カラオケロボ! 幻の服強奪作戦

作者:大丁

 昼間の歓楽街は、立ち並ぶビルの派手さに反して、静かだった。ほとんどの店舗が、準備中だからである。
 ゆえに、短い手足をスピーカーで構成し、寸胴な体幹を液晶パネルやインジケーターで覆ったカラオケロボが、どこから現れたのか、誰も知らなかった。
 ビルの3階に届く巨体だったとしても。

 ブリーフィングルームの壇上では、歌唱が披露されていた。
 ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)が、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)と対面し、敵グラビティの再現デモンストレーションを行っているのである。
 『幻影のリコレクション』だ。
 ミュージックファイターや、一部の探索ではおなじみの曲である。敵に聞かせれば、信念を揺るがし、武器を封じる。
 もちろん、冬美は武器を扱えないので、ダメージを与えないようにしていれば、なんの効果もないはずなのだが。
 サビに入ったところで、ロージーは冬美の肩に触れる。ポンチョは首元で支える構造だから、そこに一撃が加わると……。
 パンっとはじけて、ビニール地が床に散った。フードは被っているものの、首から下にはゴム長靴のみ。
 しかしながら、集められたケルベロスたちの席へは、身体を真横に向けているので、ロージーの指がトップを隠してやれば、意外と肝心なものは見えない。
「わかったかな? 『幻影のリコレクション』と『破鎧衝』の、いいとこどりなのよぉ♪」
 デモがうまくいって、冬美は上機嫌だが、顔をちょっと傾けただけだ。代わって、ロージーが、説明する。
「今度の廃棄家電ダモクレスは、カラオケ機材が元なんです。機械だから? 頑健さで、離れたところに魔法の音楽をひろめて、服まで破る……で、あってます?」
「そうなのぉ。ミュージックファイターと鎧装騎兵を務めているロージーちゃんのおかげで判明したのよ。あと、武器封じバージョンもあるからね」
 現場は、平日昼間の歓楽街で、人通りはまだ少ない。事前に張っておくこともできるが、カラオケロボの出現方向は判らない。大きな被害が出る前に、抑えられるはずとのことだった。
「レッツゴー♪ ケルベロス♪」
 見える、見える! と、客が騒いで。


参加者
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)
高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)
レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)

■リプレイ

●人を探して
 タイル敷きの街路を歩きながら、レイファ・ラース(シャドウエルフの螺旋忍者・e66524)はコートの前をぎゅっと閉じた。
「音楽で服も破るのですか……随分と進歩していますね」
 対して、ロージー・フラッグ(ラディアントハート・e25051)は気楽そうだ。
「ダモクレスの融合技には、ビックリさせられますねー。本職の歌い手としては、負けるわけにはいかないですけど」
 マイクも持参している。小柄なふたりを獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)は見下ろして。
「敵は、カラオケ機自体が歌うのね。その変態マシン、絶対止めよう」
「でないと、うるさそう……。あと、3階ぐらいって……大きい」
 無表情に、空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)は、並び立つビルを眺めた。そろそろ、指示された街区だ。
 巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)は、ファミレス制服に上着を引っかけてきている。いったん、眼鏡をふいて。
「デカイのに見つからないんでしょう? 確かに、昼間の歓楽街って、言われたとおり人が歩いていませんね。……さっき、ましろさんに話しかけてきたオジさんくらい?」
「こんな時間に制服姿でこんなとこにいるので、援助交際とかパパ活とかと思ったらしくて……な、なんでもないです、離れててもらうように説明しましたっ!」
 学校指定の防寒着は、高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)をかえって震えさせた。
 現地に集合したケルベロスらは、敵の出現をただ待つようなことが、どうしてもできなかった。
 しかし、大勢の人がいるところでの避難指示ならば、流れとなって動いていってくれるかもしれないが、そうした力は、人のまばらな場所では生まれにくい。
 建物内の検索ともなれば、一軒ずつ訪問する必要がでてきて、そこまでの時間と人手はなかった。
 もう一方の手段として、カラオケロボに対し、歌でも歌いそうな雰囲気を示し、注意を引きつける準備もしてきていた。
 機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は、フリルのついたアイドルっぽい衣装。盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)は、丈がミニになるように改造した巫女服だ。
 銀子は、ふと気が付いて、立ち止まった。
「歌に引き寄せられるとしたら……」
 営業中の看板が出ている店舗があった。しかもそれはカラオケ屋であった。
「ここ、狙ってくるんじゃないかしら?」
 警察官としての勘が働いたか。コートに手をかけ、戦闘モードに入りかけている。決め打ちではあるが、仲間たちも信じて、店内の受付へと進んだ。
 ビルの3階から上が、個室となっており、路地に面した大部屋に客がいるとわかる。
 窓のない壁がブチぬけて、モニターディスプレイから変形したであろうカラオケロボの顔がのぞいたのは、ギリギリ間に合った後であった。
 廊下への移動も危険そうなので、客たちには奥の壁に寄ってもらう。ミニ巫女服が誘導した。
「ふわりたちはねー。ケルベロスなのー。ちっとも怖くないから、ふわりたちの活躍をそこから見ててなの♪」
 かくまいながら戦うことにはなるが、レイファの殺界が効果を発揮しだしたので、界隈に残っていた人々は、遠ざけられるはずだ。
 形成と同時にコートを脱いで、ボンテージ型の戦闘服姿となった。
 ましろはすでに、魔法少女へと変身している。一同も、慌ただしく上着を脱いで放る。

●音攻撃
 壁が崩れてできた開口部から、向かいのビルが見えている。廃棄家電ダモクレスのサイズからすれば、建物と建物の隙間に入り込んでいるような感じだ。
 そのカラオケロボは、ガッツポーズのように、両腕を構えた。
 判っている。そこがスピーカーだからだ。
「全力でお守りしますよ……!」
 ロージーは、セクシークロスをはためかせて号令する。ケルベロスらは重なるように配置につき、メロディーを遮断しようとした。
 ディフェンダーは4人いる。そのひとり、無月(なづき)が身に着けているのは、大胆な穴が胸元から腹部まであいた黒いフィルムスーツ。それでいて、ノースリーブのハイレグカットだ。
 薄くて少ない布地に、電子回路の織り込まれた、着る分析器なのである。
 敵から流れてきたものは、音圧というか、部屋の空気ごとを押してきていると分かった。
 歌詞は確かに、『幻リコ』だが、ところどころ原曲から転調されていたり、いつまでたってもサビにいかなかったりと、重苦しい。
「邪悪な。この白の魔法少女が、かならず倒して……へっ!? 杖から手が離れませんっ!?」
 ましろの手が、遠距離用魔法ステッキを短く握ったままになり、構えに支障が出ている。レイファのブーツも、足裏どうしで引っ付いてしまった。
「私たちが、武器封じを受けたみたいです。あぁ……!」
 ガニ股になったまま後ろに転倒する。
 魔法少女とボンテージ。芸能人的な衣装との類似はある。やはり、歌手や歌唱に関わりがあれば、ダモクレスを引き付けられそうだ。
 真理は、ライドキャリバーのプライド・ワンに、ミラーボール的なライトアップをさせた。
「カラオケロボの特性がわかったのなら、その注意をひくまでです」
 アイドル衣装で踊った。くるくると回転しながら、ズタズタラッシュを織り込むのも忘れない。
 ふわりも続き、ミニ巫女服で舞いながら、風に乗せ、波に乗せ、氷結技を投げる。
 だが、次第に帯が緩んできている。それだけで恐らく、和装は弾けてしまうだろう。
 巫女服の前に、真理が重なる。回転するアイドル衣装で、音波をいなすが、徐々に削れていってしまうのは、致し方ない。
 帯を締め直して、礼を言うと、ふわりは最前列に呼び掛けた。
「コスプレで敵も注目なのー。銀子ちゃんも菫ちゃんも正解なのー♪」
 銀子は、怒鳴りかえす。
「コスプレじゃない。本職よ!」
 半袖ポリスシャツに、シャープなホットパンツの、婦人警官だ。
 菫もプンプンと怒ったようなポーズをとる。
「バイトと言っても、本物のファミレス制服ですから! さあ、お掃除の時間です!」
 『雑巾手裏剣(ゾウキンシュリケン)』を投げた。コンクリートの破片をふき取りながらフロアを滑っていき、端から落ちる。
 その後、地面まで拭いて、ダモクレスの足元を不安定にし、片足のスピーカーに変調を与える。
 もう片方は、無月が狙っている。
「足元……注意……。……もう遅いけど」
 街路のタイル敷きを突き破って槍の束が、足スピーカーを串刺しにする。『摩天槍楼(マテンソウロウ)』だ。
 部屋から見えていた、巨大ロボの頭部が大きく傾いたので、客たちは歓声をあげた。
 つい、立ち上がって様子を見ようとするものも出てきて、射線をさえぎったロージーのセクシークロスがビリビリになってしまった。
 パステルブルー基調のブラとショーツが、破れ目から覗く。
「ケルベロスさん、ごめんなさい! あーあ……」
「いいんですよー。もうちょっと、待っててくださいね」
 ロージーは、朗らかに笑ったが、一般人はまた驚きの声をあげる。
「あれ、もしかして……!」
 時間差のようにバラけ、パステルブルーも抵抗なく千切れて落ちた。

●弱点構造
 かばってくれる盾が4枚あるとはいえ、ずっと無傷とはいかない。
 銀子は果敢に、ダモクレス頭部へと肉薄していたが、ついに重い低音を正面からくらってしまった。
 ポリスシャツに留めたバッジが、プツンと外れる。構造的にはありえないが、そのピンがシャツを固定していたかのように、スルスルと銀子の体から脱げてしまう。
「く、こんなのもう慣れてるし……うぅ」
 再度の突撃を試みるも、自身の感情に阻まれている。それこそ、前に進めない。
 服以上に大切なものを失ったかのように両膝をつくと、ショートパンツも足首から抜けた。黒のTバックが、尻肉を強調する。
 後衛ふたりにも、服破りエディションが届いた。
 魔法服を失うましろは、身体を隠そうにも、杖から手が離れず。
「きゃああっ! 一般人の皆さん、見ないでくださいっ!」
 当然の反応に思えるが、応援したい気持ちもあるし、ふわりからは見ててと言われている。
 レイファにいたっては、でんぐり返しになったまま、ボンテージがなくなった。
 武器封じにより、足裏はくっついたまま。オウガメタルが、隠してくれるはずが、これも挙動がおかしく、むしろ秘部を左右にこじ開けた。
 とまどう一般人たちも、ナカが覗けるさまに、チラチラと視線を戻してしまう。ほかのケルベロスたちの脱衣へも同様だ。
 菫の慌てっぷりは目立つ。
「私の制服は破るな……って、言う前に破られた! エプロンと靴下だけ残したら……裸エプロンみたいじゃないですか!」
 なんとなく、反論があった。腰から下に巻くスタイルになっている。おっぱい丸出しならば……。
「ノーパンしゃぶしゃぶ? 行ったことないけど」
 小声のツッコミに、菫は反応した。
「誰がノーパンしゃぶしゃぶだあ。うちは健全な飲食店だあ」
 ボカシをいれようと、メディックにかわってサキュバスミストを撒く。
 レイファとて、不格好ながら回復役を務めているが、天地逆でのフラワーズでは、自分のを開花させるばかり。
「あふう、アッ、アッ!」
 蜜では済まず、噴水のように小水を、床へとむけて噴出し、小池をつくっていた。
 さすがに、男性客はひきぎみだ。
 銀子も、彼らに見せようとしている。残ったTバックを自ら脱いで。
 鍵を掛けられたような心には、なぜか、春先に出会った痴女が浮かんでいた。
 今の自分は、あのときの犯罪者以下ではないか。
 カラオケルームの内装に、ましろの心にも浮かぶものがあった。クラスメートの男子と、デートしてそれで……。
 やがて、内のみならず、ダモクレスの頭部ディスプレイが、外へと映像化しはじめる。
 次に映ったのは、真理のこれまでの戦いでみせた痴態と、それに興奮して溢れさせている陰部だ。
「や、そんなにいやらしくはないのですよ!」
 弁解する真理のそこは、現実ともなった。ボロけたスカートの下から、とろーりと垂れる。その状態を大声で指摘したのは、ふわりだ。
「真理ちゃん、いいですの! ふわりもいっぱい見てほしいですの!」
 巫女服がほどけて飛んでく。ケルベロスらから奪われた衣類は、音に吹かれて室内を舞っていたが、方々にぶつかって跳ね返ると、壁のなくなった面から、出ていってしまった。
 全裸になっても武装を操っていたロージーが、納得の声をあげる。
「あー、そっかー。リコレクションですよ。『記憶』から構造的な弱点を見つけているんです」
 言ってしまってから、歌手としての対抗意識が湧いてくる。
 無月は、不快げに眉をひそめたまま動き回っていた。あちこち破られたフィルムスーツ。
 敵が弱点を解析してくるなら、こちらはスーツにも演算させて、先回りするだけ。盾役を預かったからには。
「わたしは……戦うしか……ない」
「ひょっとして、起こってない記憶まで、回想されてるんじゃ、ないですかっ?!」
 ましろを正気に戻した。男子とデートなど、したことない。
 ケルベロスとダモクレスがグラビティをぶつけ合った結果、共に決定的な火力を損なっていた。
 からくりが判ったとて、思いに囚われた身体は、ずっしりと重かったのだ。

●観客と共に
 『Colorfull☆World(カラフル・ワールド)』を、ロージーが唄い、客たちは反応する。持ち歌に声、そしてルックスがそこにあるのだから。
 改めてみるに、大部屋にいたのは、学生の男女が10数人だった。大学で休講があり、そろって遊びに来ていたのだ。
 突然に現れたアイドル本人に、それも衣装をなくした裸に、舞い上がって殺到し、揉みくちゃにした。
 敵の攻撃は音楽なので、また下がらせるよりも、ロージーの歌の圏内いさせるべきと、銀子だけを接敵させ、男も女も、ケルベロスも一般人も、ひとかたまりになる。
「ふわりにはね、見るだけでなくって、さわってもいいの」
 男たちの手をとって、導いた。
「魔法少女さん、隠したいんだよね。オレたちも手を貸すよ」
 ましろは、自由のきかないかわりに、小さな胸を覆われる。股間にのびた指は、くちゅくちゅと出し入れされて。
「あっ、ひゃんっ、ああっ!」
「誘ったわけではないです……んんっ!」
 真理のお尻は掴まれて、すでにトロトロと証明されている奥を弄られている。
 女性たちは、レイファの粗相を、お手拭きなどを拾ってきて始末しようとしていたが、いつのまにか自らの身で受けていた。
「止まらないんです……。私にもください!」
「ほら、そこのギャラリー。ナントカしゃぶしゃぶ言ったヤツ。かぶりついちゃダメですよ?」
 菫は、ミストのもやを晴らさず、うっすら見えるのがロマンと忠告する。
 前線でひとり銀子は、ランスもパイルバンカーも、取り落としそうになっていた。
「くふう、まずい。でも、限界……!」
 また、膝立ちになると、最初は指、つぎに装備をつかって、自らを慰めはじめた。
「み、見るなら、見て。もう、隠せないから……あああッ!」
 ウィンウィンとうなる道具が、2穴に入っている。その隙間からの潮吹きで、達したことが皆に分かってしまった。
 けれども。
「あれ? 一回イッたら、スッキリして平気になったわ」
 男を遠ざけていた菫も、ポンと手を叩き。
「確かに、心がリセットされるような感じ、ありますもんね」
 復活した銀子は、『術紋・獅子心重撃(ジュモン・レオンハートインパクト)』で生身を強化し、胸を尻をと揺らしてダモクレスの顔に、素手でのラッシュを叩き込んだ。武器は入ったままだ。
 薫は一転して、男たちを剥き、達しようと挿入を促した。
「足腰立たなくなるまで搾り取りますよ? おねーさん底なしですから」
 自分で撒き散らしたサキュバスミストの効果だった可能性もあるが、イケれば心の戒めを解除できると信じる。
 ケルベロスと取り巻きも応じた。ふわりにも、ましろにも、真理へも陰茎が、何人分もかわりばんこに出入りした。
 一回でいいと言ったのに。
 レイファは女性陣と吸い合っている。というか、最初から何度も達している。
 そんな仲間たちと、応援してくれる人々との一体感に、無月もわずかに、表情の緊張を緩めた。
「わたしも……踊ってみよう、かな」
 フローレスの花びらをまく。プライド・ワンの照明のなか、ロージーの姿が。
「これが本当の幻リコですよ!」
 両手に何本ものマイク、に似た形のものを握りしめ、ロージーはサビを響かせた。
 ふわり、ましろの氷がのって、ロボの全システムをズタズタにする。
 廃棄家電のディスプレイは、街路へと崩れ去っていった。皆が縁にまで来て、勝利を確認する。
 たぶん、このあとビルの壁を塞がなければならないだろう。
 が、しばし、続きを楽しむ。人通りが増えるまでは、まだ十分あるのだ。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。