爆寿司! シャリ三昧!

作者:星野ユキヒロ


●シャリロボ爆誕
 寿司のシャリを自動で握るシャリロボットというものがある。寿司というのはもともとはシャリ炊き3年、合わせ5年、握り一生、などと言われる寿司職人の修行を経て提供されるものだが、消費者のニーズに合わせて時代とともに変化、今ではひと皿百円で食べることもものによっては普通である。そんな寿司のファストフード化に一役買ったのがこのシャリロボットとも言えよう。
 群馬県の山沿い。小さな街にチェーン店でない回転寿司屋があった。有名ではないが地元の人たちに長く愛されている。そこで使っていたシャリロボットが古くなったので新しいものに変えられ、もともとあったロボットは倉庫にしまわれることになる。
 そんなシャリロボットの眠りを妨げる不届きものの影あり。小型ダモクレスだ。
 小型ダモクレスは昆虫めいた動きでカサカサと倉庫に侵入し、シャリロボットの内部に潜り込むと中枢機械に取り付いた!
『シャリシャリシャリ~!!!!!!』
 巨大化し足の生えたシャリロボットは倉庫の扉を破り、グラビティチェインを求めて歩き出した!

●シャリロボットダモクレス討伐作戦
 群馬県の街でシャリロボットのダモクレスが事件を起こすことをカヘル・イルヴァータル(老ガンランナー・e34339)は懸念していたという。
「カヘルサン、見事に的中ネ。皆サンにはシャリロボットのダモクレスを倒しに行ってもらうヨ」
 クロード・ウォン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0291)が今回の事件の概要を話す。
「現場の倉庫は回転寿司屋の店長の持ち主の山の中にあるから人が近づくことは滅多にないネ。でも万が一ってことがあるから入山禁止を強化しておいてもらってるヨ。ダモクレスが山から降りて人を傷つける前に対処して欲しいアルヨ」

●シャリロボットダモクレスのはなし
「このダモクレスはシャリロボットに足が生えたダモクレスネ。この手の機械は寿司サイズに握ったシャリをどんどん出してくるものだけド、そのシステムを利用したガトリングガンに変化してしまっているヨ。おスシの匂いの弾丸は、高速で射出されたらアイヤ痛いじゃ済まなそうアルヨ。油断せずあたって欲しいネ」
 クロードは手持ちのモバイルで山の航空写真を見せて戦闘区域を説明した。
「ここからここまで、警察に封鎖と警備をお願いしたアル。だから人払いは気にせず、純粋に戦闘頑張っチャイナ」

●クロードの所見
「群馬は海がないから、あんまりスシが名物になることはないけど、だからこそこのお寿司屋サンは愛されてるに違いないネ。嬉しい思い出をいっぱい見てきたシャリロボットだから、ひどいことする前に眠らせてあげるといいと思うアル」


参加者
相良・鳴海(アンダードッグ・e00465)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
尽影・ユズリハ(ロストブレイズ・e22895)
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
ブレア・ルナメール(魔術師見習い・e67443)

■リプレイ

●すっぱい山
 ヘリオンから降り立ったケルベロス達は現場の倉庫に向かって舗装された山道を徒歩で進んでいた。
「もしかしてお寿司食べ放題では!? って思ったけどシャリだけなんかーい!!」
「一時期話題になったよな……寿司のネタだけ食ってシャリ残す糖質制限。あれ絶対刺身買って食ったほうが安上がりだと思うんだけど寿司屋でやる意味あるのか?」
 山の中で誰はばかることなく食い意地を炸裂させるチェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)に、思い出しニューストピックをぼやくのは相良・鳴海(アンダードッグ・e00465)。無精ひげの顎をジャリジャリと撫でた。もう流行ってない! とチェリーは反論する。
「……山という自然に囲まれたシチュエーションで寿司を食べる……などというオツな話では無さそうか。祟るべし……ヘリオライダーは最初から食べる依頼とは言ってなかった? ……。……ふむ、そうか。……だが祟る」
 生を感じさせない風体の祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)も食い意地は元気いっぱいのチェリーと遜色ないようだ。サーヴァントの蝕影鬼がふうわりふわりと周りを舞っている。
「寿司は好きだけど、シャリだけってのは勘弁だな。つうか、どっから米調達してるんだこいつ?」
「山の中の田んぼから稲を収穫してたりする可能性もあるか」
 神居・雪(はぐれ狼・e22011)と尽影・ユズリハ(ロストブレイズ・e22895)はシャリの出どころに思いを馳せている。後ろではサーヴァント、イペタムがこれまたサーヴァントのシオンを乗せてキュルキュルと回っている。じゃれているらしい。
「うぅん……気になるぅ……。撃ってくるっていう弾丸が、シャリの匂いをさせるだけの弾丸なのかぁ、それともすっごい固められたシャリなのかぁ……。後者だとしたら、叩き落としたりするのってゴハンを粗末にすることにぃ……?」
「かつては皆さんにおいしいお寿司を振る舞うことに力を注いでいらっしゃったと聞いておりますっ! このままではシャリロボットさんが、お寿司を美味しく食べていた方たちを襲っちゃうかもしれませんっ! そんなこと、このハイパーキュートなヴァルキュリアのつららちゃんが許せるはずがありませーんっ!」
「今まで働いてきてくれたロボット…。少しだけ破壊するのがためらわれますが、せめて安らかな眠りを」
 ダモクレスの攻撃のなんたるかが気になってならない葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)に発破をかける細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)と、相槌をうつブレア・ルナメール(魔術師見習い・e67443)。
 そんな中、ブレアのサーヴァントのイエロがぴこりと顔を上げた。山の上から、山では絶対しないような酢飯の匂いが漂ってきている。
 ケルベロス達は登る足を早めた。

●炸裂シャリバトル
『シャリシャリシャリ~!』
 シャリロボットダモクレスは虚空にシャリシャリと意味不明の叫びをあげていた。
「シャリ飛ばしてなんになるって言うんだよ、俺にはわかんねえなあ……」
 鳴海は鉄パイプを肩にとんとんと当てると、そのまま敵を真っ直ぐに突く。
「酢飯の匂いでお腹がすいてきたけどとにかく倒さないとだよね!」
 チェリーが古代語を詠唱すると、シャリロボットダモクレスの足元を石化する。
『シャリシャリシャリシャリ~!!』
 足を固められたシャリロボットダモクレス(長い)はぶるぶると震えると、チェリーにシャリをガトリング連射する!
「狙いを定めて……すなーいぷっ!!」
 つららのジュデッカの刃が飛んできたシャリを凍らせ、チェリーに届く前に相殺する!
「ったく、食べ物を粗末にするなってーの!」
 雪の破鎧衝がシャリダモクレスのガワを損傷させた。イペタムも激しいスピンで固まっている足元を攻撃する。
「キヒヒ、罰当たりな武器だねぇ」
 咲耶が精神を集中させると、敵の射出口が爆発を受けやや損傷した。
「……何処に目があるかなど知らんが、ワタシの貌を見ろ。……呪われし貌を……」
 イミナの美貌の呪いでさらに動きが鈍くなるシャリダモクレス。蝕影鬼も金縛りでサポートする。
「シャリガトリング……本当にシャリがもったいないな」
 ユズリハは妖精弓、天津風を引き絞り、確実に当てていく。そのあとをシオンのブレスが追った。
「皆さんどうぞ!」
 ブレアがスイッチを押すと、前衛の背後にカラフルな爆発が起こり、士気を高める。サーヴァントのイエロのフラッシュがピカピカと光り、かなりド派手な戦場と化している。
 戦いはまだ始まったばかりだ。

●シャリボーイ
「指一本でいい……この一瞬は、あの頃の俺に……!」
 鳴海の全盛期と同じ銃弾がシャリダモクレスを撃ち抜く。しかしまだ活動停止するほどのダメージは通らなかった。
「えー! 固い! 口の中でほぐれる固さがいいのにー!」
 それを見たチェリーは軽口を叩きながらも呪詛の刃を刺しこむ。
『シャリボーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!』
 トラウマを受けたシャリダモクレスは叫びながら前衛に嵐のような弾幕を撃ちだした!
 すかさず飛び出すディフェンダーたち。サーヴァントたちが我先にケルベロス達をかばい出す。鳴海だけは隣にいたイミナが代わりに銃弾を受けた。
「こんなにシャリを撒き散らして!」
 つららのササメサキツララが三日月の形に弧を描き、シャリダモクレスの発砲を中止させる。
「アタシの祈りが、誰かのためになるなら―――」
 攻撃を受けた前衛達に雪の病退ける祈りが届き、傷を癒していく。治療を受けたイペタムはお返しとばかりに炎をまとって敵に突っ込んでいった。
「炎のすぐ後に氷をあげちゃうよぉ」
 咲耶の達人の一撃が敵の熱せられたボディを急速に冷凍した。
「……未だ出自が良く分からない蜘蛛型寄生ダモクレス、また一匹丹念に祟ってくれる。……祟る祟る祟祟祟……」
 呪力をこめた杭をシャリダモクレスに打ち込んでいくイミナに続いて蝕影鬼がさらにパラライズを重ねた。
「――君の終わりを、私が見よう」
 ユズリハの地獄と化した視線が敵を捉え、奔る一閃。ぐらつく相手をシオンがタックルする。
「後衛にも!」
 ブレアのカラフルな爆炎が再び炸裂した。主人に応援を受けた気分になったらしいイエロが意気揚々と凶器を掲げ突っ込んでいった。まだ戦闘は続く。

●爆裂酢飯
 激しい攻防戦が続いた。双方満身創痍、地面はシャリまみれ。
「飛んでくるシャリの物理ダメージよりも地面に散らばってる米踏みつける精神ダメージの方がキツイぞこれ……!」
 育ちのいいことを言いながら鳴海が炎を纏わせた武器でなぎ払う。風圧で飛び散った米が燃え上がって炭になった。
「一切合切!全部ボクにちょうだいっ!」
 チェリーが桜色の闘気で相手を殴ると、闘気は桜の梢となり花を咲かせ、体力を奪う。
『シャリィ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!』
 シャリダモクレスは桜の花をうっとおしそうに払うと、爆炎の魔力を纏った大量のシャリを連射した!!
 爆炎のシャリはチェリーに向かって一直線に燃え上がるも、横合いから割り込んだイミナの長い黒髪を炎で彩った!!
「ああああああ~~~~~~祟る祟る祟る~~~~~~!!!!!」
「命の炎の輝きよ……再び!」
 燃え上がる炎の中の呪い人形に後衛から走ってきたブレアが生命の炎を放ったことによる爆風がシャリ弾丸の火を消し飛ばし、イミナの火傷を癒した。イエロも応援動画で応援している。
「おっかない炎使ってくるな! でも炎ならうちのイペタムも負けてないね!」
 雪がエアシューズ、レプンシラッキに流星の煌きと重力を乗せ足止めの蹴りを繰り出すと、イペタムは炎を纏いながら併走して突っ込んでいく。
「ほぅら、ご飯のお時間です」
 つららが放った氷の牙が燃え盛るシャリダモクレスに突き刺さり、その熱を奪って糧とした。
「酢飯の匂いでお腹が切なくなってきた! 絶対に終わったあと寿司を食べる」
 ユズリハが妖精の加護を帯びた自動追尾弓を引き放ち、シオンはブレスを吐く。
「キヒヒ! 四つ裂き八つ裂き! 裂かれに裂かれて咲き誇れ!」
 咲耶が御札に封じられた呪を解き放ち、生み出された無数の斬撃は対象を空間ごと割断した。彼岸花のごとく刃の跡を刻み込む!!
『爆寿司!! シャリ……ざん! まい!!!!』
 シャリダモクレスはひときわ大きく叫ぶとそのまま爆裂四散した!
 戦いは終わった!!

●後片付けと美味しいお寿司
 戦闘後、現場は焦げて踏み荒らされた米粒にまみれ惨憺たるありさまだった。
「ヒールで修復します」
 ブレアが現場を修復している間、鳴海が電話で任務達成と立ち入り禁止解除を願いに、電波が拾えるところへ歩いて行った。
「シャリばっか見てたら寿司食いたくなってきたな。折角だし、食って帰るか」
「……素直に帰るのも惜しい。……寿司を件の寿司屋に食べに行くとしよう。……ワタシはサーモン食べたい。……祟りたいほど食べたい」
 雪とイミナが寿司を食べに行くことを提案する。すると……。
「じゃじゃんっ! フローズン系ヴァルキュリアつららちゃん、実はサーモンやマグロのお刺身を冷凍して持参しておりましたっ! バトルが終わった今なら、丁度……はいっ! ばっちり食べごろですっ! これで美味しいお寿司パーティにしちゃいましょーっ!」
「こんなこともあろうかと頭の切れるボクはマイ醤油を持参してきたのだ!」
「実は実家から貰ったわさびと酢があってぇ」
 つらら、チェリー、咲耶が次々と用意してきたものを取り出す。
「……魚持ってきたのか。まぁ自然解凍されて丁度いい……か? でもシャリはみんなだめになっちゃったしなあ」
 雪が頭を掻いて思案していると鳴海が戻ってきた。
「……お前ら刺身持参してきたの? 冷凍して? なんか出発前にいろいろ用意してんなと思ったら案の定……か。シャリロボットの持ち主がこの山にキャンプ場持ってて使わせてくれるってよ。米も自販機で買えるそうだ。飯盒炊爨で寿司って前代未聞だな」
 オーナーの粋な計らいで、ケルベロス達は野外寿司パーティーを開くことになった!!

●青空寿司
「ふふ……アウトドアでの新鮮?な寿司は初めてだな。握りの技術は付け焼き刃だがちょっと勉強してきたよ。こう、最小限の手数で……体温を移さないように……だったか? ……なんとか形にはなるはずだ、うん。シャリロボ…すごいやつだったのだな……」
「キヒ、シャリがいっぱい高速で飛んでこないってだけで安心感感じちゃうねぇ?」
 ああでもないこうでもないと寿司を握るユズリハを、咲耶がニコニコ眺めている。
「サーモン……食べたい……! 血のような醤油で……」
「俺にもちょっとくれ、一緒に炙りにしてやるから……あっ、サーモンの油がもう胃にきつい!」
「それおじさんっぽい! ボクは手巻きにしちゃうもんね。あー☆ いくらでも行けちゃう」
「男の前でもそーやって沢山食えよな」
 サーモンを祟らんばかりの目で凝視していたイミナに鳴海が地獄の炎でサーモン炙りをしてやる。そんな二人をよそにぽいぽいと食が進むチェリー。
「プロじゃない手作りのお寿司でもこんなに美味しいんですね……幸せ……」
「溶けかけたサーモンもオツなものだぞ、ルイベと言ってな……」
「あっ、じゃあつららちゃん追い冷凍しちゃいます! ん~、半ナマっ☆」
 小食ながら寿司に興味があったブレアに北海道グルメを教える雪とつらら。
 寒くなりだした青空の下、それぞれ思い思いに寿司パーティーで親睦を深めたのだった。

作者:星野ユキヒロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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