ウィンタースポーツは密着距離で!

作者:雷紋寺音弥

●最高のウィンタースポーツ!?
 冬の寒空の下、かつては資材置き場として使われていた空き地にて。木枯らしが吹き、一層の肌寒さを感じる季節であろうと関係なく、今日も今日でやけに恰幅の良いビルシャナが、おかしな教義を広めていた。
「冬といえば、やはり身体の温まるウィンタースポーツが最高だ! それも、できれば男女混合で、誰でも簡単に行えるものが望ましい!」
 一見、まともに思えそうな主張だが、しかし次にビルシャナの口から語られたのは、それまでの雰囲気をブチ壊すような謎の提案。
「……故に、男女混合のおしくらまんじゅうこそが、至高のウィンタースポーツなのだ! 誰でも気兼ねなく楽しめ、しかも異性とのドキドキ効果も相俟って、身体もよりホットになる! ハッハッハ、最高じゃないか!」
 やはりというか、このビルシャナも、頭のネジが吹っ飛んだヤバいやつだった。そして、そんなビルシャナに賛同する信者達も、まともな思考など残っているはずもなく。
「おしくらまんじゅうかぁ……。まあ、押してる間に、ちょっとタッチしちゃうくらいは、仕方のない事故だよな!」
「んふふふ♪ それに、イケメンの唇にチューしちゃうのも、押されたから仕方のないことよねぇ」
 ラッキースケベを装って痴漢行為に走ろうとするオッサンや、イケメン相手にセクハラをかまそうとする熟女など、色々な意味で酷い連中ばかりであった。

●事故でも犯罪です!
「うぅ……もうすぐ、楽しいクリスマスや冬休みがやって来るはずの季節なのに、また酷い教義を広めるビルシャナが現れちゃいました……」
 溜息交じりに、半分泣きそうな顔をして自らの見た予知をケルベロス達に語ろうとする、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)。
 勘の良い者は、この時点で気付いていた。ああ、きっとまた、狂った教義を広めるビルシャナが、変態な主張をしているのだな、と……。そして、そんな予感は的中であり、ねむの口から語られたのは、なんとも酷いウィンタースポーツを勧めるビルシャナの話だった。
「リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)さんが心配していた通り、『異性とのおしくらまんじゅうこそが至高!』っていうビルシャナが現れました。その……ビルシャナの主張なんですけど……」
 なんで、こんなこと語らなくてはならないのか。そんな雰囲気を全身から醸し出しながら、ねむは語る。
 曰く、ビルシャナの主張によれば、男女混合でおしくらまんじゅうすれば、異性とのドキドキ効果によって、身体も心もホットになれる。なお、その際に『あ~ん❤』なことや『いやぁ~ん❤』なことが偶然起こっても、それは競技中の事故なのだから仕方がないのだと。
 なお、お約束の如く、ビルシャナの周りには影響を受けて配下とされてしまった一般人達が10名程いる。彼らはドサクサに紛れてラッキースケベなことを期待しているしょーもないオッサンや、ともすればイケメンとベタベタできると勘違いしている痛い熟女などの集団であり、自分好みの相手を見つけると、集団で取り囲んでおしくらまんじゅうを仕掛けて来るので、要注意。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要ですけど……普通のスポーツを勧めるだけじゃ、たぶん駄目だと思います」
 説得の際、重要なのはインパクト。そもそも、ビルシャナの主張に賛同している理由に邪なものが含まれているため、おしくらまんじゅう以上に強烈なインパクトを持ち、かつ彼らが興味を持ちそうな内容の事柄であれば、現実にはありえないようなスポーツを捏造して勧めても一向に構わない。
 ちなみに、説得に失敗した場合、彼らはビルシャナのサーヴァントのような存在となって襲い掛かってくるが、その戦闘力はケルベロスの敵としては最弱レベル。当然、ビルシャナを倒す前にグラビティの攻撃で倒されれば即死なので、その辺りも考慮せねばならない。
「こ、こんなビルシャナに賛成する人が増えたら、ねむも学校の体育の授業で、体操着の男の子とおしくらまんじゅうを……。さすがに、それはちょっと……」
 ねむとて、もう14歳。異性が気になるお年頃の女子に、これはキツい。それは勿論、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)にとっても同様であり。
「男子と一緒に体操着でおしくらまんじゅうなんて、ボクもちょっと、恥ずかしくてできないかも……。冬のスポーツで変なことしようとするビルシャナには、お仕置きが必要だよね!」
 そんなに押されるのが好きなら、問答無用で押し潰してやろうと気合いを入れる。
 年の暮れも近づく中、人々に迷惑をかけるビルシャナを、徹底的に討伐するのだ!


参加者
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)
ミーティア・ドラーグ(自称異星人・e85254)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)

■リプレイ

●それは誤解です
 異性とおしくらまんじゅうをすることこそ、最高のウィンタースポーツであると主張するビルシャナ。その本心が、ドサクサに紛れてセクハラをしようということだと、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は早々に感づいていた。
「むぅ、やっぱり変態なビルシャナが現れた」
 季節はもうじき、クリスマス。こんな変態を放ってはおけないし、そもそも年末は何故かビルシャナが大量に湧いている気がする。それこそ、今年の在庫一掃セールと言わんばかりに、変態案件の数も爆発的に増加しがちなので、やってられない。
「こういうシーズンってやけに鳥さんが活発的になるよねー。そして、ルーちゃんが珍しくはしゃいでるのも、この時期だからかな?」
「さあ、それはどうでしょうか? 確かに、動物さん達と暖を取るのは楽しみではありますけれど……」
 ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)に言われ、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)が苦笑しつつもはぐらかす。もっとも、ルーシィドの後ろには近所の動物牧場から借りて来たアルパカだの羊だのがスタンバイしており、何を考えているのかは明白だったが。
「おぉっ! あんなところに、可憐な女子が!」
「それだけじゃないわ! イケメンも来てくれたわよ!」
 ケルベロス達に気付いたビルシャナの信者達が、一斉に目を煌めかせながら向かって来た。だが、ともすれば、その顔は己の本能的な欲望にまみれ、涎を垂らしながら迫る薄汚れたゾンビそのものだった。
「うへへ……お嬢ちゃん達、おじさんと、おしくらまんじゅうしないかい?」
「あらぁん、素敵なお兄さん❤ おばさんと一緒に、温まらないかしらぁん?」
 欲望全開で迫る残念なオッサンや熟女達。なんというか、これは単純に酷い。どう見ても、いい歳こいた大人が年下相手に盛大なセクハラをブチかまそうとしているようにしか思えない。
「うわぁ……話には聞いてたけど、想像以上に気持ち悪い……」
 あんな連中に密着されては堪らないと、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が思わず距離を取った。
「地球にはこんな変態がウヨウヨいるのですか? 私は今、初めて定命化を後悔してるのかもしれません……」
 アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)もまた、盛大にドン引きしながらオッサン連中から離れて行く。セントールの彼女にとって、未だ地球の文化は未知のものが多い。そんな彼女からすれば、目の前の連中はケルベロス達と同じ地球人とは思えない、異界のクリーチャーにしか見えなかった。
「ふむ……もしかすると、同じ『地球人』の中にも、変態とそれ以外の人種で決定的に違う何かがあるのかもしれませんね。一度、調査してみる必要があるでしょうか?」
 己のことを異星人と自称するミーティア・ドラーグ(自称異星人・e85254)も、さすがに目の前の連中が純粋な地球人であるとは、どうしても認めたくなかったようだ。それこそ、変態とは地球人が間違った方向に進化した結果の亜種であると考えなければ、目の前の現実は到底受け入れられるものではなく。
「そもそも身体が温まり、男女混合で、誰でも簡単に行えるものなど、大体のウィンタースポーツに当てはまりそうなものだが……」
 相変わらずの斜め上なビルシャナの屁理屈に頭を悩ませながらも、エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が溜息交じりに前に出た。
 こんな変態を放置していたら、おちおちクリスマスも楽しめない。歳末の安全を守るべく、ケルベロス達は渋々ながらも、変態どもの説得に乗り出した。

●モフモフします?
 ドサクサに紛れて、異性とのハプニングを期待する信者達。彼らの目を覚ますべく、最初に声を掛けたのはルーシィドだった。
「身体をホットにしたいなら、もっと素晴らしいウィンタースポーツがありますわ!」
 どうせ、おしくらまんじゅうするのであれば、ここにいる動物達も一緒に混ぜてはどうか。そう、彼女がお勧めするのは、動物混合のおしくらまんじゅう。誰でも気軽に楽しめる上に、大型獣とのドキドキ効果も相俟って、身体もよりホットになれるのだと。
「『にゃーん♪』なことや『わおーん♪』なことが起こっても、競技中の事故だから仕方のないことです! かわいくてモフモフな動物たちの癒やしパワーを堪能しましょう!しましょう!」
 殆どノリと勢いに任せ、ルーシィドは信者達の周りを動物達で取り囲んだ。それに便乗し、何故かトナカイの着ぐるみを着たミーティアもまた、動物おしくらまんじゅうに参加して行く。
「動物さんがいっぱいですねぇ、まるで金太郎です。ふふふ、トナカイも張り切っちゃいますよー」
 このモフモフパワーで、信者達のハートを鷲掴みにすれば、きっとビルシャナの呪縛から解放できるはず。そう信じて笑顔を振りまくミーティアだったが……しかし、彼らは己のエロスを満たすためであれば、手段を選ばぬ変態どもだ。
「きゃぁぁぁっ! イケメンよぉ! イケメンのトナカイがいるわぁ!」
「ちょっと、早く私にもモフモフさせなさいよ! ああ、この肌触り……堪らないわぁ♥」
 どう考えても、毛並みによりもイケメンの顔を堪能する気満々で、熟女どもがミーティアへと群がって行く。このままでは、ドサクサに紛れてほっぺにチューなど、酷いセクハラをされ兼ねない!
「なるほど、動物さんかぁ……。だったら、俺達はそっちのウェアライダーの子で、モフモフさせてもらおうかなぁ?」
「えぇっ! ボ、ボク!?」
 その一方で、オッサンどもは目敏く理奈を発見すると、これまた一斉に彼女でモフモフするために突進して来た。
「ほらほら、動物さんは服なんて着ないんだよぉ」
「はぁ、はぁ……女の子の髪の毛、いい香りだなぁ……モグモグ」
 おまけに、色々と斜め上の解釈をしては、オリジナルの動物おしくらまんじゅうを開始する始末。彼らは瞬く間に理奈の衣服を剥ぎ取ると、彼女の髪の毛で盛大なるモフモフを開始した。
「ひゃぁっ! ちょ、ちょっと、服脱がしちゃダメ……きゃぁっ! 髪の毛食べないでよぉ!!」
 ああ、結局、今回もこんな展開か。泣きながら逃げ出そうとする理奈だったが、あまりに信者達が多過ぎるせいで、もはやどうにもならない状況だ。
「いい加減にしないか、お前達! 見境なく事故るより、好みの相手を狙い撃ちしろよ!」
 見兼ねたガスマスク姿の青年が、ブチ切れながらも信者達に雪玉を投げつけた。彼自身、決してモテる方ではないと自負しているが、それでもオッサンと熟女にもみくちゃにされるなど、あんまりである。
「オラオラオラオラオラオラオラオララララーッ!!」
「ぎゃぁぁぁっ! 冷てぇぇぇぇっ!」
 青年の時をも止めそうな勢いのラッシュによる投擲で、熟女やオッサンはミーティアや理奈の周りから離れて行った。辛うじて助かった二人であったが、単にモフモフされていたミーティアと違い、服を奪われた理奈は悲惨な恰好になっていた。
「ワハハハ! 雪玉程度で逃げるとは、所詮、貴様らの提案するウィンタースポーツなど、その程度! 真のおしくらまんじゅうには、到底及ばぬということだ!」
 何故か、勝ち誇った表情でビルシャナが叫んでいるが、とりあえず気にしても無駄なので放っておこう。ああいう手合いは、下手に相手をすればしただけ、屁理屈で反論して来るに決まっているので。
「くっ……モフモフ作戦では駄目か! だが、こちらにもまだ、秘策はある!」
 愛らしさに訴える方法が使えないのであれば、多少強引な手段に走るまで。マイルドモードから過激モードへスイッチを切り替えるべく、エメラルドはスノーボードを片手に、熟女達の方へと近づいて行った。

●危険なウィンタースポーツ!
 イケメンとのハプニングを期待し、ともすればセクハラ上等で襲い掛かろうとしている熟女達。そんな彼女の達に冬のスリルを堪能させるべく、エメラルドは敢えてスノーボードを勧めてみた。
「得意ではないからと言って、多少スキルの必要なスポーツを忌避する必要はないだろう?」
 スノボに限らず、多くのウィンタースポーツは、経験がなければ楽しめない。だが、それはあくまで、個人での話。経験がないのであればこそ、経験者である男性にエスコートして貰うことで、より親密な関係になれるかもしれない。滑れないが故に相手を頼り、転ぶ事を装って抱きつく事さえ可能だと。
「……な、なるほど、その手があったわね!」
「これは盲点だったわ! でも、確かのそっちの方が、イケメンをそれぞれで独占できるわね!」
 皆で一人のイケメンを奪い合うよりも、それぞれがイケメンの専属コーチを見つけて楽しんだ方が良い。ならば、時代はおしくらまんじゅうではなく、スノーボードなのではないかと……そう、熟女達が思い直しているのを、アルケイアは目敏く見逃さなかった。
「スポーツはスピードがないと面白くない! 乗り物でレースの類いならスリリングで、吊り橋効果も望めます」
 そういうわけで、今からスノボ体験だ。呆気に取られている熟女達に構わず、アルケイアは彼女達をスノーボードに縛り付けると、凄まじいスピードで引っ張りながら走り出した。
「ぎゃぁぁぁっ! ちょっと、なによこれぇぇぇっ!!」
「は、話が違うじゃないのぉぉぉっ! アタシはイケメンのコーチと一緒に練習を……ぁぁぁぁっ!!」
 セントールのアルケイアが本気で走れば、その速度は高速道路を走る自動車に匹敵する。当然、熟女達が生身で耐えられるような速さではなく、彼女達は盛大に泡を噴いて、一人残らず気絶してしまった。
 これで、残すは変態のオッサンだけだ。彼らは男である以上、イケメンエスコート作戦は通用しない。ならば、少しばかり危険な競技だが、最高にドキドキできるものを教えてやろうと、リリエッタが理奈を連れて変態どもの前に出た。
「今、一番熱いのは男女混合雪山耐久レースだよ。男女二人で雪山に分け入って、どれだけ長時間耐えれるか競う競技だよ」
 ポイントは、互いに抱き合って暖を取ることだ。服が濡れている場合は、裸で抱き着くのが良いらしい。そう言って、下着姿にされてしまっていた理奈を抱き締める。その上で、実はケルベロスでないと凍死確実なので、良い子は決して真似してはいけないと、最後に小声で呟いたのだが。
「ヒャッハァァァァッ! こいつは、いいことを聞いたぜぇ!」
「男女で抱き合うスポーツなんだろう? だったら、女同士じゃ教義にならねぇよなぁ?」
 何を勘違いしたのか、信者達は一斉に服を脱いでパンイチになると、リリエッタと理奈に向かって突っ込んで来たのだから堪らない!
「えぇっ! ちょ、ちょっと、なんでこっちに来るの!?」
 理奈が驚いて叫んでいる間に、信者達はリリエッタを押し退け、瞬く間に理奈の周りを取り囲んでしまった。それだけでなく、彼女に全身を押し付けると、互いに肌を擦り合わせて暖を取ろうと、鼻息荒く襲い掛かって来た。
「ほ~ら、濡れた服はポイしちゃいましょうね~♪」
「うへへへ……もっと密着しないと風邪ひいちゃうよ~♪」
 変態どもに周りを囲まれ、瞬く間にパンイチ姿にされてしまう理奈。ミーティアやアルケイアが助けに行こうとするも、あまりに変態どもが密着し過ぎているため、理奈を助けるには彼らをブチ殺す以外に方法が見つからない。
「うわぁぁぁん! 恥ずかしいよぉぉぉっ!!」
 両手で胸元を隠しながら、オッサンにもみくちゃにされた理奈は、とうとう泣きながらモモンガの姿に変身して逃げ出した。確かに、この恰好なら裸でも恥ずかしくないが……同時に、戦うこともできないため、変態からは逃げ回るしかない。
「んっふっふー、おしくらまんじゅう? 折角こんな広い空き地があるのに勿体ない!」
 こうなったら、こちらも最後の切り札を見せようと、ついにステラが動き出す。その傍らに、ライドキャリバーのシルバーブリットを引き連れて。
「時代は……鬼ごっこ! 逃げた時間分の賞金が出たり、カップルが浜辺で追いかけてたりするアレね。追う者と追われる者、捕まった敗者は捕まえた勝者に好き勝手されるケルベロス式ルールで軽くやってみる?」
 ちなみに、鬼はシルバーブリットである。少しでも足を止めればガトリングガンでハチの巣にした上、情け容赦なく轢き殺して来る、エクストリーム鬼ごっこの名鬼役!
「なっ……じょ、冗談じゃねぇ!」
「そんな鬼ごっこがあってたま……おい、止めろ! こっち来んな!」
 さすがに、殺されては堪らないと、信者達は一斉に空き地から逃げ出した。パンツ一丁で街中を全力ダッシュするなど、遠からず警察に逮捕されそうな気もするのだが……連中の変態性を考えれば、遅かれ早かれ捕まっていたと思うので、ビルシャナの支配から脱出させられただけでも良しとしよう。
「おのれぇ……先程から黙って見ていれば、スポーツにかこつけて我々の思想を潰そうというのだな! 許すまじ!!」
 全ての信者を失って、ついにブチ切れたビルシャナが、ケルベロス達の前に颯爽と降り立った。
 だが、許さないのは、こちらも同じ。今まで、散々に破廉恥な行為を見せつけられた借りを返すべく、ビルシャナ目掛けて一斉に攻撃を開始した。

●おしくらまんじゅう、潰れて泣くな?
 異性とのおしくらまんじゅうこそ至高と謳い、その流れでラッキースケベなことを期待する変態鳥頭。そんな彼の攻撃もまた、相手との密着を期待させるものではあるが……それが強いかどうかは、また別の話。
「ふんごぉぉぉっ! 退かぬか、貴様ぁぁぁっ!!」
「そうは行きません! トナカイの意地にかけて、ここは通しませんよ!」
 ビルシャナのタックルや突進は、ミーティアが身体を張って前に出たことにより、悉く防がれてしまっていたのだ。こうなっては、もはや流れはケルベロス達の方にあるも同然。そもそも、単発の近距離攻撃しかできない時点で、今のビルシャナに勝ち目などない。
「変態め、もう容赦はせんぞ!」
「それ以上、こっちに近づかないでください!」
 稲妻を纏ったエメラルドの槍が、炎を纏ったアルケイアの蹴りが、それぞれにビルシャナの尻へと炸裂する。無防備な後方から強烈な攻撃を立て続けに食らって飛び上がるビルシャナだったが、それで終わるはずもなく。
「そんなにおしくらまんじゅうが好きなのなら、これはどう? シルバーブリット、チェンジキャノンモード!」
 シルバーブリットを最終砲撃形態に変形させ、ステラがビルシャナを狙い撃つ。その砲塔から放たれるは、全てを押し潰す超重力の銃弾。そんなにおしくらまんじゅうが好きなら、圧死するまで超重力と踊っていれば良い。
「グラビトン・ランチャー、ファイア!」
「ちょっ……! や、やめ……ぐぇぇぇぇぇっ!!」
 凄まじい重力崩壊によって、ビルシャナの身体が瞬く間に潰されて行く。このまま放っておいても死にそうなものだが、潰れて行く鳥の顔があまりに気持ち悪かったのか、ルーシィドとリリエッタは互いに頷き、さっさと止めを刺すことにした。
「ルー、力を貸して!」
「ええ、分かりましたわ」
 互いに手を繋ぎ、魔力を循環させることで、それぞれの特性を一つにまとめた魔弾を生成する。一人では越えられない限界も、二人であれば越えられるはず。
「夢の茨よ……盟約により、我等に力を……」
「……これで決めるよ、スパイク・バレット!」
 緑と青の紋章が重なった瞬間、その中央より放たれるのは荊の特性を持った特殊な弾丸。それは、一度でも敵に食らい付いたが最後、消滅するまで決して外れることのない魔力弾。
「あががが……つ、潰れ……ごっぱぁぁぁぁっ!!」
 最後は潰れながら弾丸で腹を撃ち抜かれ、ビルシャナは悲鳴を上げながら冬の空き地で消滅して行く。ニッチな変態趣味を持った者達ばかりを集めて、公序良俗に反する行いをしようとした者に相応しい末路だ。
 かくして、変態ビルシャナはケルベロス達の手によって討伐され、街には再び平穏が訪れた。
 だが、それでも油断をしてはいけない。人の数だけ好みがあり、それに合わせて変態もまた多様性を遂げる限り、今回のようなビルシャナが、再び現れないとも限らないのだから。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月18日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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