ぴっちりスーツこそ至高ゥ!!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ! ぴっちりスーツこそ至高である、と! だってそうだろ! 身体にぴっちりする事で、身も心も引き締まる! だから、破ったり、脱いだりするのは、御法度! そんな事をする奴は、ぴっちりスーツ好きの風上にも置けないクズだ! ガチクズだ!」
 ビルシャナが廃墟と化したビルに信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達は、ぴっちりスーツを身に纏い、身体のラインを強調させながら、それでも恥じる事なく、誇らしげに胸を張っていた。

●セリカからの依頼
「ルストール・シブル(機動防壁という名の変態・e48021)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化したビル。
 信者達は、ぴっちりスーツを身に纏っており、どんなに蒸れても脱ぐ事がないようだ。
 しかし、それはビルシャナの洗脳によって、ぴっちりスーツが身体の一部であると思い込んでいるためのようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 信者達が、ぴっちりスーツを着ている限り、ビルシャナの洗脳から逃れる事が出来ないため、まずは破るか、脱がすかして正気に戻す必要があるだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)

■リプレイ

●廃墟と化したビル
「ぴっちりスーツっつーと、SFとか忍者しか思い浮かばねえな。あー、我ながら発想が貧困だなぁ……」
 柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)は複雑な気持ちになりながら、廃墟と化したビルを見上げた。
 ビルシャナは、この場所を拠点にしており、自らの欲望を満たすため、信者達にぴっちりスーツを着せているようだ。
「ぴっちりスーツを着たいなら、一人で着ていればいいのですけど、それを他人に強要するのは間違っていますね」
 七隈・綴(断罪鉄拳・e20400)が、呆れた様子で溜息を漏らした。
 しかし、ビルシャナは自分でぴっちりスーツを着るだけでは満足する事が出来ず、信者達を洗脳してしまったのかも知れない。
「いくら何でも、ずっとぴっちりスーツを着ていたのでは、体が疲れてしまうと思うのですが……」
 彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)が、気まずい様子で汗を流した。
 だが、信者達はビルシャナに洗脳されている影響で、ぴっちりスーツが体の一部だと思い込んでいるようである。
 そのため、脱ぐという考えには至らず、ぴっちりスーツのまま生活をしているようだ。
「ぴっちりしたスーツもセクシーでふわりは好きだけどー、それだけじゃないお洋服の良い所を教えてあげるの!」
 そう言って盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が巫女服姿で仲間達を連れ、廃墟と化したビルに足を踏み入れた。

●ビル内
「おい、こら! そんなモノを着たら駄目だろうが! 身も心も引き締まっちまったら、ガードが堅くなっちまうだろぉ!? 最近の子は、ただでさえ連れ出せねえのによぉ」
 ビルに足を踏み入れた清春は、扉の隙間から洩れる光で、ビルシャナ達の居場所を特定し、殺気立った様子で室内に乗り込んだ。
 ビルシャナ達は、ぴっちりスーツを身に纏っており、胸も尻も必要以上に強調されていた。
「なんだ、お前は!」
 その途端、ビルシャナ達が警戒した様子で、一斉に身構えた。
「お前の教義を否定するモンだ! それだけで十分だろッ!」
 清春がイラついた様子で、ビルシャナ達に啖呵を切った。
「俺の教義を否定するモノ……だと!?」
 その言葉を聞いた途端、ビルシャナが殺気立った様子で、清春をジロリと睨みつけた。
 まわりにいた信者達も、鉄パイプや金属バットを握り締め、ジリジリと距離を縮めてきた。
「……と言うか、ぴっちりスーツを着ていると、身体が蒸れてしまいませんか?」
 紫が信者達を見つめ、心配した様子で問いかけた。
 信者達は、ぴっちりスーツを着ているせいで、どれも蒸れ蒸れになっており、むせかえるほど濃厚な体臭が、紫の鼻をくすぐった。
「これを脱ぐなんて、とんでもない!」
 いかにも真面目そうな男性信者が、怯えた様子で答えを返した。
 おそらく、彼らにとって、ぴっちりスーツを脱ぐ事は、皮膚を剥がす事と同じ扱いなのだろう。
 信者達の表情を見る限り、それが間違いない事であると、確信する事が出来た。
「だからと言って、あまり着過ぎると身体の血行の妨げになりますから、時々はぴっちりスーツを脱いであげる等しないと、身体に悪いですよ? 身体のラインを強調させたいなら、むしろ水着とかを着るべきでは無いですか?」
 そんな中、綴が信者達に語り掛けながら、ゆっくりとハサミを握り締めた。
「どうやら、話し合いに来たという訳でも無さそうだな」
 ビルシャナが警戒心をあらわにしながら、ビルシャナビームを放ってきた。
「ぬわっ! ふざけた真似をしやがって! こんなモン着たって寒いだけだろうが! 一体、何処がイイんだ」
 その一撃を喰らった清春がぴっちりスーツ姿になり、イラついた様子で愚痴をこぼした。
 だが、ぴっちりスーツは身体にフィットしており、自分では脱ぐ事が出来ない程の一体感があった。
 しかも、身体のラインが強調されているせいで、股間が大変な事になっていた。
「さすがに、これは……目に毒ですね」
 それを目の当たりにした紫が、清春のぴっちりスーツを破り、その流れで信者達のぴっちりスーツを引き千切った。
「ぎゃあああああああああああああ! ぴっちりスーツがああああああああああ!」
 その途端、信者達が気絶しそうな勢いで悲鳴を上げたものの、途中で冷静になったのか、不思議そうに首を傾げた。
「……ん? あれ? なんで、俺達はこんなにぴっちりスーツを脱ぐ事を嫌がっていたんだ」
 眼鏡を掛けた男性信者が、困惑した様子で口を開いた。
 先程まで、ぴっちりスーツを脱ぐ事が、嫌で嫌で仕方がなかったものの、脱いだ途端に何故そこまで拒絶していたのか分からなくなっていた。
「寒ッ!」
 それと同時に激しい寒気に襲われ、信者達が一斉にガタブルと身体を震わせた。
「さぁ、破れたぴっちりスーツを着ているままよりも、こちらに用意した水着の数々に着替えてみてはどうですか?」
 すぐさま、綴が信者達に駆け寄り、水着を手渡した。
 その間も清春は、ぴっちりスーツを脱ぐのに手間取っており、着替えもないため、あたふたとしていた。
「この寒い冬の中では、やっぱりロングコートですわ。ぴっちりスーツにはない、身体を覆ってくれる暖かさ。ロングコートこそが、今年の冬の最高の衣服だと思いますわよ」
 紫も信者達に駆け寄ると、水着の上からロングコートを羽織らせた。
「あ、ありがとう。でも、何か変な気持ちがするな」
 スキンヘッドの男性信者が、水着にロングコート姿の自分に戸惑い、恥ずかしそうに頬を染めた。
 その影響で別の性癖に目覚めたような感じであったが、あえて深くはツッコまないようにした。
「ええい、余計な真似を! お前達は、ぴっちりスーツの良さが分かっていないから、こんな事をするんだ!」
 ビルシャナがイラついた様子で、激しく拳を震わせた。
 信者達は、ぴっちりスーツが破れたせいで、みんな正気に戻っており、ビルシャナに対して、冷ややかな反応を示していた。
「そんな事ないのー。ぴっちりしてたら、こういう事は出来ないのー♪」
 そんな空気を察したふわりが巫女服姿で、ビルシャナ達で元気良く飛び跳ねた。
 その拍子に巫女服の隙間から、胸や太股、イケない部分が丸見えになった。
「穿いていない……だと」
 その事実に気づいたビルシャナがクワッと表情を険しくさせ、床に顔を押し付ける勢いでしゃがみ込んだ。
 既に信者達にも見捨てられているせいか、ビルシャナはプライドを捨て、アングルの魔術師として、床に突っ伏す事を選択した。
「ビルシャナさんのココ……凄い事になっているの……♪」
 それと同時に、ふわりがビルシャナを寝転がすと、馬乗りになったまま服の隙間から、ビルシャナの反り立ったモノを自らのナカに導いた。
「そんなモン、見せられたらヤバイって!」
 その途端、清春がぴっちりスーツで強調された股間を隠すようにして、前屈みになるのであった。

●ビルシャナ
「ふぅ……。次はお前の番だ!」
 しばらくして、ビルシャナがスッキリとした様子で、無駄に爽やかな表情を浮かべ、清春を手招きした。
「それじゃ、遠慮なく……って、そんな空気じゃねえよな、これ!」
 清春が仲間達の冷たい視線に気づき、気まずい様子で汗を流した。
 ふわり的には、まったく問題がないようだが、このまま流れに乗るのは、自殺行為に等しい事だった。
 例え、気持ちイイ思いをしたとしても、その後に待っているのは、社会的な……死。
 それが分かってしまうほど、辺りに不穏な空気が漂っており、今にも清春を飲み込みそうな勢いだった。
 もちろん、本音を言えば……ヤリたい。
 ビルシャナも『こっちに来いよ!』と言わんばかりにイイ笑顔を浮かべ、清春をイケない道に誘おうとしていた。
「……畜生っ! もっと出会い方が違っていれば……!」
 清春が涙目になりつつ、悔しそうに唇を噛み締めた。
 目の前に広がる桃源郷にダイブしたいのは山々だが、あまりにも失うモノが多過ぎた。
「どうした? ヤラないのか? 楽になっちまえよ」
 そんな空気を察したビルシャナが、清春の肩を抱き寄せ、悪い笑みを浮かべた。
「……纏めて倒してしまいましょうか。ある意味、似たようなモノですし……」
 綴がサクッと気持ちを切り替え、清春ごとビルシャナを倒そうとした。
 ある意味、手間は一緒なので、そこに躊躇いはなかった。
「畜生ッ! こんな状況で無ければ、俺だって……」
 清春が自らの未練を断ち切るようにして、力任せにビルシャナをブン殴った。
「……愚かな。この状況で、ちっぽけなプライドを守るとは……」
 ビルシャナが呆れた様子で、深い溜息を漏らした。
「続きをしないのなら、御仕置きなのー」
 そんな中、途中でお預けを喰らったふわりが、ぷんすかと怒った様子でビルシャナに創世衝波を仕掛けた。
「そ、それは誤解だ! 俺は別にそんなつもりで放っておいたわけじゃ……」
 その事に動揺したビルシャナが、慌てて言い訳を並べたものの、既に股間はションボリモード。
 それとは対照的に、ふわりは悶々とした気持ちが爆発的に膨らんでいるため、何らかの形で発散したくて仕方がないようだった。
「電光石火の蹴りを、その身に受けてみなさい!」
 次の瞬間、綴が旋刃脚を仕掛け、容赦なくビルシャナを蹴り飛ばした。
「このナイフに、貴方のトラウマを映してあげますわよ!」
 それに合わせて、紫が惨劇の鏡像を仕掛け、ナイフの刀身にビルシャナのトラウマを映し、それを具現化させた。
 そこから現れたのは、たるんだボディの冴えない中年男性だった。
 その目に正気はなく、まさに生きた屍と言う言葉が、相応しい姿。
「うわ、やめろ! もうあのころには戻りたくない!」
 それを目の当たりにしたビルシャナが腰を抜かして驚き、この世の最後と言わんばかりの勢いで悲鳴を上げた。
「私でも、やれば出来るのです!」
 その隙をつくようにして、綴が大器晩成撃を仕掛け、将来性を感じる一撃を叩きつけ、ビルシャナにトドメをさした。
「さて……それじゃ、可愛い子ちゃんは俺と……あ、いや、別にやましい気持ちはねぇぞ!」
 その間に、清春が女性信者をナンパして回っていたが、仲間達の冷たい視線に気づいて、愛想笑いを浮かべた。
 だが、その瞳には女性信者達の水着姿が焼き付いており、何やらゴキゲンな様子であった。
「まあ、欲望に身を任せて暴走しなかっただけ評価……出来るがどうかわかりませんが、とりあえず良しとしましょうか」
 そう言って紫が複雑な気持ちになりつつ、清春を見つめるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月19日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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