ハットツリーの彩り

作者:崎田航輝

 そよ風が秋の後半を告げる、涼しい日。
 人々の頭を、様々な形の彩が飾っていた。
 その道の一角には、とある帽子の専門店が建っている。決して大きくはない店構えだけれど、並ぶのはどれも一点物ばかりで地域ではちょっとした有名店。
 特に少し寒くなり始める季節には、帽子でも見てみようかと思う人々が訪れるから──この日もまた仄かな賑わいが生まれていたのだ。
 上品に頭を飾るボーラーハットは、レトロなものからモダンなものまで。
 長いつばが美しいキャペリンは、気品のあるものから可愛らしいものまで、花のように色とりどり。
 ドレスにも合うクロッシェに、ラフなストローハット。子供用の小さな帽子も含め、自分達の服に、髪に、生活に。どんな彩りを合わせようかと、悩む皆は楽しげだ。
 これと決めて店を出る人々は、早速頭に帽子を被って。少し装いを新たにしたことに、小さな幸せの表情を見せていた。
 と──そんな小さな路に、歩んでくる巨躯の男が居る。
 鎧兜に巨剣を佩いて、浮かべる表情は獰猛。
 地を踏みつけて、進む足取りは殺意に満ちて。ゆるゆると揺れる剣先に表れるのは、獲物を欲する飢餓感だ。
「嗚呼……餌がある」
 無辜の命に、幸せの笑顔。
 今目に見えるそれこそ、男の最も求めるものだった。
 次には刃が奔り、血潮が散る。その時だけは、男の顔にも恍惚の笑みが浮かんでいた。

「皆さんは普段、帽子など使っていますか?」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へそんな言葉を口にしていた。
 何でも人気の帽子店があって、寒くなってきた季節には一層人々も訪れるのだという。その店の情報を投影しつつ、イマジネイターは興味深げでもあった。
「ただ……そんな場所の近くに、エインヘリアルが現れる事が判ったのです」
 やってくるのはアスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれる、その新たな一人ということだろう。
「人々の命を守るために、撃破をお願いいたします」
 現場は真っ直ぐに伸びる一本道。
 細道と言える環境だが、戦うのに支障はないだろう。
「現場に人通りもありますが……今回は事前に避難が勧告されるので、こちらが到着する頃には人々も丁度逃げ終わっているはずです」
 こちらは到着後、敵を討つことに専念すればいいと言った。
 それによって、店の被害も抑えられるだろうから──。
「無事勝利できた暁には、皆さんも帽子を見ていっては如何でしょうか?」
 一点物が殆どを占めながら、それでいて品数は豊富だという。
 色々なファッションに合う帽子が揃っているので、冬も近い時節、一つ持っておいてもいいのではないでしょうかと言った。
「そのためにも……ぜひ撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)
湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)
小柳・玲央(剣扇・e26293)
ミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
海原・リオ(鬼銃士・e61652)
ブレア・ルナメール(魔術師見習い・e67443)
オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)

■リプレイ

●風下の道
 澄んだ青空から、晩秋の温度が降りてくる日。
 絹地のような感触の涼風に、静波の髪を揺らしながら──湯川・麻亜弥(大海原の守護者・e20324)は細道でレトロな看板の店を見ていた。
「帽子、ですか」
 窓から覗く店内には、他では見ない帽子が沢山あって。普段はあまり被らない麻亜弥だけれど興味を惹かれた。
「偶にはお洒落として見て行っても良いかも知れませんね」
「そうですわね。こんな機会ですから、何か買っていっても良さそうですわ」
 花の微笑みで頷くのは、彩咲・紫(ラベンダーの妖精術士・e13306)。
 それが楽しみだからこそ、今はやるべきことを、と。
 道の向こうへ視線を向けて──細道へ踏み入ってくる巨体を見つけている。
 鎧兜の罪人、エインヘリアル。獰猛な吐息を零し、阻むものがあれば薙ぎ倒すとでもいうように歩んできていた。
 故にこそ、小柳・玲央(剣扇・e26293)はこつりと一歩出て。
「一点ものばかりってことは、それだけ失うには惜しいってことなんだよね」
 店に向けていた深蒼の瞳を敵へ向け直し、すらりと剣を抜いていた。
「せっかくの出会いを楽しみにしていたところなのに、邪魔はさせないよ?」
「……、狩りを阻むなら。お前達も喰らってやる」
 玲央を睨んだ罪人も、迷いなく。巨刃を掲げると一気に走り込んでくる。
 が、その罪人の視界が突如歪んだ。
 紫がしゃらりと、花を纏った紫色の短刀を抜いていたのだ。
「──このナイフをご覧なさい、貴方のトラウマを想起させてあげますわ」
 艶めく声も聞こえぬ程、罪人は悍ましい夢幻を見て僅かに怯む。
 その隙を逃さず、海原・リオ(鬼銃士・e61652)はくるりと長大な砲を手に取っていた。
「まずはその動きを封じさせてもらうぞ!」
 狙いを定めて砲口に火を吹かせると──反動に長髪を靡かせながら巨体の足元を穿ち爆炎を上げていく。
「この隙に、攻撃を!」
「うむ」
 応えてひらりと翔ぶのはミミ・フリージア(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e34679)。
 耀く鱗粉で尾を描きながら巨躯へ距離を詰めていくと──。
「エインヘリアルは毎度の事じゃが大きいのぅ」
 見つめる程に声が零れる、けれど。
「ここで退くわけにはいかぬのじゃ。民を守るのもまたわらわの仕事じゃろう」
 故に逃げず、止まらず。
 宙で翻って蹴りを打ち、鎧に罅を刻んでみせる。
 同時、テレビウムの菜の花姫もフリルを棚引かせながら打撃を与えると──罪人は後退しつつも衝撃波を返してきた、が。
 ミミと菜の花姫がしかと防御して見せると、そこにゆらりと煌めきを帯びた混沌が生まれる。
「傷の治療は、すぐにさせていただきますね」
 それはブレア・ルナメール(魔術師見習い・e67443)が手を翳し、魔力を治癒の力へと現出させたもの。
 揺らぐ色彩は、温かな心地を伴って傷に触れる。すると痛みと苦しみが溶けるように薄らいでいった。
 ブレアのテレビウム、イエロも画面から聖なる光を明滅させて治癒を助ければ──。
「お願い、出来るでしょうか」
「了解致しマシタ。後はワタシが治療を行いマショウ」
 ブレアに応えて頷くのがモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)。
 混沌の残滓の中に、虹色の煌めきを美しく発破させて。七彩の耀を吹き抜けさせると、皆に残る傷を浚い取って強化を施していた。
「反撃はお任せ致しマスネ」
 モヱが青玉の瞳を向けると、蓋を鳴らして応えるのはミミックの収納ケース。真っ直ぐに走ると蓋を閉じる要領で咬み付き、罪人の膚を食い破る。
 よろける罪人は剣で斬り返そうとした、が。
「……やらせない」
 そこへ走り抜ける、美しき半馬が在った。
 オルティア・レオガルデ(遠方の風・e85433)。罪人の斜めから狙いを定めると、すれ違いざまに砲撃を敢行。
 苛烈な爆風で巨体の足元を払い、体勢を崩させていく。
「このまま、次撃を」
「ええ。──その身を、氷漬けにしてあげますよ!」
 頷く麻亜弥は、鯨を彷彿させる鉄塊剣を大振りにして一撃。叩きつけるように冷気をぶつけて表皮を氷で蝕んだ。
 罪人はたたらを踏みながらも刃を突き出す、が。
 玲央はそれを剣で滑らすようにいなし、素早く横に回っていた。
「簡単には、受けないよ」
 数瞬の内に、さらに別の角度へ、荒れる巨躯の剣撃を逸らしながらステップを踏んでいく。
 まるでリズムを刻む舞踏。
 いつしか剣から零れる光の残滓が星座を描き、仲間へ綺羅星の加護を与えていた。その光の中で、玲央は魅惑的に笑んで一閃。
 振り抜いた一刀から衝撃波を放ち、炸裂する爆風で巨体を吹き飛ばす。

●滅戦
 塵が風に流れて、空気が晴れる。
 膝をつくエインヘリアルは、手負いの獣の如き吐息に色濃い殺意を残していた。
「……俺の狩猟を、どこまでも邪魔するんだな」
 なれば皆殺しだ、と言ってみせるように。
 ブレアは退かず、静かに首を振る。
「やらせはしませんよ。罪の無い人々は、必ず護ってみせます」
「うむ。絶対にここで止めさせてもらうのじゃ」
 ミミも怯まず自信を湛えた表情で。
 意志を体現するよう、高空に飛ぶと弓弦を惹いて一閃。撃ち下ろすように耀く矢を放ち、巨体の肩口を貫いた。
 血潮を零しながらも罪人は立ち上がる。
 が、それより疾く紫が両掌から光を煌かせていた。
「全てのものに恵みあれ──自然の怒りは抑える事が出来ませんわよ!」
 閃く『恵みの光』は、蔓を急成長させ巨体を穿つ。
 縫い留められた罪人へ、麻亜弥は海の力を秘めた靴で蹴撃。弾けた海嘯で敵を包むと──。
「炎よ、高く昇りなさい!」
 その潮を蒼き焔へ変遷。巨体の全身を灼いていった。
 罪人は藻掻くように炎を振り払う。けれどその瞬間、何かの違和感に躰を苛まれた。
「──遅い」
 刹那、響く声と共に眼前にあったのはオルティアの姿。一呼吸を置く間も無いほどの疾さで刃を抜き放っている。
 それは感知魔術に触れた者へ、反射と同等の一刀を繰り出す『蹂躙戦技:舌鼓雨斬』。罪人は深く膚を刻まれて血煙を溢れ出させた。
 罪人もとっさに剣を突き出し反撃する、が。
「わらわの相手をするんじゃったらよそ見はせぬことじゃな」
 そこへ滑り込むミミが弓を盾にして防御。それでも衝撃は浅くなかったが──直後にはブレアが眩く燦めく焔を顕現させていた。
「命の炎の輝きよ、再び……」
 それはミミを優しく包む生命の炎。『Revive the Reincarnation』──滾りながらも、穏やかに撫でるようなその感触が、傷を灼いて消し去っていく。
 罪人は尚連撃を狙うが、そこに鮮烈な火花が上がった。
「ほら、こっちを見なよ」
 いざなう声の主は、蒼焔の爆竹を弾けさせる玲央。
 剣を手に舞うのは『炎祭・彩音煙舞』。本来の愛用は鉄塊剣でも、武器を選ばず流麗なのが玲央の剣舞。火花に刃に、心身を刻まれる罪人は均衡を崩し倒れ込む。
 それでも足掻くように這い上がり剣風を飛ばしてくる、が。
「問題有りマセン。修復致しマス」
 モヱが小型魔法陣を連動させ、大型魔法陣と成して魔法を実行していた。
 ──戦況解析、完了。レイテンシを補正し同期シマス。
 煌めきと共に作用する『enlighter』は、後衛の傷を補修しながら知覚を明瞭化。意識を研ぎ澄ませ皆を健常にしていく。
「さあ、反撃だ」
 その頃にはリオが拳銃型ガジェットを罪人へ突きつけていた。
「行くぞ──その身を、石へと変えてやろう」
 マズルフラッシュと共に放たれた一弾は、魔力を飛散させて巨体の足元を固めていく。
「このまま連続で頼むぞ」
「分かりましたわ。全身を石化させてあげますわよ!」
 細指を伸ばす紫は、花色の光線を花って罪人を貫き、その半身を石に変えていた。
 そこへ麻亜弥が鋭く煌めかすのが、暗器【鮫の牙】。
「海の暴君よ、その牙で敵を食い散らせ……」
 鮫の牙を思わせる刃は、容赦も慈悲もなく。石の躰を砕いて塵にしていく。
 罪人は最後まで暴れていたけれど──リオがガジェットから紫の炎を燃え盛らせた。
「このガジェットの性能を、甘くみないことだ」
 鋼鉄をも切り裂く刃は『闇断ち紫炎』。巨体を両断し、跡形もなく散らせていった。

●寒空に装いを
 道に残った痕を癒せば、そこは元通りの景色。
 避難が解除されれば人で賑わい、帽子店にも客足が戻っていた。
 皆の無事を確認出来れば、番犬達もそれぞれに店へ。旧い異国のような情緒漂う店内を、麻亜弥は見回している。
「帽子と言っても、色々な種類があって目移りしてしまいますね」
 ゆっくり歩みながら一つ一つを見ていく。
 コーデュロイのシックなキャップに、キャメルのベレー帽。ストローのカンカン帽もカジュアルながら上品さもあって、どれも魅力的だ。
 それを合わせてみたりしながら、暫し迷う。
「素敵ですわね」
 と、そんな姿を見て微笑みつつ、紫も色とりどりの帽子を見分中。
「普段はヘッドドレスを付けていますから、こういう機会も少なかったですわね──」
 けれど折角だからと手にとったのは丸みが特徴的な鍔広帽だ。
 色は深いラベンダーで、派手すぎずに場を選ばない。それでいてドレスにも合う気品のある一品だ。
「この帽子、良さそうですわ」
「ふむ。そういうデザインの帽子も悪くないな」
 紫を見て頷くのはリオだった。
 勿論リオも沢山の帽子からいいものを探し途中。目に留まったものを眺めつつ、棚から棚へ歩んでいく。
「もうすぐ冬だからな、何か暖かそうな帽子を買っておきたい所だけど……と」
 そこで足を止めて手にとったのは、濃赤のバケットハット。モダンなシルエットながら、深く被れるので暖かさもあった。
「よし、これにしよう」
「いいですね。では私はこちらにしましょう」
 麻亜弥が選んだのは水色が優しいマリンキャップ。可憐でありつつも様々な服装に合う一品だった。
「こういうお店に寄るのも、良いものですね」
 麻亜弥がその帽子を手に言えば、二人も頷いて。爽風の中を帰路についていった。

「様々な色合いのものが有りマスネ──」
 モヱはカジュアルな品が並ぶ一角を見ている。
 今被っている自身の帽子は、麗しいリボンのついたキャペリン。シックながら華やかなもので、ドレスに合うタイプ。
 けれど今回は普段着用のものが欲しくて、ラフなスタイルに合うものに惹かれていた。
「こちらなど良さそうデス」
 と、いくつか見た中で選んだのが、藍色のキャスケット。
 生地は柔らかめのキャンバスで、幾分ゆったりとしたサイズ。被るとシルエットが美しく、それでいて主張しすぎない見目だった。
 シンプルで暖かく、機能性も申し分ない。どんな服にも合わせられそうでもあったので──これと決めて買うことにする。
 きっと、冬の普段遣いに活躍してくれるはずだ。
「では、行きマショウ」
 買い物が済むと、収納ケースと一緒に店を出て──晩秋の道を歩んでいく。

「……思ったより、色々ある」
 オルティアは種々の帽子を眺めながら店内を巡っている。
 せっかくだからと来てみたけれど、予想以上に数が豊富でお洒落だ。
「これなら私にも、何か似合うものが……似合う……んん……」
 呟きながら、目についたものを手にとっていく。
 華やかなキャペリンに可憐なニット帽。キャスケットや、ディアストーカー。
 ただ、見ては戻すその手は、終始悩ましげだ。
 というのも──本当は可愛い帽子が欲しいけれど。
(「あんまり……似合わない気がします……」)
 元より格好良いものや大人寄りのものが似合うタイプ。可愛い帽子を即断出来ない部分があるのだった。
「ううー……好きなのと似合うのが遠いです……」
 そこでふと、店員に相談してみる。
 と、その女性は「可愛い帽子もお似合いですよ」と言った上で──。
「帽子は馴染んでくるものだと思います」
 自分で似合わぬと思っていても似合うようになる。何より好きなものを被るのは楽しいですよ、と勧めてきた。
 勿論似合うと判っているものもお勧めです、と言われたので──。
「ん……ありがとう」
 頷いたオルティアは迷ってから……花飾りのついた可憐なクロッシェを購入。そして大人っぽいシックなハットも買って、どっちも被ってみようと、そう思うのだった。

 数多の色彩と、見惚れる造形。
 その眺めはまるで沢山の花が咲いているようで。
「これだけの数が並んでいるのを見るのは圧巻だね」
 玲央は楽しげに帽子を選びながら、店内を歩んでいた。
 普段あまり被らないからこそその思いは一入だし、どれも新鮮に感じられる。
 と、そんな中で玲央が目を留めたのはニット帽の一角。
「もう、冬だからね──」
 暖かそうなものがあればと、暫し迷って──手にとったのは夜色のニット。華美過ぎないように星の飾りで星座が描かれており、少し深めに被れる一品。
 手触りも優しく柔らかで、寒い日に活躍してくれそうだった。
「うん」
 良い感じ、と。
 合わせてみると似合っていると判るし、とても暖かだ。
 これで冬も一層楽しく過ごせそう。良き出会いに足取りを軽くしつつ、玲央はそれを購入して歩んでいった。

「素敵な店じゃのう」
 仄かに漂う木の匂いと、静かな音楽。
 落ち着いた雰囲気の店をミミは緩やかに巡っていた。
 有名店というのも頷ける居心地の良さで、勿論帽子も千差万別で魅力的だ。
「この際じゃ、いいものがあったら全部買っていきたいのぅ」
 迷いつつ言うと、勿論お店も大歓迎。一つ一つ帽子を運んできて、ミミに合わせてくれる。
「こちらはどうでしょう?」
「良さそうじゃ」
「この帽子などは?」
「うむ! 買うぞ」
 豪奢なリボンの付いた鍔広に、花の房のような気品のクロッシェ。
 お洒落なカンカン帽、艷やかなオペラハット──ドレスや上流の服にも合う品々を見て、ミミも気に入って沢山購入したのだった。
「菜の花姫も、たまには被ってはどうかのう」
 と、ミミが小さな帽子を買ってあげると、菜の花姫も喜びを表して。上機嫌な顔を画面に浮かべているのだった。

「せっかくです。少し買っていってみましょうか……」
 ブレアは入店すると、種々の帽子を見て回り始めていた。
 あらゆる形と、パレットのような色味が並ぶ中──ブレアが興味を持ったのは、珍しい帽子が並ぶ一角。
 平素ではあまり見られぬような品も多種在って……その中の一つに目を留める。
「この帽子……」
 それは軍帽の一種であるギャリソンキャップ。
 舟形と黒に近い濃色がぱりっとした印象を与えて、金の細いラインと羽飾りが知的なイメージも抱かせる。
 軍師、或いは参謀という見目で、被ってみると意外にしっくりと来た。
「これにしましょう」
 呟くと、傍にいたイエロも納得気味な表情を見せるので、それを購入して。ブレアは早速被りながら外へ歩く。
「秋もそろそろ終わりですね」
 風は一層、涼しさを増している。ブレアは澄明な空を仰ぎつつ、細道を抜けていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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