絶対に揉んでしまうおっぱい

作者:星垣えん

●おっぱい×おっぱい
 冷たい月明かりの下で。
 ばいんばいん、と上下に揺れていた。
 おっぱいが。
「冬の海は人がいなくていいですね」
 とかほざきながら、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は全裸フォームで無意味にジャンプを繰り返していた。ジャンプして巨乳が揺れていた。
 寒いからだろう。
 寒いから運動して体を温めているのだろう。
 そもそも海辺に全裸でいること自体がもうアウトなのだが、せめてエンドレスジャンプしてるのは真っ当な理由があると信じることにしよう。
 ――だが、ふとひっかかるものを感じて、シフカが動きを止める。
「……しかし本当に人がいませんね。いくらオフシーズンとはいえ、5時間もいれば人に遭遇したりしそうなものですが」
 訝しげに辺りを見回すシフカ。
 しかし辺りはしんと静まり返り、こちらを見て泡食ったように通報する人の姿もない。
 今日はとてもラッキーな日なのでしょうか――。
 なんて思いながら、傍に置いていたスーツを帰るために(渋々)着ようとするシフカ。
 が、彼女がスーツを手に取ったその瞬間だった。
「あら、着てしまうんですか? せっかくの良いおっぱいを隠すだなんてもったいなぁい」
「……誰です?」
 背後から聞こえた声に、シフカは振り向きもせず尋ねた。
 言葉とは裏腹に、その敵の正体にだいたいは勘づいていたからだ。
 女だった。
 長い黒髪をした女。それ以外に特筆すべきこともない女。
 だが、爆乳だった。
 破壊的な爆乳がぴっちりボディスーツの胸部から、はちきれんばかりの自己主張を繰り出してきていた。しかも、それでいて魅惑的な柔らかさまで備えているのだ!
「シフカさん、申し訳ないのですけどぉ、殺らせていただきますねー」
「私を、ですか。お母様の命令でしょうか? それとも挟美さんですかね?」
「さぁ、どうなんでしょうねー? でもそーゆーこと訊きたいんでしたらぁ――」
 シフカから仕掛けられた問答をはぐらかした女が、砂を蹴って素早く移動。
 背を向けていたシフカの眼前に、滑りこんできた。
「しまっ――」
「もう遅いですよー、シ・フ・カ・さ・ん?」
 女から放たれる魔性がシフカの視覚を通り、彼女の精神を侵してゆく。
 ……その結果。
「こ、これはすごいですね!」
「うふふ、好きなだけご堪能あれー☆」
 シフカは女の爆乳に顔を埋もれさせ、左右の手で思う存分その感触を味わっていた。
 全力で頬をすりつけ、全力で揉みしだいていた。

 うん、この光景はアカン。

●すり切れた心
「いつもの海でまたシフカが全裸だ」
 またか……。
 もはや何の感情も失せているザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)の声を聞いて、猟犬たちはかぶりを振った。
 このままでは危ないとか連絡がつかないとか、それすらももう王子は言わない。
 ただ黙って、皆をヘリオンに先導するのみだった。
「シフカを襲う敵は螺旋忍軍、金狐縛乳忍衆というらしい。
 自分のおっぱいを見た者触れた者を魅了し、釘付けにする技『螺旋忍法・縛乳の術』でシフカを籠絡し、おっぱいを揉ませているようだ」
 こいつおかしくなってやがる……。
 王子の説明がアレすぎて、猟犬たちは秒でそう思った。おっぱいとか言うとるし。
 日々起こりまくる珍妙な事件に、ついにエインヘリアルの元第一王子のメンタルもぶっ壊れたのだ――一同は生温かい視線を彼の大きな背中に送る。
 しかし王子は、皆からの憐憫に薄々気づきながらも、黙って操縦席に着座した。
「確か、百聞は一見に如かずという言葉があったな。であれば私はもう何も言わん。おまえたちの目で、真実を確かめてくるのだ……」
 ヘリオンの回転翼が勢いよく回り出し、機体を夜空へと浮かせてゆく。
 かくして、猟犬たちは冬の海の痴態を確認しに行くことになりました。


参加者
桜庭・果乃(キューティボール・e00673)
日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)
セルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
トート・アメン(神王・e44510)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)

■リプレイ

●それは甘えだよ
 窓の外で、暗色の空が流れてゆく。
 機内に座していたセルリアン・エクレール(スターリヴォア・e01686)は、過ぎる夜空を見つつ重々しい息をついた。
「……また? また、夜の海で?」
 若干、目に光がないセルリアン。
 それもそのはず。今回の海にシフカを助けに行くのは2回目だ。
 いったい何度助ければいいのか――そんな思い伝わったのか、向かいに座っていた四辻・樒(黒の背反・e03880)は目を伏せて頷いた。
「年末最後のヴェルランド救出、になるといいな」
「そうだね……」
 ハリのない声で答えるセルリアン。ちな樒も今年2回目。
 重い沈黙――。
 と、そこへ月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)の明るい声が響いた。
「シフカさん、見つけたのだっ!」
 機内から身を乗り出していた灯音の言葉に応じて、動き出す猟犬たち。
 仲間の命を救うべく、皆は降下を始めるのだった。

 ――で。
「大きさは姉弟子様よりも上ですね……元から大きくなる素養があったのでしょう、少し羨ましいです。その分、重量で動きが制限されるのが欠点ではありますか」
 絶賛もみもみ中のシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)を目撃した。
「触り心地は姉弟子様に比べれば幾らか劣りますが、あれは人が触れて良い次元を超えていますから仕方ありません。しかし総評すれば姉弟子様の部下の中でもかなり上位のおっぱいですね。ナイスおっぱいです」
「ありがとうございまぁす♪」
 ヒトミの胸の谷間で、顔をぐりぐりするシフカ。
 灯音は砂の上に崩れ落ちた。
「シフカさん……!」
「この海岸、派出所でも置いた方が良いんじゃないだろうか」
 項垂れる妻の背を、さすさすする樒。
 助けに来たら救出対象がおっぱいを堪能していた。
 絶望だよね。
 だが一方、トート・アメン(神王・e44510)は波打つ黒い長髪を風になびかせ、自身を王と称するにふさわしい大笑いを発した。
「はっはっはっ! 己の裸身をジェフティに捧げるその行為! 善い、実に善い!」
 腕組みしたまま胸を張るトート。
 そんな彼の隣では、可愛らしくも露出度激高のレプリカント――桜庭・果乃(キューティボール・e00673)がくるくると回転していた。
「おっぱい揉み合いって楽しそー。わたしもやるぞー!」
 あはははは、と回ってツインテールで円を描く果乃。パタパタ飛んでるたま(ウイングキャット)が無言で見てくるのも気にせず、その大きなおっぱいを揺らす。
 その震度を見つめるアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)。
 首を90度曲げて、ヒトミのおっぱいも見つめる。
「あれは人を狂わす毒だ。毒は消毒だー!! 焼いて天辺にみかん置いて鏡餅にしてやるー!!」
「アンヴァルさん、落ち着いて」
 虚ろな目で暴れかけるアンヴァルを制止するセルリアン。
 格差は解消しなければならない。アンヴァルさんのスッキリ平坦な胸を見ると、そう思わずにはいられない一同だった。
「毒……そう、あれは毒なのだ」
 その場に膝をつくアンヴァルから、樒へと視線を向ける灯音。
「樒 浮気はダメなのだ。月ちゃん以外にふらふらもダメなのだ。月ちゃん以外のおっぱいも揉んだらダメなのだ」
「ん、それは問題ない」
「絶対なのだ! 樒が誰かのおっぱいを揉んでしまったら……月ちゃんはもう生きてけないのだ。暴走も辞さないのだ!」
「わかった。絶対に浮気はしない」
 ずごごご、と瞳の奥が燃えている灯音に頷く樒。
 胸の内に収まるシフカの頭を撫でていたヒトミは、猟犬たちに向けても微笑んできた。
「あなたたちも、触ってみますぅ?」
「ふっ、俺たちまで魅了しようと言うのか? 縛乳の術だかなんだか知らないが、そんなものが俺に効く訳がないだろう」
 仲間たちの中から颯爽と進み出る日柳・蒼眞(うにうにマスター・e00793)。
 1秒後にはシフカと一緒にヒトミのおっぱいに顔を突っこんでいた。
 ってか何なら『効く訳がないだろう』のときにもう、ダイブしていた。
「馬鹿な。抵抗すら出来ないとは、何という恐ろしい力だ……」
「お好きなだけどうぞ~☆」
「ならば遠慮なく!」
 むにゅん、と柔らかな双丘を両手で包みこむ蒼眞。
 普段からおっぱいダイブを繰り返している男に、躊躇の二文字などなかった。

●おっ……ぱい……!
 それから数分!
「わー、ヒトミちゃんのおっぱいすごーい! おおきいー!」
「うふふー。ありがとうございますー♪」
「果乃さんのおっぱいもなかなかですね……ぽよんぽよんです」
「きゃーくすぐったいよ~」
 海辺はおっぱいがおっぱいぱいだった。
 いや人語に訳そう。果乃がヒトミにおっぱいダイブを決めこみ、シフカがヒトミの胸を揉む傍ら果乃のおっぱいを揉んでいた。
「おっと、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ」
 あ、すいません。蒼眞さんも相変わらずヒトミさんの爆乳を枕にしてましたね。
「どうです? そちらの方も?」
「おっぱいはいいぞ」
「おっぱいむにむにするのたーのしー!」
 皆の共有財産ですと言わんばかりに好き放題揉ませているヒトミが、残る仲間たちに向けても色目を向ける。あと蒼眞と果乃がうるさい。
 しかし、彼女の魅了は通じなかった。
「夜の海って静かだなぁ……」
 一切ヒトミのほうを向かず海を眺めるセルリアン。時折ぱらぱらと義務感で紙兵を撒く以外は、停止した映像のように黒い海を見つめている。
「何食べるとあんなになるんでしょうね……今度、一週間の食事のメニューをお聞きしたいもんです」
 アンヴァルはヒトミたちのほうへ顔を向けてはいたが視線はおっぱいではなくお尻を捉えている。もう尻をガン見している。
 おっぱいを見て魅了されるのならば、見ない。
 それが猟犬たちの策であった。
「世の中には心眼なるものがあるらしい。つまり目隠しをすれば問題はない」
「これなら誰のおっぱいも見られないのだっ」
 持ちこんだ布でぐるぐると目を覆うのは樒と灯音である。
 季節外れのスイカ割りでもしそうな風体になった樒は、目の見えぬ顔を灯音に向ける。
「似合うか? 真理にたどり着けそうな気がする上に、盾を持ちたくなるな」
「さくっと死んじゃう気がするから、盾はやめておくのだ。それより樒?」
 手探りで樒の体を捕まえる灯音。
「NOウォッチング。NOタッチ。NOもみもみ。
 これは絶対なのだ。はい、繰り返すのだ」
 すごい釘を刺してくる。
 指一本触れさせないって気迫が伝わってくる復唱要求だった。
「NOウォッチング。NOタッチ。NOもみもみ」
「よろしいのだ!」
「そもそも見えなくて、さわれない距離ならば問題ないはず。完璧だな」
 きゅっと手を握り合う2人。すぐそばでおっぱい揉んでる乱痴気騒ぎが起こっているのが申し訳なくなるほどの仲睦まじさだった。
 こうして、常識を弁えた仲間たちは縛乳の術を防いだ。
 だが『見ない』ばかりが対策ではない。
 それを体現すべく堂々とヒトミの前に出ていったのが、トートだ。
「汝のおっぱいはでかすぎるが確かに芸術のように魅力的よ。だが余にはそのおっぱいに魅了されぬ大いなる秘策がある!」
 にやりと笑ったトートが、ぐわしっとおっぱいを引っ掴む。
 ――シフカのおっぱいを!
「即ち、他を堪能すればよいのだ! 余は揉みたいと思ったら揉む。堪能すると思ったら堪能する! おっぱいごときで余を誘惑できると思わんことだな!」
「豪快な揉みっぷりですね。嫌いじゃあないですが」
 わっはっは、と笑い飛ばすトートに揉まれまくるシフカ。
 普段から何なら揉まれたいと思っている女は、重量感ある柔肉をぷるんぷるん波打たせながら、まるでそよ風に吹かれているような穏やかな顔をしている。
「ふむ、手に吸いつく肌……ずっしりな揉みごたえ……しっとりふかふかよの……」
「この手に感触が再現されるような表現だ……まさか俺以外にもおっぱいソムリエがいたとはな……」
 シフカの胸をもみもみするトートを、ヒトミの胸をもみもみする蒼眞が讃える。
「ずるーい! わたしももっと揉むぞー!」
 2人のおっぱいの間を行き来して、赴くままに揉みしだく果乃。
 控えめに言っても光景がカオスだった。
 果乃に貸してもらったたまの毛並みを撫でながら、セルリアンは星空を見上げる。
「うん、これはもう早く帰りたい」
「奇遇ですね。私もです」
 三角座りで砂にお絵かきしていたアンヴァルが、ふふっと朧げな笑みを浮かべた。
 ちくしょう! 精神が!
 一部の奴らを覗いて猟犬たちの精神が削られていやがる!

●おっ……おっ……ぱい!
 またまた数分!
「ふむ、しかしやはり汝のおっぱいも絶品よな」
「そうですよねぇ。大きさは正義なんですよぉ♪」
 トートは顔面をヒトミのおっぱいにすりつけていた。
 動物のもふもふを堪能するかのようにナチュラルに頬ずりしていた。
 普通に縛乳の術をくらっていた。
「こいつは確かに、手に吸いつく絶妙な肌のキメだ……」
「それはどうも。もっと強く揉んでくれても構いませんよ?」
 そして逆に蒼眞はシフカのおっぱいを揉んでいた。揉みまくっていた。
 すぐ近くに螺旋忍軍がいるってわかってんのかな。
 そう思うしかない惨状だった。
「皆、しっかりするんだ」
「目を覚ませ。でなければ実力行使するぞ」
 おっぱいの狂乱に耽る仲間たちへ、セルリアンがオウガ粒子を降りそそがせ、樒が回復の呪いがこめられた符をばちーんと貼りつける。
 しかし誰ひとりとして我に返る者はいなかった。元々正気だから。
「敵がある意味手強い気がする」
「くっ、皆の良心に任せるしかないということか」
 諦めて呪符をしまう樒。セルリアンもたまの顎らへんをわしゃわしゃやり始めて、おそらくはもうやる気がない。
 だが、灯音だけは辛抱強く、手を止めなかった。
「頭を冷やすのだーっ」
 ばっしゃばっしゃとバケツで薬液(メディカルレイン)をぶっかける灯音。
「灯。皆はもう……」
 目を細め、灯音の肩に手を置く樒。
 けれど灯音は止まらず、バケツを振りつづける。
「月ちゃん、もう多くは望まないのだ! シフカさんが帰るときに洋服を着てくれれば……それ以上は望まないのだっ」
「それはもうちょっと望んだほうがいいと思うけど……」
 冷静にツッコむセルリアン。
 しかしシフカがいかにダメかと彼は知っている。だからそれ以上は言えなかった。
 砂に棒でお絵かきしていたアンヴァルが、ふと顔を上げる。
「つうか、そういえばシフカさん真冬のビーチでマッパやん……」
 皆が皆おっぱいを揉みまくるおかげで忘れていたが、シフカは全裸だ。それだけでアカンのにそれが霞む状況ってなんかもうスゴイよね。
「まあ、人の趣味に口は出しませんけどね」
 再び砂へ目線を落とし、お絵かきを再開するアンヴァル。
 だがそのとき。
「あはははー。かわいいおっぱい発見ー!」
「ハッ!?」
 しゅばっ、とその場から跳躍して離れるアンヴァル。彼女がいたその場所に、一瞬後に果乃がドリル回転しながら突っこんできた。
 舞い上がる砂を見て、アンヴァルは『あと少し遅れていたら』と戦慄する。
「あれーかわしちゃったのー? かわいいおっぱい触りたかったのにー!」
「気安く触ってもらっちゃ困ります。こちとら大事な育成計画中なんですよ!」
「え~」
「え~じゃないです!」
 残念そうにぶー垂れる果乃に、アンヴァルは凄まじい気迫でまくしたてる。
 まだ、望みを捨ててはいない。徒に揉まれて成長を阻まれてなるものかと、薄板少女は無邪気に飽かして襲いかかってくる果乃を捌きつづけた。
 それを横目に見ていたヒトミは、つまらなさそうに息をついた。
「こちらに来て一緒に私を触ってくれればいいのにぃ」
「まあまあ。その分は俺が揉んでやるさ」
 トートの頭をおっぱいに挟んだままのヒトミに、そう言ったのは蒼眞。
 彼は華麗にヒトミの背後に回ると、脇の下から手を差しこんで爆乳を持ち上げた。
「はっ!」
「きゃっ!?」
 全神経を注がれた蒼眞の指が、ヒトミのおっぱいを揉みしだく。まるで拳法家が敵の拳をいなすかのような流麗な動きで、突起をここぞとばかりに摘まんで撫でまわしまくる。
 日夜おっぱいに飛びこむことばかり考えて生きている男の技を受けて、ヒトミはへなへなと腰砕けになってしまった。
「そんな……私があっさりとぉ……」
「ふっ、そこらの揉み師と一緒にしないことだな。さあシフカ、あとは好きにするといい」
「ええ、ありがとうございます」
 引っこんでゆく仕事人と入れ替わりに、ヒトミの前に立つシフカ。
 そして彼女の肩に両手を置くと、その大きなおっぱいを眼前にたゆんさせた。
 ヒトミは、ハッと息をのんだ。
「ま……まさかあの術を~!?」
「そのまさかです」
 ぐぐっと身をよじり、おっぱいを振りかぶるシフカ。
 乳ビンタ。しかしその一撃は不思議なことにダイヤモンド並みの硬度であり、鉄塊でぶん殴られたかのようにヒトミの首がひん曲がる。
「螺旋忍法……『一発乳棍』……」
「貴女の胸があと2カップ小さければ、今の一撃も躱せたでしょうに」
 シフカの腕の中で、爆乳忍者はがくっと息絶えたのだった。

●虚無
「縛乳の術……大義名分を与えてくれる有難い術だったな」
 消滅したヒトミの感触をその手に思い出して、呟く蒼眞。
 相手を魅了して自身のおっぱいに捕らえる技――それはおっぱいダイバーにとっては何の脅威でもなかった。むしろ大変よろしかった。
「できれば全世界に伝わってほしい術だ……」
「いやそうなったらもう私、宇宙に旅立ちますよ」
 ビシッと言いきったのはアンヴァルだ。
 ちなみに今現在もまだ目は死んでいる。めっちゃ揺れてたからね胸が。
 しかも果乃がバレリーナよろしく回転してて、揺れる胸が継続中だからね。
「あははは! おっぱい揉むの楽しかったー!」
「同感よ。しかしニホンのフユの海辺は中々に寒い。人肌で温まるのもまた一興……という訳で引き続き揉んでいたいところよな!」
 回転力で砂を抉る果乃に深く首肯するトート。
 一方、樒と灯音は2人寄り添って座り、夜の海を見つめていた。
「最近、シフカさんが裸で戦ってるのに違和感を感じなくなったのだ……」
「ん、人間慣れるのは大事な事だからな。あまり深く考えてはいけない」
 どことなくすれた表情をする灯音の肩を、そっと抱き寄せる樒。
 2人の気持ち小さな背中を見て、セルリアンは星を見上げる。今日何度目だろうか。
「王子の気持ちがよくわかるよ……今度気晴らしの食事にでも誘おうかな」
 胸に湧く徒労感を味わいながら、ヘリオライダーを慮るセルリアン。
 はぁ、と彼がため息をつくと、シフカ(スーツは着た)が肩を叩いた。
「シフカ……」
「とりあえず今は皆で食事に行きましょう。打ち上げです」
 こくり、と頷くシフカ。
 セルリアンたちの心労の元凶が自分であるとは、まるで気づいてない顔だった。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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