決めろ! 必殺のなんかすごいのを!

作者:星垣えん

●もっと強い奴とうんたら
 深夜。
 つい少し前までは客がおり、煌々と歓迎の光を灯していたゲームセンターも、すっかり街の静けさの中に埋もれていた。
 いっときの眠りにつくゲーセン――その裏手に1台のパンチングマシーンがある。
 赤を基調とした派手派手な筐体はひどく古びていて、使わなくなって久しいのか埃まみれで目も当てられない状態だ。
『決めろ! 必殺の拳を!』
 などと謳い文句が踊っているのが、また物悲しさを誘う。
 もはや誰の拳も受けられなくなった、老いたパンチングマシーン。
 だが彼の物語はまだ終わりではない。
 夜空からひらーりひらりと、虫のように小さなダモクレスが舞い降りてきたからだ。超小型ダモクレスはささやかな風に乗り、そのまま直でパンチングマシーンに入りこんだ。
 すると、筐体がみるみると変化。錆びついたボディに輝きが蘇る。
 ガションガションとサイズも大きくなり、にょきっと腕やら脚やらまで生えてきて――。
「ウオオオオオオオオオオオ!!!」
 ばい~ん、とジャンプするほど元気になりました。
「シュッ! シュッ!」
 ボクサーよろしく上体を振ってパンチを繰り出すダモクレス。おまえは受ける側だろうがとツッコみたくなる光景だが、しかしそれはダモさんとて忘れているわけではなかった。
「……ダレカ! ダレカワタシヲ倒セル者ハ、イナイノカー!」
 カー、カー、カー……。
 深夜の街にやるせない咆哮が、響きます。

●必殺! 技!!
「強い相手を求めるなんて……随分と気骨のあるダモクレスだ」
「気骨と言えるかはわかんないっすけど……そうっすね」
 マジ顔で感心している志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)に、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)はちょっと躊躇ってから頷いた。
 ぴょいんぴょいんする奴を『気骨ある』と評していいかはね、わからんところだよね。
「まあ、そういうわけで、撤去されていたパンチングマシーンにダモクレスがとりついてしまったっす。例のごとく放っておいたらどんな悪さするかわからないっすから、皆さんにはこいつを破壊してきてほしいっすよ!」
 ダンテのぺらぺら早口説明に、手振りで承諾を示す猟犬一同。
 倒すだけなら簡単な仕事である。
 ――だが、悩ましげに考えこんでいる空の表情が、そうではないと告げていた。
「実はこのパンチングマシーン、元が『人の攻撃を受ける』ためのものだからか、なかなかにタフらしいんだ。普通に戦っていてはその堅い防御を打ち崩せないかもしれない」
 ……空気が変わってきた。
 おいおいそんなマジトーンになる依頼じゃないだろう。パンチングマシーンにくっついたダモクレスを倒す仕事がそんな高度な戦略を要するものになるわけが――。
「だから皆さん、必殺技っぽくグラビティをぶちこんでくださいっす!」
 ハイなかった。
 やっぱりただ倒すだけの仕事だった。
「元になったパンチングマシーンの謳い文句は『決めろ! 必殺の拳を!』っす。だから必殺技を撃たれると正確に威力を計測しようとして……簡単に言えば防御力がゼロになるっす」
 猟犬たちは穏やかに微笑んだ。
 うん、つまりこれ、倒すだけの仕事でもなかったね。たぶん行って帰ってくる仕事だね。
「ちなみに必殺技と認定してもらうためには、派手なエフェクトとかポージングとか色々あるけど……一番簡単かつ有効なのは『技名を叫ぶこと』っす!!」
「こちらの必殺技を受けて立とうだなんて……やっぱり気骨のあるダモクレスだ」
 熱く拳を握ったダンテの横で、まるで強敵に臨むかのように表情を引き締める空。
 それを何ともいえぬ顔で見つめる猟犬たち。
 かくして、一同は怒涛の必殺技ショーを開催することになりました。


参加者
ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)
ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●必殺技を撃つにも準備が
 深夜の街は、身震いするほどの寒さだ。
 志場・空(シュリケンオオカミ・e13991)はコートの首元を締めながら、眼前の物体を見上げた。
「ウオオ! 来ルナラ来イ!!」
 気炎をあげて暴れる、巨大パンチングマシーン。
 奴が足踏みするたび軽く地揺れがして、空の尻尾がふらふら揺れる。
「実物を見るとまたすごいな」
「元気な奴だな……でもなんかカッコいい感じに決めればいいんだろ、任せとけ!」
 栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)が、胸を叩いて勝気な笑みを浮かべる。
「しかし必殺技、か」
 静かにダモさんを見上げるヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)。
「実際の戦闘で口上や叫びがいるかと言われれば、必要とは思えないが……」
「それは私も同感ですね」
 見ていたシフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)が、しみじみと首を肯かせる。
「必殺技っぽい演出って言われても思いつかないんですよね」
「本来の意味では派手である必要はないからな」
 真面目な顔で考えこむシフカとヒエル。
 しかしそんな2人の横では、七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)が高らかに熱弁していた。
「ボク、思うんだよ! 必殺技って通常攻撃があってこそだって! 通常攻撃があるからこそ必殺技というものが際立つんだよ!」
「メリハリというものですね!」
「うん!」
 熱心にメモ帳に書き留めるルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)に、自慢げに胸を張る瑪璃瑠。
 こうまで語りに熱が入ったのは、ルーシィドの眼差しが真剣だったからでもある。
 宇宙での戦いで重傷を負った彼女は自身の力不足を痛感していた。
 このままでは先々の戦いでどうなるか――と悶々と考えていたら、現在、なぜかゲーセンの裏手にいる。
「この特訓回で新たな技を編み出します!」
「おー! すごいんだよ!」
 ぐっと握り拳を見せるルーシィドに、ぱちぱちと拍手をする瑪璃瑠。
 その音を聞きながらルーシィドは、ちらりと横を見た。
「ふんっ! ふんっ!」
「とりあえずぶっ放せばいいっすよね」
 黒い重鎧を纏った騎士――ジョルディ・クレイグ(黒影の重騎士・e00466)が両手の戦斧を鮮やかに振り回し、シルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)は愛用のロッド『カラミティプリンセス』をぶんぶんスイングしている。
 どう見ても準備万端である。
「皆さまの必殺技、是非とも参考にさせていただきますわ!」
 新技開発を期して、胸の高鳴りを抑えきれないルーシィドであった。

●必殺技も簡単ではない
「先手必勝なんだよ!」
 先頭を切って突入するのは瑪璃瑠。ダモさんへ渾身の獣撃拳を打ち込む。
 しかし。
「弱イ! 弱イゾー!」
「そ、そんな! ボクの攻撃が……効かない!?」
 平然としている敵を見て、目を見開く瑪璃瑠。
 拳に伝わるのはまるで壁を殴ったような感触だった――という雰囲気の演出である。
「た、倒せる気がしないんだよ……!」
「なんか言ってるっすね」
「ええ、何か言ってますね」
 悔しげな演技しとる瑪璃瑠を後ろから眺めるシルフィリアスとシフカ。
 だが仲間たちも見守るばかりではない。
「交代しよう。ここからは私がやる」
「空さん……」
 打ちひしがれて座りこむ(ふうの)瑪璃瑠の前に、スッと進み出る空。
「ちょっと皆とのレベル差が気になるから、一番手で気楽にやりたいんだ!」
「空さーん!?」
 心なしか情けないことを言いつつ吶喊する空。何か言いたそうな瑪璃瑠の声を背中に受けながら、彼女はブラックスライムの腕輪からスライム弾を連射する。
「ナンダコレハ! チットモ痛クナイ!」
 ぺたぺたっと付着する弾を受け止めたダモさんが怒りだす。
 だが真の攻撃はここからだった。
「ひっかかったな!」
「ヌヌッ!?」
 くっついていたスライム弾が拡大。ボディに噛みつき、ダモさんを怯ませる。
 そしてその隙に、空は走りながら両腕にオーラを集める。さらに巨大な爪となった翠色のエネルギーを如意棒にまとわせ、長大な斧を形成した。
「我は牙、突き立て抉り、喰らい尽くす! 砕け、空牙戦斧!!!」
「グガガガッ!?」
 斧が鋸刃のようにボディを削り、ダモさんを悶絶させる。
 しかし倒れるには至らない。ダモさんは多少ふらつくもすぐに体勢を立て直す。
「ふむ、まあそんなものか。ではあとは任せよう」
「ならば、任されよう!」
 斧を収めると空と入れ替わりに、ジョルディが駆けこんでくる。
「我は重力の守護者……『重騎士』ジョルディ!」
 ジョルディは2本の漆黒の巨斧を組み合わせ、両剣のような薙刀にして頭上で大回転させた。
「我が嘴と爪を以て……貴様を破断する! 受けよ断罪の双斧!
 ダァァァブルゥゥゥ……ディバァァァイドッ!」
「ウガアアア!?」
 遠心力を乗せた一撃が唸りをあげ、ダモさんの重い体を吹っ飛ばす。
 するとジョルディは片膝をつき、装備している主砲『Brotherhood-13』を構え、右腕で砲身を支えあげた。
「主砲展開! 徹甲炸裂弾セット! ターゲット・ロック!」
 右眼と砲身をコードで繋ぎ、飛んでゆくダモさんに照準を定めるジョルディ。
「13式スナイパーキャノン……ファイア!」
 空気が震えるような凄まじい轟音があがり、砲弾が飛ぶ。弾頭はダモさんの体に突き刺さると大爆発を引き起こした。
 圧倒的な風圧に乱される髪を、懸命に押さえるルーシィド。
「すごい……大気が歪んでいます!」
「まあ確かにとてつもない威力ではあるが……」
 ノリッノリのルーシィドさんにツッコもうとして口を閉ざすヒエル。
 一方、シフカは立ち昇る爆炎を見つめている。
「ふむ、必殺技っぽいとはあんな感じですか」
「そうっすね。ちなみにこんなのもあるっすよ」
 シフカの横にいたシルフィリアスが、くるくるとバトンのようにロッドを回す。
 そしてパシッとそれを止めて振りかざすと、彼女の周囲の空間がきらきらと輝き始めた。
 輝きの奔流の中で、シルフィリアスが虹色のシルエットに包まれる。ぎりぎり幼児の親御さんからクレームが来ない程度の全裸になり、腕に、脚に、光のリボンが巻きついて――。
 変身バンクを終えたとき、シルフィリアスは紛れもない魔法少女になっていた。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
「そんな脱ぎ方があったとは……」
 決めポーズ姿でスカートやらをはためかせるシルフィリアスを見て、感心するシフカ。
 それを尻目にシルフィリアスは足元に魔方陣を展開。茫洋と光を放つ陣により大地から魔力を集め(ている感じで)、ロッド先端に凝集させた光球を生み出した。
「いくっすよ! グリューエンシュトラール!」
「ウオオオオ……ッ!!?」
 ジョルディの砲撃に勝るとも劣らぬ迫力で、魔力が放出される。強烈な光の塊にさらされたダモさんのボディ塗装が、ぴしりぴしりと剥がれてゆく。
「クッ……ナントイウ必殺技ダ!」
「必殺技は魔法少女の得意分野っすよ」
 四つん這いになってぜぇぜぇするダモさんに軽く言い捨てるシルフィリアス。
 そこへ立て続けに聞こえる叫び。
「いくぜ! クイックドロウ!」
 リボルバーの銃口を構えたのは理弥だ。目にも止まらぬ早業で撃ちだされた弾丸は、ダモさんの塗装が剥がれた部分に見事に命中した。
「ふっ、楽勝だぜ……」
 銃口の硝煙を吹き消し、くるりとリボルバーを手元で回す理弥。
 が、つるっと滑って地面に落下。
「あっ」
『……』
 沈黙する一同。
「い、今のなし、もう一回!」
 銃を拾って再チャレンジする理弥。
 しかしやはり銃は指から滑ってガシャンと落ちた。
『……』
「……」
 沈黙する一同と理弥。
 小さいドワーフの手でガンスピンなんて無理な話だったんや……。
「……ま、まぁこれはほんの小手調べだからな!」
 ガンスピンを諦めた理弥が、どっからともなくやかんを取り出す。
「必殺! やかんシュート!」
 黄金色のそれを足元に落とし、ダモさんに向けて蹴りこもうとする。
 ――が。
「……いや待てよ、やかんじゃさすがに技名としてカッコ悪いよな」
 振りかぶった脚を止める理弥。
 そのまま顎に手を添え、ぶつぶつと思案に耽りだす。
「ケトルシュート……いやこれもなんかなぁ。
 稲妻シュート……サッカー漫画じゃあるまいし。
 ウルトラシュート……は安直すぎるな……」
「オイ! ハヤクシロ!」
「ちょっと待てって。いま考えてるから……」
 ダモさんに構わず思考を続ける理弥。
 愛想をつかしたダモさんが離れていったのは、言うまでもない。

●ハイスコア
「空の力よ、我が刃に宿れ! 絶空斬!」
「クウッ!? ナント鋭イ斬撃ダ!」
 シフカの抜いた刀が鮮やかな剣閃を描き、ダモさんの脚部を斬りつける。まるでそこに何もないかのように刀身は硬い筐体を寸断し、パンチングマシーンはぐらりと傾いだ。
 結局いい感じの演出を思いつかなかったシフカは、とりあえずの台詞を攻撃の直前に入れこんでいるだけだ。だがそれでもなんか効果は抜群だった。
 なので、シフカもそれでいいんだってことで、ノリノリでグラビティを撃ちまくっていた。
「雷よりも速きこの一撃を受けてみよ! 雷刃突!」
「グガガガガガッ!?」
「頑張ってるっすねー」
「シフカさん、もう少し顔を向けてくれるといい画になると思うぞ」
 ダモさんと華麗な立ち回りを演じているシフカの横で、ポテチ食ってジュース飲んでくつろいでるシルフィリアス。その隣ではカメラを回している空が声を張ってよくわからんアドバイスをシフカに届けている。
 役目を終えたと言わんばかりに、完全に緩んでいた。空はまだ仲間の必殺技を撮影するべく走り回ったりしていたが、シルフィリアスはもう完全にダメだった。
 ヒエルは眉間を押さえ、かぶりを振る。
「……とても戦いをするような空気ではないな……」
 この弛緩しきった空気で戦うというのは、どうにも難しい。
 だが猟犬として仕事をせねばならない。
 使命感を覚えたヒエルは、ぽりぽりポテチ食ってるシルフィリアスの横を過ぎて前に出る。
 で、普段戦ってるときと同じ感じに、右拳に銀色の氣を集中させた。
 力強い光が灯る……が、ヒエルの顔は浮かない。
(「俺自身にとってはこれだけで必殺技の類であるはずなのだがな……」)
 左手で懐を探り、5枚の札を取り出すヒエル。
 その5枚を、拳士はダモさんへと掲げて見せた。
「この御札にはそれぞれ木、火、土、金、水の5つの力が込められている。本来なら状況に応じて属性を使い分けるのだが……今回は特別に有りっ丈を見せてやろう!」
 握りこんだ札たちが霧散して光と化し、右拳に五色の輝きとなって纏わりつく。
 さらに、ヒエルはその右拳を天にかざす。
「そして、陰と陽は己の精神の中にある!」
 拳に灯っていた銀の氣がうねり、白黒の螺旋を描き出す。
 無彩色の螺旋、五色の螺旋――その2つを纏った右拳を構えながら、ヒエルは地を蹴った。
「これが……陰陽五行を司る俺の拳だ!」
「バ、馬鹿ナ! ナントイウ威力ゥゥー!!」
 正拳が筐体を穿ち、ダモさんが吹き飛ばされる。そのままゲーセンの外壁に激突すると、ダモさんはぐったりと体を折った。
 度重なる必殺技に弱ってきている。
 そう捉えたルーシィドは、スタイリッシュ変身をしながらダモさんの前に躍り出た。
 どんな変身かというと――。
「セクシー路線っすね」
「うん。これは刺激的な必殺技だな」
「あ、あの! できれば撮影はやめていただいて……」
 シルフィリアスと空の視線に、恥ずかしがるルーシィド。
 サキュバスとしての尻尾、角、翼を解放した彼女の姿はとても開放的だった。
 尻尾が窮屈でないようにスカート丈は短いし、翼の邪魔になるのでブラも外れている。おかげで大きな胸が強烈に主張するので赤面不可避であった。
 が、そこでハッとなるルーシィド。
「いけませんわ! こんなことでは新技なんて……わたくしはサキュバス! 見られることも悦びにして力に変えなくては!」
 決意して、体を隠してた手をどけるルーシィド。
 そうして溜めた力でもって、彼女はグラビティを発動した。
「夜の帳が降りて、月の灯が優しく照らす……今この時は、夢魔の時間。闇に抱かれてお眠りなさい」
 足元の影から、極冷の気を纏った白い蔦が円形にひろがってゆく。
 そのうちの1本がダモさんに這い伸び、そして――。
「永久に続く不朽の眠りよ、夢も、熱も、光も凍らせて……ヒュプノ・ヒオノシエラ」
 触れた瞬間に凍気が爆発。辺りの地面ごとダモさんを凍結させ、氷像へと変えてしまう。
「皆さま、今ですわ!」
「わかったんだよ!」
 ルーシィドの呼びかけに、応じる瑪璃瑠。
 彼女は瞼を閉じ、そのピンク色の瞳を覆い隠した。
「夢現合――……」
 呟きを発し、ゆっくりと開眼する瑪璃瑠。
 すると瞳の色が変じていた。左眼が煌々と、金色の輝きを放っていたのだ。
「貴様、雰囲気ガ……!」
「さっきまでのボクと同じにしないほうが身のためだよ。何せ、今のボクは――」
 何かを察してたじろぐダモさんに、瑪璃瑠がにやりと微笑む。
「「ボクたち、だからね」」
 重なるは、2色の声音。
 その声を不思議がる余裕もなく、瑪璃瑠の体が2つに分かれる。
 メリーとリル――ひとつの体に存在する『2人』が、2つの体となって分かれ、ダモさんに左右から襲いかかった。
「ユメは泡沫!」
「ウツツも刹那!」
「「だけど、この絆は永遠なり!!」」
 兎と獅子、華麗にして苛烈なる連携攻撃がダモさんに叩きこまれる。脚を打ち払われ、同時に側頭を横殴りにされたダモさんは盛大にその場に転倒した。
 そこでようやく、技名を考え続けていた理弥は我に返った。
「やばっ! もう決着か!? じゃあもうこれでいいや!」
 慌てて思考を切り上げ、やかんを放り上げる理弥。
「これで終わりだ! ゴールデンサンライズシュート、いっっけー!!」
 全力でもって、某国民的推理アニメのアレのようにキックされるやかん。
 やかんの色と丸っこい形から安直に命名された必殺技は空間を突っ切り、ダモさんの顔面にめりこんだ。
 地面をのたうち、仰向けになるダモさん。
 その腹の上へジョルディは跳躍。
 戦斧をもった両腕を筐体へと突きこみ、体を地獄の業火へと変化させる。
 そして右眼の赤い眼光で、ダモさんを睨みつけた。
「イィィンフェルノォォォ……ヴァスタァァァァァァ!」
「グアアアアッ!!?」
 コアエネルギーと地獄の炎とが合わさった超破壊の光線が、筐体の尽くを溶融させる。
「貴様ラノスコア……1万点ダ……!」
 どこか満足げな声を遺し、消滅するダモさん。
 こうして猟犬たちはまたひとつ、街を平和にしたのだった。
 果たして1万点がどれほどのスコアなのか全然わからなかったけど、一同はなんとなく気分よく帰ることができました。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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