ほっかほかな焼き芋の秋!

作者:木乃

●天高く 馬も肥ゆるぜ 食欲の秋(字余り)
 夏の暑さも気配が消え、朝夕に肌寒さを感じ始めた今日び。
「ようやく秋が来たって感じだねー」と雑談しているケルベロス達の元に、テンション高めの永喜多・エイジ(お気楽ガンスリンガー・en0105)が現れた。
「皆お疲れー! ちょっと修復のお手伝いを募集したいんだけどいいかな?」
「今度はどこがやられたんだ?」
「鹿児島県種子島のさつまいも畑だよ! 農作物の被害は地域にとっても大打撃だし、現地のさつまいも農家さんから、修復に来て欲しいって連絡があったんだ」
 種子島と言えば、宇宙センターの他にさつま芋――安納芋が名産だ。
 安納芋は糖度が高く、しっとりした甘みが特徴。
 被害が出てしまった畑も例に漏れず、美味しいさつまいも畑が焼け野原にされてしまったという。
「植物も壊される前の、元の状態までは戻せるし、ここはケルベロスの出番じゃないかな! それとね、農家の人達から『出荷できない、形の悪いさつま芋を焼き芋にするから食べていって欲しい』ってお誘いがあったんだー」
 かなしいことに形の悪い作物は、それだけで出荷物から省かれてしまう。
 しかし、味は一級品のさつまいもに変わりなし!
 旬の出来たて焼き芋。甘くてホクホク、いま食べずしていつ食べるか!
「収穫した後の、おかしな形の安納芋探しとかしても楽しいかもね! 収穫が終わった畑で焼き芋作りするし、燃えて残った灰は畑の肥料にしちゃうからとってもエコロジーな野外活動になるよ。あ、焼き芋ってマーガリンとか、塩とか、マスカルポーネチーズをつけても美味しいよね! ……冷蔵バッグに入れて持って行っていいかなー?」
 え、そんなに? そこまで意欲を見せられると気になるじゃないか……!
 秋の味覚にハイテンションなエイジにつられて、ケルベロス達もどうしたものかとスケジュールを確認し始めるのだった。


■リプレイ

●薩摩の国のサツマイモ
 九州本土から定期船で3時間半。
『島』と形容されているが種子島は町ふたつ、市ひとつで構成されている。
 古来には火縄銃発祥の地であり、現代では国産宇宙ロケットの発射試験や衛星組立なども行われ、最先端技術とは縁が深い土地。
 さて、被害を受けた地区に来てみれば、奇麗に区分けされた畑が広がっていた。
「右手に見えるのがさつまいも畑だよ!」
「なんと風光明媚な農耕場か……しかし、焼けた痕跡が痛々しいな」
 バスガイド気分の永喜多・エイジと、芋ジャージ姿のオリヴィエ・マクラクランは目の前に広がる畑に注目を集める。
 農道は抉られ、肝心のサツマイモは畑の土とともに混ぜっ返されてる。
 鮮やかな黄金色の実も土まみれになり、これでは食べられたものでは――、
「ヒャッハー! 芋・芋・芋ォ! 芋掘りめっちゃたのしィー!!」
 ルピャァンダイブをキメてチロ・リンデンバウムが飛び込んだァーッ!!
 それを見計らっていたかのように、マリオン・フォーレが襟首を引っ捕らえたァー!?
「おい! 先にヒールするのが先決だろなにしくさっとんじゃ!?」
「ハッ!? 野良ちゃん……自分は、今……なにを……?」
「知らんがな……って、こっちに寄越さない!! ほら立った立った!」
 マリオンがチロの教育的指導(ソフト表現)に励む傍ら、「お腹壊さないようにね!」と一声かけてエイジは解散の号令をだす。
(この後、チロはつまみ食いしつつ修復活動に従事しました)

 【ベオウルフ】の面々は本日ゲストが参戦。
「うん、秋だねっ。天気も良好、過ごしやすい気候だー」
 ぐーっと背筋を伸ばす貴石・連に寄り添うようにして、レベッカ・ハイドンはミリム・ウィアテストとリリエッタ・スノウを交互に見やっていた。
 それに気づいて連は二人に紹介する。
「あ、こっちあたしのパートナーのベッカだよ」
「レンに誘われてきました、よろしく」
「よろしくお願いします、まずは修復からやっちゃいましょうか」
 そういうとミリムの周囲にゴースト――農夫らしきエプロン姿の――が地面から姿を見せた。
 メチャクチャになった畑を魂魄は飛び交い、降り注ぐ霊気が癒やしとなって広がっていく。
「元気になーれ、元気になーれ」
 リリエッタも魔法の木の葉をぺたぺたと貼り付け、傷んだ作物の割れ目を塞いでいく。
 崩れた畝は等間隔に、収穫物は土の中に。時間を巻き戻したように元通りになっていった。
 ――修復がつつがなく終わると、いよいよ収穫へ。
 専用の収穫機が畝の上を通って収穫している間に、有志の手で雑草やツタが山となって集められ。
「うーん、いい仕事してますなぁ。道ばたの草のそれとは栄養価の違いを感じざるを得ませんぞぉー」
「おぃぃぃぃぃ!? だから集めた雑草をおつまみ感覚でムシャムシャすんな!!」
「はっはっは! 後で芋が食えなくなってしまわないようにね!」
 相変わらず雑草を口に運ぶチロに、マリオンの教育的指導(緩和表現)が飛んでいるが、本日は『ツッコミ不在』であることを示すように、オリヴィエの論点は斜め上を通過していく。
 小気味よい打音が響く中、収穫されたサツマイモの仕分けにケルベロス達が呼ばれる。
 赤いカゴには奇麗に整ったお芋を。青いカゴにはゴロゴロとしたお芋を。

 網袋に詰まったサツマイモを見下ろし、少し疲れた様子のゼノア・クロイツェルがひとつ手に取った。
「いわゆる不揃い商品か……勿体無い話だ。俺達がしっかり食って供養してやろう」
 ゼノアと一緒にやってきた【裏猫】のメンバーもそれぞれ手に取ると、形を観察してふたつのカゴに分けていく。
「農作物の修復……ケルベロスとしては一番喜ばれるお仕事かもしれませんね……」
「きっと我が子のように、大切に育てたんですものね」
 手に取った作物の手触りを確かめるように、愛澤・心恋は軽く握りしめた。
 どこにでもあるサツマイモだが、手塩に掛けて育てられた出荷物だと思うと少し違って見えるような気がする。
 シャーリィン・ウィスタリアもネフェライラにお手伝いしてもらい、コロッとしたサツマイモを出荷物のカゴへ移す。
「うんうん。ずっしりした重みに期待も膨らむ……なんだいマルコ」
 ニュニル・ベルクローネスがピンクのクマぐるみのマルコを見ると、視線の先に二股の――『セクシーお野菜』と化したサツマイモの姿が。
「すごい、すごい……ニルのおいも、おにんぎょうみたい……!」
 ヘンテコお野菜に目を輝かせたロナ・レグニスだが「でもちょっと、むきづらそうかも……?」と小さく首を傾げ。
「おやおや、なんでこんな形になるんだろうね」
「作物の下に小石があると、小石を避けるように成育する……って園芸の本にあったな」
 物言わず、自我を示さない植物なりの防衛本能と言うべきか。
 二股のお芋を見つけて取り出すと、「お前もたくましいな」とゼノアは呟いてから青いカゴへ。
「んー、このおいもはだいじょぶ……あれ?」
 ロナの目に留まったのは里芋のようにまるっとしつつ、大きな石が真下にあったのか、両端にちょこっと突き出た三角のぼこぼこ。
(「こ、これは……ねこさん、そっくり……!」)
「みてみて、ゼノおいも……!」
「愛らしいですわ、こちらには三日月形のお芋がありましたわよ」
 ロナとシャーリィンが盛り上がっている横で、一袋選別を終えると、メリルディ・ファーレンが青いカゴに手を伸ばす。
「何本かちょっともらっていい?」
「メリルディ、何か使うのかい」
「試してみたいことがあるんだ」
 ニュニルの問いに『後のお楽しみ』と含みを込めると、いくつか取り出したお芋をメリルディは別の袋へイン。

 選別を終えて出荷用のサツマイモは組合の出荷センターへ。
 不揃いなサツマイモは乾拭きしてから濡らした新聞と、アルミホイルで巻いて焼く準備を済ませ、
「これより焚き火を開始するよ! 火の管理は各自よろしくね!」
「知っているぞ、これが『キャンプファイヤー』というものだな!? 余もテンション上がってきた!」
 フィーバー状態のエイジとオリヴィエはさておいて、草を燃やす独特のニオイと黒煙が秋空へ昇っていく。
 ――程なくして、焚き火が充分に温まったことを確かめると安納芋を火の中へ。
 先ほど見つけたセクシー美脚芋をトングで押し込んだミリムは、瞳を爛々と輝かせたリリエッタと視線が合う。
「では火の番はお任せしま……あ、超火力で焼き過ぎて黒炭になっちゃいますからね!? じっくり時間をかけて温めるように焼くのですよ」
「んっ、だいじょうぶ。ここはリリに任せておいて」
 心配するミリムをよそに、サムズアップするリリエッタは石像のように微動だにせず、じぃーーーっと焚き火を見つめる。
「おー、よく燃えてる。こうして焚き火を突いて、火の巡りをよくしてーっと」
 パチパチと火の粉が爆ぜる音を聞きながら、連が木の枝で燃えカスを崩して空気の通り道を作る。
 こうすることで火は酸素を取り込みやすくなり、焚き火の中のサツマイモに熱が回りやすくなるのだ。
「なんだか新鮮ですね。焚き火って今ではほとんど見かけませんし」
「こうやって実践できる機会って、実は貴重なのかもしれないですね」
 レベッカの言葉に、ミリムも『確かに』と大きく頷いた。
 今では電子レンジで焼き芋を作れはするが、焚き火を熾(おこ)して作る焼き芋の風情は格別。
 出来上がりを楽しみに待ちつつ、農家のおばあちゃん達が持ってきたお茶をお供に連達は一休み……。

 少し離れた場所では【裏猫】の面々も、待ちきれない様子で焚き火を囲っている。
「さて、あとは焼けるのを待つだけ……」
 メリルディは休憩用のビニールシートで『後のお楽しみ』の準備を済ませ、焚き火の中へ慎重に詰めていく。
「ふふ、こうして焼いていると昨年の焼き芋大会を思い出しますわ」
「そういえば、去年は焼き芋大会があったっけ。今年も皆で食べられて嬉しいね」
 シャーリィンはネフェライラと、ニュニルはマルコと待ちきれない様子で焚き火をのぞいていると、ふと去年の思い出が浮かぶ。
 またこうして今年も楽しめることが、日々の努力が報われているようでなんとも喜ばしい。
「……いい匂いがしてきたな」
 ゼノアが焼き加減を確かめようと、火の中にトングを伸ばしていく。
 転がったアルミホイルの隙間からプシュと水蒸気が吹き出し、芋の焼ける香りがゼノア達の鼻孔をくすぐる。
「くんくん……なんて芳ばしい香り! お腹がくーくー鳴いてしまいますわ……」
「おいも、ほくほく……わくわく、たのしみ……!」
 ハラペコガールのシャーリィンとそわそわし続けるロナの様子に、テーブルセットを終えた心恋もにっこり。
「ゼノアさん、こちらの用意は出来ましたがどうでしょうか?」
「ん、そろそろかと思っていたところだ……なんでも焼き立てが一番旨いからな」
 ――と言うわけで、いよいよ実食タイム!

●秋の恵みに感謝をこめて
 焚き火から取り出した焼き芋は畑の土で粗熱をとる。
 素手で触るのも危険なので、軍手も忘れずにつけておこう。
 【裏猫】のレジャーシートには心恋の用意した調味料がズラリと並んでいる。
「出来たては熱いので、火傷しないように気をつけてくださいね……?」
 アルミホイルを向いても、水気が飛んだ濡れ新聞が待っている。
 熱々トラップのアフターケアに、ニュニルも持ってきた紅茶を人数分用意して、まずはメリルディが一口。
「んー、美味しい! ホイップクリームとかバターとも合いそう、お塩もかけたら甘みが引き立つかなぁ」
 ねっとりした、粘り気の強い甘さ――正に『蜜芋』と呼ぶに相応しい。
 濡れ新聞によって蒸されたことで、持ち味である甘さと口当たりがしっかり引き出されていた。
「すんすん……いい匂いだ、ボクもお腹がすいてきたよ」
「ふふ、お台所での料理とは違った感じです」
 ニュニルは箸で丁寧に一口をとり、心恋もふーふーと吐息で冷ますと一口かじる。
 口いっぱいに広がる、サツマイモの風味に思わず?がほころんでしまう。
「うむ、ちょうど良い感じにできあがっている……あつっ……はふはふ、でも旨い……あつっ」
 ピリッと舌先に熱が走り、額に汗をにじませるゼノアにニュニルがコップを差し出す。
 芋の甘みが強いこともあり、紅茶の渋さが口直しにいい塩梅だ。
「安納芋、とろとろ甘々なブランドさつまいも……今日ははちみつをかけて」
 シャーリィンは皮をむいた三日月型のサツマイモに、とろりと蜂蜜をかけると胸の高鳴りを抑えつつ、口元へ運び――。
「……はむ、っ……甘くて、美味しい……」
 口の中とろける食感にコクのある甘さのマリアージュ……自然の恵みを一身に受けた天然スイーツ!
「はぁ……噂に違わぬ美味しさだわ、ネフェライラはどう?」
 主人に顎下を撫でられると、ネフェライラも嬉しそうに大きな耳を揺らして見せる。
 ロナも少しずつ皮を剥くと、牛のマークが入った真っ赤なチューブを取り出す。
「ロナのそれは、コンデンスミルクか」
「えへへ……これ、かりてきた」
 ゼノアの問いにロナは嬉しそうに頷き、コンデンスミルクをそーっと垂らす。
 おそるおそる小さい一口を食べると、
「あまあまーで、おいしい……!」
 元々の甘さと練乳の甘さがまろやかに絡み合い、スイーツ感が増した口当たりにロナは落っこちそうな?に手を当てる。
「へー、俺もなにかつけてみようか」
 シャーリィン達のトッピングに興味をそそられ、ゼノアが手を伸ばしたのはクリームチーズ。
 万能食材と万能食材が組み合わさると――?
「むぐむぐ……まろやかになった」
 チーズのさっぱり感と絶妙にマッチしつつ、濃厚な甘さがほどよく抑えられた。
「こういうのもアリだな……」と新しい知見を得られたことにゼノアも満足げに?張る。
「そういえば……メリルディさん、なにか準備されていませんでした?」
 ふと思い出した心恋が尋ねると、『そろそろいいかな』といった様子でメリルディは笑みを浮かべ……例の『お楽しみ』を持ってきた。
 ホイル包みを開いた中には……焼き目のついた溶けかけのマシュマロと、ダイスカットされたサツマイモ。
「いい具合にマシュマロとサツマイモが絡んでるね」
「焼け目がまたなんとも美味しそうだ。是非味わわせて欲しいな」
「わたしも、ちょっとだけ……シェア、したいな」
 過ごしやすい秋風の中、甘くて贅沢な時間を共に過ごす……短い秋の思い出として色濃く残っていくだろう。

 疲労困ぱいな様子のマリオンはシートの上でぐったり。
 心配したエイジと妖精王はチロ達に相席させてもらっていた。
「緑の茶をもらってきたぞ、ミルクとシュガーは入れるか?」
「ストレートでお願いします……」
 気疲れにオリヴィエの心配りと緑茶が身に沁み――ハッ!?
 起き上がりついでに心配の種、もといチロが粗相をしていないかマリオンは周囲を見渡す。
「あ、ぁづっ、あづぁッ!? エイジぃ!これ全然冷めてないぞ!!?」
 ……転がして粗熱をとっていた焼き芋を素手で拾おうとしていた。
 気を取り直し、集めた焼き芋をチロはマリオンの元へ運ぶと、ペリペリと芋の皮を剥き始める。
「かつて捨てわんこじゃったチロは、道端の草をムシャムシャして飢えを凌いだもんじゃが……ムシャムシャ」
「チロ、それ雑草の燃えカス」
 流れるような手つきでエイジに没収され、テイク2。
「実はサツマイモにも目がなくてのう、まさか火を通すことでここまで甘みと粘りが増すものとは……」
「うむ、確かに味付けもなくここまで甘くなるとはね!」
 感動に打ち震えるチロの隣で、オリヴィエも目を輝かせた。
 劇画タッチに見えるチロはエイジに向けて焼き芋を掲げ、
「この安納芋を、ぜひ自分の手で育てたい……しかし旅団がある長野の肥沃な大地は、サツマイモの栽培には適さんでな……ありがとう、そこな若人よ……」
 今日の食した芋の美味さは忘れず、遠い長野の地で生きていくよ……献杯(芋)
 エイジが珍しく『どこからツッコんだらいいかなー』という顔をしていたので、マリオンもようやく口を開いた。
「すみませんエイジさん……この犬、今まで畑の芋を引っこ抜いてそのまま食ってたアホなもんで……焼いた芋の美味さに感動して錯乱していますけど、しばらくすれば正気に…………帰らんだろうな」
 盛大に溜め息を吐くマリオンは、疲れた心を慰めるように焼き芋を口に運ぶ。
 濃厚なねっとり感が疲労困ぱいする精神に沁みますわぁ……。
「 (聞いちゃいけないエピソードも聞こえた気がするけど)今日は農家の人のお誘いだし、美味しく食べてくれたら総ハッピーだと思うよー」
 見ればチロも珍しく(?)焼き芋を大人しくムシャついている。
 今日の心配ごとはなさそうだ。
「……まぁこの安納芋、錯乱するのも分からなくはない美味しさですもんね」
 畑泥棒をした訳でもなし、今日は大目に見ても良いかな……と思いつつ、もう一口かじるマリオンだった。

「ホクホクしてて美味しいね」
 焼いただけなのに、すごく甘いとリリエッタは驚きつつ口に運ぶ。
「あれ、ミリムは焼き芋ひとつ冷ますの?」
「もう一つは味が整ってからと思いまして」
 包みをあけて端に避けるミリムに、リリエッタは不思議そうな顔をすると「冷めても美味しいでしょうから」と期待を込めたコメントが。
 ――二人のやりとりを、連とレベッカは微笑ましく見守りつつ、大きめのお芋を半分こ。
 ピッタリと寄り添うには『秋』という季節はちょうど良い。
「焼きたてほくほくだね、あたしは塩コショウかけよっかな」
「甘くていい香り、それじゃいただきます」
 口に運べば体の中からほっこり暖まるよう。
 塩コショウも甘みを引き立て、ポテトサラダのような味のまとまりがある。
「焼いただけなのに、味もしっかりしてて美味しいですね。バターをつけて食べてみましょうか」
 レベッカはバターをひとかけ、バターナイフで掬うと焼き芋に乗せてみた。
 すぐに溶け始めたバター液は焼き芋に染みこみ、染みた部分を一口。
「スイートポテト? うん、コクが出る感じでいいですねえ」
 甘塩っぱい、という表現が一番近いだろうか?
 デザートのような味わいにレベッカの?が緩み、その横顔に連もつられて口角があがる。
 ……こっそり空いた手に指を絡めると、レベッカは不思議そうに握り返した。
「知ってた? ベッカがいてくれるから、あたしは力が出せるんだ」
 囁きかけるような小さな声で連は呟く。
「はい……ありがとう、私もですよ」
「へへ、半分くらい食べたら交換しようか?」
 瞳に映る自分を確かめあうように、見つめ合った形から視線を外すと――。
「……ないしょのお話、してた?」
 リリエッタが不思議そうな顔で見つめていたことに気づいて「あはは、ごめん」と連は片手をあげる。
「ミリムが冷めても美味しいかもって、冷ましたお芋を用意してるよ」
「いいですね、ちょうど食べ比べしようって話していました」
「レベッカさんはなにをトッピングしたんですか?」
 わいわいと華やぐ様子に連も胸をなで下ろしつつ、会話の輪に飛び込んでいく。

 収穫したサツマイモはそのままか、もしくは姿を変えて店先に並ぶだろう。
 そして、次の春には新しい苗が育てられる。
 人の営みと寄り添うように、美味しいサツマイモは世に出回っていくのだ。

作者:木乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年10月23日
難度:易しい
参加:12人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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