俺と契約して魔法少女にならないか

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだ。魔法少女の変身シーンこそ至高である、と! だから、別にやましい気持ちはない! 俺が、そのアレだ。魔法少女にしてやるって訳さ。そのための力も俺は持っている! だから近くでカメラが回っていたとしても気にするな。これはアレだ。お前達の記念になると思って撮っているだけだから……!」
 ビルシャナが廃墟と化した教会に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 信者達はみんな魔法少女を夢見る女の子達ばかり。
 その瞳はキラキラと輝き、心の底からビルシャナの事を信じているようだった。

●セリカからの依頼
「高千穂・ましろ(白の魔法少女・e37948)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化した教会。
 ここでビルシャナが特殊なビームを放ち、信者達を魔法少女に変えているようだ。
 だからと言って、特別な力を与えられているという訳ではなく、ただ単に見た目が変わるだけ。
 しかも、変身シーンに時間が掛かってしまうらしく、その間は不自然な光に包まれてしまうようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 いまのところ、信者達はビルシャナの行いに不信感を抱いていないようだが、カメラを撮っている時点で怪しいため、その事を指摘する必要があるだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)
風戸・文香(エレクトリカ・e22917)
之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)

■リプレイ

●教会前
「怪しい契約を持ち掛ける鳥……どこかの白っぽい生き物みたいな鳥ですね。では、そういう扱いをするという事で……最低でもカメラは完膚なきまで破壊しましょう」
 若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている教会の前にやってきた。
 ビルシャナは、いたいけな少女をたぶらかし、魔法少女にする事を条件に、変身シーンを撮影しているようである。
 そのせいか、教会の中から『うひゃあ!』、『いいね、いいね!』、『もっと大胆に!』と言う声が聞こえており、色々な意味で通報事案になっていた。
「思想信条に四の五の言うのはいけませんが、『変身シーンに時間が掛かってしまうため、その間は不自然な光……』という時点で下心しかなさそうですね……」
 風戸・文香(エレクトリカ・e22917)が、呆れた様子で溜息を洩らした。
 変身をしている間、女性信者達の身体は不自然な光に包まれているものの、身体のシルエットが露わになってしまうため、ビルシャナにまったく下心がないと言ったら嘘になるだろう。
「でも、変身シーンが生で見られんだぞ! しかも、可愛い子ばっかのようだし! 最近ついてんなぁ、オレ」
 そんな中、柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)がカメラ片手に、幸せな気持ちに包まれた。
 これは、ある意味、御褒美。
 エロスの神様がくれた祝福的な何か。
 そのせいか、気持ちウキウキ、ランランであった。
「一緒に破壊されたくないなら、しまっておいてくださいね」
 その途端、めぐみがイイ笑顔を浮かべながら、殺意のオーラを漂わせた。
 おそらく、仲間でなければ、速攻で撲殺。
 カメラもろとも、粉微塵にしてしまうところだろう。
「ああ、もちろん! こんなモンはこうだ!」
 そんな空気を察した清春が咄嗟にカメラを地面に叩きつけ、まわりに見せつけるようにして何度も踏んだ。
 だが、それはダミー。
 まわりを油断させるため、予め用意したモノ。
 出来るオトコだからこそ、二手、三手先を読む。
 そうでなければ、この状況を突破する事など出来ないだろう。
 それ故に、真剣!
 絶対にバレないようにするため、粉々になるまで踏みつけた。
「とにかく、鳥に契約のなんたるかを教える必要がありそうですね」
 そう言って秋芳・結乃(栗色ハナミズキ・e01357)が気持ちを切り替え、仲間達と共に教会の中に入っていった。

●教会内
「いいぞ、お前ら! もっと大胆に! セクシーに!」
 教会の中ではビルシャナがカメラを構え、笑顔を浮かべる全裸の女性信者達を、興奮気味に撮っていた。
「あっ……」
 それを目の当たりにした清春がカメラを構えたまま、何やら察した様子で言葉を漏らした。
 おそらく、ビルシャナは真性。
 しかも、おまわりさん、この人ですレベルでヤバイ奴。
 それが分かってしまう程、ビルシャナの全身から、ダーティなニオイが漂っていた。
「なんだ、お前らは……。邪魔をするなら帰ってもらおうか!」
 その気配に気づいたビルシャナがケルベロス達に背中を向けたまま、イラついた様子で答えを返した。
「いや、俺にそっちの趣味はないが、気持ちは分るぜ。だから仲間に加えてくれ」
 清春がビルシャナに対して理解を示し、未来の美女をフィルムに収めるため、一緒になって女性信者達を撮り始めた。
 そのためか、背後から仲間達の殺気を感じたものの、清春は戦場に赴いた戦士の如く、いばらの道を駆け抜けた。
「ところで、契約ってことはWin-Winな関係ってことだよね? そっちは撮影とか言ってるから、それがメリットなんだろうけど……こっちのメリットは、なんなのかな?」
 そんな中、結乃が女性信者達に上着を着せ、ビルシャナに対して疑問を投げかけた。
「そりゃあ、もちろん……この写真だ。一生の記念になるものだからな。それが何よりの報酬だ!」
 ビルシャナがまったく悪びれた様子もなく、キッパリと答えを返した。
「記念という事は、撮ったデータをきちんと本人にも渡しているんでしょうね?どうせ人には見せられない写真を撮ることが目的でしょう。違うなら撮った写真をお見せなさい。最近のカメラはフィルムではないので、カメラを壊しても映像が消えるとは限らないんですよね。静画にしろ、動画にしろ、この場でデータを確認しましょうか」
 しおんがジト目でビルシャナ達を睨みつけ、彼らからカメラを奪おうとした。
「こ、こら、やめろ! これは貴重なモノだ!」
 ビルシャナが激しく動揺した様子で、必死に抵抗し始めた。
 その間に清春のカメラが仲間達によって奪われ、跡形もなく破壊された。
「やっぱり、如何わしい写真を撮っていたのですね。そうやって、夜の世界に行った少女を、たくさん見てきました」
 そこに追い打ちを掛けるようにして、めぐみが瞳を潤ませ、ウソ泣きをした。
「いや、これには深い訳が……」
 清春が動揺した様子で、頭の中に浮かんだ言い訳を口にしようとした。
「そんな事する訳がないだろ! 俺達は潔白だ!」
 その言葉を遮るようにして、ビルシャナが自分達の正当性を訴えた。
「じゃあ、撮った写真はどうするの? 今迄みたいに売るんつもりなんでしょ?」
 めぐみが女性信者達の不安を煽るようにして、ビルシャナにジリジリと迫っていった。
「何か勘違いをしているようだが、きちんと契約をしているんだぞ? そんな事をする訳がない」
 ビルシャナが脂汗を掻きながら、ケルベロス達から視線を逸らした。
 本音を言えば、やましい事で胸いっぱいではあるものの、ここでバレてしまえば、待っているのは最悪の結末なので、あえて誤魔化す事を選んだようである。
「もちろん契約だから、報酬もあるんだよね? 衣装、ごはん、必要経費とかは、もちろんそっち持ちで、ギャラの取り分的には、6:4とか……できれば7:3くらいがいいんだけど、どうかな? それと、もうひとつ。これいちばんだいじ。えっちなのは、当然特別料金だからね? 言っておくけど、わたし、高いよ? その他、細かいことは、これに書いておいたから目を通しておいて、ねー」
 結乃がビルシャナをジロリと睨みつけ、分厚いファイルを押し付けた。
 そのファイルには契約に関する事が事細かに書かれていたものの、ビルシャナは最初のページを見ただけで、頭を抱えるレベルだったようである。
「こんなモノ、いらん! みんな納得の上で、俺と契約しているのだから!」
 ビルシャナが不機嫌な表情を浮かべ、分厚いファイルを床に叩きつけた。
「皆さん、騙されてはいけませんわ」
 次の瞬間、ジークリート・ラッツィンガー(神の子・e78718)と之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)が聖堂の二階席に陣取り、ビルシャナ達を見下ろした。
「な、なんだ、お前達は!」
 ビルシャナがイラついた様子で、ふたりを見上げた。
「そもそも、ビルシャナがさせているのは変身ではなく、ただの早着替えですわ。ビルシャナは、それをカメラで撮って、スローモードでじっくり再生しているのですわ」
 それでも、ジークリートは怯む事なく、キッパリと断言をした。
「い、一体、何を根拠にそんな事を言っているんだ!」
 ビルシャナが激しく動揺した様子で、わざと大声を上げた。
 その間、頭の中に真っ黒な考えが渦巻き、目をグルグルさせていた。
「ならば、本当の変身を見せてさしあげますわ」
 その言葉に応えるようにして、ジークリートがしおんと一緒に飛び降り、プリンセスモードを発動させ、キラキラと光りながら、魔法少女に変身した。
「どんなデウスエクスも、まじかる☆どりるでみらくる突貫☆ ドリルホワイト」
 次の瞬間、ジークリートが床に降り立ち、ビシィッとポーズを決めた。
「まじかる☆はんまーで、みらくる撲殺☆ ハンマーブラック」(しおん)
 詩音もスタイリッシュに変身すると、ビルシャナ達の前に陣取った。
「「「「「「「「「格好いい!」」」」」」」」」
 それを目の当たりにした女性信者達が瞳をキラキラと輝かせ、あっと言う間にふたりの虜になった。
「うぐぐ……だから、どうした!」
 その事に危機感を覚えたビルシャナが、逆ギレ気味に叫び声を響かせた。
「そいつに騙されちゃダメよ。そいつの正体は”デウスエクス・ガンダーラ”人々を絶望へ誘う悪魔のような存在よ。そいつに騙されて、エッチな写真を撮られ、それを流され、結果、夜の世界で生きるしかなくなった子をたくさん知ってる……あなたたちもそうなりたいの?」
 めぐみが女性信者達を守るようにして陣取り、警告混じりに呟いた。
 そのため、女性信者達が、ソワソワ。
 何が正しいのか分からず、動揺しているようだった。
「ええい、お前達さえいなければ、こんな事にはならなかったんだ! お前達さえいなければァァァァァァァァァ!」
 それと同時に、ビルシャナが殺気立った様子で、ケルベロス達に吠えた。
「やはり正体を現しましたね! カラクリと家内安全の名の元に! ……えーと、名前は考えてなかったけど、メイクアップ!」
 それを迎え撃つようにして、文香がプリンセスモードを発動させ、黄色がパーソナルカラーの魔法少女になった。

●ビルシャナ
「ならば、思い知るがいい! 俺に逆らったヤツが、どのような末路を辿るのかを……!」
 ビルシャナが鬼のような形相を浮かべ、ケルベロス達に対して不自然な光を放ってきた。
 それは当たったモノを魔法少女にさせる不自然な光。
「……って、俺は味方だ!」
 清春が反射的に本音を吐き捨て、不自然な光を避けた。
 そもそも、不自然な光に当たったところで、誰需要。
 魔法少女的な姿になったところで、喜ぶ者など誰もいない。
 それが分かっているため、全力回避ッ!
 無理やり体を捻って、グキッと腰を痛めつつ、涙目になりながら、倒れ込むようにして物陰に隠れた。
「敵味方関係なしのようね」
 すぐさま、文香が女性信者達を守るようにして、スターサンクチュアリを展開した。
 その間、女性信者達は身体を強張らせ、一言も言葉を発しなかった。
「……と言うか、この光って当たったところで、たいして問題がないようだけど……」
 そんな中、結乃が不自然な光を浴びて魔法少女に変身し、神父服をモチーフにした赤のドレス風コスチューム姿になった。
「それでは、カメラを壊しておきましょうか」
 その間に、めぐみがケルベロスコートを脱ぎ捨て、白地に紫の襟、下は紫のミニスカートで黒のストッキングという魔法少女の姿になると、一気に間合いを詰めてビルシャナのカメラを叩き壊した。
「お、俺のカメラがあああああああああああ!」
 その途端、ビルシャナが信じられない様子で、ガックリと崩れ落ちた。
 ある意味、カメラはビルシャナにとって、命と同じモノ。
 それを壊されてしまったのだから、ショックもデカイ!
「奇跡も魔法も、タダじゃないんだよ?」
 その隙をつくようにして、結乃がバスターライフルの銃床で、ビルシャナをブン殴った。
「うぐぐ……負けてたまるか!」
 その一撃でビルシャナが我に返ったものの、既に瀕死の重傷。
 しかも、ケルベロス達が連携を取るようにして、攻撃を仕掛けてくるため、反撃を仕掛けるだけの余裕はなかった。
「まじかる☆はんまー」
 次の瞬間、しおんが殴念仏(ナグリネンブツ)を発動させ、ラインストーンでキラキラにデコレーションされたドラゴニックハンマーを振るい、ビルシャナを殴り飛ばした。
「まじかるドリルブラストですわ」
 その落下地点にジークリートが先回りをして、ラインストーンでキラキラにデコレーションされたドリル型セントールランスを構え、ビルシャナにヴァルキュリアブラストを炸裂させた。
「お、俺はまだやりたい事が……!」
 そのため、ビルシャナは自らの身を守る事さえ出来ず、断末魔を上げて息絶えた。
(「こんな格好してて良いのかしら? 来年32歳なのに……」)
 その途端、文香が複雑な気持ちになりつつ、ヒールで教会を直し始めた。
 おそらく、それは考えてはイケない事。
 あえて考えるべきではない事だった。
「まあ、これで一件落着だな」
 清春が愛想笑いを浮かべつつ、仲間達に気づかれないようにしながら、ビルシャナのカメラを拾い上げた。
 見た目はボロボロだが、データは無事……のはず。
 別にやましい気持ちがないと言ったら嘘になるが、今後の参考……もとい、オカズ的なアレ……でもない何かにするため、この場から持ち帰る必要があった。
「それって勝手に撮っていたものよね? それなら、料金を徴収させていただくけど……」
 それに気づいた結乃がイイ笑顔を浮かべ、清春の肩をガシィッと掴んだ。
「あ、いや、これはきちんと処分するつもりだったから、ほら……こんな風に!」
 清春が、ぎこちない笑みを浮かべ、カメラを何度も踏みつけた。
 一応、踏む場所を選んでいるものの、データが無事かどうかは、運次第。
 心の中でエロスの神に祈りつつ、涙を飲んで何度も踏んだ。
「事務所の許可がない映像なんて、運営に消されてしまえばいいんです」
 その間に、しおんが室内にあったパソコンのハードディスクを破壊し、トドメとばかりにバケツの中に水没させた。
 そして、ケルベロス達はションボリと肩を落とす清春を連れ、その場を後にするのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月5日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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