女の子は、みんなニャンコになればいい！

■リプレイ

●猫カフェにて
「猫好き仲間として、彼をビルシャナとして討伐する他ないのが残念……だけど何だろう、この嫌な予感……」
　レリエル・ヒューゲット（小さな星・e08713）は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている廃墟と化した猫カフェにやってきた。
　ビルシャナは強力な洗脳光線を放って、女の子達をニャンコにしているようである。
　そのため、室内からはニャーニャーと声が聞こえており、ビルシャナが飼い主気取りで、何やら話しかけているようだった。
「どういう事情で廃墟になってしまったのかはわかりませんが、廃業した後、にゃんこスタッフ達は、どうなったのでしょうか？」
　そんな中、八点鐘・あこ（にゃージックファイター・e36004）が、廃墟と化した猫カフェに思いを馳せた。
　噂では、動物保護団体によって、猫達が保護された事になっているが、その後どうなったのか分かっていない。
「まあ、酷い扱いは受けていないじゃろ。それよりも、ビルシャナじゃ。……まったく、おかしな教えばかり広めおって……」
　ミミ・フリージア（たたかうひめさま・e34679）が、呆れた様子で溜息を漏らした。
　猫は好きだが、ビルシャナの言っている猫は、ニャンコの恰好をした女の子。
　その時点でミミが知っている猫とは違っているため、迷惑以外のナニモノでもなかった。
「猫モードの女の子ねぇ。ククク、いいじゃねぇの。『ボン、キュッ、ボン！』ならなお良しだな」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）が、含みのある笑みを浮かべた。
　その途端、脳裏に浮かんだのは、ニャンコハーレム。
　幸せいっぱい、胸いっぱいの、幸せウハハなパラダイスが脳裏に浮かび、足取りも妙に軽くなった。
「……と言うか、オス猫よりメス猫のほうが気性が激しいと聞くけど、大丈夫なんだろうか？　可愛い側面だけとは限らないしね」
　瀬入・右院（夕照の騎士・e34690）が心配した様子で、廃墟と化した猫カフェを見つめた。
　その途端、ビルシャナの悲鳴が聞こえてきたため、大丈夫という事はないだろう。
「まあ、猫耳は可愛らしいけどねぇ……」
　笹ヶ根・鐐（白壁の護熊・e10049）が複雑な気持ちになりつつ、何処か遠くを見つめた。
　そもそも、猫耳をつけた女の子を、ニャンコと呼んでいいのか疑問である。
「だからと言って、猫も女も一緒くたにされては困ります。世には狂犬の様なデンジャーな女だっているのですから……」
　ミリム・ウィアテスト（リベレーショントルーパー・e07815）が、呆れた様子で口を開いた。
　おそらく、ビルシャナはニャンコ＝可愛い＆甘えん坊と言うイメージがあったのだろう。
　そのため、自分にとって都合の悪い事を考えず、女性信者達を洗脳したのかも知れない。
「……とは言え、身も心もニャンコ化している人達は、人の言葉を理解できないかもしれないですね」
　そう言って若生・めぐみ（めぐみんカワイイ・e04506）が何やら察した様子で、物陰に隠れて白猫の着ぐるみ姿になって、仲間達と共に廃墟と化した猫カフェに足を踏み入れた。

●猫カフェ内
「何と言うか……中途半端じゃね？」
　廃墟と化した猫カフェに足を踏み入れたレリエルが、ニャンコスタイルの女性信者達を見つめ、思わずツッコミを入れた。
　女性信者達は猫耳と付け尻尾をつけているだけで、他は自由。
　普段着だったり、水着だったり、着ぐるみだったり……あまりにもブレブレ過ぎるせいで、ツッコまずにはいられなくなった。
「猫と聞いて楽しみにしてたんじゃがなんか違うのぅ。しかも、男の子は猫になれんのか。猫好きじゃったら、猫になりたいじゃろうに……」
　ミミが女性信者達を見つめ、残念そうに溜息を漏らした。
「男はニャンコになる必要ナァーシ！　誰需要だ、マジで！」
　その途端、ビルシャナが思いっきり嫌そうにしながら、大きく両手でバッテンを作った。
「いや、メンズだって需要がありますよ？　ほら、これをつけて『ニャン♪』と構えて！」
　ミリムが持参した猫耳と付け尻尾を、ビルシャナに手渡した。
「ニャン……って、する訳がないだろ！　身の危険しか感じねーし！」
　ビルシャナが猫耳を床に叩きつけ、イラついた様子でツッコミを入れた。
　何やらウホッ漢のロマン的な映像が脳裏に過ったのか、全身に鳥肌が立ちまくっていた。
「えーっ、似合っていましたよ、たぶん」
　ミリムが残念そうにしながら、チューブ状の御菓子をチラつかせた。
　それに気づいた女性信者達が興味津々な様子で、瞳をキラキラと輝かせた。
「そもそも、ニャンコは自由な生き物です。その辺の床で爪を研ぐ、鰹節を齧る、手毬と戯れる、ちくわを食べる、外へお散歩に行く……なんでもありなんです。そういった意味でも、こんなところで鳥に懐いていないといけない理由はないんですよ」
　そんな中、めぐみが白猫の着ぐるみ姿で、ちくわを齧りつつ、手で毬を転がした。
　そのため、女性信者達は、興味津々ッ！
　目で毬の動きを追いながら、今にも飛びつきそうな勢いだった。
　しかも、その足元には鰹節や、削り節、木片などが転がっており、猫化した女性信者達のハートをヒット＆アウェイ感覚で、刺激しているような感じになっていた。
「いや、俺に懐いてこそ意味がある！」
　ビルシャナが女性信者達を抱き寄せ、勝ち誇った様子で胸を張った。
　その言葉に応えるようにして、女性信者達が喉をグルグルグルルンと鳴らし始めた。
「ぶっちゃけ本当はナデナデする口実とか欲しいだけですよね？」
　それを目の当たりにした右院が、代わりに猫耳をつけながら、ビルシャナに生暖かい視線を送った。
「そ、そんな訳ないだろ！」
　その途端、ビルシャナがビクッと体を震わせ、右院の言葉を否定した。
「それじゃ、猫と女の子ならどっちを選びます？」
　右院が疑いの眼差しを送りつつ、ビルシャナに再び問いかけた。
「そりゃあ、もちろん……おニャンコだ」
　ビルシャナが自らの本音を誤魔化すようにして、わざと大声を上げた。
　一瞬、本音が漏れそうになったものの、危機的回避能力を働かせ、何とか誤魔化す事が出来たものの、それは単なる思い込み。
　実際にはケルベロス達にモロバレ事案であった。
「わらわは動物なら、なんでも好きなんじゃが、犬とかはどうかのぅ」
　そんな空気を察しつつ、ミミが話題を変えた。
「いや、犬娘は駄目だ！」
　ビルシャナが興味ゼロと言わんばかりに、さらりと答えを返した。
「てめぇ馬鹿か？　犬娘だって可愛いだろうが！！　気まぐれな猫娘に翻弄されんのもありだ！ でもな、従順な犬娘に世話してもらえんだぜ！！」
　清春が女性信者を抱き寄せ、犬耳を取りつけようとした。
　しかし、女性信者が甘えるように頬擦りしてきたため、ビルシャナの目を見つめて、『これもアリだな』と言わんばかりに頷いた。
「それに、ワンコは可愛くない。だって、噛みつかれそうだろ？」
　ビルシャナがミリムをマジマジと見つめ、乾いた笑いを響かせた。
「……って、誰が犬ですか！　これでも狼ですからね！」
　ミリムが獣耳はピンとさせ、ムッとした表情を浮かべた。
　いっそ、首元に噛みついてやろうと思ったが、そんな事をすればビルシャナの思うツボ。
　『それ見た事か！』とばかりに、ビルシャナが踏ん反り返ってしまうのがオチのため、ギリギリのところで感情を押し殺して踏み止まった。
「んー、まあ言わんとすることは分からんでもない。とにかく、落ち着いて飯でも食わないかね？」
　鐐がビルシャナの教義に、何となく理解を示しつつ、厨房で料理をし始めた。
　まずはソースたっぷり焼きたて極厚ねぎ焼き、スパイスたっぷりカレー＆ナン、イカタコ刺身に、エビお寿司、特上アワビのステーキ。
「どうせ魚やキャットフードばっかしでしょ？　そろそろ飽きてるのでは？」
　レリエルも同じように厨房を借り、テキパキと料理を作り始めた。
　こちらはスパイスと無臭にんにくたっぷりのスパゲティ、付け合わせのサラダにはすりおろし玉葱ドレッシング、デザートは高カカオチョコを贅沢に使ったザッハトルテ。
　どちらも、猫にとっては毒だが、人間には美味しい食べ物。
「んにゃ？」
　それに気づいた女性信者達が、一斉に首を傾げた。
「今だけはニャンコである事を中断して、人用の食事を楽しもう？」
　レリエルがニコッと笑って、テーブルの上に、料理を並べていった。
　だが、女性信者達は猫パンチを繰り出すばかりで、料理に全く興味を示していなかった。
「それなら……」
　すぐさま、あこが動物変身で虎の姿になり、ウイングキャットのベルと一緒に、洗濯ネットに入ったり、段ボールで爪を研ぎまくったりする事で、迫真のにゃんこアピールをしつつ、女性信者達が持つ猫の自覚を刺激した。
「虎にも見えるけどたぶんアメリカンカールですね！」
　右院も猫じゃらしを揺らして、あこ達の興味を引き、まるで指揮棒の如く振るう事で、にゃんこダンスを踊らせた。
　それに誘われるようにして、物陰から猫達が現れ、一緒になって踊り始めた。
　おそらく、この場所に元々いた猫達だろう。
　一体、どういった経緯を経て、この場に戻ってきたのか分からないが、息の合ったダンスに本物ニャンコの意地を見た。
「ならば……取っていきなさい！」
　次の瞬間、ミリムが勢いよく猫じゃらしを放り投げ、女性信者達をビルシャナから遠ざけた。
　その後を追うようにして、猫達もぴゅーっと走り出した。

●ビルシャナ
「うぐぐ……このままお前達の好きにさせてたまるかァ！」
　その事に危機感を覚えたビルシャナが、ケルベロス達に対して、催眠光線を放ってきた。
「ニャーンて言うと、お思いですかグルル！」
　それに気づいたミリムが催眠光線を避け、ドラゴニックハンマーでビルシャナを床に打ちつけた。
「ニャ……うにゃーん？　いや、だから私は猫でも犬でもなく狼ですからね！！」
　その間に、ミリムが催眠光線を浴び、顔を真っ赤にしながら、ビルシャナを睨みつけた。
「そうだ！　にゃーんなんて言うか、にゃーん……って、しまったあああああああああ！」
　清春も催眠光線をモロに食らい、反射的にニャンコのポーズ。
　自分でも恥ずかしくなるくらいラブリーキュートなポーズを決めってしまったため、冷静になった途端、黒歴史行き確定するほどの恥ずかしさに襲われた。
「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ！」
　それを目の当たりにしたビルシャナも、精神的なダメージを受け、溺死しそうな勢いでリバースした。
「これも自業自得です。その姿を瞳に焼き付けて、最後の思い出にしてくださいね」
　めぐみが皮肉混じりに呟きながら、一気に間合いを詰めて、ビルシャナに攻撃を仕掛けていった。
　一方、ナノナノのらぶりんは、ナノナノばりあを展開し、仲間達の援護に回った。
「それじゃ、そろそろ終わりにしようか」
　続いて、右院があこと連携を取りながら、得物砕きでビルシャナの目を潰した。
「そうですね。お土産も持った事ですし、何も悔いがないのです」
　あこも納得した様子で獣撃拳を繰り出し、ビルシャナをブン殴った。
「お、俺が一体、何をしたって言うんだ」
　ビルシャナが不満げな様子で、恨めしそうにケルベロス達を睨みつけた。
「ならば、何故こんな事をしてしまったか反省せねばならんのぅ。まあ、安心するのじゃ、この世の猫はみんなわらわのものになるからの」
　次の瞬間、ミミがビルシャナに破鎧衝を仕掛け、ビルシャナの我儘ボディを破壊した。
「これに懲りたら、来世ではまともに生きろよ」
　それに合わせて、鐐も獣撃拳でぶっ飛ばし、ビルシャナの身体を舞い上がらせた。
「だったら、最後にひとつだけ願いをかなえてくれ。せめて、俺とニャンニャンしよう。最後の……思い出に！」
　ビルシャナが少年のように円らな瞳で、ゲスい言葉を女性陣に吐き捨てた。
「やかましわ！　あんた全然、上手い事言ってないわよ、このド変態！！」
　その事に腹を立てたレリエルが、ファナティックレインボウを仕掛け、勢いよく飛び上がると、美しい虹を纏うようにして急降下しつつ、ビルシャナに必殺のキックを炸裂させた。
「む、無念……にゃん」
　その一撃を喰らったビルシャナが血反吐を吐き、崩れ落ちるようにして倒れ込んだ。
「にゃー！」
　その途端、猫達がケルベロス達に駆け寄り、『遊んで、遊んで！』と言わんばかりに瞳をキラキラ。
　『久しぶりの御客様だから、たっぷりサービスするにゃん♪』と言わんばかりにゴキゲンな様子で身体を擦り寄せた。
「ここは一体……」
　それと同時に、女性信者達が我に返って、口に咥えていたゴム毬を落とした。
　洗脳されている間の記憶はないものの、状況的に考えて、とても恥ずかしい事をしていた事だけは理解したらしく、みんな顔を真っ赤にしていた。
「こんな悪夢は、忘れた方がいいと思いますので、忘れましょう」
　そんな空気を察しためぐみが女性信者達を見つめ、何となくフォローを入れるのだった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2019年12月7日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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