自分が優位に立つなら、どんな手を使ってもいい！

■リプレイ

●廃墟化したビルの前
「……なるほど、勝ちゃぁいい、ねぇ。ククク、大賛成だぜ。どんな手段を使ってもいいから、ぶっ殺せばいいんだろ？」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）は不気味な笑みを浮かべながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている廃墟と化したビルにやってきた。
　ビルシャナは自分が優位に立つ事が出来るのであれば、どんな手を使ってもいいと思っているらしく、信者達に汚い手を使った戦い方を伝授しているようである。
　そのためか、清春もいつもと比べて欲望に忠実で、ケルベロスにあるまじきダーティな雰囲気が漂っていた。
「これって、物語だと所謂悪役のセリフですね。そして、ほぼ負けるという」
　そんな中、若生・めぐみ（めぐみんカワイイ・e04506）が事前に配られた資料を一読し、呆れた様子で溜息をもらした。
　この時点で、ビルシャナ達は負けフラグを踏んでいるため、どう頑張っても勝ち目はない。
　その事をビルシャナ達がまったく理解していないため、万が一奇跡が起こったとしても、自爆しそうな勢いだった。
「……って、マジか！？　んじゃ、俺は負け確定ッ！？　いやいや、駄目だろ。だって、俺ケルベロス側じゃん！？　撤回できねーかな？　出来るよな？」
　清春がハッとした表情を浮かべ、空に向かって問いかけた。
　しかし、空は何も答えない。
　どんなに頑張って叫んでも、『……大丈夫だ、問題ない』とは答えてくれなかった。
「いまさら撤回したところで、手遅れ……って事にならなければいいけど……」
　エリザベス・ナイツ（焔姫・e45135）が清春を見つめ、不安な気持ちになった。
　何となく清春が死亡フラグの女神達に囲まれ、ハーレム状態になっているような気もするが、あえて口にはしなかった。
「……とは言え、ケルベロスに対してルール無用を仕掛けるなんて……虎の爪のさびになるが良いのです！　……あっ、もちろん命までは奪わないのです！」
　八点鐘・あこ（にゃージックファイター・e36004）が爪をキランと輝かせ、その途中で我に返って咳き込んだ。
　危うく、みんな纏めてデストロイ状態だった事もあり、慌てて考えを改めてビルシャナだけフルボッコする方向性に修正したようである。
「まあ、ビルシャナは屠殺に巻き込んで、お仕置きというのもありかもしれませんけど、とりあえず、信者だけでも説得しておきましょうか」
　そう言って、めぐみが複雑な気持ちになりつつ、廃墟と化したビルに足を踏み入れるのであった。

●ビル内
「いいか、お前ら！　手段を選ぶなッ！　どんな手段を使っても勝てばいいッ！　世の中、結果がすべて！　まわりの奴等は、結果にしか興味がない！　だから、俺を信じろ！　そうすれば、お前達を勝利に導いてやる！」
　ビルの中ではビルシャナが信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
　信者達はみんなビルシャナの言葉を鵜呑みにしており、武器も禍々しいデザインのモノばかり持っていた。
「……私はそういう考え方って好きになれない。歴史の上でもね、敗者の美学ってあると思う……卑怯な手段に屈しないで正々堂々戦った人って例えば、負けちゃっても後の歴史では再評価されたり愛されたりするから……。どんな手を使っても優位に立つのがまかり通っちゃったら、世の中、うまく回らないし……涙を流す人も、たくさん出てきちゃうから……。あなた達も本当は何を使っても優位に……なんて考えてないよね？」
　そんな中、エリザベスが信者達の前に立ち、彼らの顔色を窺った。
「考えていちゃ悪いか！？　俺達にとって、何よりも重要なのは、勝利ッ！　つまり勝つ事だ！　そう言った意味で、俺達は身も心もビルシャナ様に捧げているんだよぉ！　もちろん、勝つために、な！」
　モヒカン頭の男性信者が、イラついた様子で答えを返した。
「そんな事をして勝ったとしても、相手が負けを認めないでしょうね。そして、あなた達がやったように色々な策を仕掛けてくる可能性もありますし……。そしてエスカレートしていき、どちらかが命を落とすと。……それはあなた達かも知れませんよ」
　めぐみが含みのある笑みを浮かべ、モヒカン頭の男性信者を睨みつけた。
「そ、そんな怖ぇ顔をしても、俺達は間違っちゃいねぇ！　正しいのは俺達ッ！　俺達だけだ！　だから、勝つ！　絶対に勝つ！　俺達が負ける事は絶対にねぇ！　例え、どんなことがあっても、俺達は負けねぇ！　何故なら、俺達の存在自体が勝ちだからだ！」
　モヒカン頭の男性信者が、自信満々な様子で答えを返した。
　途中から何を言っているのか分からなくなっているものの、要するに『俺達は凄く強い』という事を言いたいようである。
「でも、想像力ってのは大事だぜ？ 考えろよ、あらゆる手段をつかってテメェらを正気に戻すケルベロスを、よ。それでも怖くねえなら、ま、実際に見てみっか？　あー？」
　それに腹を立てた清春がオラオラモードで、モヒカン頭の男性信者に迫っていった。
「あぁん！？　いい度胸じゃねぇか！　やれるモンなら、やってみろ！　テメェなんか、３秒で返り討ちだ！　カップラーメンが出来る時間も掛かんねぇから覚悟しやがれ、この野郎！」
　モヒカン頭の男性信者もトサカに来た様子で、清春にギリギリまで顔を近づけ啖呵を切った。
　そのためか、死亡フラグの女神が二人の顔を交互に見つめ、品定めをするような感じになっていた。
「だったら、正々堂々と勝負するのです！」
　あこがビルシャナ達の前に陣取り、キリリとした表情を浮かべた。
「おいおい、それはタチの悪い冗談か？　嘘だろ？　だって、お前、ガキじゃん。俺はガギを殴る趣味はねぇんだが……。小生意気なガキは、御仕置きした方がイイって言うしな。二度と年上に生意気な事を言えねぇようにする必要があるか。まあ、これも運命だと思って、諦めてくれや！」
　モヒカン頭の男性信者が、狂ったように笑い声を響かせた。
　おそらく、あこが9歳の女子であるため、絶対に勝てると思い込んでいるのだろう。
　まわりにいた信者達も、小馬鹿にした様子で笑い声を響かせ、完全にあこを見下している様子であった。
「まあ、イイじゃねえか。本人がボコられる事を望んでいるんだから……。要するに勝ちゃあイイんだ！　例え、相手が誰であってもなァ！　やれ、お前達ッ！　俺達に勝負を挑んだ事を後悔させてやれ！」
　ビルシャナもゲスな笑みを浮かべ、まわりにいた信者達を嗾けた。
　その指示に従って信者達がヒャッハーと飛び上がり、ケルベロス達に攻撃を仕掛けていった。
　その中には砂をかけてきたり、胡椒玉を投げてくる者もいたが、ケルベロス相手ではまったく意味のない事ばかりであった。
「一応、手加減しますけど、致命的なことになっても恨まないでくださいね。それこそ、鳥に勝つための犠牲ですし……」
　めぐみが最後の警告をした後、信者達に手加減しつつ、次々と意識を奪っていった。
　あこも素早い身のこなしで、モヒカン頭の男性信者が放った一撃を避け、鳩尾に軽く一発ブチ込んだ。
　その間、清春は死亡フラグの女神達に翻弄され、何度も不自然な死を迎えそうになった。
「もう諦めて、ベルをもふもふするがいいのです！」
　そう言って、あこが勝ち誇った様子で、ウイングキャットのベルと一緒に、えっへんと胸を張った。

●ビルシャナ
「ええい、軟弱者どもめ！　俺が見本を見せてやる！　お前達はそれまで地べたに這いつくばって、俺の姿を目に焼き付けろ！」
　すぐさま、ビルシャナが強力なビームを放ち、傍にいた清春を攻撃した。
「どうやら、悲鳴をあげる準備は出来ているようだな、クソ鳥野郎ッ！」
　その攻撃をギリギリの所で避け、カウンター気味にエクスカリバールを振り下ろし、ビルシャナに反撃を仕掛けた。
「教祖さんだけは容赦をしないのです！」
　それに合わせて、あこが地獄にゃん爪殺法（ジゴクニャンヅメサッポウ）を仕掛け、伸ばされた爪による恐るべき引っ掻きの乱舞で、ビルシャナの顔を引っ掻いた。
「グギャアアアア！　痛い、痛いッ！　やめてくれ！」
　ビルシャナが悲鳴を上げながら、あこの傍から逃げ出したものの、逃げた先にいたのはめぐみであった。
「複数で攻撃するのも、勝つためですから、苦情は受け付けません」
　めぐみがビルシャナの言葉を遮るようにして、ボディに一発……強烈な一撃を食らわせた。
「ぐほおおおおおおおおおお！」
　それはビルシャナがまるで豆鉄砲を喰らったのではないかと錯覚してしまう程、強烈な一撃ッ！
「ぐがが……ぐぐ……」
　そのため、ビルシャナは呻き声にも似た言葉しか発する事が出来ず、悔しそうにクチバシをパクパクさせた。
「これで分かったでしょ。どんな汚い手を使っても、負ける時は負けるって……」
　次の瞬間、エリザベスがアルダナリースウィングを仕掛け、自分の体の中に眠るグラビティを賦活化すると、強力なグラビティを自分の武器に乗せ、ビルシャナを薙ぎ払った。
「ち、畜生ッ！　こんなところで負ける訳には……負ける訳には行かないんだァ！　せめて、一撃だけで……も……」
　その一撃を喰らったビルシャナが血の泡を吐きながら、崩れ落ちるようにして、血溜まりの中に沈んでいった。
「あー、ちっとばかし燃えたなぁ」
　その事を確認した後、清春がホッとした様子で、酒をグイッと飲んだ。
　何やら不自然なほど死にそうな目に遭ったものの、何とか無事であったおかげか、いつもより酒が美味く感じられた。
「……俺達は負けたのか」
　モヒカン頭の男性信者が、悔しそうに床を叩いた。
「とりあえず、手段は選んだほうが良いのです……」
　あこが神妙な表情を浮かべ、信者達に説教をし始めた。
「例え、それで負けたとしても、必ず見ている人がいるはずだから……」
　エリザベスがモヒカン頭の信者を見下ろし、優しく手を差し伸べた。
「まあ、次は負けねぇ。正々堂々と戦ってやるから、覚悟しておけよ」
　その手をガッチリと掴み取り、モヒカン頭の男性信者がニヤリと笑った。
「まあ、勝ちたい相手がいるなら、策を弄するより、自分を鍛え正々堂々正面から、挑み勝つ方がお互いの為ですからね」
　そう言って、めぐみがモヒカン頭の男性信者を見つめ、ニコリと微笑むのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2019年12月11日 難度：普通 参加：4人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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