冬の温泉街

作者:崎田航輝

 冬の寒さの中に温かな湯気が上がり 青空に白色を混ぜてゆく。
 吹く風は少しばかり冷たいけれど、どこかからぽかぽかとした空気が漂ってくるようで、行き交う人々も賑わっていた。
 そこは温泉街。多数の源泉を持つ広い一帯に、幾つもの温泉宿や食事処が立ち並ぶ。
 平素から観光地として活気はあるけれど、冬に入ると一層その度合も増して多くの人々が訪れていた。
 日帰りで楽しめる温泉に、道角で入れる足湯。甘味や和食の店も含め、趣ある長閑な街で、人々はのんびりとした時間を過ごす──けれど。
 そんな平和な街並みに、かろりと下駄を鳴らす巨躯の男が一人。
「いやあ、何とも沢山の人が集まっているね」
 着物に袴、和装にも似た衣を棚引かせ、刷いた刀の鞘を握る──エインヘリアル。
「判るよ、こんな寒い日だ。暖かな時間を求めているんだろう」
 だから血の滾る剣撃をしよう、と。
 人波へと悠々と踏み込んだエインヘリアルは、刀を踊らせ人々を切り裂く。蒼空に血潮が散るほどに、罪人は揚々と笑みを浮かべていた。

「温泉街に、エインヘリアルが現れるようです」
 寒空のヘリポート。イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は仄かに眦を下げる。
「憂慮していたことが、現実になってしまったのですね」
「ええ──ですがこうして予知することが出来からこそ、その凶行を防ぐことが出来ます」
 是非皆さんの力を貸してくださいとイマジネイターは言った。
「勿論です。力を、尽くしましょう……!」
 ミリムが力強く応えれば、イマジネイターも頷き皆へ説明を続けた。
 出現するエインヘリアルは、アスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれるという、その新たな一人だろう。
「敵は街の外側からメインの通りに入ってくる形となります」
 その道には人通りがあるが──今回は警察の協力で避難が行われる事になっている。
「こちらが到着する頃には、現場の人々は丁度逃げ終わっていることでしょう。皆さんは到着後、戦闘に集中してください」
 それによって周囲に被害を及ぼさず終わることが出来るはずだという。
「ですので……無事勝利できた暁には、皆さんも温泉街で過ごしていっては如何でしょう」
 健康や肌にいい各種温泉の他、道の一角には足湯もある。お団子やおまんじゅうを食べつつ足を温めると疲れも癒えるはずだ。
 和食のお店も並んでいるので、蕎麦などの食事を楽しんでいってもいいだろう。
 ミリムは仄かに表情を和らげる。
「温泉街……とても寛げそうですね」
「ええ。そのためにも是非、頑張ってくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
武田・克己(雷凰・e02613)
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)
安海・藤子(終端の夢・e36211)
天神・希季(希望と災厄の大剣使い・e41715)
ナザク・ジェイド(とおり雨・e46641)
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)

■リプレイ

●冬風
 風に温かさが交じり、和風の家並みに風情の彩を与える。
 肌に当たる空気の特有の感触に、嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)は街を見回していた。ゴーグルで覆った混沌の瞳で、まじまじと眺めつつ。
「宿場町には寄ったことがあるが、温泉に特化したとなるとまた趣も違ってくるようだな」
「ああ。……冬の温泉、か」
 呟きながら、武田・克己(雷凰・e02613)もゆるりと視線を巡らせる。
「正にだいご味だな。ゆっくり入って熱燗を一杯やりたいね」
「克己らしいわね」
 安海・藤子(終端の夢・e36211)は面で隠れた顔に笑顔を浮かべながら──けれど、と。その視線を道の先に向けている。
「しっぽりするにゃ邪魔者がいるから──早々にご退場いただきましょ?」
 言葉に、皆が頷き見据える先。
 そこに草履を鳴らして悠々と歩む、和装の巨躯が現れていた。
 堕ちた罪人、エインヘリアル。刀の錆にするに相応しい相手を求め、人影を探している──が。
 無論それを許す番犬ではなく。
「あなたの相手をするのは私達ですよ!」
 疾風の如く駆け抜けて、罪人の眼前へ迫るのはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)。
 握る美しき一振りは、崩天槍ホワイトローズランス。鮮麗にして眩い閃光を穂先に纏うと一撃、弾ける衝撃で縫い止めるように足元を穿っていた。
「……!」
 奔る苦痛に顔を顰めながら、罪人はとっさに刃を振り抜く。けれどミリムも素早く飛び退き間合いから離脱、巨躯の斬撃に空を切らせた。
 踏み込む敵の二の太刀を、直刀で受けるのは距離を詰めた克己。
 倍にも近い体躯の相手に膂力でも引けを取らず。刃を押し戻すと返す刀で雷光棚引く刺突を打ち込んでいく。
 蹈鞴を踏んだ罪人は体勢を直そうと足掻く、が。
「クク──遅いな」
 含んだ笑いと共に、そこへふわりと吹き付ける一層冷えた氷気があった。
 こつりと靴音を鳴らして踏み寄りながら、燿く流体を繰るペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)。
「このスライムはちと冷たいだろうが、我慢するんだな。すぐ楽にしてやる」
 手を翳すと、深く燦めく半液が厳寒の冷たさを帯びたまま、槍となって。内外から蝕むよう、巨体の膚を破った。
「……冷やすのは、此方の仕事さ」
 呻きながらも罪人は刃を振るって氷波を放つ。けれど舞い散る氷片を飲み込むような、色彩が入り交じる靄が明滅した。
 それはナザク・ジェイド(とおり雨・e46641)が立ち昇らせる混沌。
 ゆらりゆらりと銀絹の髪を揺らしながら、靭やかな指を動かすと──漂う靄が風と共に消えながら、皆へ刻まれた傷を同時に拭い去っていく。
「これであと少し、というところかな」
「助力するぜ。守りも手堅く、支えるためにな」
 応えた藤子は面を外して凛々と。剣先から零す星屑にアステリズムを描かせ護りの加護と成していた。
 そこへワイルドを広げて皆を万全とした槐は──氷風の残滓を見つめて息をつく。
「暖かな時間を求める人々に、こんなものをぶつけようとしていたとは。穏やかでない趣味をしているな?」
「……剣戟の熱を、より実感するためさ」
 罪人は刃を握り直しながら声を返す。
「凍えるほど、血が滾る暖かさを感じて貰えるだろうからね」
「そう? 暖かい時間求めてんの君の方なんじゃないのー? 」
 と、投げる声に挑発の色を含めて。明るく言ってみせるのは天神・希季(希望と災厄の大剣使い・e41715)だった。
「だってボッチって寂しいもんねー?」
「……侮辱を」
 罪人は眉を顰めて剣先を向ける。けれど既に希季は奔り出し跳躍。巨体の頭上を取って槌を高々と掲げていた。
 刹那、氷晶を散らす打撃を叩き込むと、槐の傍らからライドキャリバーの蒐も疾走。
「時代遅れの寒い侍など燃やし轢き殺せ」
 槐の声に応じて突撃し強打を加えていく。
 後退した罪人はすぐに反撃に踏み出た、が。その視界に光るのが澄んだアメシストの瞳。
「させません」
 それはゴシックロリータドレスの裾を優美に踊らせがながら──華麗に宙へと跳び出すミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)。
 罪人が刃を振るうよりも疾く、身を返して輪転すると。
「──この飛び蹴りを、避けきれますか?」
 巨体の半身へ、風を裂く一撃。刃よりも研ぎ澄まされた蹴撃で、膚を切り裂き血潮を散らせてゆく。

●撃滅
 衣に赤色を滴らせながら、罪人は後退する。懊悩を表情に含めながら、しかし声音には未だ濃い殺意が滲んでいた。
「……流石に番犬だね。僕の体も温まってきた、でも」
 次は君たちが血に濡れて温まる番だよ、と。突きつける刃に獰猛な意志を表す。
 ただ、ペルはそれにも不敵な笑いを見せた。
「身体を動かして温まるという発想だけは同意してやろう。子供は風の子というしな。だが──虫を殺す子供のような残酷さには、応えてやる義務はない」
「ええ。この街を血祭りにさせるわけにはいきませんから。あなたの凶行は、ここで防いでみせます!」
 ミリムが凛然と細剣を抜いてみせると、罪人も反抗心を顕に踏み込んできた。
「……街も人間も、全て血に沈めてあげるよ」
「最後まで、殺戮の事しか頭に無いのですね」
 けれどそこに冷静な声が降りかかる。正面から跳んだミントが、青薔薇の意匠が流麗なパイルバンカーを掲げていた。
「ならば私達が平和を守ります。この一撃で、凍結してしまいなさい」
 六花を舞わせながら打ち込む一撃は、巨躯の肩口を貫いて表皮を氷で蝕む。
 よろける罪人は、距離をとってから冷風を返そうとするが──瞬間、脳裏に衝撃を憶えてその手が止まった。
 見れば、ナザクがそっと手を翳している。
 見目にはそれ以上の変化はない、だが歪みの呪いを込めたビートが確かに罪人の意識に叩き込まれていた。
 搦め手が得意な相手ならば、似たような戦法を返したくなるのは自然の摂理というもの。
「──そうだろう?」
 Dis Beat Distorted──魂を直接削るリズムが、抗いを許さず巨躯に膝をつかせる。
「今のうちだ」
「了解ですっ!」
 応えるミリムは刃を緋色の闘気で煌めかせ、花を象るよう素早く斬線を描いた。
「血は生温かいですけど──すぐ冷えますよね」
 故に血で温めようなど愚かなことだと言って見せるように。繰り出す『緋牡丹斬り』で巨躯を切り刻んでゆく。
「天神さん!」
「オッケーミリっち!」
 と、間隙を作らず希季が跳躍。流星の如き蹴りを喰らわせて巨躯を吹っ飛ばす。
 その先へ奔り込むペルは、己が拳に魔力で生んだ白雷を宿していた。周囲が眩んだと錯覚する程に燿くそれは『雷光の災拳』。
「血でも運動でもなく、電熱でも温まるぞ。遠慮せず食らうといい」
 打ち込む雷撃が巨躯を駆け巡り、火花を散らせながら痺れさせてゆく。
 呻く罪人は、動きを鈍らせながらも足掻くように光の刃を放ってきた、が。
 槐が弓で受け止めると──直後に藤子が魔力から明滅する淡い光を顕現。槐の体へと同化させて劇的な治癒力へと変換させる。
「これで傷は問題ないな」
 声に僅かな喜色が在るのは、誰かを支えることへの楽しみを覚えてもいるからか。
 一層笑みは厚く、けれど闘争の苛烈さは隠せずに。藤子は『蒼銀の冴・馮龍』──詠唱により氷を龍と成し罪人を襲わせる。
 オルトロスのクロスが次撃を引き取って攻撃を重ねると、罪人は藤子へ反撃を目論もうとした、が。
「おいおい、お前の相手は俺だぜ?」
 回り込む巨体を阻むのが、克己。
「無視してどっか行こうなんて、つれないじゃないの。ちゃんと最後まで相手してくれよ」
 自身を盾にするように妨害すると、そのまま斬撃に曲線を伝わせ罪人の刀を弾く。そのまま連撃で弓なりの一刀を振るうと、巨躯の足元を深々と斬り裂いた。
 体勢を失った罪人の、傾いだ胸に槐は弓弦を引き絞る。
「そろそろ終わりにするべきだな」
 瞬間、突き刺す鏃が臓物を貫いた。『無慙無愧』を名告る一撃は、善の絶対性をすら否定する業。その理念を体現するよう、慈悲無き衝撃で血煙を噴かせてゆく。
 そこへミントが『華空』──残霊と共に槍と銃で鮮やかな連撃を見舞うと、希季が四神と帝釈天、冥王の力を借り受け銃魔剣を七彩に煌かせていた。
「罪人は罪人らしく地獄に堕ちるといいよー! そこが君のお家に相応しいんだからね!
 見舞う十字斬りは“創世七重奏 - 天衣無縫【神威】”。巨大な虹色の斬閃が交わると、四散した罪人は光の中に消滅していった。

●温泉郷
 家並みのヒールを済ませて無事を告げれば、街はすぐに賑わいを取り戻していた。
 温泉の営業も再開したから──番犬達もそれぞれの時間へ。克己は戦いの前から楽しみにしていた通り、小宿の露天風呂に入っている。
 ぷかりと湯船に浮かぶのは……熱燗の載った盆だ。
「冬にゃ、これが一番だな」
 石造りの縁に軽く背を預けて、猪口に滑らかな液体を注ぐ。それをくい、と呷ると、優しい辛口に喉が温まった。
「ふう──」
 これこそ温泉の醍醐味。
 厳しい戦いの疲れも癒えるというもので──克己は湯気で白んだ空を、微酔いの心地でゆったりと仰いでいた。

「ここも、いい湯ね」
 乳白のすべらなかな温泉で、藤子は寛いだ息をついていた。
 折角の温泉街だから湯巡りも乙なものだと、既に数軒回ってきている。石垣と竹に囲われた風流なここは健康の湯らしく──実際疲労も溶けていくようだ。
 ぬるめの温度をじんわりと堪能すると、預けておいたクロスを連れてその一軒を出る。
「だいぶ温まったわね」
 冬風に涼しさを感じながら暫し道を歩むと、また次の温泉へ。小さな露天を見つけて、そこに入ることにした。
 公衆浴場となっている場だが、丁度人もおらず独り占め。肌に良いという、柔らかな湯ざわりを味わいながら改めて息をついた。
「こういう時間もきっと、悪くないわ」
 入り比べてみると、一つ一つの温泉が違うことが実感できる。
 皆も楽しんでいるかしらね、と、少し外の方向を仰いでみながら。冬空に白い息を昇らせて、藤子は長閑な時間を過ごしていった。

 かぽん、と鹿威しが鳴って小気味よく反響する。
 澄んだ湯は温度をよく肌に伝え、体を快い温かさに包んでくれていた。
「心地いいな……」
 街の一角にある宿。
 そこに、槐は部屋を取って温泉に浸かっている。
 人目をはばからずに楽しみたかったので、湯を独占できる環境は嬉しかった。ゴーグルも外して、瞳も開けて眺めながら入っている。
 文字通りに凍るような経験をした戦いの後だけあって、その温かさは格別だ。
「こちらの温泉は、透明ではないのだな」
 ここは数種の湯を完備していて、違った肌触りと効能を楽しめる。隣の湯に入ると、そこは仄かに色味が付いた乳白だった。
「混沌の水にも似ているが……天然の温泉なのだな」
 心地よい温かさと、湯の柔らかさ。
 深呼吸すると、鼻先を芳香がくすぐって。
「ふるさとに似た香りもする──」
 目を閉じると、過日のことが思い出される気がする。
 過去に未来、この戦いのこと──幾つかの思いを巡らせつつ、槐はまた、別の湯に浸かりながら。ゆっくりと温泉郷の時間を送っていった。

「さあ、早速観光です!」
 楽しげな空気に満ちる温泉街。人波を眺めながら、ミリムも明朗に歩み出していた。
 横に並ぶ希季も、わくわくと見回している。
「最初はどこ行く?」
「そうですね、やはり温泉饅頭は食べていきましょう!」
 と、見つめるのはすぐ先にある売店。
 和の彩の家並みには美味しそうな食べ物が幾つも垣間見え、惹かれないではいられない。
 希季も勿論一緒に買って、饅頭をはむり。褐色の柔らかな皮と、しっとりとした餡が甘くて美味だった。
「んー、温泉饅頭って別に普通の饅頭と変わらないのになんでこう不思議と美味しいんだろうねー? 蒸す際に温泉水とか使ってるのかなー?」
「そうじゃないのもあるみたいですが、ここのは温泉、使ってるみたいですよ!」
 ミリムもはむはむと甘味を楽しみながら──ふとそこにナザクの姿を見つけて駆け寄っていく。
「ナザキュンもほら、ホクホクの饅頭! はい、どうぞ!」
「おや。……いいのか?」
 ナザクが気づいて応えると、ミリムは頷き饅頭を渡す。
「では遠慮なく」
 受け取ったナザクはそれを頂き、優しい風味にうむと頷いた。
 元より、故あって肌を出す事が不得意でもある。だから温泉よりも甘味に興味を抱いていたのだが──その期待に添えるだけの美味しさが饅頭にはあった。
「美味だな」
「良かったです! それじゃあ次はお団子です! 餡子にみたらしに──」
「あ、みたらしあたしも食べるー!!」
 ミリムが歩み出せば、希季も笑顔で駆け寄ってお団子を買って。それをナザクも一緒になって味わいながら、道を進んでいく。
「あ、お土産も買っておきましょうか。巫山さんには和菓子と、それから……」
 と、ミリムが買い物をしながら歩いていくと、そのうちに足湯に辿り着く。
 檜のいい香りの漂う屋根が付いたその一角は、縦長の堀に流された温泉が湯気を上げ、そこに沿ってベンチが敷かれている。
「沢山歩きましたし、浸かっていきましょうか……あ、ペルさん!」
 歩み寄りつつ、ミリムが見る先にはペルがいた。
 ペルも丁度どこかの温泉にでも行こうと思っていた所。ミリムに足湯に誘われると、頷いていた。
「我も試そう。やはり寒い時には温泉に浸かるのが一番だ」
「足湯か。これくらいなら大丈夫かな」
 ナザクも皆と共にベンチに座り、そっと湯に足を入れる。すると温度が足先から沁みるようだ。
「成程。これは確かに」
「やはり足が暖かいと寒さは大分軽減するように感じるな。いい湯だ」
 ペルもおぉ、と感心しながら声を零す。実際、冬風に冷えた体には心地良く、疲れも癒えてゆくようだった。
 ミリムもふー、とリラックスしつつ、そうだと饅頭を取り出す。
「ペルさんも饅頭どうぞ!」
「……頂こう」
 受け取ったペルは、あむりと一口。風情ある甘味に感心の心持ちだった。
「温泉饅頭食べながらというのもまたオツというものだ。クク……これが楽しめると、ちと歳食った気分になるな?」
「それにしても、足湯ってなんか落ち着くよねー。なんでだろー? 程よい温度のお陰なのかな?」
 希季が軽く伸びをすると、ナザクも頷く。
「確かに熱すぎないな」
「ご一緒に、良いですか?」
 と、その近くに腰掛けたのがミント。しっかりと饅頭を買ってから訪れていた。
「ああ、勿論」
 ナザクが肯くと、ミントもぺこりと一礼して湯に足先を入れる。すると優しい温かさに、色の淡い表情にもほんの少しの柔らかさを帯びさせていた。
 ふう、と一息ついて饅頭をぱくり。
「一仕事終えた後の足湯は、とても気持ち良くて疲れが取れますね──」
 人々も温泉も、守ることが出来て良かったと。心地良さと垣間見える人々の笑顔に、ミントは静かに実感を覚えていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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