棄てられた玩具の復讐?

作者:なちゅい


 クリスマスが近づき、町はイルミネーションに彩られる。
 少し離れ、住宅地に行っても、民家で所々飾りつけを行って華やかになっている場所もちらほら。
 きっと、クリスマス当日、各家庭ではローストチキンやフライドチキンなど、定番ながらもボリュームのある食べ物や、美味しいケーキや、ブッシュ・ド・ノエルといったスイーツがテーブルに並ぶのだろう。
 そして、その脇ではプレゼント交換。子供達はサンタクロースから何を貰うのだろうか。
 子供達の求める玩具は最近では多様になっており、玩具店でもこの時期は様々な商品が並ぶ。きっと、サンタクロースは子供の求める物を探して、街の玩具店をあちこち歩き回っているのだろう。

 その一方で、住宅地のゴミ捨て場には、壊れて捨てられてしまった玩具の山が。
 夕暮れ時、愛知県某所の住宅地にもそうした場所があった。
 おそらく、明日の不燃物回収で業者が引き取っていくのだろうが……、そうはさせぬと小さな物体が近づいていく。
 それは、蜘蛛のような機械の足が生えた握りこぶし程の大きさのコギトエルゴスム。
 そいつは上半身だけになったロボット玩具へと入っていき、周囲の玩具を取り込むようにして機械的なヒールをその身に施す。
「グアオオオォォォォ!!」
 ロボットは全長3m程度にまで巨大化する。下半身の修復ができなかったのか、同じゴミ捨て場にあった電動乗用カーで代用していた。
 そして、武装として巨大な剣とキャノン砲を備えるのだが、なぜかサブ武器に持っているのは魔法少女を思わせるステッキ。
「グアオオオオオオ!!」
 完全にジャンクといった見た目となったそいつは、そのままの身体でグラビティ・チェインを得るべく暴れ始めるのだった。


 ヘリポートに集まるケルベロス達は、クリスマスが近づいてきていたこともあり、どんな衣装でパーティーに参加しようと語り合う。
 そんな中で、ヘリオンから降りてきたリーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)が依頼説明をしようとすると、鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)がこんな話を持ち掛ける。
「クリスマスを前に棄てられた玩具がダモクレスとなる……なんてな」
 その話を元に、リーゼリットがヘリオンで予知を行うと……。
「捉えたよ。ダモクレスの動きを」
 現場は、愛知県某所の住宅地。
 とあるごみ集積場で回収を待っていた不燃ごみに交じり、かなりの量の玩具が廃棄されていた。
 ダモクレスはそれを狙い、自らの体にしようとしたようだが、ヒールがうまくできなかったのか半ばジャンクを思わせるような姿となってしまったようだ。
 それでも、グラビティをしっかりと発して破壊活動を行う為、油断ならない相手だ。
「被害が拡大する前に何とかしたいところだね」

 ダモクレスとなった玩具は上半身は人型のロボット、下半身は電動乗用カーとなっている。
 それらは一体化し、全長3m程度にまで巨大化しているようだ。
 武器は巨大な剣とキャノン砲、そして、女児向けアニメのステッキを持っており、スナイパーとしてそれらの武器を使って攻撃してくる。
「時刻は夕方、ダモクレス出現後、警察隊がすでに厳戒態勢を敷いて、現場周辺は避難勧告を出しているわ」
 人的避難は進んでいる状況なので、直接ダモクレスの抑え、討伐に当たると良いだろう。

 ダモクレスを討伐し、戦場となった住宅地へとヒールが済んだ後は解散して自由行動で問題はない。
 そこで、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が口を開く。
「先程、クリスマスの話があったな。ついでに街に出て何か買っていくのもいいのではないだろうか」
 誰かのプレゼントに。自分へのご褒美に。
 折角だから、何か買おうかと思案するメンバーもちらほら。
 リーゼリットは活気づくメンバー達の姿に小さく笑って。
「素敵なクリスマスを過ごせるといいね」
 そう話しながらも、彼女は自らのヘリオンへとメンバーを招き入れていくのだった。


参加者
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)
戯・久遠(紫唐揚羽師団の胡散臭い白衣・e02253)
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)
市松・重臣(爺児・e03058)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
タキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)
フェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)
エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)

■リプレイ


 ケルベロス達が降り立ったのは、愛知県某所。
 すでに、空が明らむ住宅地だが、家屋に明かりが灯る様子はない。すでに避難誘導が進んでいるのだろう。

 程なく、メンバー達はすぐ道を歩くダモクレスを発見する。
 上半身は人型ロボット、下半身は電動乗用カーとなったダモクレス。
 その肩には大きなキャノン砲が付いており、手には巨大な剣となぜか女児アニメの主人公が持つようなステッキが握られている。
 そいつ目がけ、天使の翼を羽ばたかせた誠実そうな顔のオラトリオの少年、源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)が砲弾を発射した。
 ダモクレスは機械音を立てて前方へと走り抜け、砲弾を避けてみせたが、命中できずとも牽制出来れば十分と瑠璃はそいつの目の前へと降り立ってくる。
「こうして捨てられちゃう可哀想なおもちゃもあるんだね」
 不要玩具を回収する業者の存在を瑠璃は思い出すが、普及に至っていないからこそ、こうしてダモクレスに利用されてしまっているのだろう。
「合体や変形は浪漫というが、これは何とも――愉快だのう!」
 髭を生やした翁といった見た目の脳筋ドラゴニアン、市松・重臣(爺児・e03058)が目の前の相手へと豪快に笑う。
 だが、玩具だったジャンクは現状、街を襲う侵略者だと彼は認識を改めて。
「否、笑うてはおれぬな!」
 豪放磊落で破天荒な重臣は笑みを浮かべたまま、眼光鋭くダモクレスを見据える。
「そうかぁ、まるで悲しみの寄せ集め……なんて言うと思ったかゴミ野郎!」
 ボーイッシュなシスター、フェルディス・プローレット(すっとこどっこいシスター・e39720)が眼前のダモクレスへと叫びかける。
「ゴミはゴミらしく、大人しく潰れて腐ってればいいんだよ、バーカ!」
「…………」
 そんなフェルディスの煽りが理解できたのかはわからないが、ケルベロス達を攻撃対象として認識したようである。
「玩具を捨てるのは感心できませんが、人に危害が加わるなら放ってはおけませんね」
 白衣を羽織ったタキオン・リンデンバウム(知識の探究者・e18641)は眼鏡を吊り上げ、ダモクレスと間合いをはかる。
「捨てられたってのは同情するが、暴れさせる訳にはいかないしな」
 こちらも白衣を着用した胡散臭いオーラを漂わせる戯・久遠(紫唐揚羽師団の胡散臭い白衣・e02253)は、敵を前に準備運動をしていて。
「クリスマスを守るのも、ケルベロスの仕事の内ってな」
「見た目がなんだか痛々しいけど、子供の夢が人々を傷つける前に止めて上げなきゃ」
 久遠が戦闘態勢を整えると、瑠璃も改めて構えを取る。
「楽しいクリスマスのひと時を邪魔なんてさせない……」
 色白な金髪少女、エリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)はおまじないの護符を手にしつつ仲間達の後方へとついていた。
「ヒールで街は直るとはいえ、できれば大きく変わらないようにしたいな」
 へらへらと笑いを浮かべる軟派な態度の鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)だが、耽々と相手に痛打を与える隙を窺う。
「頼りにしてるな」
「ああ、任せてもらおう」
 また、その雅貴の依頼を受けた同い年の雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)がメンバー後方に陣取り、回復役となることを選択して支援に当たるようだ。
「グアオオオォォォォ!!」
「ダブルディフェンダーの防御力を見せたげるの!」
 大声を上げるダモクレスの前へと、グラマラスな体を薄手の布で覆うミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)が自身のライドキャリバーと並び立ち、その侵攻を食い止めに当たるのである。


「グアオオオォォォォ!!」
 夕闇の中、不気味な程に静まり返る住宅街に、ダモクレスの叫び声がこだまする。
 そいつは右腕に握った巨大な剣を真横へと薙ぎ払ってくる。
 前衛多めに布陣したケルベロス達はその一撃に叩きつけられてしまうが、瑠璃がすぐに反撃を繰り出す。
「やはり、攻撃力は高いようだね」
 婚約者を守ることができるよう邁進する瑠璃は今回の相手も討伐をと意気込む。
 見た目から硬そうな相手と認識し、瑠璃はその身に纏う白銀のオーラ『月白』を弾丸として発射した。
 オラトリオである彼の一撃は、物質の時間を凍らせてしまう。
「敵に、自らの異常を治す手段がないなら……」
 敵胸部から腹部の装甲が凍り付いたのを見たタキオン。
 後方にいたタキオンは相手目がけて駆け出し、トップスピードにまで加速してから高く跳び上がって。
「この飛び蹴りを、見切れますか?」
 履いていた『サイレント・メタルシューズ』で、タキオンは重力を宿した蹴りを叩き込んでいった。
 多少煽られはしたが、ダモクレスはビクともしない。
 ジャンクのような見た目でも、耐久力はさすがデウスエクスというべきか。
 ともあれ、敵を弱らせようと、フェルディスは対デウスエクス用の武器として持たぬはずのショットガンをどこからか取り出して。
「おい、おまえ! ボクの名を言ってみろォ!」
「グアオオオオオオ!!」
 高圧的に自分の名前を問い掛けるフェルディスだが、敵はただ叫ぶことしかできぬ相手。
 そんな敵目掛け、彼女は問答無用で銃口から火を吹かせて弾丸を浴びせかけていく。
 余談だが、フェルディスという名前は偽名らしく、本人も本名を忘れており、正答が分からない状況だったりする。
 相手のグラビティ情報は、事前情報として把握しているケルベロス一行。
 タキオンはそこで、支援に当たる仲間へと一言。
「ここまで、ダモクレスのブレイクは届きません。エンチャントで強化していきましょう」
「支援するよ。頑張ろう」
 チームの回復役となるエリザベスはタキオンの呼びかけに応じ、カラフルな爆発を起こして後衛メンバーの士気を高める。
 エリザベスのブレイブマインによって力の高まりを感じながら、同じく回復役となるリュエンはバイオレンスギターをかき鳴らす。
「走れ! 振り返らずに 脇目も振らず逃げ続けろ」
 リュエンは「紅瞳覚醒」を全力で歌い聞かせ、前線メンバー達を奮起させていく。
 その支援を受け、ミステリスは自らの腕に巻きつけていた攻性植物から光る果実を収穫し、自分を含めた前衛陣へとその煌めく光で照らしていく。
 ミステリスのライドキャリバー、乗馬マスィーン一九はメンバーの盾となりながらも、ガトリング砲を掃射して相手を牽制していたようだ。
「ちと出遅れたが、まずは守りだ。手堅く行くぜ」
 戦いとなり、金色のオーラを纏っていた久遠もライトニングロッドを振るって自分達の手前へと雷の壁を張り巡らし、次なるダモクレスの攻撃に備える。
「カバーと回復は任せろ。攻撃に専念するんだ」
 身構えたままで久遠は仲間達へと告げ、さらに中後衛のメンバーにも雷の壁を展開へと動いていた。
「ならば、わしらは一気に攻めるとするかのう!」
 重臣は呵々と笑い、オルトロス八雲が口にくわえた神器の剣で相手の装甲に傷をつけた直後、両手に握った如意棒をヌンチャク状にして相手の両腕をメインに叩きつけていく。
 さらに、眈々と隙を狙っていた雅貴が追撃する。
「さァ、遊んできな」
 雅貴が召喚した烏の影は無秩序に暴れ群がり、ダモクレスの視界を覆う。
 その中で、雅貴は刃を一閃させて敵へと確実な一撃を見舞っていった。
「グオオオオオオッ!!」
「大人しくしてろよ、すぐ眠らせてやるからな」
 目の前の玩具達へとそう呼びかけ、雅貴はさらなる一撃をと夕陽を浴びた刃を煌めかせるのである。


 避難は完了しているはずだが、ケルベロス達はこの場にいつ一般人が現れてもいいよう注意を払い、玩具ダモクレスの討伐を続ける。
「グアオオオオオオオオオ!!」
 ダモクレスは下半身として機能する電動乗用カーを走らせてきた。
 その一撃をミステリスのライドキャリバーが庇った隙を突き、前衛メンバーが攻撃を畳みかける。
 瑠璃が妖精靴『天鳳「藍」』でオーラの一撃を叩きつけ、エクスカリバールで殴り掛かった重臣が敵の装甲を破り、その傷痕を雅貴が空の霊力を帯びた日本刀で切り広げていく。
「グアオオオオオオオオオ!!」
 叫ぶダモクレス目がけ、ミステリスが『アームドフォートType:α[アルファ]』を構えて。
「撃つべし撃つべし!」
 ミステリスは主砲を一斉発射し、砲弾を撃ち込んだ敵をマヒさせて止めようとする。
「雷光よ、迸りなさい!」
 続けて、タキオンがライトニングロッドから迸る雷を走らせ、ダモクレスの身体に電撃を撃ち込んでいく。
 相手が硬直しているのであれば、それだけ攻撃のチャンスが増える。
 タキオンはどんどん攻撃を繰り返し、相手の動きを止めていく。
 フェルディスは相手が止まっている間にも、『聖槍トリスタン』で自らが付けた傷目がけて鋭い一撃を見舞って胸部の凍った面積を広げていく。
「グアオオオオオオオオオ!!」
 吠える玩具ダモクレスは電動乗用カーを急発進させ、再び突進してくる。
「甘いな。その程度は想定済みだぜ」
 身を張って敵の体を受け止めた久遠が平然としつつ、自らの体内で高めた陽の気で傷を塞ぐ。
「そんな攻撃で怯むほど、腕は鈍っちゃいねえよ」
 主張する久遠へと、リュエンが緊急手術で癒しを与えていく。
 仲間達が皆万全に近い状態と判断したエリザベスは、前線メンバーに力を与えるべくカラフルな爆発を起こして。
「さあ、思いっきり行くのよ」
 エリザベスに力をもらった前衛陣がさらに、攻勢を強める。
「グアアアアアアアア!!」
 今度は左手のステッキを振るい、ダモクレスは七色の光を雨のように降らせてくる。
 それを受け止めた重臣が怯む間に、敵の周囲へとオルトロス八雲が地獄の瘴気を振り撒き、ダモクレスの体を毒に侵していく。
「さすがは八雲じゃ!」
 重臣はそんな愛犬にほっこりしながらも、ダモクレスの攻撃の勢いがなくなってきていることを察し、武器をしまう。
「――我が真髄を刮目せよ!」
 仲間達が重点的に攻撃してくれている胸部を、重臣は握りしめた拳で力の限り殴りつける。
「グ、グアオオオ……」
 怯む敵の叫びが弱々しくなってきたことを受け、雅貴は相手の死角から影の如き斬撃を浴びせかける。
 彼の日本刀の刃がその体深くまで切り裂くと、回路を切断されたダモクレスは動きを止めて。
「頑張って動いていたようだけど、もう休んでいいんだよ」
 一言、ダモクレスへと呼び掛けた瑠璃は自身の生家で結ばれた太古の盟約によって、伝説の霊獣カーバンクルを召喚する。
「お休み。ご苦労さま」
 そして、労いの言葉を瑠璃がかけると、カーバンクルが額の紅玉からビームを発して敵の体を貫通していく。
 その衝撃を受け、ダモクレスの頭部で何かが爆ぜ飛ぶ。
 すると、みるみるうちにダモクレスの身体が縮んでいき、そこには壊れたロボットと電動乗用カー、折れた玩具の剣とステッキが転がっていたのだった。


 玩具ダモクレスを討伐したケルベロス達。
「貴様は夜の玩具になるのね!」
 そう言って、壊れた玩具を回収する気満々だったミステリスだが、雅貴らが供養をと主張した為、それに応じていたようだ。
「壊れるまで童らを楽しませてくれて有難うのう」
 重臣はヒール作業の傍らで合掌し、玩具を労っていた。
「怪我の具合を見せてみな」
 その間に、久遠は念の為にと残心しながらも、仲間達の応急処置へと当たり始める。
「世が明ける様に、もう一度日は登る……」
 エリザベスが唄に回復の魔法を乗せ、戦場となった住宅街の修復を行う。
 周囲が闇に包まれる中、少しずつ家の明かりが灯り、周囲の家々から、あるいは直接道を歩いて近隣住人達がケルベロス達へと礼を告げに訪れに来てくれていた。
 感謝の言葉を受けながら、ミステリスは桃色の霧を展開し、タキオンは細かい場所へと魔術切開して破壊箇所へと施術していく。
 作業は程なく完了し、久遠は幻想交じりに待った住宅街を見回して。
「ま、こんなもんだろ。お疲れさん」
 日は完全に落ち、夜空には無数の星々が浮かぶ。
 照明の影響か、その一部には繁華街の光が確認できて。
「ふむ、それでは、心置きなく楽しみに行くとするかのう!」
 重臣も仲間達へと街に向かうよう促す。
「なら、私は買い物したいものがあってな」
 リュエンは自らのご褒美にとマフラーを買おうと考えていたのだが、フェルディスはそれは誰かのプレゼントと捉えたようだ。
「そういえば、そんな時期だね」
「この季節は冷えますからね。毛糸の手袋とか買っておきましょうか」
 タキオンもこの冬のお供にと、自分に防寒具を買う様子だ。
「さて、ボチボチ行くか。お前らもいいクリスマスを過ごせよ」
 街に到着してからすぐに仲間と別れた久遠は、早速クリスマスの買い物をと1人、夜のイルミネーションが煌めく通りをぶらつき始める。
 彼が考えていたのは、恋人であるレプリカントの女性への土産だ。
「あんまり時間も無ぇし、ケーキでも買って帰るか」
 丁度いい具合にケーキ店を発見した久遠は、苺がたくさん載ったショートケーキをワンホール購入していたのだった。
 その店の前を、瑠璃が通過して。
「う~ん……迷うなあ」
 婚約者に義理の姉や兄、親戚にとプレゼントを考える。
 充実した日々を送れるのは彼らあってこそだと瑠璃は考えており、日頃の感謝をクリスマスプレゼントに込める為にあれこれと悩んでいたようだった。

 チームが解散したことで、エリザベスは仲間達に……特にフェルちゃんことフェルディスに見つからないように移動し、武器が売っている店へと入る。
 まだまだデウスエクスの出没がある中、エリザベスは購入していたのは、ケルベロスとしての武器、バスタードソード。
「包装もお願いできるかしら?」
 それをフェルちゃんへのクリスマスプレゼントとすべく、エリザベスは店の人へとそう頼んでいたようだ。
 その一方で、雅貴は重臣とオルトロス八雲と共に、重臣宅でクリスマスパーティーをする為に食料や装飾品の買い出しへ。
「――嗚呼、世間はこんなにキラキラ眩しいクリスマスムードなのに、何が悲しくて爺サンと」
「ははは! なぁに儂と八雲がおるじゃろ!」
 今年も安定の独り身と自らの状況を憂う雅貴に、重臣は笑いかける。
「恋人は何ともしてやれぬが、可哀想じゃで、なんぞ贈ってやらぬこともないぞ!」
 そう言いながらも、彼は八雲共々、物欲しそうにチキンや甘味へと目移りしまくる。
「ソレはサンタになってやろーって顔じゃなくて、寧ろサンタに期待してる顔だろ!」
 ただ、重臣はともかく、八雲のつぶらな瞳で見つめられれば、さすがに雅貴も折れてしまう。
「いやぁ、これだけ沢山食料も装飾もあれば、帰ってからの宴も明るく楽しいものになりそうだの!」
 ほくほく気分の爺さんに対し、若い雅貴は懐まで寂しくなってしまって。
「うう、いつかその内、コイビトだけはなんとか……!」
 涙を流しながらも、その日は二重に悲しみを背負う雅貴なのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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