宇宙のグランドロン決戦~作戦選択の行方

作者:沙羅衝

「宇宙かあ」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)少し感傷に浸っているのかもしれなかった。
「ああ、ごめんごめん。集まってくれて有り難うな。
 月面での戦争はしってるな。で、その後の調査の結果やねんけど、生き延びた、マスター・ビースト残党達の動きを掴む事が出来たで」
 絹の言葉は、ケルベロスたちにとっては、予想できたものであったかもしれない。絹はそんな反応を見ながら、説明を続けた。
「どうやら残党たちは、遺棄されてたソフィステギアのグランドロンを改修し、マスター・ビーストの遺産を運び出して地球へと向かっているらしいわ。
 地球上の希少動物を絶滅させ神造レプリゼンタを産み出す計画を実行しようとしているらしい。せやから、彼らが地球に到達する前に撃破する必要があるってことやな」
「もう一度宇宙へ?」
 すると、一人のケルベロスが、そう訪ねた。
「せや、『暗夜の宝石』攻略戦後、ヘリオンの宇宙装備は調整の為、NASAに運び込まれてる。せやから、すぐに動かせる数には限りがあるんや。
 で、『磨羯宮ブレイザブリク』の利用もできへんから、今回は少数精鋭での阻止作戦をやることになってん。
 先制攻撃と交渉で、敵軍の合流を防いで、三つ巴の戦いへと持ち込むことになる。
 そんで、皆には、先制攻撃と交渉に成功したという前提で、三つ巴の戦いに向かってもらうで」
 成る程。そういった反応が、ケルベロスたちから帰ってきた。前提の作戦次第だが、うまくいけば、三つ巴の戦いになる筈だ。
「せやから皆には、どちらの勢力に仕掛けるかと、目標を考えてほしい。
 相手には動物たちを滅ぼすっちゅう目的があるから、最低限『マスター・ビースト残党軍の破壊あるいは奪取』を行う必要があるで。まずこれを阻止する。
 そんで、『神造レプリゼンタの撃破』『ジュモー・エレクトリシアンの撃破』『レプリゼンタ・ロキの撃破』『ジュモーのグランドロンの撃破或いは奪取』などができたらええな」
 何れの目標も、名の知れた者ばかり。ケルベロスがどの敵を目標とするのか、その事もまた今後にかかわる大事なことであることは、容易に想像できた。
「そうそう、グランドロンは、妖精8種族のグランドロンが姿を変えたものであるらしいわ。彼らに呼び掛ける事ができたら、グランドロンを仲間にする事も不可能では無いかもしれへんで。ほな、宇宙へひとっとびや。よろしくな!」


参加者
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189)
燈家・陽葉(光響射て・e02459)
黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
マイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)

■リプレイ

●中枢へ
「意外と早く宇宙での再戦になったね。でも、今回も負けないよ」
「また宇宙に来るとは思わなかったよね。それに、敵も厄介なことを考えるものだよ。
 でもまぁ見過ごせないから、しっかり阻ませてもらおうか」
 影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)と燈家・陽葉(光響射て・e02459)は、暗く静かな宇宙空間を見渡しながらそう言った。
 目の前には、グランドロンが存在している。それは、マスター・ビースト軍のグランドロンである。
 暫くグランドロンの様子を見ていると、一つのチームが脱出してくる様子を確認できた。どうやら彼らは神造デウスエクスモドキを攻撃して脱出している所のようだった。すると、ケルベロスはお互いに頷きながら、グランドロンに突入していくのだ。
「ここは既に敵の本陣、落ち着いていこう」
 とは、クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189)の言葉だ。
 突入していくと、神造デウスエクスモドキがケルベロス達の侵入に気がつき、襲い掛かってきた。
 数は多い。だが、こちらも負けてはいない。他の班と協力しあいながらも、確実にその敵を屠っていく。
 ケルベロス達は、もう一つの班と行動を共に、道を切り開いていくのだ。
 そして更に後方には、二つの班が続いている。その存在を認識しながらも、ケルベロス達はひたすら前を向いた。
 まだ目的の場所は先である。彼等は注意を促しながらも、向かってくる神造デウスエクスモドキを確実になぎ払い、突き進んだ。

 暫く突き進んだだろうか、何体ものデウスエクスモドキを倒した後、ケルベロス達は、目的の場所まで到達する。
「いたわ……」
 黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871)がそう、仲間達に目配せを行った。
 そこはこのグランドロンの中枢だった。
 そして、目の前にいるのは、3体の神造レプリゼンタだった。
「あの時は先を急ぐため、仲間にあとを任せて先に進んでしまったが、今度はあの時のお礼をたっぷりしてやるのじゃ」
 そう言って、前回の月面での戦いを思い出しながら、己の目標を見定めるのは、ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)だ。
「まとまっていますね。では、手筈通り行きましょうか。手も足も震えますが勇気を出して!」
 結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)がもう一つの班の様子を確認しながら、エクスカリバールを構える。
「神造レプリゼンタか……ここで殲滅する!」
 ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)は『バスターライフルMark9』をガチャリと構え、凍結光線を躊躇い無く射出した。
 ティーシャの砲撃にあわせてマイア・ヴェルナテッド(咲き乱れる結晶華・e14079)が、魔法の光線を撃ち出した。
 すると、先ほどレオナルドが確認していた班からも、グラビティが放出されていた。
 ケルベロス達は、事前に作戦を立てていた。
 もし3体の神造レプリゼンタが固まっていた場合、連携される恐れがある。その為、まずは1体をひきつける。その為の二班だった。
 狙いは『レプリゼンタ・ギガトラルドン』。海洋哺乳類型ウェアライダーである。
 ケルベロスによる遠距離の攻撃は、幾つか避けられるが、また幾つかは命中する。
 もとより、これで終わるとは思っていない。
 グラビティが巻き上げた熱や光などが晴れると、ギガトラルドンはゆっくりとケルベロス達に顔を向ける。
「信頼は、していなかったのだがな……」
 そう言って、ケルベロス16人と対峙した。ジリジリと間合いを詰める両者。そしてレオナルドが咆哮を上げた。
「マスター・ビーストにより産み出されたレプリゼンタ。同じウェアライダーとしてこれ以上悲しみを産まないようここで決着をつけます!」

●レプリゼンタ・ギガトラルドン
 ケルベロス達は、二班でギガトラルドンを取り囲むような作戦を取った。
 他の2体の新造レプリゼンタは、1班ずつであるからだ。ここで合流させ、人数が多い我々が、少ない班に対して余計な負荷を強いるのは、敗北に一歩近づく事になるからだ。
 体当たりや触手の攻撃に対して、素早い援護と相手の弱体化を狙う。その作戦が功を奏したのか、戦況はケルベロス優位に傾いていった。
 ただ、一つ懸念が生じていた。
「これ……どんな力なのかしら?」
 舞彩が思わず呟いたのは、相手の回復力だった。
 傷つけても傷つけても、その傷は次の瞬間には塞がっていくのだ。
 しかし、此方も十分な戦力をもって挑んでいる。援護が全て行き渡った時、全員が攻撃に集中すると、大きな傷を負わすことが出来た。
 確かな手ごたえがあった。数多のデウスエクスを屠ってきたケルベロス達が、勝利を確信する程には。
「ウイルスは、仕込んだんじゃがのう……」
 ウィゼは相手の自己回復の強力さがあった時の為に、対デウスエクス用のウイルスカプセルを打ち込んでいた。だが、一瞬にしてその傷が癒えたのだ。
「何らかの力が働いているのだろう。ならば……」
 ティーシャがドラゴニックハンマー『カアス・シャアガ』の砲口を向ける。
「何度でも、倒せばいいだけのことだ!」
 そしてまた、ケルベロス達はギガトラルドンに挑んでいったのだった。

「……もう一度、やるまでか」
 クリムはセントールランスを腰の位置にまで戻し、また構えを取っていた。
 もう、何度攻撃を繰りかえしたのだろう。いや、何度倒したと思ったのだろうか。
 時間にして20分以上は戦い続けている。16人のケルベロスの猛攻を受けるギガトラルドンだが、消滅する事無く存在している。
「生きて帰れると、思うなよ」
 ギガトラルドンは、不気味にそう言って、巨体を前にいるケルベロス達にぶちかます。何かに怒っているのだろうか。その言葉は静かにケルベロス達を威圧するのだ。
「大丈夫……」
 マイアがゾディアックソード『白銀の選定者』を掲げ、すっと星座の軌跡を描く。マイアは既に何重にも支援の力を施していた。それは、ギガトラルドンの攻撃を阻み、此方の力が最大限以上に発揮できるようにと。そして、ただ願うのは生き延びるということ。
「いくぞ!」
 レオナルドが呪詛を載せたエクスカリバールを打ち込み、クリムがセントールランスで突撃する。
「そうね、続くわよ。生きて帰る、為にもね!」
 舞彩が重力を乗せた蹴りを打ち込めば、陽葉があわせるように飛びこみ、オウガメタル『雪と星の導き』を纏った拳で殴りつけた。
 既に相手の攻撃は見切ることが出来始めていた。
 前を行くウィゼもまた、攻撃に重点を置き、近距離でギガトラルドンの触手に対して、ブラックスライムを噛み付かせた。
「雷を、暗闇を切り開いて!」
「残すわけにはいかない。お前達という存在を……」
 そしてすかさず、リナが傷が癒えようとしている箇所に、空の霊力で切りつけ、ティーシャが後方からエネルギー光弾を撃ち放った。
 敵はいつ倒れるかも分からない。何度も同じ敵を倒しているかのようなループ。そんな錯覚さえ覚える。
 それは、もう一つの班も同じように思っているのだろうか。
 だが、ケルベロス達は誰一人として、最後の瞬間を信じていたのだ。そして、それはきっと来ると。

●戦いの終わり
「……大丈夫。この世に不死身のヤツなんていないよ。ね、みんな。まだ、いけるよね」
 リナは自分に言い聞かせるように。そして己の意思をこの場にいる全員に向けるかのように、フェアリーレイピアの切っ先をギガトラルドンに向ける。
「ああ。俺は、まだ燃え尽きてなどいないさ。あなたが敵に回るというなら、俺は地球を守るケルベロスとして容赦はしません!」
 レオナルドがそう言い、愛用の刀の柄に手をかけた時、突如として、グランドロンの様子が変わった。
「……な!」
 その様子を見たギガトラルドンが、明らかに動揺の声で唸った。
「どうやら、いけたみたい。かしら?」
 舞彩の口元が少しほころんだ。グランドロンの解放を目指す仲間がいる事を、我々は知っている。そう、グランドロンが形状を変えようとしているのだ。コギトエルゴスムとして、形を、そしてこれからの生き方を変えるのだと。
「じゃあ、こっちもやるしかないね」
「そうね。色々と貰って帰りましょう」
 陽葉が妖精弓『阿具仁弓』を構え、マイアが三重の結界を展開していく。
『…智慧、戦争の女神。太陽の神。大いなる主神。三柱の神が守護の奇蹟を今ここにもたらさん。 Aegis protection』
 マイアの盾は万が一の為。ただ、それが一歩を踏み出す勇気を与えるのだ。
『心静かに――恐怖よ、今だけは静まれ!』
 彼女の盾の力を感じながら、レオナルドが腰を屈めて刃を抜き、納める。
 彼の居合いがギガトラルドンを切り裂く。それが合図。続いて、もう一つの班の一人が、弓を引いた。
 炎が滝のように降り注ぐと、他のケルベロス達も一斉に力を搾り出して動く。
『響け、風の音色』
『『『切り裂け!!デウスエクリプス!!』』』
 陽葉が弦を鳴らし続け、風の刃を生み出せば、その刃の隙間から、ティーシャのジャイロフラフープがギガトラルドンの触手を切り落とした。
「ここで、燃え尽きるのじゃ!」
『竜殺しの大剣。地獄の炎を、闘気の雷を纏い二刀で放つ!』
 ケルベロス達の攻撃は、まだまだ終わらない。ウィゼがギガトラルドンの頭部に炎を出現させると、舞彩が地獄の炎で生み出した力で超加速して滅多切りにする。そして最後の十字斬りが、炎を燃え上がらせた。
「なんじゃ!?」
 その時、ギガトラルドンが何かに動こうとしたことが、ウィゼには分かった。その動きは明らかなる撤退の意思だ。
「――何処へ行くのです?」
 その動きを読んでいたのだろうか、他班の一人が真っ先に動いた。弾き出された炎弾が、海洋哺乳類型ウェアライダーに行動をさせない。
「このまま、いこう」
 ギガトラルドンは先ほどの再生能力は、働いていないようだった。崩れかけていく肉体が回復していない。リナが魔力と幻術を混ぜ、刃へと変換する。
『風舞う刃があなたを切り裂く』
 リナが放つ刃は、行動を阻害すべく舞い踊り、まだ崩れていない部位を削いでいく。
 もう一つの班も、容赦はしない。見えない鎖で縛り、幾重にも重なる彩りという槍が、絡み合って突き刺していく。
 これを勝機と見たクリムが、右手でランスを持ち、左手を軽く地面につけた。限界まで引き絞った力を己に纏わせ、ただ速くと願う。
『穿て。穿て。穿て。咲いた花が散るように。満ちた月が欠けるように』
 魔力における強引な肉体強化。自己暗示ともとれる詠唱。その言葉は彼の中のリミッターを一つずつ外すのだ。
 クリムが己のリミッターを外している間、ギガトラルドンは、まだもがくようにその場から撤退しようという意思で、動こうとする。
「宙にだってその身縫い止めてみせるわ」
 だが、アリシスフェイルの槍が、その場に縫いとめ、決して逃がさない。
『――私の槍からは逃げられない。』
 そして、クリムが全てのリミッターを解除した時、ミサイルの如く彼は弾かれた。
 ズッ……!
 ただ一つの鈍き物音。一筋の光が集束し、ギガトラルドンの体を貫いた。
「……マスター――」
 神造レプリゼンタという獣は、最後にそう言い遺し、存在ごと崩れ去っていったのだった。

 ギガトラルドンの最期を見届けたとき、己のいるグランドロンはコギトエルゴスムになっていた。
 他の二班もまた、神造レプリゼンタを倒すことが出来たようだ。
「さて、これからどうしようか?」
 舞彩がそう呟いた時、目の前にふわりとコギトエルゴスムが流れ着いてきた。
 崩壊し、無数のコギトエルゴスムになったグランドロン。彼女は宇宙空間でそれを手に取った。
「出来るだけ、回収するというのはいかがでしょうか?」
「そうだね。僕たちにできることは、やろう」
 レオナルドがそう言うと、陽葉もまた、頷いて同意した。
「ええ、多ければ多いほど良いわ」
 そう言ったマイアは、ゆっくりと進み始めた。宇宙空間に散らばるコギトエルゴスム。崩壊や爆発の影響で、あらぬ方向に行っているかもしれない。
「回収ついでに、グランドロンの説得に成功したチームに礼も言わなくてはね」
 クリムが言うように、あの時グランドロンが崩壊を始めていなければ、どうなっていたかは分からなかった。
「そうじゃの。あの時とは別の、きちんとしたお礼になるのじゃ」
 ウィゼが言うお礼とは、3体の神造レプリゼンタを前にした時の台詞である。当然、全くの反対の意味になる。
「どうやら、その方たちはあのあたりに……」
 ティーシャはより一層輝きを放っている、箇所の方向を指差した。
「デウスエクスには思い通りにさせないけど、これは、わたしたちの思い通りにしたら良いんだよね」
 そんな言葉を言いながら、リナは少し嬉しそうにその景色を視界にたっぷりと納めた。
「いこう」

 ケルベロス達は、漂いながらその輝きを集め、ゆっくりとグランドロンに呼びかけたチームと合流していった。
 グランドロンにどう呼びかけたのだろうか。
 どういった反応が帰ってきたのだろうか。
 その戦果を聞きたくて。

 こちらの戦闘の事など、簡単に忘れることができた。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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