかな? よければ教えてくれない? うまく無駄な力を抜く方法とか、コツが知りたいんだ」
「ほうほう殊勝な心掛けだ! いいとも。まずは握り方から……」
「あ、ここは人が多くて危ないから向こうでいい?」
「オッケー牧場!」
 生徒と化した玲央に手羽を引かれた鳥が、まんまと信者らから引き離されました。

●薪よりいいものがある
 うるさい鳥さんの消えたログハウス前は平和だった。何人かの信者はチェーンソーの試し切りとか始めているぐらいだ。
 しかし信者が皆、改心したわけではない。
「不便かもしれないけど、やっぱり斧なんだよなあ」
「それな」
 上段から下へ、素振りを繰り返す信者たち。
 だがそこへ、カツッ、と蹄の音が鳴る。
「いけませんよ、ただ割るだけでは下半身の負荷が足りません」
 ローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)が信者たちの前に立ち、彼らの貧相な下半身を指差す。
「か、下半身の負荷ですか……?」
「ええ。脚部がみすぼらしくなります」
「膝カックンとかされたら一撃っぽいのですー」
 ローゼスと一緒になって、不安げに信者を見つめるマロン・ビネガー(六花流転・e17169)。心配になった信者たちは自らの細い脚をぐしぐしと掴んでみたが、確かに一撃っぽい。
「そしてそれよりも主に腰に来ます。腰です。私には縁がありませんが、ぎっくり腰というのはそれはもう辛いとか」
 人と馬のつなぎ目になっている境界線を、撫でて示すローゼス。腰をやったつらさは想像で補うしかないが、かなりきついという情報だけはとりあえず調べてきました。
 信者の1人が腰の背部をさする。
「確かに腰をやっちまうのは嫌だな……」
「なので今回おすすめするのはこちら。ダンスゲーム、というものだそうで」
 ぺろん、とローゼスが地面に大きなシートを敷く。
 しっかり均されて伸ばされた上面には、前後左右に矢印が記されており、それは明らかにゲーセンやらで一世を風靡したアレっぽかった。
 ゲーム機とテレビをセットしながら、ローゼスは男たちに柔らかく笑んだ。
「全身を動かして踊り、そのスコアを競う遊戯です。全身の躍動感が得られる上に達成感を得られますよ。どうです、皆様いかがでしょう?」
「これって玄人しか全身動かせないんじゃ……」
「だいたいはわたわた脚を動かすだけになるのでは……」
「流行は20年前ですって。おお古い古い」
 信者の声も聞かず、ゲームソフトのパッケージを読みこむローゼス。20年前の地球の、二本の流行など知りもしないだろうに、なんか懐かしがっている。
「聞いてねえ……」
「薪割りだけの、生活……正直良く分からない」
「ん?」
 懐古の旅に出てしまったローゼスに呆れていた信者たちが、ふいにかけられた細い声にくるっと振り向く。
 またもセントール――オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)が立っていた。
 10mぐらいの距離に。
「遠いな!」
「この距離なんなの!? 俺が臭いとかじゃないよね!?」
「それはたぶん……大丈夫」
「よかった……」
 胸をなでおろす信者だが、オルティアの表情は緩まない。
 ガッッッッッチでスキンシップが苦手なセントールが、他人を前にしてリラックスできるわけがありませんでした。
「……休息にはもっときちんと、目を向けるべき。そこをなおざりにするのは、ダメ」
「休息?」
「そう、つまりは、こういうグッズを……」
 小首を傾げる信者の前で、オルティアはもっふりしたぬいぐるみたちを取り出した。
 実はそれは抱き枕。
 オルティアは少し信者と距離を詰め、ローゼスが敷きっぱなしにしていたダンスコントローラーに抱き枕を置くと、また元の距離にささっと戻る。
「これ、私が普段使ってるのと、同じもの……の、予備の子たち。かわいいから、本当は人に渡したくなかった……特別に、あげるから……大切に扱って……絶対に大切に、扱って……」
「ガチで嫌そうだな……」
「そこまでしてくれなくても……」
「いい、いいから……こうすると、ほら」
 苦渋に顔を強張らせながら、手元に残した抱き枕をむぎゅっとするオルティア。
「ふわふわで、ぬくい……かわいい。疲れがほぐされていくよう、でしょう?」
「どれどれ……」
「ふむ、これはこれは」
 抱き枕を拾い上げた信者たちが、むっぎゅむっぎゅと愛でる。包みこまれる感覚に彼らの表情も、溶けたようにだらしなく伸びてゆく。
 そこへ、とてとてと歩いてきたのはマロン。
「運動しなくても気持ちいいことはあるのです」
「そ、そんな都合のいいことが!?」
 信者たちがぐっと身を乗り出した。
 薪割りの快感に匹敵する何かがあれば、彼らも試さないではなかった。
「たとえば厚手のカーテンや毛布、セーターの毛玉取りはどうでしょう? 道具要らずで暖かい室内で出来る、集中できる上に綺麗になると良い事だらけです!」
「毛玉取り……」
「少し地味すぎないか?」
「なら他にはカメラですかね」
 すっ、とどこからともなくカメラを取り出すマロン。
 そのまま渋い趣味(?)を持つ小娘は、信者たちの顔をあらゆる角度から撮りまくる。
「撮影ボタンを押しこむ感覚、響くシャッター音が気持ち良い筈です!」
「むう、カメラか……」
「ハマる人が一定数いるよねー」
「良いカメラ機材を買いたくなれば働く目的が出来て平日も充実! 作品展等で交流も増えますし、絶景を探す楽しみも有りますよ!」
 マロンの猛アプローチに、かぶりを振る者はいない。
 これはもうだいぶ、彼らも我に返っているのでは――そう察したエレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)は、空へ手を突き上げた。
「とっぴー! 例の物を!」
 こすった中指と親指が『すっ』と静かな擦過音を放つ。
 本人のイメージでは爽快に『パチッ!』と鳴ってるので、皆様もそのイメージをもって今一度、シーンを見返してあげて下さい。
 とかやってるうちに、呼ばれたトピアリウス(テレビウム)がやってくる。
 大きな臼と杵を、頭に乗っけて。
「それ、もしかしなくても餅つきじゃ……」
「パオ!」
 正解、とばかりに信者をぴしっと指差すエレコ。
「薪をぱかんぱかん割るのもいい感じの音がしてきもちいーパオけど、この時期はやっぱりお正月に向けておもちをつく音もいいと思うのパオ! クリスマス前からおもちってなんかぜいたくパオよね!」
「贅沢ですかね!?」
「クリスマスに向けて動けばいいと思うけど!?」
「それじゃあとっぴー! よろしくなのパオ!」
「あーこの子も聞く気がない!」
「俺たちに目もくれず餅つきのスタンバイをー!」
 信者の説明くさい台詞をバックに、エレコはいそいそと臼にもち米(いい感じにトピアリウスが炊いた)を投入。
 鉞を担ぐみてーに杵を担いでるトピアリウスと視線を交わすなり、そのまま軽快な餅つきを開始した。
「はい、ぺったん、ぱお」
「はい、ぺったん、ぱお」
 トピアリウスがぺたぺたと杵を振り、エレコがぱおぱおとひっくり返す。
 和むしかない餅つき風景だった。
「なんか……見守りたくなるな」
「ああ、そうだな……」
「パオ! いい感じにいい感じなのパオ!」
 信者たちがほんわかしてる間に餅を完成させたエレコ&トピアリウス。
 それをちぎって紙皿に取り分けると、2人はその場を走り回って、仲間と信者たち1人ひとりにつきたての餅を振る舞った。
「はい、みんなどうぞなのパオ! お醤油もきなこもあるパオよ!」
「んぐ……これは美味い!」
「きなこ! きなこ食いたいな!」
「ひ、1人ずつ順番なのパオー!?」
 もっちり餅に舌鼓を打った信者たちが、幼き餅つき師たちに殺到する。
 その獣のような目に映るは餅ばかり。
「……これは!?」
 玲央とのマンツーマン授業を終えた鳥さんが戻ってきたときには、誰も斧なんて持っちゃいなかったんですよ。

●ほぼアフタートーク
 はっきり言おう。
 鳥がピンチ。
「薪って乾燥させるんだろう?」
「羽毛はふわっふわが一番なのです。鳥さんは寒さに強そうですし、その羽毛もいらないですよね!」
「ひいいぃぃ!?」
 目の前のものを上質な資材ぐらいにしか思っていない、玲央とマロンのひんやり視線が、尻もちついた鳥さんを見下ろしていた。
 燃える鉄塊剣を握る玲央、シュッシュッと毛抜きのシャドーをするマロンから、鳥は背を向けて逃げようとする。
 だがその行く手に立ち塞がる、チェーンソー女子もとい紫。
「あっ……」
「えいっ」
「アァーーッ!?」
 ぶいぃぃぃぃ、と唸る鋸刃がざくざくと鳥さんを削る。
 羽毛がちらちらと舞うさまは、まさに丸太か何かを切断してるようにも見えて――。
「映えるのですー」
「羽根も使えそうだし、ちゃんと回収しておこう」
「どうでしょう、チェーンソーはこんな風に武器にもなりますし、素敵ですわよ」
「タスケテーー!!」
 笑顔の紫から逃げようともがき、叫ぶ鳥さんだが、悲しいかな冬山。
 助けてくれる者なき山中にて、薪割りおじさんはひっそりと逝ったのだった。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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