竜十字島救援~空に浮かぶは、鈴の音ひとつ

作者:つじ

●月を追う獣
 月の鍵を手に、リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)は光の翼を広げて飛ぶ。今回の探索行において、最大の成果であるそれを、確実に持ち帰るために。
 しかし当然、ズーランド・ファミリーの面々がそれを許すはずもない。その後を追い、月の鍵を奪還するために動き出す。
「――まさか、そのまま逃がすとでも?」
 こんな時の備えの一つや二つ、当然準備はしている――そんな笑みを浮かべるのは、『プリンス』リャン、このズーランド・ファミリーのブレーンにしてナンバー2である。
 だが、そんな彼の『仕込み』が実を結ぶ前に、青き竜のブレスがその道を阻んだ。
「ああ、良かった。足を止めてくれたようだ」
「……!」
 忌々し気に片眉を上げるチャンの前に、ボクスドラゴン、サキミを従えた奏真・一十(無風徒行・e03433)が、立ち塞がった。
「少し時間を貰えないか、まだ大したもてなしも出来ていないだろう?」
 意図して芝居のように、両手を広げて見せる。……ケルベロスとして今果たすべきは、リューインを、月の鍵を、仲間の元へ届ける事。そのためにも、追手を足止めしなくてはならない。
 たとえ、敵わないとしても。
「気負わなくても良いんだよ。君にそんな期待をしてはいないさ」
 対するリャンは溜息を一つ。双方の間にある明白な実力差を香らせるように、鋭い爪を輝かせる。
「お暇させてもらうよ。さっさと、ね」
「そう言わないで欲しい――何が起きるかなんて、分からないだろう?」
 黒い炎を上げる両足で地面を踏み締め、一十は戦いへと身を投じた。
 
●救出作戦
「皆さん! 緊急事態! 緊急事態でーっす!!」
 急いで集合するように、メガホンを構えた白鳥沢・慧斗(暁のヘリオライダー・en0250)が、ケルベロス達に呼びかける。
「竜十字島の調査に出ていた皆さんが、そこに隠された『鍵』を発見したようです! けれど、突如現れた敵が、調査隊の皆さんに襲い掛かる所が予知されました!!」
 現れるのは、強力な螺旋忍軍が8体。このままいけば、奇跡でも起こらなければ全滅は免れない。そうなればせっかく発見した『鍵』も奪われてしまうだろう。
「というわけで急ぎですよ急ぎ! 今から向かえば、予知にあった襲撃の数分後には駆け付けられるはずなのです! 準備の出来た方からヘリオンに乗り込んでください!!」
 慧斗が急かすように、調査隊は現在、バラバラになって敵と戦うことになるはずだ。速やかに救助に向かわなくては。
「皆さんに救助に当たって頂きたいのは、奏真・一十さんです! 敵として現れたズーランドファミリーのナンバー2、『プリンス』リャンの足止めに挑んでいるはずです!」
 とはいえ、強敵と単独で戦うことになるのだ、駆け付けた時にはかなりのダメージを受けているだろう。当然、既に撃破されている可能性も大いにある。回復などの対応が必須となるだろう。
 敵対する螺旋忍軍、リャンは身軽な動きと、その鋭い爪を武器にして戦う。現在の所は、立ち塞がる一十とサキミを『取るに足らない相手』と見て向かってくるが、ケルベロスの増援が入れば冷静に、目的――どうにか切り抜けてリューインを追う方に舵を切るだろう。可能ならば、こちらも対策をしておきたいところだ。
「今回の『鍵』の発見は確実に大きな成果と言えるでしょう。けれどそれが無に帰せば、そして犠牲を出せば、それも台無しになってしまいます! 皆さんの手で、そんな事態は阻止してください!!」
 最後に一際気合の乗った声でそう呼び掛けて、彼はケルベロス達をヘリオンに迎え入れた。


参加者
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
西水・祥空(クロームロータス・e01423)
奏真・一十(無風徒行・e03433)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
森光・緋織(薄明の星・e05336)
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)
井関・十蔵(羅刹・e22748)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)

■リプレイ

●迫る爪
 それは、細く綺麗な爪だった。よく手入れされているのだろう、形良く整えられたそれは、美しく、華奢に見えた。
 しかしそれを振るうのはデウスエクス、ウェアライダーのしなやかな腕。風切り音と共に走ったそれは、受けに回った彼の斧槍の上から、奏真・一十(無風徒行・e03433)を切り裂く。肩口を深く抉られた上に、衝撃で弾き飛ばされた一十の身体が地面を転がった。
 俄かに生まれた血霧の中を抜けて、主に代わって青い竜が飛ぶ。本来ならば主の助けに入るところだが、敵から離れては本末転倒だ。それゆえの体当たりを、敵――『プリンス』リャンは難なくいなして見せた。
 そのまま立ち去ろうとする敵の前に、その間に体勢を戻した一十が立ち塞がる。
「気の早いことだな。まあ、待ちたまえよ」
 その様子に、リャンが片眉を上げて応じる。指し示すのは、決して浅くない彼の傷。
「実力の差はもう分かったろう。寝ていなよ」
 そして、ふ、と笑う。優し気に。
「それとも、もう一撃くらいは必要かな? ――安心して良い、君は勇敢に戦ったって、僕からもよく言っておくから」
 かけられた言葉に、一十は苦笑で返した。
「いや、いや。……侮られたものだね」
「侮っているからね」
 それに対して激昂するほど幼くも無いが、心折られる程弱くもない。優先事項はよくわかっている。そう、使命の明らかな現状は、それはもう気楽なもので。
 『欠脈騒擾』、傷口から吹き上がる青黒い炎が、負傷を、痛みを、そしてそれを感じる正常な感覚を蝕んでいく。ほら、我が身を投げ打つのはこうも容易い。
「安易な手だ」
「だったら、打ち払うのも容易いだろう?」
 挑発するように返して、一十は斧槍、『タプテ』を手に地を蹴った。地獄の両足が轍を刻み、デウスエクスへと迫る。断頭台の如く振り下ろされた刃は敵の掲げた腕に喰らい付く。押し込まれる刃と獣の腕がせめぎ合い、その手に血を滴らせた。
 わずかながら、敵の片眉が上がる。
「わかっているじゃあないか」
 しかし、空いた腕から迸る紫電が、一十の身体を焼く。サキミがすかさず水の力で彼を癒し、一十自身も青黒い炎をさらに燃え上がらせ、堪えるが。
「終わりにしよう」
 音もなく、爪が走る。そして――。
「……ああ、何とか間に合ったかな?」
 放たれた追撃を、森光・緋織(薄明の星・e05336)が受け止めた。踏みとどまった彼から、リャンが反撃を警戒して二歩下がる。その間隙を埋めるように、ケルベロス達が次々と駆け付けた。
「こっちは上手くいって――」
「鍵の件は上手く行ってるよ!」
 後ろの一十へと声をかけた緋織に、食い気味でヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)の言葉が重なる。
「お疲れ様でございます。万事順調に推移しておりますよ」
「遅くなってすいません、ですが作戦は概ね順調です」
 堂々とした姿勢の西水・祥空(クロームロータス・e01423)と、結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)もまた、立ち塞がるようにして敵の前に立った。
 一瞬虚を突かれたように目を開いた一十だが、すぐに彼等の言葉の意味を悟る。これまでずっと、戦ってきた彼だから見える光景。ああ、駆け付けてくれたのは、名を聞けば顔を思い出せる者が大半で。
 ……そうして彼は、敵に驚きを気取られぬよう、笑って見せた。
「――待っていた。手筈通りだ!」
 そう、すべては計画の内なのだから、と。

●獣
 手早く仕留めるつもりだった相手に仲間が現れ、リャンはしかし、考え込む様子もなく一歩を踏み出す。その意図するところを察して、シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)は素早くバスターライフルによる一射を敵へと向けた。
「先へは向かわせません」
 放たれた光弾と、振り払うように動かされた爪がぶつかり、弾ける。続けてレオナルドが斬りかかる合間に、ケルベロス達は敵を取り囲むように位置取っていた。
 大太刀による斬撃を捌いた敵へ、虹を描いてヴィルフレッドが急降下、靴裏を叩き込む。
「かわいいしっぽ巻いて逃げてボスに慰めてもらうのかい、キティちゃん」
「上司に恵まれていないからって、僻まないでくれるかな」
 上空からのそれを片手で受け止めて、リャンは逆にヴィルフレッドへと電撃を見舞った。彼等が敵の注意を引いている内に、一十とサキミもまた隊列に加わる。
「男前が上がったか?」
「そう見えるかな?」
 深手を負った仲間を迎えた井関・十蔵(羅刹・e22748)の軽口に、一十はどこか安心したような笑みを浮かべた。
 その彼を、十蔵の喰霊刀から滲んだ力が包む。傷口から噴き出していた激しい炎が、束の間、沈静化していく。自らの行った治療の様子を確かめて、十蔵は敵に向かって言葉を投げた。
「さてさて……鍵は何処まで運べたかねぇ……おいおい? まさか追いかけるつもりか?」
 突破口を見出そうとしていた敵に、「無駄だ」と説く。それもまた包囲と同じく、敵を逃さぬための一手だ。
「囮なんぞいくら追っても無駄無駄。それより俺達と遊んでいけや、カッカッカッ!」
 快活とした笑い声が響く。全体の中列位置にいたエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)も、今はそれを利用することにした。
「お前がボスに忠誠を尽くしているのは分かる。だが、なればこそ私達の相手をした方が良いのではないか?」
 問いかけの内容は、仲間についてだ。相手の表情を、反応を見逃すまいとしながら、エメラルドが言葉を続ける。この男が気にするのは、「仲間に迷惑をかけてしまう事」か、それとも自尊心か。
「無論、お前が逃げるなら私達がその背を狙い撃ち、敵から逃げた卑怯者として名を残す事にもなる」
 こちらも一十へと光の蝶を舞わせながら、彼女は両方を順に突いてやる。また、シアもそれに合わせるように。
「此処を手ぶらでお通りになる? 貴方の仲間に「逃げてきた」とお伝えになりますか?」
 そんな言葉に対して、リャンは一つ、ため息を吐いた。
「そうかい、逃げられるのはそんなに都合が悪いんだね」
 これだけ言葉を重ねられれば、真なる狙いはすぐに見えてくるもの。しかし。
「まぁ良いだろうさ。僕達が目指すのは、何者にも揺らがされない『最強の個』……君達如きの障害に、足を止めている場合ではない」
 ゆえに、相手をしようと、リャンはそう言ってケルベロス達の方へ、今までとは違う一歩を踏み出した。

「『最強の個』だって? おかしなグループだね。一人でも複数でも、螺旋忍軍って本当にめんどくさい……」
 敵の動きをよく見ろ、と。自らの傷を癒しながらヴィルフレッドが言う。元々螺旋忍軍であった彼は、同組織に対して自然と辛辣になってしまうのだが。
「君達は、マスター・ビーストに神造られたウェアライダーと、螺旋忍軍の区別もついていないのかい?」
 自らの爪と尾を誇示すべく両手を広げて、リャンは呆れるように肩を竦めた。
 彼、そしてこのファミリー、さらに今回竜十字島で活動していた者達は、揃って獣人である。どうやら彼等の帰属意識は、螺旋忍軍には無いようだ。確かに、『ウェアライダー』はかつてマスター・ビーストによって生み出され、デウスエクスの主戦力となっていたという経緯があるが。
「螺旋忍軍ではなく、ウェアライダーとして戦っている……?」
 自らもウェアライダーであるレオナルドが唸る。
「勿論。と言っても、そんなことも区別できない君達には、不要な話かな」
 鋭く伸ばした爪が、一直線に空を切る。すると、空間に生じた刃が彼を囲む前衛たちへと襲い掛かった。
 変形する液体金属、オウガメタルを盾にした緋織と、依然壁役を務めるサキミが身を呈し、指先の軌跡のような斬撃を受ける。ぱっと散る赤い風、けれど彼等はそこで踏み止まった。
 ――ああ、これを一人で凌いでいたのか、と緋織は思う。彼と一十の縁は、何度かあったことがある、知り合い程度のものだったが。それでも胸に生じた無事を案じる思いは、祈りは、決して嘘ではない。
「みんなで、無事に帰ろう」
 彼の指先に絡んだ鎖が地面に垂れて、防御陣を描き出す。
「無論です」
 その輝きの裏を突くように、祥空が敵の側面へと駆け、その両手の日本刀、十王浄玻璃と十三仏光背を振るう。空間ごと切り裂く魔性の斬撃は、しかしその空間斬りの軌道すらも読まれたように、リャンを捉えることに失敗する。
「まあ、口に出すだけなら自由だよ」
 好きなように言えとリャンは笑う。機動力に自信があるのか、リャンはその素早い身のこなしをもって、高い頻度でケルベロスの攻撃を躱してしまう。攻撃を仕掛けた者の何度目かの空振りの後、敵はそろそろ良いだろうとでも言うように、姿勢を低く、構えた。
「でも、もう終わりかい?」
 ちりんと、その胸元に下げた鈴が鳴る。その小さく柔らかい音色を残して、リャンは目にも止まらぬ速さで緋織へと迫っていた。
「――!」
 瞬く間の斬撃、そこに、その身を呈したサキミが飛び込んでいた。声にならぬ悲鳴と共に、力なくボクスドラゴンが倒れ伏す。
「サキミ……!」
「ったく、献身的なこった――見習え竹光! おめえはあっちだ! こっちの回復は俺がやらぁ!」
 それを見届けながらも、自らのシャーマンズゴーストを叱咤して十蔵が前衛のカバーに入る。
「そぉら、よっと」
 『活破 菊旋風』、敵のそれとは違う優しい風が、菊の花弁と共に吹き、ケルベロス達を癒していく。美しいその花吹雪を超えるように、一十は自らの武器の砲口をまっすぐ敵へと定めていた。
 砲撃形態と化した獲物から、嵐のような風と共に竜砲弾が放たれる。唸りをあげるそれすらも、とんぼを切るように躱してみせて、なおも健在な敵が軽やかに着地する。
「――ああ、足下の花も良くご覧になって?」
 が、そこに指を向けたシアは、敵が思わず見下ろしたそこへと力を注いだ。
 『轍花』、足元へと咲き出ずるは幻の花。色鮮やかさと、独特の香りを感じさせるそれは、見る者の視覚と嗅覚に強く訴えかける。
 突発的な事態に対応しきれず、戸惑ったようにリャンの動きが精彩を欠く。
「逃げられると思うな……!」
 そこを流さず掴んだエメラルドが、その一瞬の隙へと『ジュデッカの槍』――貫手を叩き込んだ。敵が咄嗟に身を躱したゆえに浅くではあるが、エメラルドの指先は確かに敵の心臓に迫っている。
「浅いか……!?」
 そう、それでも、確かに攻撃は届いた。指先の紡ぐ凍てつく冷気が、敵の胸元に傷を残す。それが反撃の糸口となるか、それはこれからの行動次第だ。
 エメラルドの一撃を掻き消すように、刃を伴う一閃で、敵は再度ケルベロス達を薙ぎ払う。
「そう、何度も――」
「――通用するとは思わないでもらえますか?」
 両手を組み合わせて盾にしたエメラルドの傍らを滑りぬけ、レオナルドはその大太刀を迷いなく振るった。

●空鳴り
 呪怨斬月、レオナルドの刀が月を描き、その刃でリャンの身に裂傷を負わせる。続く戦いの中で、ケルベロス達の当てた一つ一つの攻撃は、時に足止めとして、時にプレッシャーとして敵の身を蝕んでいった。
「貫け」
 エメラルドの指先による氷槍が、今度こそ敵の肩口を捉える。抉り取るような一撃に後退し、リャンは細く、苦し気に息を吐いた。
「おう、どうした? 顔色が悪ィな」
「そろそろ、観念していただきましょう」
 十蔵の味方を癒す花吹雪を切り裂いて、シアの放つ冷凍光線が敵の足元を射抜く。凍てつき刺さる氷の感触に苛まれながらも、敵は諦めることなく反撃に出た。
「まだだよ。少なくとも、君達の首はもらっていく」
 ちりん。今度も、合図はその首の鈴の音だった。
 瞬く間の接近と共に振るわれる爪。瞬間移動でもしたかのような一振りは、「仕留め損ねていた」との思いからか、一十へと向けられていた。
「――ッ!」
「危ない!!」
 以前世話になった返礼を、ここで。刃を向けられた一十の身を掴み、体当たりのような勢いでヴィルフレッドが押す。それにより、庇いに入ると同時に、紙一重で敵の攻撃範囲から離脱して見せる。渾身の一撃が服の裾程度にしか触れられず、リャンが大きくたたらを踏んだ。
「この隙、逃さないでよ!」
「承知しました」
 ヴィルフレッドの指し示す『弱点』へ、祥空が急くように前に出る。祥空の経験が、直感が、「ここで倒せ」と訴えかけている。この組織のナンバー2、『プリンス』は、恐らく策謀をも自らの力とするタイプだ。現在の状況――結果的に奇襲となり、分断にも成功している今を逃せば、より強力な敵として立ち塞がるに違いないのだから。
「我が地獄を治めし可憐なる乙女達に願い奉る。神討つ力を我に与え賜え」
 詠唱、祈り、その呼び掛けに呼応して、祥空の裡より9つの炎の刃が生み出される。
「そんなもの――」
「……動かないで」
 今は回復よりも押し切る方を。満身創痍の緋織の左目が紅く、輝きを宿す。夢現の瞳は魅了の魔力を伴い、見つめたリャンの身を縛り付ける。
 回避のタイミングを完全に逸したそこに、九つの太刀による怒涛の連撃が打ち込まれる。ついにリャンが膝をついた。その顔に浮かぶ驚愕、そしてそれが行き過ぎた後には、ここまでかという諦念が表れていた。
「ああ――僕は『違った』みたいだ。皆みたいな、ボスみたいな、力があればな……」
 彼は、決して自らが弱いとは思っていない。けれど、強さには質と種類がある。リャンが憧れたのは、結局自らには無い類の『強さ』だった。
 ナインブレイズ。九の炎、九の切っ先が、一斉にその身を貫いた。

 ほどなく、他の戦場も戦いが終わる。戦況を確認すれば、無事に月の鍵を確保できたことが分かるだろう。鍵を見つけ出した者と、それを救助に向かった者。傷ついた者も多かったが、彼等は無事に互いの使命を果たしたのだ。
「ありがとう、皆」
 改めての一十の言葉に、十蔵が「良いってことよ」と軽く手を振って。
「――大変なお役目、お疲れ様でした」
 仲間たちの治療を終えたシアが、そう微笑んだ。
 今回の戦果、『月の鍵』は、きっとさらなる戦いへと彼等を誘うだろう。しかし今は――。
「さ、帰りましょう」
 皆で、とその言葉は続く。これもまた、勝利の証と言えるだろう、ケルベロス達の見上げた空に、迎えのヘリオンの機影が見えた。

作者:つじ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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