ミッション破壊作戦~欠落したモノを求める者達

作者:なちゅい


 ヘリポート。
 発動されるミッション破壊作戦を受け、集まるケルベロス達へとリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が告げる。
「今回はドリームイーターの支配地域に向かおうと思っているよ」
 ここにきて、ミッション破壊作戦、作戦参加者も増えているようだ。
 できるなら、この作戦で強襲型魔空回廊の破壊を1歩でも前進させたいとリーゼリットは話す。
 参加を決めたメンバーには、長さ70センチの小剣「グラディウス」が手渡される。
「これは、通常武器としては利用できないけれど、『強襲型魔空回廊』を破壊することができる有用な兵器だよ」
 ただ、1度のみの使用で、グラビティ・チェインを使い果たす欠点もある。
 再利用可能にはしばしの時を要するとのこともあるので、挑むミッションは現状を踏まえて参加するケルベロス達へと委ねている。
 ドリームイーターの支配地域は7ヵ所。このうちから選択を願いたい。


 破壊すべき強襲型魔空回廊はミッション地域の中央にあるが、周辺には護衛戦力が配備されており、普通に陸から向かうなどすれば敵戦力に押し切られる可能性が高い。
「何せ、敵は魔空回廊から無尽蔵に援軍を呼ぶことができるからね」
 この為、ミッション破壊作戦はヘリオンを使い、高空から降下作戦を行うのが通例となっている。
 さすがに、敵も高高度からの攻撃には、対処ができないらしい。
「強襲型魔空回廊の周囲は、半径30mくらいのドーム型のバリアで囲われているよ」
 このバリアはグラディウスを触れさせるだけで解除できるので、高空からの降下であっても十分攻撃は可能だ。
 8人のケルベロスが極限までグラビティを高め、グラディウスで強襲型魔空回廊に攻撃を集中して攻撃したい。
「運を味方につければ、作戦1回での破壊も可能だよ。実際、そういった報告例もあるからね」
 例え、今回の降下作戦で破壊できなくても、魔空回廊へのダメージは蓄積している。
 皆が向かうミッションにもよるが、最大10回ほどの作戦で確実に強襲型魔空回廊の破壊ができると見られている。
 また、グラディウスは攻撃時に、雷光と爆炎を発生させる。
「これらはグラディウスを所持している者以外に無差別に襲いかかるよ。危ないから、グラディウスは攻撃直後までしっかり持っていてほしい」
 強襲型魔空回廊の防衛を担う精鋭部隊であっても雷光、爆炎を防ぐ手段はない。
 降下後はこれらによって発生するスモークを利用し、すぐその場から撤退したい。貴重なグラディウスを持ち帰る事も、今作戦の重要な目的なのだ。

 魔空回廊の護衛部隊は、グラディウスの攻撃の影響である程度無効化できるが、完全には無効化できない為、強敵との戦いは避けられない。
「ただ、混乱する敵は連携を取ることはできないようだね」
 この為、強敵だけを撃破してその場から撤退したい。
 戦いに時間を掛け過ぎると、態勢を整えた敵に攻め込まれる危険が出てしまう。
 場合によっては、降伏するか誰かが暴走して撤退するしか手が無くなるかもしれないので、作戦は撤退まで速やかに行いたい。
 また、仮に強襲型魔空回廊の破壊に成功したとしても、敵戦力はまだ多数残っているはずなので、この場合も撤退に動いてほしい。

 リーゼリットは一通り説明を終えて。
「ついに、ラストミッションが発動されたね」
 勢力が少しずつ弱まってきているデウスエクスは、その侵攻の手も緩めてきている。
 これもケルベロス達の働きによるところが大きい。
 後は、現状支配された地域を1つずつ、デウスエクスから解放していくのみだ。
「まだ、多数の人々がデウスエクスの支配に苦しんでいること、忘れてはならないよ」
 だから、こうした作戦を1つずつ成功させていきたい。
 彼女はそう、ケルベロス達へと望むのである。


参加者
伏見・万(万獣の檻・e02075)
ジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)
ローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)
 

■リプレイ


 ヘリオンで現地へと向かうケルベロス一行。
 彼らは移動の間、入念に準備を進める。
 白い翼を背にした庶民派のオラトリオの青年、フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)や、元騎士のセントール女性、アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)は地図を広げている。
 彼らは攻撃後の脱出経路などの確認を入念に行っていたのだ。
 黒い狼のウェアライダー、伏見・万(万獣の檻・e02075)もまたスキットルの中身を煽りつつ、それを確認している。
 ミッション地域付近の地形を確認する合間に、元軍人のジュスティシア・ファーレル(シャドウエルフの鎧装騎兵・e63719)はミッション攻略に当たるケルベロス達へと援護を要請していて。
「……これで大丈夫です。あとは到着を待つのみですね」
 ある程度準備が整ったところで、ローゼス・シャンパーニュ(セントールの鎧装騎兵・e85434)が仲間達へとこんな話を持ちかける。
「無事に終われば、何か良いワインを開けたいですね」
 今回、作戦に当たるメンバーは皆、成人済み。
 それもあって、ローゼスは時期柄、このタイミングで解禁するワインが気になっていたことを話題として挙げる。
「良ければ、後ほど皆様もどうでしょう?」
 ローゼスはワイン初心者らしいが、仲間内でのんびり飲みたいとのこと。
 些かフラグにも聞こえそうな感もある話題だが、そんなローゼスの一言がきっかけとなって、メンバー達はあれこれとお酒について語り合っていたようだ。

 少しして、現地到着のアナウンスがスピーカーから響く。
 仲間達との歓談を楽しんだローゼスは、懐から小剣を手にして。
「まさか、グラディウスを握る事になるとは」
 淡く光る刃をローゼスは掲げて。
「これを預けられた信頼。結果で応えてみせましょう」
 頷き合うメンバー達はそれぞれがその小剣を手にし、ドリームイーターに支配された地、兵庫県宝塚市へと降下していくのである。


 ヘリオンから飛び降りたケルベロス達。
 彼らは宝塚市に設置されている強襲型魔空回廊を目指してヘリオンから飛び降り、グラディウスを構える。
「演劇だのなんだのには生憎縁がねェが、てめェだけが満足する為のモンじゃねェだろうよ」
 万は呆れ交じりにこの地域を支配するドリームイーターへと叫びかける。
「それに、他人の記憶は他人の記憶だ、てめェのじゃねェ」
 万はチンピラ口調で告げつつ、手にするグラディウスでバリアを切り裂き、さらに魂の叫びを込める。
「借りもン取っ散らかして浮かれンのも、大概にしときな」
 輝き始める刀身を、彼は大きく振り上げて。
「ここは返して貰うぜェ!」
 一気に振り下ろしたグラディウスの刃を、彼は魔空回廊深くまで埋め込む。
 次の瞬間、周囲へと放たれた雷光に目を灼かれ、周囲にいるドリームイーター達はどよめく。
 さらに、後続のケルベロスが仕掛けていく。
「無頼者とて分かる。物語とは紡ぐものであって、喰らうものではなかろう!」
 赤いフルヘルムとアーマーを着込んだセントール騎士、ローゼスはグラディウスをしっかりと握る。
「世に知られず消えた詩の為に、まだ見ぬ語り部達の為に失せよ、蒙昧のものども!!」
 ローゼスは半馬の4つの足で一気に宙を駆け下り、しっかと握りこんだグラディウスで回廊を貫いていった。
 強烈な光が周囲を照らし、爆炎が夢喰い達の身体を焼いていく。
 亀裂が入っていく強襲型魔空回廊へ、今度はアルケイアが飛び込む。
「地球に来て間もないけど、こないだ、ここの劇団のDVDを見せてもらいました」
 その女性ばかりの劇団が織りなす劇は非常に麗しく、夢のような時間だったとアルケイアは語る。
「私はもっと観たい。できるならば、生の舞台を」
 だが、そこに、ドリームイーターの紡ぐ物語は必要ない。
「薄汚い作家もどきに用はありません!」
 アルケイアに追撃するように、ジュスティシアがグラディウスを握りしめる。
 気持ち悪くて、ムカつく顔にグーパンを決めたいと思いながら。
「身も心も醜い、その穢らわしい口で彼女たちの物語を語るな!」
 ドームイーターのゲート破壊という話も出ているが、ジュスティシアはその前に、この魔空回廊だけは自分の手で破壊をと考えていて。
「これ以上、彼女達の記憶を、物語を汚すな!」
 眩い光を放つジュスティシアのグラディウスが一閃すると、この場に大量のスモークが溢れ出す。
「身も心も綺麗で観る人に夢と希望をあたえるお姉さん達に、それを支えるスタッフや地元の住民……」
 そして、フレデリが白い翼で滑空してきて。
「彼等を犠牲にしてきたツケを支払ってもらう!」
 これが今作戦における最後の一撃。
 グラディウスを強く輝かせ、フレデリは大声で叫ぶ。
「そのデカ口を更に引き裂いて、頭を横真っ二つにしてやるよ!」
 横になぎ払われたフレデリの一撃を受け、魔空回廊に変化が。
 斬撃に沿って周囲へと亀裂が大きくなり、真横への振動が大きくなっていく。
 周囲へと響く轟音。
 揺れ動く魔空回廊は徐々にその形を失い、霧散していったのだった。


 長らく宝塚の地にあった強襲型魔空回廊の破壊も叶い、メンバー達はスモークが晴れる前に離脱へと転じる。
 皆が気に掛けるは、やはりグラディウスだ。
 ドリームイーターに1本たりとも奪われることなく、持ち帰りたいところ。
 念の為にと各自仲間達のものまで確認しつつ、自らの所持する小剣をしっかりアクセサリーで身体に固定し、あるいは収納する。
 その間に、スモークの中から恰幅の良い男が姿を現す。
「ゲバババババ! きさまら、げーとこわした!!」
 『物語』を欠損したドリームイーター、パルプフィクションは激昂し、ケルベロス達の行く手を遮る。
 すでに、言葉を紡げる程度に欠落が埋まりつつある夢喰いだが、未だ満たされぬようで。
「ぜったい、ゆるさん!!」
 手にする金色のペンを突きつけ、そいつは早速グラビティを使用してくる。
 そこで、ローゼスが突破口を開くべく、敵に向かって槍を構えて。
「我が身止める事能わず、押し通る!」
 一気に吶喊していく彼の一撃を夢喰いはさらりと躱し、血塗られたペン先を突き付けてくるのである。


 パルプフィクションが素早く振るうモザイク交じりの一撃。
 それを、ジュスティシアが事も無げに受け止めると、敵はやや驚いた様子を見せて。
「ゲバッ!?」
 そいつを倒すべく、フレデリが惨劇のナイフで手に鋭い刺突を繰り出す。
 パルプフィクションは身を反らすが、その刃は敵を追いかけて傷つける。
 自由にすれば、敵はこちらを催眠状態へと陥れてくる。
 とにかくその足を止めようと、ジュスティシアはガトリングガン「J&W PDW47」を構えて。
「はい、止まって」
 神経毒を配合したホローポイント弾を浴びせかけていき、パルプフィクションの動きを止めようとする。
 さらに、万がエクスカリバールを振り被って。
「続くぜ、逃がすかよ!」
 彼はそれを投げつけて夢喰いの体を強かに叩きつけ、そのまま手元へと引き寄せる。
 仲間達が交戦する間、支援に当たるアルケイアはまず前線に紙兵を撒き、仲間達を催眠から守ろうとする。
 さらに、アルケイアはオウガ粒子を振りまく構えを見せていた。
 ローゼスもまた重ねる形で、紙兵に自分達の守りを任せて。
「空かぬ道は抉じ開けるのみ!」
 彼は一気に赤い風となり、スモークの中の戦場を駆け抜ける。
 素早く突き出される無慈悲なセントールランスの一閃。
「ゲバアアアアッ!!」
 傷口から漏れ出すモザイクに嗚咽を漏らすパルプフィクションだが、その瞳はまだ戦意を失っていない。
「せめて、きさまら、ものがたりに、してやる……!」
 魔空回廊を失った夢喰いはモザイクの吐息と合わせ、紡いだ駄文をケルベロス達へと聞かせようとしてくるのである。

 さらなる物語を紡ぎ出そうとしてくるドリームイーター、パルプフィクション。
 そいつの言の葉や血塗られたペンに対し、ケルベロス達は冷静に対処を繰り返し、グラビティで攻め立てる。
 フレデリが突き出す氷の杭を太った身体に受け、夢喰いは顔を引きつらせて。
「ゲババッ、わがはい、このままじゃ、やられない……!」
 すでに、この地を放棄せざるを得ない状況に追い込まれてきているドリームイーター。
 せめて自らの欠落要素を取り戻そうと、敵は必死になってグラビティを行使してくる。
 それを矢面となって受け止めるのは、ジュスティシアだ。
 この地の解放にかける気概は強い彼女は金色のペンを操る夢喰いをコンバットブーツで蹴りつけ、さらに、ガトリングガンの銃弾を浴びせかけて攻勢を削ごうとする。
「ううっ……」
 そんな中、パルプフィクションの紡ぐ駄文が前線のカバーをかいくぐり、万が惑わされてしまって。
「うう、うおおおおお!!」
 催眠状態となった万は仲間の魂をも食らおうと、鋭い牙を向けてこようとする。
 その姿はさながら暴走状態を思わせ、狂ったように敵味方問わず喰らおうとしているようにも見えた。
 そんな仲間の危機に、アルケイアは神聖なる祈りを捧げる。
「シンセイナルイノリ」
 妖精族の加護である治癒結界が万を包み込み、彼を正気に戻す。
「舐めた真似しやがって……」
 我を取り戻した万は黒い地獄の炎を燃え上がらせ、降魔の拳で夢喰いの体を殴りつける。
 喧嘩殺法とでもいうべき万の戦法はやや前のめりに敵の胴へと拳を連打し、敵の魂を喰らおうとした。
 一度、攻撃を仕掛けた万が態勢を整えるべく距離をとれば、すかさずローゼスが距離を詰める。
 セントールランスに空の霊力を纏わせた彼は、仲間達がつけた傷を一気に切り広げていく。
「ゲバアアアアァァッ!!」
 口からモザイクを吐き出すパルプフィクション。
 苦しむ敵は単語の羅列を口にして傷を塞ごうとするが、ケルベロス達がそれを許さず。
 惨劇のナイフに武器を持ち換えたフレデリが一気に敵の傷口を切り広げ、とどめを刺してしまう。
「終わりだよ」
「ゲバアッ、わがはいの、わがはいの、ものがたりは……ッ!!」
 白目を剥いて地面に転がるパルプフィクション。
 口から発せられていたモザイクが止まり、その体は大きなモザイクとなってから虚空に消えていったのだった。


 ドリームイーター、パルプフィクションを討伐し、ケルベロス達は迅速に離脱に動き出す。
 事前に経路は確認済みとあって、皆スムーズに戦闘を行った場所から走り去る。
 セントール2人も全員が無事なこともあり、足並みを揃えて移動していく。
 この後、ローゼスは飲むと思われるワインは、さぞ美味に感じられることだろう。

 程なく、この地のミッションに挑むケルベロス達によって、ドリーム―ターの討伐も進み、宝塚は解放されることになる。
 再び、人々がこの地の劇場で劇団の公演を見ることができる日は近いはずだ。
 ケルベロス達はまた1つデウスエクスの支配地域を解放し、さらなるデウスエクス攻略へと弾みをつけるのである。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月26日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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