聖夜のグランドロン救出戦~聖夜に白百合は散るか

作者:のずみりん

 大阪城勢力、四隻のグランドロンが姿を変えた。
 ケルベロスたちが妖精8種族の一つ『グランドロン』のコギトエルゴスムを奪取した事で、大阪城ユグドラシルのデウスエクス大同盟はグランドロンの裏切りを警戒したのだろう。
 ある程度自律的に行動が可能であったグランドロンを城塞型に変化させ、エインヘリアル王族の威光によって完全に支配下に置き、強力な城塞としてのみ機能するように。
 大阪城をぐるりと取り囲む長城へとつくりかえられたグランドロンは第四王女レリが完全に支配下におかれ、完全に意志を封じられた。
 この状態ではグランドロンたちへケルベロスの説得も決して届くことはない。
「……だが、これは大きなチャンスでもある。ケルベロス、今こそ第四王女……白百合騎士団と雌雄を決する時だ」
 リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は言う。
 エインヘリアルの王族の威光で無理やり従わせているのならば、その原因である第四王女レリを取り除いてしまえばいいのだと。
「グランドロンの長城の守りは一見固いが、我々にはグランドロンのコギトエルゴスムが力を貸してくれる。説得に応じてくれたグランドロンのコギトエルゴスムの助けがあれば、人が通れる程の抜け穴を作る事ができるはずだ」
 またこれもグランドロンの助けか、グランドロンの長城内の敵の様子を詳細に予知する事ができているとリリエは言う。
 最適な抜け道を用意できるグランドロンの力があれば、敵に遭遇することなく目的となる敵を強襲する事が可能だろう。
「作戦は抜け穴を利用し、予知によって居場所が判明している白百合騎士団を始めとした指揮官を狙って攻撃を行う。グランドロンを無理やり従わせている第四王女レリを撃破できれば、グランドロンは説得を受け入れてくれるはずだ」
 この作戦に成功すればグランドロンを新たな仲間として迎える事ができるだろう。

「今回の作戦で撃破しなければいけない有力敵は何より第四王女レリだ。彼女はグランドロンの長城の城主であり、その事を騎士の誉れと思っている。その役割と誇りにかけて撤退することはないはずだ」
 その誇りを失わせる……徹底的に性根を踏みにじり、プライドを辱め、存在意義をへし折る程に心をへし折れば別かもしれないが、迂遠かつ悪趣味な真似をしてやるメリットはそうないだろう。
「……話が逸れたな。無論、レリ王女が要塞の要であることは敵も承知だ。彼女を倒すには、それを阻む白百合騎士団幹部、連斬部隊の配下全てを同時に仕留めなければならないだろう」
 レリを含めた有力敵は十名。まず白百合騎士団に残る古参の新鋭隊長『絶影のラリグラス』、また彼女に加え、長城では『閃断のカメリア』、『墜星のリンネア』の二人が新たに幹部として任命されているという。
「抑えられなかった場合、ラリグラスはレリへの救援、カメリアとリンネアは場内の警備部隊を防衛に当たらせてくる。いずれも作戦行動が大きく阻害されてしまうだろう」
 更に第二王女ハール配下より出向の『紫の四片』、彼女は第二王女ハールとの連絡役であり、撃破できなければ第二王女ハールの増援が作戦を妨害する。
「また騎士団と都度都度あらわれた『三連斬のヘルヴォール』と『連斬部隊』も長城の防衛に当たっている……レリがグランドロンの制御に当たっているぶん、防衛隊長としての城主の役は副城主の彼女の役割のようだな」
 ヘルヴォールにはシャイターンの配下『ヘルガ』『フレード』『オッドル』の三人がついており、彼女らを抑えられなければ、またヘルヴォールの撃破は困難となるだろう。
「それともう一人……連斬部隊員の『ヒルドル』という隊員が、間の悪い事に襲撃のタイミングで大阪城へ移動しようとしている。彼女は有力な士官ではないが、撃破できなかった場合、グランドロン襲撃が大阪城に素早く伝わってしまい非常にまずいことになる」

 まとめてしまえばレリ以下の十名、全てを同時に相手取るしかない。
「今回の作戦、グランドロンの助力で潜入できる人数は最大で15チーム、120名余だ。この人数で長城を守るレリと配下あわせて十名の有力敵に対応しなければならない」
 目標とする有力敵への強襲は簡単だが、考える事、考慮すべき事項は山ほどある。
 まず気づかれずに長城まで接近するにはどうするか?
 抜け道から潜入した後の行動は? どの敵を狙うのか?
 有力敵以外の膨大な配下の敵戦力をどう掻い潜り、やりすごすのか?
 また援軍が到達してしまった場合の対処方法、作戦が失敗した場合の撤退手段なども、様々な状況を想定して行動を考える必要があるだろう。
「だが繰り返しになるが、これはチャンスだ。第四王女レリと白百合騎士団、多くの因縁がある相手と今この聖夜なら決着を付けられる」
 グランドロンの救出に成功して帰還すればちょうどクリスマスの頃のはずだ、とリリエは言う。
「ロマンチストを気取るわけではないが……因縁と救出にはちょうどいい頃とは思わないか?」


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
浅川・恭介(ジザニオン・e01367)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)
齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)
湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129)

■リプレイ

●絶影のラリグラス
 完璧な奇襲。先手を取ったのはケルベロスだった。
 ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)たちの隠密気流はじめ徹底した偽装が白百合騎士団の守りを掻い潜ったことは勿論、ケルベロスたちが長じた電子戦・情報戦もまた大きな助けとなった。
「グランドロンのコギトエルゴスムの反応に感……ターゲット、確認」
 『特務支援機用演算外装』の偽装から『強行偵察型アームドフォート』のセンサーを伸ばしたリティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)の報告に頷き一つ。
 目標の向こうに見えた仲間たちへ齋藤・光闇(リリティア様の仮執事・e28622)は手を上げ、存在を確認する。ハル・エーヴィヒカイトからもまた右手を広げ裏返し確認。そして人差し指で左奥を指ししめす様子に、光闇も同じく指さし、そして左手を裏返す。
「目標確認。ハルさんたちはこのまま右を突くそうです」
「任務了解。始めよう……SYSTEM COMBAT MODE」
 歴戦の猟犬たちは多くを語らない。
 フラッタリー・フラッタラーが立てた三本の指が全て倒れたのを合図に、マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)は戦闘モードで『LU100-BARBAROI』クローラーを駆動させた。
「…挟撃? こっちができる事、は相手も同じ様にできる、はず。油断、禁物」
 ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)のいつも通りの眠そうな目、しかしその手にはしっかりとボクスドラゴン『リリ』の姿が構えられていた。

「っ、てきしゅ……!」
 本来なら難攻不落のグランドロンの要塞のただなか、『絶影のラリグラス』含む親衛騎士たちであってもそれは意表を突かれた一撃。
「WEPONS FREE,OPEN ALL FIRE」
「さあ行きなさい。黒鋼の調べと共に!」
 湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129)から受け取った『【妖精砲手の飛翔】』をマークは『エクスガンナーシステム ver.β』に接続。両腕に構えた『M158』多銃身機銃とミサイル、空中の方だによる弾幕の嵐が詰所を襲う。
「気を付ける相手、も1人だしリリで何とかなる? いってこーい」
 空中砲台が描くレーザーアートの縦糸へ縫うように走る曳光弾、十字砲火に殺意のタペストリー。そこへラトゥーニのほおり出したリリが、ボクスブレスで薙ぎ払う。
「この猛攻、まさかレリ殿下を!?」
 圧倒的な混乱と悲鳴の中、二班十六人のケルベロスが駆け抜けた。
「王女の心配をするのは勝手だけど、お前はまずは自分の心配をするといい。先に逝った仲間達が、お前が地獄に来るのを待ってるぞ」
「王女様へのお別れを済ましていないなら、僕が伝えてあげなくもないですよ? 間に合えば……」
 だが殺意のタペストリーを描く弾幕はマークの側からだけではない。
 騒然となる詰所をねめつけたリティと浅川・恭介(ジザニオン・e01367)の挑発に返されたのは二振りの衝撃波。
「その言葉、そのまま返させてもらう」
「あんたが『絶影のラリグラス』……早い!」
 恭介への物騒な返答にハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)が『Heiligtum:zwei』ライアットシールドを叩きつけるようにかざすなか、脇腹が受け切れぬ一撃に切り裂かれた。
「まず……安田さん、みんなを守って!」
 言うまでもないと凶器を構えるテレビウム『安田さん』が、散布されるオウガ粒子の中を変わって飛び出す。剣と鉄パイプが激しく激突した。
「好きにさせるな! 総員、打って出る!」
 瞬く間に体制を立て直し、駆け付けてくる親衛騎士たちにはティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)も舌を巻く。
「鍛えられたのはお互い様のようだな……!」
 一兵卒なれど、彼女らもケルベロスたちと戦い続けた歴戦の戦士だ。
 その機動は圧倒的なケルベロスの軍勢に対し、けして勝るとも劣らない。

●白百合親衛隊
「答えるとは思えないが聞いておこう。今度はどのような手だ、ケルベロス?」
「ご期待通り、答える義理はない」
 回り込みながら撃ちまくるティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)と恭介の竜撃砲が、舞い踊る曲刀に切り返され、戦場に爆発の華を咲かせていく。
 猛攻が途切れ、指揮官を案ずる騎士たちが飛び込んできて状況が動く。
 飛びかかる斧騎士の一撃を庇ったテレビウム『安田さん』の鉄パイプが甲高い音を立てて割れた。
「こちら突破は無理そうですね……ありがとう、安田さん」
 号令も待たず、あまりに早い。
 鞄から引き抜いた『血濡れの鉄パイプ(予備品)』を投げ渡し、恭介はその練度に舌を巻く。
「お前たちはここまでだ、ケルベロス!」
「ふむ、気付かれましたが……しかし私たちも同感、ここは通しませんよ。私達と一緒に少々踊りましょうか、レディ?」
「ん……戦いは数、だけど用心大事」
 ラリグラスの位置する中衛まで、全員の突破は難しいが抑え込むことはできる。
 両の手にドラゴニックハンマーを振るう光闇の挑発に合わせたように、ラトゥーニの『電子魔導書籍』から暗黒縛鎖が放たれた。
 すかさずマークが追撃する。疾走する巨体の装甲がスライド、一斉射撃。
「NAPALM MISSILE STAND BY」
「やらせる……かっ!」
 ミサイルを前にスターサンクチュアリが輝く。
 サーカス軌道のミサイルが尾を引く中、エゴの鎖を引き千切った騎士たちが剣を、盾を構えて受けた。
 再び赤く染まる空間へ激しい閃光が飛び交って牽制しあう。
「来るぞ!」
「来るぜっ!」
 守る騎士とハインツの声が重なり、剣戟が激突した。
「助かったぜ、チビ助……こうなっちまうと迂闊に動けないからな」
 隙を狙い飛び込んだ親衛騎士の剣はオルトロス『チビ助』に弾かれていた。間一髪。
「おっと。せっかくの御来訪、ただでのお返しは……っ、しねぇってんだよぉ!」
 更に飛び出した光闇が逆撃。
 呼び出された『もう1人の光闇(魔人卸し)』がハンマーを投げ捨てるや、手甲と化した戦術超鋼拳を低い姿勢から叩き込む。
 オウガメタルごしの拳に、鎧を徹す重い手ごたえに光闇は普段から想像もつかぬ会心の笑みで投げ捨てた。
「おのれ……!」
「お互いに因縁浅からぬ身。言い訳は致しません、決着を」
 美しき白百合騎士が、一つ散る。その魂に星辰の剣を掲げ響は短く鎮魂を告げた。

●散る花を越えて
「どけ!」
「どくか!」
 守りを固めた盾の騎士へ『Iron Nemesis改』を滑らせ飛び越えようとするティーシャだが、その後背から飛び上がった斧騎士のルーンディバイドが攻撃を阻む。
 距離を置いていなければ危ないところだった。掠める斧刃の衝撃が『擬態用マルチウェア』の表層を抉っていく。
「それはこちらのッ!」
「おっと、いかせるか!」
 勢いのままにルーンアックスを振るい迫る騎士に、身を起こしたハインツが体ごと割って入る。
 直接攻撃の手はないが、それゆえに盾に専念できる。
「ティーシャ、止めを」
「助かる、そして皆まで言うな!」
 電磁施術攻杖に再起動したティーシャが『バスターライフルMark9』の引き金を突き付けて引く。
 ゼログラビトン弾がライアットシールドに斧騎士を叩きつけていく。
「が、は……っ」
「ミュゲットさんにヴィンデさん、そしてレリ王女。私も、白百合騎士団とは、因縁浅からぬ身となりました……本当に、素敵な方々」
 愛おしくも悲しそうに目を細め、響はゾディアックソードを倒れた斧騎士へと突き立てた。
 星座の重力がデウスエクス……エインヘリアルたる白百合騎士へと打ち込まれ、不死の命を散らしていく。
 一瞥し、ラリグラスはわずかに顔を伏せる。
 そこに罵声もなく、撃破の高揚もない。
「……道は違っても、あんたらの中に正義があることを、オレはまだ信じているぜ」
 霜のふった腕でフローレスフラワーズを放ちながら、ハインツは息を吐く。
 対話の可能性はもはやない。互いが互いに奪われたもの、守りたいものがあり、都度重なる因縁がたどり着いた結論は命を持っての決着。
「正々堂々……と言い難いのは残念だが、今ここで決着をつけるんだぜ……!」
「思い上がるな、ケルベロス。我ら白百合騎士団、この程度の奇策で優位などとらせん!」
 指揮を引き継いだ剣の騎士が突撃を構える。半ば強がりであるが半ば事実、そしてわずかにはケルベロスたちへの慮りもあったのかもしれない。
「突破……できるかな」
「ん、様子見」
 恭介に頷き、傷の増えたボクスドラゴン『リリ』の箱へとラトゥーニはゴーストヒールを投げかける。
 ラリグラスと戦う黒住・舞彩たちの因縁は互角から劣勢。突破か、慎重にいくべきか。
 見つめた『安田さん』の液晶は、押し込む親衛隊と打ち合いながら無表情のままに語っていた。
『信じる道を行け』
「……そうだね、安田さん。行こう」
 オラトリオの力を帯びた花を恭介は掴む。たむけのようにまかれる『でぃていんぺたるず』が、白百合の騎士たちを封じんと戦場を舞う。
「突っ切るぞ、デウスエクリプス!」
 膝をつく白百合の騎士めがけ、残霊のジャイロフラフープを接続したティーシャが走る。
 加速を載せたマスドライバー型アームドフォートがシールドを切り裂く瞬間、マークの『T307D・CORE』コアが展開露出する。
「CORE BLASTER MAX POWER MODE……ON FIRE」
「殿下、ラリグラス様……御武運を……!」
 叫び、祈り。白百合の騎士の全てを膨大な奔流は光の中へと消し去っていった。

●見届けた者たちへ
「……力及ばずも、よくもたせたくれた」
 飛来するドローンの姿に絶影のラリグラスは悟ったように息を吐いた。
「こ、これは……、どういう事で、ありますか!?」
「待たせたな! さぁ、あと一歩だ! トイ、トイ、トイ!!」
 裏付けたのは驚くクリームヒルト・フィムブルヴェトと、それをもたらしたハインツの『激励の鬨《蔦》』を叫ぶ声。
「進路クリア、対象とのデータリンク確立。これより、適切な医療術式及び薬剤投与に関する技術支援をリアルタイムで行う」
 蔦状のオーラがたちの傷口を縫い付けるように癒すなか、リティのドローンが施す『メディカル・エスコーター』が癒しの力をも活性化させていく。
 一進一退の攻防が続いたラリグラスとの戦いに今、最後の一押しが加わった。
「決着……つけましょう」
 ラリグラスと対峙する舞彩が『竜殺しの大剣』を構える。
「その信念には敬意を評するが、わりぃがサシとはいってられねぇ」
「気にするな。いや……光栄だ。異なる魂の者よ」
 光闇のオウガメタルが放つ、絶望の黒光に照らされてをラリグラスは舞う。
 二刀の剣が大剣を払い、響の妖精砲手が衝撃波に打ち落とされていく。
「これが死にぞこないの動きなんてっ!?」
「私も驚いているさ! ここまで追い詰められ、まだ戦える……そうさせてくれた」
 恭介に答え、『でぃていんぺたるず』を払い落すラリグラスは、誰が、と言わなかった。
「自害して、宝石化してまだ手遅れでは、ないかも」
「殺すつもり……ではなかったのかしら?」
 思わず口をついた舞彩の呼びかけに、ラリグラスは首を横に振る。
「……正直に言うわ。さっき言った『殺しに来た』ってこと。あれは、自分の為よ。そう口に出さないと、手を抜いてしまうから……」
「私はレリ様の騎士。あなたも、判っているはずよね?」
 幾度となく剣を交えた相手との記憶を確かめ合うように、あえて言葉に出す。
 終焉を示すように距離がゆっくりと縮められていく。
「絶影のラリグラス……貴女も、王女殿下をお慕いなのですね」
 道を違えてなお、その忠義は美しく輝いている。両断され炸裂する妖精砲手のただなか、響は祈るようにマインドシールドを託す。
「……レリ様に恥じぬ騎士として。……最期まで!」
「お願いします、彼女を」
 渾身の一撃が受けた舞彩の大剣を押し込み、勢いのままに肩口をつく。
 だがそこまでだ。
「受け止めた……あなたの、覚悟を!」
 力尽きたラリグラスを『我竜爆火雷』の十字が捉え、交差を穿つハルの『境界解放・蒼空断絶』
 その始終を十六人のケルベロスたちは見た。
「聖夜に白百合よ散れ……舞う粉雪のように」
 倒れる体を看取るように、リティの声が囁き謡う。
 そしてその場に動くものは、ケルベロスたちだけとなった。

「合流、は……ぃく?」
 随分と時間はかかってしまった。
 それでも眠そうに首を傾げるラトゥーニに、響は毅然という。
「いかなければなりません。レリ王女はどう生き、どう散ったのか、尋ねなければ」
 語り継ぐ為に。ヴァルキュリアの少女は行って前を向く。
「絶影のラリグラス。その忠義と誇り、確かに見届けました。貴女の……貴方達の事は、決して忘れません」
「そうだな。誰かの記録となれば、それは……R/D-1」
 ケルベロスたちは歩き出す。見届けるために。
 後に一輪の白百合を残したマークの、彼の中で記憶となった『R/D-1』戦術システムが何を言ったのか。
 黒鋼の身体は黙した背中で、意志だけを示した。

作者:のずみりん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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