虚無の鍋

作者:東公彦

「へ、へっ……へーくっしょぃ!!」
 新聞紙で塞いだ穴は壁としての役をなしていない。打ち捨てられた家屋において壁や扉というものは個人の自由と静寂を守るだけの力を持たず、いかな自然現象も、そしてあらゆる動植物も赴くままこの家屋に立ち入ることが出来た。
 それだけこの家は隙間だらけの穴だらけなのである。
 ではどうして、この二十八にもなる男は住居の改善に努めないのであろうか。然り、この男の生来の怠慢さは一役も二役も買っているであろう。しかし生まれた瞬間から生じる極めて深刻な問題の末に、家の改修に踏み込めないのである。
 嗚呼、忌むべきは不器用という一事。ガデッサは二つのことを同時に、否、一つのことすらもまともに出来ないのである!
 叡智に富む諸君は既にお分かりであろう。どうか哀れなこの男にささやかな幸せを! 雨降る夜でも、雪の散る朝にも、陽の照りつける昼日中であっても、この男はなんら遮るもののない天を仰ぐしかないのである。これはもはや悲劇を通り越し、一種喜劇の様相を呈しているのである。
 せめてこの喜劇を悲劇とする程度のささやかな幸せを!!
「あ、飯もねぇな……。だああああ、どうすっかなぁ。動くのも面倒くせぇし……おっ、いいこと思いついたぜ!」
 そして嗚呼、悲劇はこの男の狡猾稚拙な思いつきから始まったのである。
 11月26日、この男は誕生会と称してケルベロス達に招待状という名の紙切れを送りつけたのである。そこにはこう、記載されていた。
『鍋を喰いたいから、なんか持ってきてくれよ』
 それは手の施しようがない男の本心が覗ける手紙であった。


■リプレイ

「お前、どんな家に住んでるんだ……」
 家と称する廃屋に招かれた一同のなかで玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)が声を震わせた。家を持つことを『一国一城の主』などと言うが、この城では攻め手も落としがいがなかろう。
「この時期なら風を凌げるだけマシだね」
 廃屋をぐるり見回して比嘉・アガサ(のらねこ・e16711)が言った。文明に背をむけて生きる過酷さを知る含蓄ある一言であったがイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)はわなわなと体を震わせてこの粗末にすぎる廃屋の四方八方へと視線を這わせている。
「これは……ケルベロスでなければ危険だったのでは? そもそもガデッサさんはいつも――」
「うるせーなー。俺だって金がありゃ豪邸に住みてえよ」
 姑のような小言を右から左へ。食材をあらかた鍋に入れるガデッサを横目にエトヴァ・ヒンメルブラウエ(フェーラーノイズ・e39731)が小首を傾げた。
「ヒールをしてみまショウカ」
 Das Zauberwort heisst――。夜明けのような声色につられ建物が光を帯びる。しかしそれも束の間、廃屋は老いた姿のままくたびれたように鎮座していた。
「俺もやったけど無駄だったんだよなぁ。ヒールってのはグラビティ因子で傷ついたもんにしか効かねえのかもな」
「いわゆる『寿命』ね」
 セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)は朽ちた柱に手を添えて呟いた。念には念をで持ってきた食器類は、案の定活躍の場を得ている。
 雲に覆われた月のもとで闇夜は濃く深く、セレスティンのドレスと親和して彼女の白い肌だけが目を瞠らんばかりに浮かんでいた。一同には彼女こそがこの廃屋の主のように映ったことだろう。
「永遠に意味はないわ。時間の前ではいかなものも無限に等しく希釈され無と同じ意味しか持たない。つまり――ガデッサさん、いい家に住んでいらっしゃるわ」
「ばっ、馬鹿にしてんのかゴラァ!」
「安心してくださいガデッサさん。私からはお祝いに快適なおうちをポーンとプレゼントしようと思いまして……」
 沈む畳に四苦八苦しながら朱藤・環(飼い猫の爪・e22414)がガデッサに家を手渡した。小屋、より正確には犬小屋である。途端、抑えきれずエリザベス・ナイツ(焔姫・e45135)が腹を抱えて笑い出す。
「――っくふふ。ちょっと環ちゃん、それは流石に、ぷっ――だ、だめだって」
「あはは、ちょっと予算が足りなくてですね……」
 耳を垂らして頭を掻く環。思いついたように手を叩いたエトヴァが小屋に毛布を敷いて邪気のない微笑をうかべた。
「どうぞ、これで暖かな冬をお過ごしくだサイ」
「テメェら特盛で喧嘩売ってんだろ!」
「まぁまぁ。せっかくの闇鍋なんだから楽しんでいこうぜー」
 鍔鳴・奏(碧空の世界・e25076)が朗らかに声にしてガデッサを座らせると、
「奏くんの言う通りだ。お誕生日に鍋、しかも闇鍋! 面白そうではないか!!」
 リーズレット・ヴィッセンシャフト(碧空の世界・e02234)も畳に腰をおろした。陣取ったのはミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が持ち込んだストーブの前である。野ざらしの屋内にようよう暖がともる。
「ありがとうございます、ウィアテストさん。めっきり寒くなりましたからね」
「ここは特に冷えますから。どんどん火を焚きますね」
 ミリムが座卓を囲むようにストーブを配置してゆく。グラハ・ラジャシック(我濁濫悪・e50382)は酒の番人よろしく酒樽に寄りかかった。酒の芳香につい頬がゆるむ。
「んじゃ、準備は万端だな。とっとと喰うか」と犬歯を剥きだしにするも、ぴくりともしない鍋に息をはいた「……つっても、まだ煮えてねぇな」
「では年の瀬も近いことですし、今年のことを振り返るのなんていかがでしょうか?」
 ブレア・ルナメール(軍師見習い・e67443)が年少者らしからぬ落ち着きで言った。これには一同、賛同せざるをえない。
「ん~、私は暴走した友達を見つけた依頼が何より強く記憶に残ってますね」
 環が真っ先に思い浮かべたのは旧八王子市街。捨てられた街で尋常でない力を奮う竜の姿。同じ景色を思い浮かべていたエリザベスも頷く。
「そーね。私や環ちゃんは後発のヘリオンで現地に着いたけど、すごかったもの。グラハさんやアガサさんは勿論だけどみんなが無事で本当によかったよー」
「あれだけのケルベロスが集まったんだ。あれで帰ってこなけりゃあいつの甲斐性がなさすぎるね」
「ハハッ、面白ぇこと言うな比嘉。そう考えてみりゃ、よく帰ってこられたもんだ」
「あはは……この場にいないのをいいことにめちゃくちゃに言われてますね」
 頬をかきつつ環が苦笑した。あの人のことだ、こんな話を聞かれたら。また眉間のしわが深くなるなんてぼやくのだろう。
「まぁ、誰かさんもいたしね」
 意味ありげな視線をアガサが送る。どこ吹く風と陣内はヒゲを揺らした。
「なんの話だ。仕事でもないのに寒いなか外を出歩く趣味なんてのは、俺にはないが」
「はっ、何言ってんだか。あれだけカッコつけてくれてよく言うよ。なに、もうボケはじめてんの?」
 中々、辛辣なことを言う方です。
 傍からアガサの言葉を聞いてイッパイアッテナは苦笑を浮かべた。当然、二人の間に壁がないとわかればこそ、じゃれ合う微笑ましさがありはしたが。
「記憶にはないが……まぁ『ありがとうございます、お兄さま』と素直に感謝を示したいってんなら話は別だ。妹のために骨を折ってやるのは兄の義務だからな」
 そう。今回は偶々『待っている側』に、偶々『大事な妹』がいただけの話だ。陣内は心中でひとりごちた。すると、
「ふぅん……妹の為に骨を折るのは確かに兄の義務かもね。でも、それについて謝意を求める不出来な兄にとやかく言われる筋合いはないね」
「ん? 妹は認めるわけか」
「うっさい」
 アガサは座卓の下にすらりと伸びる足を蹴った。
 どこへだって駆けつけて手伝ってるのは知ってる。それを『偶然』と言い張って止まないのも。だからありがとうなんて言わない。
 無口な彼女の脚はその後もしばしば雄弁に感情を語ったのであった。
 そんな二人を見てグラハがくつくつと喉をならした。こうして愉快な話が出来るのも平塚が見つけて、集まった連中が『引き戻し』あいつが『帰ってきた』からだ。
「たまになら、こういう雰囲気も悪くねえな」


「そういえばエリザベス、お前どうなんだ。あれ以来、鋼鉄姫とは」
 突如ガデッサに話を差し向けられてエリザベスは「あぁ」と生返事で返した。あれ以来、鋼の軍勢とは会っていない。
「うーん、諦めたんじゃないかなぁ。それかもっと良い剣を見つけたとか!」
「デウスエクスも様々ですね。あの時も自分の剣の力を試しに来た、と言っていましたし」
 鋼鉄姫――あの人間くさいエインヘリアル。彼女の力にはまだ奥があったようにイッパイアッテナには感じられた。
「何にせよ、私からすれば作られた物は使われるために在りますから。自分の作ったものを存分に使われるのは製作者冥利に尽きるでしょうね。二人は良いライバルだと思いますよ、本当に」
 そうなのかしら。エリザベスは自分に問いかける。まったく落ち着きのない女性、戦いに全てを懸けていてなお損なわない魅力を持った女性。
「また会いたいような……会いたくないような……。複雑な気分~」
「敵にも考えがあるさ。ふざけた連中にしか相手にされない可哀想なオラトリオもいるしな!」
「なっ――私だって好きで付き纏われてるんじゃないぞ! バカとオカマに襲われて嬉しいやつがあるか!」
 奏の背をばしんばしん叩きながらリーズレットが烏龍茶を一気にあおる「ちょ、リズさん、背骨が折れっ……」彼の言葉は耳に入っていないようだ。
「どうだろうなぁ。案外、敵さんも真剣に考えてるのかもしれねえぜ」
 ガデッサが意地悪く口にすると「いや、それはないな」弱々しくも奏が否定した。
「今度は巨乳が大好きな顔だけイケメンとかだろ。リズが狙われる要素なんてそれくらいしか――」
「奏くーん、ちょっとこっち来ような~」
 物陰に連れ出される奏。触らぬ神に祟りなし、ブレアは漏れ聞こえる悲鳴を聞こえぬものとして流しつつ話を戻した。
「その鋼鉄姫のように、逃がしてしまったデウスエクスもいるんですよね?」
「あーっと。たしか星の教義とかいうのを垂れ流してた鳥と……」
「シャイターンの『エミル』ですネ」
 白馬で起こされた雪崩。巻き込まれた人々の姿はエトヴァにとってそう古い記憶ではない。あの時はケルベロス達が一致団結して事なきをえたが、同じような事件が起これば先例どおりに行くとは限らない。
「奸智と実力を備えた敵でシタ。どこかで事件を起こそうと息を潜めていても、おかしくはありまセン」
「最近、シャイターンの出没も多いと聞きますね。命の選定なんて言っていますけど、限界の状況に追い込んで選択を迫るなんて……許せない話です」
 思い浮かべてしまった光景にミリムが唇を噛む。数百人を人質にとられて如何に被害なく戦うか。この手が掴み離さずにいられる命の数は?
「姑息ですが、私達にとってはアキレス健です……。人の命を盾にとられたら何もできません」
「それでも、救える限りは手を伸ばしたいですネ。俺の手で救える命があるのナラ」
「歴戦の方でも考えることは同じなのですね」
 二人の話を聞いたブレアは感慨深く頷いた。いいえ、むしろ長く戦いに身を浸してきたからこそ命というものを何より大切に思っているのでしょうか? しかし問いの答えを聞くことは躊躇われた。それは自分で体験して感じねばならないだろうから。
「皆さんとこうして会えたことを、私は光栄に思います」
 ブレアが二人に微笑みかける。花のような笑顔を瞳に移したエトヴァの頬は自然、緩んだ。自然に微笑む、以前は難しかったことが今ではこうも容易い。これも多くの出会いがくれたものでショウカ……。
「あたしはあの鳥の方が気にいらない」
 アガサがぽつり呟く。それにはガデッサも心の底から同意した。
「ガキを騙して利用するってのは汚ぇしな。そーいやぁ、前も冬だったか。どこかで密かに布教を広げてるんなら、今度こそ逃がせねえな。『ワイキ』も『エミル』もよぉ」
 ケルベロス達が一様に頷いた。そんななかでセレスティンが「煮えたみたいよ」鍋の蓋をあけた。
 しかしまぁ闇鍋とはよく言ったもので、目は闇に慣れても鍋の中身まで詳しく覗くことは誰にも出来なかった。
「もう食べられるわよ……たぶん」
 セレスティンがもう一度呟く。しかし誰ひとり手を出そうとしない。特に環は見ることさえも禁忌であるとばかり目を閉じて首を振っていた。
「みっ、みなさん。お先にどうぞです!」
 環自身が持ってきた食材は非常に友好的で気さくなのだが、相手がその手を握るかはわからない。やはり手をつける気にはなれなかった。
 闇鍋をすれば絶対にひとりはスゴイ具材を平気で持ち込む人がいるんですから……。不意に在りし日が甦り、環はごくり喉を鳴らした。
「よ、よーし。ならば余興として私と奏くんが――」
「ああ、やるしかねぇよなー。二人羽織を!」
「闇鍋に二人羽織って事故の匂いしかしませんね」
 あくまで冷静なブレアの声は風に流れてゆく。リーズレットは大きめの羽織を素早く着ると、楽しそうに自分の膝を叩いた。
「ほらほら奏くん! 私の前に座っておくれ」
「オッケー任せろ了解だぁ!!」
 奏が喜び勇んで特等席につく。とりわけ身長の低いリーズレットであるから目隠しなどしなくとも奏の背中に阻まれて前は見えない。よーし、いくぞ! 鼻息あらくリーズレットは箸を手に体を前のめりにさせた。
「だぁー、うまい。おいしすぎる! もっと前だ、もっと前!」
「変な奏くんだなぁ。まだ何も食べさせてないぞ~」
 背中に全ての神経を集中させる奏。密かに放出しているオウガ粒子によって彼の感覚は通常の数倍にも拡張されていた。つまり現在に限って言うならば、彼の背は指や顔を遥かに超えた知覚能力を保持し――「って痛ァァァァ!!?」
「うわぁー、痛っそう……」
 奏の頬に刺さる蟹の脚をみやってエリザベスが呟くと陣内も額に手をやって首をふった「喰い物には違いないが闇鍋では凶器だな、あれは」
「……鍋なら蟹かなぁと思いまして」
 所在なさげにミリムが身を縮こませた。
「リズさんリズさんリーズレットさんや! それはいけないやつだって! もっと、もっと手前の――」
「えーっと、えーと……これか奏くん!?」
「ちょ待って! 絶対熱いから超あつ――」
 背の高いことを考慮してリーズレットは頭上へ掲げるように腕をあげた。つるり、箸で掴みかねて物体Xが宙を舞い……見事なまでに奏の顔に着地する。
「――――――!!?!?」
 それは顔にへばりついて容易には取れず、奏が首を振るうと自然、リーズレットの腕に振り落ちた。
「あっつ!? あっついぞ!!?」
「あれは……」ミリムが目を細めて物体Xを見やった「乳製品でしょうか?」
 まさしくその通り。誰かが持ち込んだ豆乳が膜を張り、これまた何者かが持ち込んだチーズが鍋に溶け込むのを防いだのである。チーズは鍋の表面で固着化して固体と流体の狭間を彷徨うなか無垢で残酷な天使の手によって拾われたわけである。
「あははは、闇鍋だからしょうがないよねぇ」
「……真相は闇の中だな」
 エリザベスと陣内が顔を見合わせて苦笑した。


「これは……美味しいですね、驚きです」
 イッパイアッテナが目を丸くして言った。それぞれの皿に鍋をよそうセレスティンも漂ってくる香りに柔和な笑みを浮かべた。闇鍋が危険なことは先の二人羽織で判別したので一同は照明を確保し、至って普通に鍋をつついている。
「チームワークの勝ちね、山と海の幸が合わさって美味しそうだわ。灰汁と雑味は豆乳が吸ったみたいだし、表面のは捨てておきましょう」
 セレスティンがちゃっちゃとお玉を動かす一方で他の成人達は酒盛りをはじめている。
「秘技っ――ピコピコ☆ハンマー」
 ミリムが一斗樽の封を鏡割りにすると柄杓で酒を掬っては器に入れて注ぎ回す。肴に困ることはなかった。
「お~、牡蠣が上手いぞ!」
「獲れたてだぜリーズレット。しかしこの時期の海は流石に寒ぃな」
「グラハさんわざわざ素潜りしたんですか!? あっ、しいたけいただきまーす!」
「見てみて環さん、これアンコウなんだってー。すごいよね!」
「エリザベスはアンコウを食べた事なかったんだな。骨以外は食べられて美味いぞ。っはぁ~、やっぱ蟹は身を食わないとなぁ」
「うふふ、今回はご無事でなによりです鍔鳴さん。白子……こんなに濃厚なんですね」
「ブレア殿、口に汚れがついていマス。――うん、舞茸の良いダシがでていて美味しいですネ」
「肉も食えよ、エトヴァ。ただでさえお前は細いんだ。おっ、餅か。酒とは兄弟分だし、ちびちびいくか」
「おい陣、酒ばっかり楽しむな。この牛肉……高いやつだ」
「ん~、比嘉さんの言う通りです。本当に美味しい! お肉に目がないのはウェアライダーの性なんでしょうかねぇ」
「杯が空ですね。ささ、どうぞミリムさん。ふぅ、餅巾着、お餅と御揚げの相性が抜群です」
「豆乳のスープは万能みたいね。さ、イッパイアッテナさん一献どうぞ」
「世話焼いてねぇでお前も食えって。鍋、なくなっちまうぞ」
 ガデッサはおたまを取り上げて、セレスティンの器に鍋を盛った。ケルベロス達の食欲は凄まじく、はやくも鍋の底が見えてきた。かけられた言葉でようやく彼女は気づいた、まだ何も食べていなかったわ。
「世話焼き……私、そういうタイプではないのよ。でも両親いなくて妹3人もいたら、ついね」
 妹達とのかしましい食卓。それを思い出してしまったのかもしれない。
 くすり。鈴の鳴るような声でセレスティンは笑った。その瞬間がガデッサのまぶたに強く焼き付いた。
 永遠はない。どんなものでも朽ち果てて最後は消えてゆく。だが無理だとわかっていても、この美貌だけは永久のものにならないだろうか。そんなバカげたことを考えてしまう。
「顔が赤いな」
「んなっ――ことねえよ!」
 揶揄する陣内に食ってかかるガデッサ。そこへぽつり、ぽつりと雨が降りだした。
「雨は少し苦手デス」
 エトヴァが表情を曇らせる。
「濡れんのは誰だって嫌なもんだ。鍋も食ったし酒も飲んだし、お開きっつーことでいいだろ。じゃぁな」
 素早くグラハが立ち上がり廃屋を出た。それを皮切りにケルベロス達が帰ってゆく。
 風のように去ってしまった彼らの背に声をかけようとするも、ガデッサは口をつぐんでしまう。
 言わなきゃなんねぇことがあったのにな……。
 落ちてくる雨粒を避けて横になろうとしたガデッサの眼に犬小屋が飛び込んでくる。しばし悩んで、狼は小屋に入った。毛布にくるまって今日の賑やかな騒ぎを思い起こしながら、彼は目を閉じた。
 礼はまた、いつかだ。

『具材』きのこ(舞茸、しめじ、エリンギ、えのき、椎茸)真鱈の白子(財布の危機)アンコウ一匹、七つ道具で(財布破産)ズワイガニ(財布の危機)真牡蠣(現地調達)餅巾着、餅、チーズ、豆乳、国産豚ももロース(特売!)国産牛肉(お高め)
『飲み物』烏龍茶、清酒(オウガ殺し)

作者:東公彦 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月6日
難度:易しい
参加:12人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 5
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