襲撃! さつまいも祭

作者:坂本ピエロギ

 十二月某日、白昼。
 一段と寒さが増し、温かい焼き芋などが恋しくなるこの日、大阪市内のとある商店街では薩摩芋のスイーツフェスが開かれていた。
 焼き芋、芋けんぴ、芋ようかん。ドーナツやプリン、ソフトクリーム……。
 商店街を挙げての薩摩芋フェスは人々の賑わいに満ち、まさに大盛況だ。
 しかし――。
「いらっしゃいませ、大学芋が揚げたてですよ……おや?」
 軒先の店員が何気なく仰いだ青空から、キラキラと輝く粒が降って来た。
 それは大阪城から飛来した、攻性植物の花粉。
 花粉はしばし周囲を漂った後、会場の一角に展示されていた薩摩芋の種芋に取りつくと、その身体を瞬く間に巨大化させていく。
『イモォ……』『イモォ?』
「な、何あれ!?」「逃げろ、デウスエクスだ!!」
『イモオオォォォォッ!!』
 薩摩芋達は太い蔓を手足代わりに立ち上がると、逃げ惑う人々を怪光線で焼き芋よろしくこんがり焼き上げながら、グラビティ・チェインの収奪を開始したのである――。

「それは大変な事になりそうだ……」
 調査依頼の的中を知って、ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)はぽつりと漏らした。
「ダンテ、皆にも説明を頼むよ。この事件は絶対に防がないと」
「了解っす。犠牲者は一人も出したくないっすからね!」
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は頷きを返すと、ヘリポートに集まったケルベロス達に説明を始める。
 予知があったのは、大阪市内の商店街で起こる攻性植物の事件だ。
 恐らくは爆殖核爆砕戦の影響によるものだろう。彼らの勢力圏拡大を防ぐためにも放置は出来ない。急ぎ対応を頼みたいとダンテは言った。
「敵は全部で3体。サツマイモの種芋が攻性植物化した個体で、炎や捕縛を付与する攻撃がメインっすね。個々の戦闘力は高くないんで、皆さんなら苦戦せずに倒せると思うっす」
 現場となるのは商店街にある大通り。市民の避難誘導は警察に対応を依頼してあるので、ケルベロスは戦闘に専念できる。
「大通りは十分な広さがあるんで、お店が戦闘の被害を受ける心配はないっす。攻性植物は皆さんが現場に着いたらすぐに襲ってくるっすから、全力でぶっ飛ばして下さいっす!」
 そうしてダンテは説明を終えると、彼の話題は戦闘が無事終わった後の事に及んだ。
「いま商店街では、薩摩芋のスイーツフェスが開かれてるっす。戦いが片付いたら、寄ってみるのも面白いかもっすね。ちなみに商品のラインナップは……」
 ダンテはタブレットを手に、フェスに出品されている菓子をいくつか挙げていく。
 ほっくりと美味しい焼き芋。一度食べ始めたら止まらない、揚げたての芋けんぴ。
 煎り胡麻と一緒に甘いたれを絡めた大学芋に、熱々もっちりの芋ドーナツ。
 熱いものを食べて火照った体には、ソフトクリームなどもお勧めだ。ねっとりした濃厚な甘味が自慢のプリンや、日本茶のお供に芋羊羹も捨てがたい。
 和菓子、洋菓子、熱いものから冷たいもの、薩摩芋を使ったものなら大抵揃っているようだとダンテは話を締めくくった。
 それを聞いたヴィは頬を綻ばせて、
「なるほど……それは美味しそうだね」
「薩摩芋フェスを守れるのは皆さんだけっす。攻性植物の撃破、よろしく頼むっす!」
 ダンテはグッと親指を立てると、ヘリオンの操縦席へと駆けていった。


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
ヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)
比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)
影月・銀(銀の月影・e22876)
レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)
リィナ・アイリス(もふきゅばす・e28939)
ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)

■リプレイ

●一
 商店街の大通りは、芋の甘い香りに包まれていた。
「ああ……素敵な眺めですね、イエロ」
 ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)が、隣を歩くテレビウムに声をかける。
 スイーツフェス会場の通りに並んだ店のあちこちには、出来立てのサツマイモスイーツの品々が、まるでブレアや彼の仲間達を誘うように、仄かに湯気を立てていた。
「焼き芋、芋けんぴ、スイートポテト……これは期待が持てそうです。リィナさん、今日はよろしくお願いしますね」
「うん、ブレアくんっ! 頑張ろうねっ!」
 リィナ・アイリス(もふきゅばす・e28939)が、小さな体で元気よく飛び跳ねる。
 戦いの後はブレアと一緒にサツマイモスイーツを楽しみたいなと、リィナは早くもやる気満々の様子。旅団の仲間にもお土産を買って帰ろうと考えているようだ。
「美味しいスイーツで、みんな、幸せになるのー。ね、ブレアくんっ!」
「はい。楽しみですね、リィナさん」
 そんな会話を交わすふたりとは対照的に、レヴィン・ペイルライダー(秘宝を求めて・e25278)はげっそりとやつれ果てた様子で肩を落としていた。
「おいおいおい、なんだよこのリスト!? オレはお使いじゃないんだぞ!?」
 レヴィンの手に握られているのは、分厚いA4用紙の束である。
 書かれていたのは、土産のリスト――彼が知り合いから渡された、サツマイモスイーツのリクエスト一覧表だった。
(「あれ? なんか前にも、こんな事があったような……?」)
 覚えのある既視感に首を傾げつつ、戦いの支度を始めるレヴィン。そんな仲間達の輪から少し外れた場所で、セントールのオルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)もまた、黙々と準備を進める。
「いただきます――はっ」
 そう言いかけて、オルティアは邪念を追い払うように首を横に振る。
(「まずは戦闘から……大丈夫、忘れてない、お楽しみは戦ってから」)
 なにしろ会場に漂う香りの美味そうな事ときたら、ただ事ではない。現に今も、ちょっと油断しただけで、すぐに気持ちが芋ドーナツへと飛んでいってしまう。
(「熱々もっちり……美味しそう……」)
「皆、お待たせ!」
 そこへ、ちょうど会場内の見回りを終えたヴィ・セルリアンブルー(青嵐の甲冑騎士・e02187)が戻って来た。
「大丈夫。逃げ遅れた人はいないよ」
「了解だ。大阪の人達を、一人たりとも犠牲には出来ねえからな!」
 相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)はバトルガントレットを装着し、準備を完了した。いつ戦闘が始まっても即座に応戦できる態勢だ。
「にしても、サツマイモか……この時期は人気の食材のひとつだな」
「美味しいよね。これからの時期は欠かせないし」
 ヴィが同意を返しながら、バスタードソードを抜く。
 彼らが視線を向ける先には、既に3つの敵影が見えていた。蔓を手足に動き回る、巨大なサツマイモ型攻性植物の姿が。
『イモォ!』『イモォ!』『イモォ!』
「さあ、ちゃっちゃと片付けてしまおう」
「そうですね。フェスのためにも、迅速に排除しましょう」
 隊列の前衛に立つヴィの隣で、影月・銀(銀の月影・e22876)が抑揚に乏しい声でぽつりと呟く。
「サツマイモの菓子ですか。ええ、甘い物は好きです」
「勿体ないよね。あんな大きな体、どれだけ芋料理が作れるか……」
 同じく前衛の比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)は、無表情な顔とは裏腹に、好奇心を湛えた目で攻性植物達を見つめている。
「ま、ああなっちゃったら仕方ない。倒すしかないよね」
 仲間達は黄泉の言葉に頷き、敵との距離をじりじりと詰めていく。
 そして、ゾディアックソードを構えたブレアが、
「禁忌を犯すのは魔術師の宿命なのでしょうか? ――その味、覚えさせて頂きます」
 その一言を放つのと同時、攻性植物は一斉に襲い掛かってきた。

●二
『イモォ!』『イモォ!』『イモォォーッ!!』
 可愛らしい咆哮を轟かせ、焼き芋光線と蔓触手が次々に放たれる。
 標的となったのは、レヴィンとリィナ。
 敵の攻撃はどこかコミカルだが、状態異常の付与は侮れない。光線を浴びたレヴィンの体が真っ赤に燃え、リィナを庇った影が蔓触手に身動きを捕われる。
「こいつを食らえ!」
 泰地は裂帛の気合を変換した重力震動波を叩きつけ、サツマイモの群れを揺さぶった。
 プレッシャーでぐらつくサツマイモ。そのダメージを回復せんと、敵の1体が種芋から光を放って状態異常の耐性を付与していく。
「させない、からっ!」
 リィナの掲げた九尾扇から破魔の力を受け取り、ヴィの振り下ろす片手半剣が唸りをあげて、サツマイモの蔓もろとも耐性の力を叩き切る。
 追い打ちをかけるように放たれるのは、レヴィンの麻酔弾だ。
「お前ら全員、そこを動くな!!」
 レヴィンが早撃ちで浴びせる『レインバレット・パライズ』は、威力こそ低いが麻痺の力は折り紙付き。まして妨害に優れる中衛からの攻撃である。攻性植物達は耐性の力でも麻痺を除去しきれず、次第に体を強張らせ始めた。
『イモォ……』『イ……モ……』
「……逃がさない」
 ヴィの攻撃を浴びた個体めがけ、オルティアが叩き込むは背蹄脚の一撃。その胴に馬蹄の形を刻み込まれ、攻性植物の芋皮が派手にちぎれ飛ぶ。
「イエロ。一緒にペイルライダー様を癒しますよ!」
 メディックのブレアはバトルオーラの気力を放ち、レヴィンの炎を吹き消していく、続くイエロは、応援動画でほっくりと湯気の立ち上る焼き芋の画像を流して、状態異常の耐性をレヴィンに付与した。
「くっ……これは美味そうだ、元気百倍だぜ!」
 ごくり、と生唾を飲むレヴィン。その前方では、銀が描く守護星座の加護を受けた黄泉がエアシューズで疾走。狙うは集中攻撃を浴びた個体だ。
「まずは1体。もらったよ」
『イモォォォ!』
 蹄の跡を残す敵めがけ流星の蹴りが放たれ、心臓部を打ち砕かれたサツマイモは断末魔の絶叫を遺して砕け散った。

●三
 仲間の仇討ちとばかりに発射された光線と蔓触手が、前衛のヴィと泰地を捉えた。
 銀の付与した耐性があるとはいえ、敵は妨害に優れる相手だ。保護の力が未だ弱いとみたリィナは、ブレアに合図を送る。
「いくよ、ブレアくん!」
「任せて下さい、リィナさん」
 友人の意図を、ブレアはすぐに察した。
 リィナが発動した『ハジメテの想い』で、官能的な二つの香りを混ぜ合わせると同時、フェアリーブーツを装着したブレアが花弁のオーラを舞い散らす。
 二人がもたらす香りと花弁のオーラは、前衛の仲間達を優しく包み込み、その状態異常を取り去っていった。
「ありがとう二人とも、百人力だよ!」
 ヴィが地獄炎を剣に纏わせ、振り下ろす。強靭な肉体を誇る甲冑騎士たるヴィの、速度と膂力を込めた刃の一撃は敵の巨体を容易く切り裂き、炎で包み込んだ。
 悲鳴を上げて転げ回るサツマイモ。立ち込める焼き芋の匂い。ヴィとのコンビネーションを発動した銀は、泰地に気力溜めを浴びせつつ、こみ上げる食欲に抗う。
「これは、なかなかに強烈ですね」
「ああ、腹が減って来るな。さっさとぶっ飛ばすか!」
 蔓の拘束を完全に解いた泰地はグラビティを全身に込め、己が身を旋風へと変える。
「旋風斬鉄脚!」
 サツマイモの死角から放たれるのは、高速かつ強靭な回し蹴り。
 まばゆい光の弧に全身を切り刻まれた攻性植物は、スライスされた焼き芋のようになって崩れ落ち、そのまま光に包まれて消滅した。
「さて、残るは1体かな。油断せずに行こうね」
「そうだな。食らえサツマイモ!」
 幻の薔薇を舞い散らせる剣戟で攻性植物を幻惑する黄泉。
 全身を切り刻まれ、千鳥足でよろめいた敵目掛けて、とどめとばかりエクスカリバールの先端を振り下ろす。
 ちぎれ飛ぶ芋の皮。先端が深々と突き刺さる手応え。
 そうしてレヴィンは、攻撃準備を終えたオルティアを振り返る。
「さあ。トドメは任せるぜ!」
「……了解」
 そうして最後の一撃を託されたオルティアは、小さくこくりと頷くと――エアシューズで加速した超連撃で捉え、今度こそ粉々に打ち砕いた。
「ごちそうさま。……あ」
 戦いが終わり、言い間違いに赤面するオルティア。
 こうして番犬達は労いの言葉と笑顔を交わし合うと、現場の修復を開始するのだった。

●四
「よしっ、もう大丈夫だ。攻性植物は片付いたぜ!」
 現場の修復が完了し、隣人力を発動した泰地が避難していた人々に連絡を終えて程なく、商店街は再び賑わいに包まれた。
 揚げ油や胡麻、溶かした飴。スイーツフェス会場に広がる甘い香りで肺を満たしながら、ヴィはしみじみと呟きを漏らす。
「やっぱり、いいものだね。平和って」
「だな。さて、俺達も行くか!」
 泰地は頷きを返し、仲間と一緒にのんびりと会場をそぞろ歩く。
 最初に向かったのは芋ドーナツの店。ヴィは焼きたての一品をさっそく買うと、ホクホクのドーナツを頬張った。
「んー、おいしい! さつまいもはおいしい!」
 あったかもちもちの歯ごたえに、ヴィは満面の笑みを浮かべる。生地にはバターと牛乳が加えてあるのだろう、ほっくりした持ち味が活かされ、シンプルながら飽きが来ない。
「これはお土産にも買って帰ろう。彼も喜んでくれそうだ」
 後で家に帰ったら、自分を待っている人と一緒に、もちもちのドーナツを食べてひと時を過ごす……そんな素敵な光景を思い描き、ヴィは微笑んだ。
「これが……念願の、芋ドーナツ……」
 仲間達が舌鼓を打っている逸品をいそいそと買い求めたオルティアは、ドーナツをひとつ口にするや、その味わいに思わず息を忘れた。
 もちもちの食感、ほくほくの風味。どれをとっても最高だ。
「美味しい……これは良いもの、素敵な存在……!」
 どうやらこの会場には美味しい料理が沢山あるらしい。他の仲間に目を向けると、ちょうど銀が「芋けんぴ」というお菓子を食べているところだった。
「この絶妙の歯応え、素晴らしいな。やはり揚げたてはこうでなければ」
 銀は紙袋に手を伸ばし、きつね色に揚がった芋けんぴをまじまじと眺める。
 探り当てたのは、銀の人差し指よりも長い一本。何となく小さな達成感を覚えつつ、それを端からカリカリと齧る。ちなみに土産用もしっかり確保済みだ。
 それを後ろから見ていたオルティアは、
(「芋けんぴ……あれも、美味しそう……!」)
 そう思って店へ足を向けた直後、銀と泰地の目は早くも別の品へと向いていて、
「ほう、大学芋に芋プリンもあるのか。スイートポテトまで……これは素晴らしい」
「おっ、ケーキがあるな。美味そうだし買って行くか!」
 銀にとって、甘味はいくらあっても困らない。良い機会とばかり、目についた物を片っ端から買っていく。
 飴をかけて黄金色に輝く大学芋は、胡麻の香りが実に香ばしい。芋プリンは芋の極まった甘みを凝縮して、きつね色に焼いたもの。黄金色に輝くスイートポテトはぽっくりと甘く、牛乳が欲しくなる味わいだ。
 泰地が買ったのは紫芋のモンブラン。生クリームに乗って立ち昇る芋の香りが、これ以上なく食欲を刺激する。
(「だ、大学芋? 芋プリン?」)
 増え行く選択肢に戸惑うオルティアの横では、黄泉が和菓子コーナーを物色していた。
「サツマイモとくれば、わたしはコレかな。お茶との相性もいいし」
 細長い黄金色の芋羊羹を包んでもらいつつ、黄泉は試供品の一切れを口へと運ぶ。くどさのない甘味と芋の適度なみっしり感が実に良い。
「うん、いいね。美味しい芋羊羹は最高だよ」
「どれも美味しそうで迷っちゃうね。あれ、オルティアは買わないの?」
「私は……ゆっくり、選んで決めたい、から……」
 不思議そうな顔をするヴィにオルティアはそっけなさを装ってそう返すも、青い瞳の目線は先ほどからずっと泳ぎっぱなしだ。
 大学芋。プリン。ケーキ。スイートポテトに芋羊羹にアイスクリーム――魅力的な選択肢があまりに多すぎて、とても選べない。
(「ダメ。薄々予想はしてたけど、これは、ダメ」)
 そうする間にも仲間達は好みのスイーツを次々に買って行く。レヴィンなどは先程から、用紙を手に店を駆け回り、山のように膨れた品を担いでいるほどだ。
「お、おすすめ……誰かおすすめを、教えて……」
「ん、どうしたオルティア?」
「何か困ってるのかな。大丈夫?」
 レヴィンとヴィの助け舟に、そっけない仮面がぽろりと剥がれ落ちた。
「自分じゃ、決められないのです……助けて欲しいのです……」
 オルティアのお願いを、仲間達は二つ返事で快諾する。

 一方その頃、別行動中のブレアとリィナは――。
「ねえブレアくん、このソフトクリーム、美味しいよ!」
「本当ですか? では試しにひとつ……」
 リィナが舐めていたソフトクリームがあまりに美味しそうだったので、ブレアは同じものを買ってみた。紅芋のアイスと呼ばれる紫色のソフトで、濃厚なミルクの風味に乗って、花のように爽やかな香りがする。
「凄い。とても美味しいです、リィナさん……!」
「でしょー?」
 リィナはご機嫌でにっこりとほほ笑む。
 ただ甘いだけではない。口の中を爽やかな香りで満たし、先ほど二人で食べた芋けんぴで火照った体も冷やしてくれる、大変ありがたいスイーツだ。
 しかもどうやら、お土産用に買って帰る事も出来るらしい。
「これは……買いですか、リィナさん?」
「買いなのー! お友達や、旅団のみんなへの、お土産にするの!」
「いいですね。お師匠様も喜んでくれるといいな……」
 芋けんぴ、紅芋タルト、芋羊羹、などなど。
 気づけば二人のケルベロスコートは、仲間や知人へのお土産でいっぱいだ。
「皆様の喜ぶ顔が楽しみですね」
「うんっ! あ、ブレアくん! あっちのドーナツも、おいしそう!」
 こうして二人のスイーツ巡りは、まだまだ続く。

「皆さん……ありがとう、ございます……助かりました……」
 好みの品を買い揃えたオルティアに、ヴィとレヴィンが親指を立てた。
「気にしないで。困った時はお互い様だから」
「そうそう! 戦いの時も頼りになったぜ!」
「そ……それはっ、その。お役に立てて、良かったです……」
 そっけなさの仮面を被りなおそうと、わたわた頑張るオルティア。隣を歩くヴィは優しく微笑むと、話題をレヴィンの頬張っている菓子に持っていく。
「ねえレヴィン、それってお饅頭?」
「これは芋大福だ。餅好きのオレとしては、外せない菓子なんだよな!」
 白い皮の下に詰まった、濃厚なべっこう色の芋餡に舌鼓を打ちながら、レヴィンは会場をヴィやオルティア、そして仲間達と眺める。そこには攻性植物の脅威が去った、平和な日常があった。
「……いい年を迎えられるといいな」
「うん。来年こそは大阪も……ね」
 気づけば師走ももう終わり。この地が早く人類の手に戻る事を願いながら、ヴィは最後の芋ドーナツを噛み締めるのだった。

作者:坂本ピエロギ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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