最近こういうの煩いんだよね

作者:久澄零太

「世の中は性差に溢れている」
 さぁ今回も唐突に始まってしまった鳥さんの講義のお時間です。まずは静かにさえずりに耳を傾けましょう。
「よくあるじゃん?男はセーフだけど女はアウトみたいな。具体的には破廉恥とか」
 はいそこ、またネタかとか言わないの。実際ネタだけど。
「いや分かるんだよ、破廉恥って本来は恥知らずって意味だからね、決して……決して変な意味で言ってるわけじゃないんだ」
 断りを入れてから、鳥オバケは告げる。
「人間関係が難しい昨今、セクハラ案件が増える世の中でコミュニケーションを円滑にするには、まずは男同士で破廉恥な事をすることだと思うんだ」
 何を言ってるのか分からないって?安心しろ、それはお前の精神はまだ病んでいない証拠だ。
「と言うわけで行くぞ同志達。この新時代を切り開くためのコミュニケーションツールを世界へ広めるのだ!」
『イェス破廉恥! ゴーホモ!!』
「ホモちゃうわ!!」

「皆変態だよッ!!」
 ドストレートに言い切った大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある廃ビルを示す。
「ここに男性相手に破廉恥な事するのはセーフってビルシャナが現れて、信者を増やそうとするの!」
「うわぁ……」
 話を聞いた時点で遠い目になったルーク・アルカード(白麗・e04248)。彼に限った話ではないが、番犬達の眼が既に半分死んでいる。その一方で。
「ふん。そんな事に性別の違いなど、関係ないだろうに」
 ブリジット・レースライン(セントールの甲冑騎士・en0312)は鼻で笑い、肩を回し始めて。
「お望み通り、締め上げてやればいいんだな?」
 どうみてもクリンチと勘違いしてますねこの人馬。
「えっと、一応それでも何とかなっちゃうんだけど、そこにいい意味でも悪い意味でも男女差なんかないって事を語れば信者は目を覚ましてくれるよ」
 要するに、物理的にシメてしまうか、ちゃんと説得するかは自由だ。
「えっと、ほら!近くにパフェの美味しい喫茶店もあるから、早く片付けて食べに行くんだって思えば頑張れるでしょ?ね!?」
 ユキはテンションがダダ下がりの番犬達を元気づけようとするが、果たしてどれだけの効果があったのかは分からない……。


参加者
エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)
ルーク・アルカード(白麗・e04248)
白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)
武蔵野・大和(大魔神・e50884)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)

■リプレイ


「ユキちゃん!」
「なにっ!?」
 右手にはフェニミン、左手にはガーリーな服を構えたエヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)がユキに迫る!
「太陽騎士さんにモデルやってもらえば広告効果バッチリで、私の報酬=食費もアップ!」
「私はサイズ合わないでしょ!?」
 ユキは後退するが、食欲の権化はクッフッフ。
「大丈夫、今回はサイズも合わせてあるよ!」
「何で私のサイズ知ってるの!?」
「凶君に聞いたら案外すんなり……」
 太陽機内で白猫の悲鳴と衣擦れが響く一方、簡易更衣室の外側では。
「ブリジットさん!」
「なんだ!?」
 武蔵野・大和(大魔神・e50884)の大声に、ブリジットも叫び返す。
「僕達鬼人が定命化したのは、これが切欠の一つでもあるんですよ。あなたにも、地球の味を知って欲しいんです」
 某鬼姫様太鼓判のメロンパンを焼いて来た大和。しかしブリジットは定命化して日が浅く、現在進行形で地球文化を勉強中。怪訝な顔で噛みついてみると。
「……」
 もっきゅもっきゅ。ここでユキが着換え終わり、エヴァリーナが更衣室の撤去を始めて。
「あ、ユキさんにはこれを……」
 ユキにサツマイモパンを持ってきた大和、駆け寄ろうとしてカーテンを踏み足を滑らせ、パン籠が旅立っていく。
「パンが!?」
 逆脚で床を蹴り、籠の下に滑り込んだ大和だが、片手には甘い香りと籠の感触。逆の手にある、フワフワした布とフニッとした質感は?
「……」
「ユキさんごめんなさい!違います!これは只の不可抗力です!」
 勢い余って籠と一緒にユキの胸を掴んでた大和。自分の恰好を見下ろして無防備だったユキが、じとー。
「この……」
 滑り抜け、床に手をついて回し蹴り、大和の足を払って宙に浮かせてから膝を曲げて、溜め。
「ド変態ーッ!!」
「僕、変態キャラじゃないんですけどー!?」
 腹に突き刺さる蹴りを貰って、悲痛な叫びとパン籠を残した大和は太陽機から射出された。


 所変わってとあるビルの中。
「この新時代を切り開くため……」
「それはけません!」
 鳥さんめがけて大和がダイナミックお邪魔します!窓ガラスを粉砕して鳥さんに六色の旗をグッサァ!!
『教祖様ー!?』
 唖然とする信者も気にせず、大和は旗を示して。
「これ何だか分かりますか?レインボーフラッグと言います」
 六色しかない事には触れるなよ。その説明には、この旗の歴史を語る必要があるから。
「男性同士だから許されると言っても、セクハラを嫌う男性もいます。だけどセクハラした相手がゲイだったら、どうなると思います?そのまま個室に連れ込まれて、ゲイの晩ご飯ですよ」
「お前は何を言ってるんだ!?情事に発展するわけが……」
「それはあなたの視点の話で、相手がどう思うかは分からないでしょう!?」
 大和にツッコミを入れる信者だが、大声で一喝。
「僕の友人に彼女と結婚した女性もいるし、性別関係なく好きな人もいます。手を出されたら、出していいのかなって思われるはずです!あなた達は襲われても言い逃れできないんです!!」
 要点を挙げると何も間違っていないだけに、信者が沈黙、そこへシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が新聞記事をパァン!
「セクハラは相手が男でも成り立つんすよ。男に対するセクハラで訴えられて負けた事例もあるんす」
 性が絡むと男性から女性への問題と思われがちだが、女性から男性への案件も表面化しにくいだけで十分にある。
「そこでっすね、両者同意の上ならセクハラにならないっす。つまりあなたたち同士でやりあえばいいっす!コミュニケーションツールっすからやられるのも拒否しないっすよね」
 淀んだ瞳で、息を荒げながらビデオカメラを用意するシルフィリアス。駄目だこいつ、腐ってやがる……。
「何故記録を撮る!?」
「広めたいんすよね?だったら野郎同士で尻揉みしだき合ってる姿をネットに公開すべきだと思うんすよ」
 曇りのない腐敗した目で語るシルフィリアスは、人差し指と中指の間に親指を挟んで、グッ。
「会社内の人間関係の良好具合を示すホームビデオだと思えば何の問題もないっす」
「破廉恥は拡散するためのものじゃないから!!」
「男でも女でもパフェはおいちいから、とっとと手羽先になって拙者にパフェタイムを到来させるのがいいと思うでござるよ」
 天井からウェイトレス忍者、カテリーナ・ニクソン(忍んでない暴風忍者・e37272)が出現。鳥さんの頭にコンクリ諸共降りたもんだから、ビルシャナはおねんねなう。メイド服にパフェが乗ったお盆を構えたカテリーナは拳を握り。
「そう、時代はパフェでござるよ!セクハラなんかするからメンだのレディだの問題になるのでござる。パフェなら誰が食べてもベリデリサス。この美味しさ、まさにジェンダーフリー……」
「パフェさえ食べれば解決だね!」
「スイーツは世界を救うっす」
 エヴァリーナがチョコプリッツェルやウェハースの刺さったチョコパルフェを、シルフィリアスがリンゴと洋ナシの饗宴、パフェ・ラ・アップルをモグモグ。
「なんで食べてるでござるか!?」
 二人が、キリッ。
「「そこにパフェがあったから」」
「これこのように、早く食わぬと誰かにとられ……ちょっと待つでござるSINOBIパフェは拙者のでござるよ!!」


「個人的にはゲイが増えるの歓迎なんだよな、女の子があぶれれば非モテのオレにもワンチャ……ゴホン」
 フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)は咳払いすると、サバト服を着こみ。
「一見ゲイを推奨するかに見せかけて、男同士で練習したセクハラを女性にスムーズにやるのが目的だろ。最終的には女性の同意を得られる破廉恥行為、即ち、悪【リア充】を目指してんだろ!お天道様が許しても、しっと戦士のオレが許さん!」
 リア充絶対爆破する明王が現れた!
「確かにそうだが、全ては円滑な交流の為だ!」
「結局手を出すんじゃないか!大義名分を飾りやがって!!」
 復帰したビルシャナとフレデリがまさかのタイマン。嘴とサバトをぶつけ合う睨みあいになる一方で。
「いいか、お前達。セクハラに性別は関係ないんだぞ。嫌がる相手にはダメ、絶対だ。同意を得てのスキンシップならいいかもしれないが、それ以外はNGだ」
 ルーク・アルカード(白麗・e04248)は死んだ目で信者に教えを説いていた。
(今まで色んなシャナを観てきたが、ホモシャナは初めてだな。ついにシャナもここまで到達したか……このままだとヤバいシャナしかでてこなくなるのでは?)
 ルークの脳裏に過るのは、暑いから水着で町を歩く鳥とか、卒業ナイトフィーバーする鳥とか……ロクなのに遭遇してないなお前。
「薔薇ですか……私趣味じゃないんですけどね……」
 ちょっと引いてる白石・明日香(愛に飢え愛に狂い愛を貪る・e19516)はブリジットに乗ろうとして落っことされ、後頭部に小さなたんこぶがあるのは秘密だ!
「ブリジットさんを見てみなさい」
 ブリジットの前脚を撫でる明日香は、その磨き抜かれた筋肉を示して。
「こんなに逞しい女性もいるのに男同士でやるなど不毛!」
『どういう理論!?』
 信者の総ツッコミに、明日香は物憂げなため息をついて。
「いいですか、男は頑強でなくてはならず、弱々しいのは論外。しかし、女性は嫋やかなれば愛おしく、逞しければ美しい……即ち、女性は男性より優れている!」
 突然展開されたとんでも理論に、信者が呆気にとられてしまう。
「世の男たちは女に支配されるべきなのです。貴方達はさっさと自分を支配してくれる女性を探しに行ってきなさい!」
 しっしっ、追い払おうとする明日香に信者がプッツン。
「つまり男を見下してるだけじゃねぇか!」
 ガッと、信者がルークを掴む。
「見てろよ、漢の絆というモノを……」
「ちょ、やめ、どこ触って……アッー!?」
 首から始まり、忍装束の隙間から手を突っ込む形で脇腹をナデモフされて、尻尾を根元から先端までねっとりジットリ……。
「うわぁ」
 白狼が信者に囲まれて輪モフされる様を、ルーク(真)が物陰から見ていた。ついでにカスタードプディングパフェも食って……なんでナチュラルにパフェ食ってんの!?


「男同士の掛け算?それよりもセントールさんの事ですわよ」
 モザイクに包まれたルーク(偽)をほっといて、エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)はブリジットを示す。
「ついに地球の仲間入りをした馬の人種……まさしく時代は馬なのです!」
 今は猪の時代で、来年は鼠だけどな。
「まぁ、我々の種族を受け入れてくれているのなら、感謝しよう」
「えぇ、あなた方を歓迎します。だからまずは背中に……」
「「駄目だ(です)」」
 ブリジットの背中に手をかけた明日香が、エニーケと二人がかりで乗馬拒否。
「何故!?」
「私を騎乗動物と一緒にするな」
「動物の馬ですら、人を見て相手が自分に相応しいかを判断したり、個人の顔を識別したりするのですよ?それに、逆に考えてみてください、見ず知らずの男性にいきなり『抱っこして』と言われたらどう思いますか?」
「踏み躙ります♪」
 明日香は即答して微笑んだ。
「ブリジットさんに乗せてというのは、そういう事ですよ」
「うぅ、一度でいいから乗ってみたかったんですが……ところで、私は女性なんですけども?」
「男性を引き合いに出したのは例えです!」
 性別の問題ではなかった。
「これはあなた方にも言える事です」
 ズビシッ、エニーケの黒い指先が突如信者に向く。
「人を愛するのは自由ですけども、さすがに濃厚すぎるやりとりは人を選びますわよ。意識していない男同士で口や首筋の匂いを嗅いだりするの……アブノーマルですわよね?」
「そこまではしない!!」
 その言葉に、エニーケは家畜を見る屠殺職員のような目で……何?今日は獣人形態で来てるから表情が分かりにくい?よく見ろ、耳が寝てるだろ?アレは不機嫌な証拠だ……!
「じゃあ、どこまでならするんですか?」
「こ、こんなことする気なんだろう……!?」
 フレデリが取り出したるは薄い本。端っこに十八が丸で囲まれたマークがついたそれを、彼は決して自分が見てしまわぬよう、顔を背けて信者に見せる。
『いやいや!?』
 これには信者が一斉にドン引き。だってほら、ね、うん。
「教祖様にそっちの趣味はない……はず?」
「ははぁん、こっちでござるな?」
 カテリーナが開いたのは、またしてもあーるでじうはちな薄い本。
「お主の経典から出てきたこちら、メイドさんに難癖つけてけしからんこと満載でござるか!?俺のチョコバナナさんでデコってやるぜとな……」
 なんでお前中身把握してるの?
「このビルシャナは自分の部下にこういう事を致すつもりでござろう!?」
 一斉に信者が振り返れば、鳥さんは首を振り。
「待ちたまえ同志た……」
「セクハラ案件がどうとか申してたでござろ?つまり、部下にセクハラしてビルったのではござらんか?」
「違うよ!?いや部下との関係で苦労したけども……!」
「じゃあ、こっち?」
 エヴァリーナが引っ張って来たのは衣装カート。女性向けの服を並べて。
「人に奨めるなら先に自分がお手本示すといいんじゃないかな?セクハラよりこっちのが平和だよ」
「言いたいことは分かるが、何故女装!?」
「……ウケるから?」
「笑いと薔薇のダブルミーニングっすね」
 シルフィリアスの一言で、鳥さんは脱兎。しかし回り込まれてしまった!
「嫌だぁあああ!?」
「更衣室はこちらー」
 ずーるずーる。鳥さんはエヴァリーナに引きずられて物陰へ。
「教祖様が男性から受ける為に女装を……?」
 信者の一人は、頬を紅潮させて両手を胸の前で組んだ。
「つまり、教祖様自らが同性愛を示してくれるですね……!」
 ……おや?
「同性同士の恋愛は否定されがちですが、子や婚姻の難しさをもって尚相手の事が好きと言う、究極の恋愛だと私は思うのです」
 くるり、振り返った信者は……支援部隊に入ってたはずの真理じゃねーか!?
「結婚できない、子を残せない……いわば国と、人類という生命種に否定されるに等しいですよ。それでも、己が愛を貫きたいと思わないですか!?」
 コイツ何言いだしたんだって顔の信者に、真理が不器用に微笑んで。
「教祖様は、上司と部下、そして同僚同士の愛について語りたかったと思うですよ。そして今、教祖様は同性愛の実在を証明してくれるです!今こそ、教祖様の教えに応え……」
 ガッ!ブーン……。
『同志ー!?』
 語り続けようとした真理を、彼女の騎乗機がかっさらって信者達はその後を追って行った。
「なんで私が……あれ、同志は?」
 そして女性用スーツに着替えた鳥さんがリターン!
「早急に仕留めてしまいましょうか」
 明日香の雷撃がブリジットの槍を撃ち、彼女の得物が稲光を走らせて。
「セントールの戦い方……この目で見られるのでしょうか?」
 エニーケが指で銃を作り、重力鎖の弾丸をブリジットに速射。彼女の視界が澄み渡り、異形に狙いを定める。
「パーフェ!パーフェ!」
 エヴァリーナから飛んだ雷を身に纏い、ブリジットの脈拍が加速、血液が巡り。
「行けるか?」
「任せておけ」
 フレデリが剣を、ブリジットが槍を構え、鳥さんが察した。
「三十六計逃げるに如か……」
「いくっすよ!」
 逃走を図った鳥さんの目の前で、シルフィリアスの衣装が解けると紫色のリボンに変わり、彼女の体に巻き付き、弾けてフリルをあしらったミニスカドレスに姿を変えた。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 ブイサインを目元に当てて、ウィンクするシルフィリアスだが……彼女の周りには、既に練り上がった魔力が渦を巻いて陣を描き。
「薔薇にならないなら、花火にしてやるっす……グリューエンシュトラール!」
「アバーッ!?」
 鳥さんが焼き払われて、真っ黒焦げ。嘴から黒煙を吐いたら飛びかかって来た大和に頭を抱え込まれ。
「焼き鳥になりやがれ、この変態鳥がぁーッ!」
 眩い輝きと共に異形を焼きながら、強烈な膝蹴りが顔面を強打ッ!吹き飛ばされた異形の下には、ブリジットとフレデリが待ち構えており。
「「逃がすかぁ!!」」
 二人の得物が空中の鳥さんを穿ち、突きあげ、爆破。天井に打ち付けられて落下した異形が伸びると、その首に刃が添えられる。
「ホモシャナ、お前には物理説得の道しか残されていなかった」
 切断されて転がる首を、ルークは興味なさげに見つめて。
「そう言えば、苺が出始める時期だったな……」
 もうパフェの方に頭がいってる!?

「働いた後のご飯は美味しいすよねー」
 戦闘後のとある喫茶店。カレーかなって勢いでパフェを食うのはシルフィリアス。ちゃんと味わってるのか、アレ?
「味わうのに、時間は関係ないよ!」
 などと宣うエヴァリーナ、メニューを全部オーダーなんてするから、店員が力尽きて、店長の腕も死にかけてるからパフェを一飲みにするのはやめて差し上げろ?
「地球には美味しい物がたくさんありますの。今日のパフェは……チョコ、カスタード、フルーツに抹茶もありますわね……」
「どれが何なんだ?」
 エニーケに紹介されてもよく分からないブリジットに、明日香が写真を示して。
「イチゴとかチョコパフェとかが私は好きです。甘くて酸っぱくて、ほろ苦くて……どれも個性的なスイーツですよ」
「甘いのに酸っぱくて苦い……?」
 常在戦場の騎士である故に、理解が薄いブリジット。ルークが突然立ち上がるとテーブルに広げたのは、スイーツメモ。
「レースラインさん、好きな味は?食感は?見た目は!?」
「食えるのなら、それでいいだろう?……まぁ、その、先日食わされたすぃいとぽてと?とやらは美味かったな」
 ルークの脳裏に、大食いがいると死ぬまで調理させられる強面の姿が過る。
「季節の甘味を食べさせておいてくれたのはありがたい……!」
 厨房へ飛び込み、事情を説明するや否や自分で作っちゃうルーク。完成したのは。
「待たせたな!」
 米粉を用いたシリアルに、磨り潰したさつま芋に生クリームを混ぜ、滑らか舌触りに仕立てたクリームをふんだんに使いつつ、砕いた和栗と共に芋の比率を高めにして、ねっとり仕上げたクリームを細く絞って最上部はモンブラン風に仕立てた一杯。
「……ほう?」
 じっと、見つめるだけのブリジット。何故なら席に座れなくて届かないから……下半身が馬だからね!
「ブリジットさん、あーん♪」
「むっ、とってくれれば自分で食えるぞ……」
 エニーケがスプーンですくってブリジットの口元へ。不機嫌そうに目を逸らしながらも、ブリジットは大人しく食べさせてもらうのだった。
「ま、たまにはこういう日もあるか」
 その光景を、フレデリが微笑み見守る傍ら。
「……ルークさん、そんなのメニューにあった?」
「店長と相談して、即席で作った……名付けて、デラックスストロベリーパルフェ『改』」
 エヴァリーナに興味と食欲の視線を向けられたルークの前には、ドライベリーとシリアルをベースに、苺ジャムと生クリーム、スライス苺を三段に重ね、バニラアイスに水飴で粘性を持たせ、大粒に砕いたドライベリーを練り混ぜて、バニラの海に苺の赤が浮かぶ巨大パフェ。
「……おかわり」
 こればかりは即食するルーク。翌日、店が急遽休業するのは別のお話である。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。